結論:人手不足は「一律に深刻化」ではなく「業種で明暗」が分かれ始めた
帝国データバンクが2026年5月19日に公表した「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」によると、正社員の人手不足を感じる企業は**50.6%**で、4月としては4年連続で半数を超えた。前年同月(51.4%)からは0.8ポイント低下したが、依然として高水準にある。
注目すべきはその内訳だ。「情報サービス」(66.7%)「運輸・倉庫」(65.9%)など上位業種が6割超で高止まりする一方、飲食店の非正社員不足は59.1%まで3年連続で改善し、旅館・ホテルは38.5%と4年2カ月ぶりに3割台へ低下した。帝国データバンクはこの背景に「DXやスポットワークの普及による生産性向上」のほか、物価高やインバウンド需要の落ち着きを挙げている。
本記事では同調査を一次情報として検証し、業種ごとの人手不足の温度差と、その差が自社にとって何を意味するかを整理する。
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調査の概要
- 調査主体:株式会社帝国データバンク
- 公表日:2026年5月19日
- 調査期間:2026年4月16日〜30日(インターネット調査)
- 調査対象:全国2万3,083社
- 有効回答:1万538社(回答率45.7%)
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/
全体像:正社員50.6%・非正社員28.3%、ともに前年同月より低下
| 区分 | 2026年4月 | 前年同月(2025年4月) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 正社員の人手不足 | 50.6% | 51.4% | -0.8pt(4年連続で4月として半数超) |
| 非正社員の人手不足 | 28.3% | 30.0% | -1.7pt(4月として4年ぶりに3割未満) |
全体の数字だけを見れば、正社員・非正社員とも人手不足感はわずかに緩和した。しかし帝国データバンクの調査は51業種を個別に集計しており、この「全体の緩和」は業種ごとの動きが相殺し合った結果に過ぎない。実際には、高止まりする業種と大きく改善した業種が同時に存在している。
業種別に見る「正社員」不足:情報サービスなど7業種が6割超
調査では51業種中7業種で正社員の人手不足が6割を超えた。原文で個別の数値が示されている上位業種は次の通り。
| 業種 | 正社員不足割合 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 情報サービス | 66.7% | -3.2pt |
| 運輸・倉庫 | 65.9% | +1.9pt |
| メンテナンス・警備・検査 | 65.9% | -3.5pt |
| 建設 | 65.7% | -3.2pt |
※上記4業種のほか、6割超の業種が計7業種ある旨が原文で明記されているが、残り3業種の個別業種名・数値は同記事内に記載がないため本稿では割愛する。
ここで見落とされやすいのが「情報サービス」の内実だ。帝国データバンクの取材コメントでは、情報サービス業の高止まりについて「AIの生成したコードを正しくシステムとして安定運用するための設計人材の需要が増えている」との声が紹介されている。つまり情報サービス業の人手不足は、単純な採用難というよりAI・DX案件そのものの需要増が人手不足を押し上げている構図であり、飲食・宿泊業とは逆方向の力が働いている。
もう一つ注目すべきは「運輸・倉庫」(65.9%、前年同月比+1.9pt)で、上位業種の中で唯一前年より悪化した。帝国データバンクは「売り上げは伸びているがそれ以上に人件費や燃料価格の上昇が大きく、増収減益が続いている」との企業の声を紹介しており、荷動きの回復が人件費上昇に食われている実態がうかがえる。
業種別に見る「非正社員」不足:飲食店・旅館ホテルは3年〜4年ぶりの改善
非正社員の不足では「人材派遣・紹介」(60.0%、前年同月比+0.5pt)が唯一6割台で最も高い。これに次ぐのが「飲食店」(59.1%)だが、こちらは同じ高水準でも意味合いが異なる。
| 業種 | 2024年4月 | 2025年4月 | 2026年4月 | 傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 飲食店(非正社員) | 74.8% | 65.3% | 59.1% | 3年連続で改善 |
| 旅館・ホテル(非正社員) | ― | ― | 38.5% | 2022年2月以来、4年2カ月ぶりに3割台 |
飲食店は2024年4月の74.8%から2年で15.7ポイント低下、旅館・ホテルはかつて業種別トップクラスの深刻度だったところから3割台まで下がった。帝国データバンクはこの改善について「DXやスポットワークの普及による生産性向上のほか、物価高の影響や中国人観光客の減少により来客数が落ち着いてきていることが挙げられる」と分析している。
ここで整理しておきたいのは、この一文はあくまで帝国データバンクによる要因の列挙であり、「DX普及だけが改善の理由」と断定しているわけではない点だ。物価高による客足の鈍化やインバウンド需要の一服という需要側の要因も並記されている。DX・省力化の進展が改善に寄与した可能性を示す統計ではあるが、DXが唯一の、あるいは支配的な要因であると同調査から結論づけることはできない。
対比の構図:需要が押し上げる業種と、供給側の効率化が効き始めた業種
今回の調査を並べて読むと、次のような対比が見えてくる。
- 情報サービス・運輸倉庫:DX・AI需要そのものの拡大や物流需要の回復が仕事量を押し上げ、供給(人材)が追いつかない状態が続いている。
- 飲食店・旅館ホテル:需要の落ち着き(客数の鈍化)と、店舗オペレーション側の省力化・スポットワーク活用が重なり、人手不足感が数値として和らいでいる。
自社の業種がどちらの構図に近いかによって、経営として打つべき手は異なる。需要超過型(情報サービス・運輸倉庫など)は「限られた人員で受注量をさばく体制」への投資が優先される。一方、飲食・宿泊のように改善が進んでいる業種でも、59.1%・38.5%という水準自体は依然として「10社中4〜6社が人手不足を感じている」高い水準であり、改善局面にあるからこそ、先行して省力化を進めた店舗と、そうでない店舗の差が今後開きやすい。
自社業種の該当確認チェックリスト
以下のいずれかに当てはまる場合、今回の調査結果は自社に直接関係する可能性が高い。
- 情報サービス・運輸倉庫・メンテナンス警備検査・建設など、正社員不足が6割を超える業種に属している
- 飲食店・旅館ホテルなど、非正社員(パート・アルバイト)比率が高い業態で、繁忙期のシフトが恒常的に埋まらない
- 受注・案件は増えているのに、人件費や外注費の増加が利益を圧迫している(運輸・倉庫型の構図)
- DX投資はしているが、それが「省人化・オペレーション効率化」につながっているか数値で説明できない
- 同業他社が省力化・自動化を進める中、自社は人手を前提にした運営を続けている
一つでも当てはまる場合、次に必要なのは「人が足りない」という感覚を、どの業務にどれだけの負荷がかかっているかという具体的なデータに落とし込むことだ。
FAQ
Q. この調査の「DXが改善要因」という部分は、DX投資をすれば人手不足が解消するという意味か。 A. 帝国データバンクの原文は「DXやスポットワークの普及による生産性向上」を、物価高やインバウンド需要の落ち着きと並記した要因の一つとして挙げているに過ぎない。DX投資が人手不足改善の万能策であると同調査が実証しているわけではなく、需要側の変化も同時に影響している点に注意が必要だ。
Q. 情報サービス業はなぜ人手不足が改善しにくいのか。 A. 帝国データバンクの企業コメントでは、AIが生成したコードを安定運用するための設計人材需要の増加が指摘されている。DXそのものへの需要拡大が仕事量を押し上げているため、飲食・宿泊のような「省力化による需要側の緩和」とは逆方向の力が働いている。
Q. 非正社員の人手不足が改善した飲食店・旅館ホテルは、もう対策は不要か。 A. 59.1%・38.5%という水準は、それぞれ約6割・約4割の企業が依然として人手不足を感じている計算であり、業種平均としては高い部類に入る。改善局面にある今こそ、省力化投資で先行するか、人手前提の運営を続けるかで店舗間の差が広がりやすい局面といえる。
この記事を読むべき人
- 飲食店・旅館ホテルの経営者・本部で、人手不足の「改善傾向」を踏まえて次の投資判断をしたい
- 情報サービス業・運輸倉庫業で、需要増に人材確保が追いつかず受注量のコントロールに悩んでいる
- 複数店舗・多店舗展開をしており、店舗ごとのオペレーション効率にばらつきがある
- DX投資を検討しているが、何にどれだけ効果があるのか自社データで確認できていない
GXOに相談すべきタイミング
- 人を増やす採用戦略ではなく、今いる人数でオペレーションを回す省力化の方向で投資判断をしたい
- 飲食・宿泊のオペレーション(予約・シフト・仕入・接客)のどこから着手すべきか整理したい
- 情報サービス・運輸倉庫のように需要超過が続く業種で、限られた人員での案件・受注管理体制を作りたい
- DX投資の効果を「勘」ではなく、自社の業務データに基づいて把握したい
GXOでは、飲食業・宿泊業向けに店舗オペレーションの省力化を支援する業種別DXに加え、人材不足を前提にした実装まで伴走するFDE+、そしてDX投資の前提となる自社の現在地を整理するAI導入アセスメントを提供している。まずは自社がどちらの構図(需要超過型/省力化余地型)に近いかを一緒に整理するところから始められる。
関連リンク
- 飲食業DX支援 — 店舗オペレーション・仕入れ管理の省力化
- 宿泊業DX支援 — PMS・OTA連携・観光DXによる業務デジタル化
- FDE+(成果まで伴走するAI/DX実装モデル) — 人材不足を前提にした省力化実装の伴走支援
- AI導入アセスメント — DX投資の前提となる自社の現在地の30分壁打ち
参考資料
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(2026年5月19日公表) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260519-laborshortage202604/
本記事は2026年7月2日時点の公開情報をもとに作成。統計数値はすべて帝国データバンクの公表値に基づく。業種名・分類は同調査の原文表記に準じ、原文に記載のない業種の個別数値は推測で補っていない。
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