建設業でデジタル化に取り組んでいる企業は、約2割。6割以上が「今後も導入の予定はない」と回答している(エイトレッド「建設業のデジタル化に関する実態調査」)。2024年4月に残業の上限規制が始まり、「人を増やせないなら仕組みを変えるしかない」と言われて2年。現場は変わったのか。結論から言えば、動いた会社と動かなかった会社の差は、すでに取り返しがつかないレベルに開きつつある。
2024年問題から2年、建設業の現実
残業規制の罰則は「他人事」ではなくなった
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されている。年720時間、月100時間(複数月平均80時間)を超える残業は法律違反だ。違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される(労働基準法第119条)。元請だけでなく下請にも適用されるため、「うちは小さいから関係ない」は通用しない。
就業者の高齢化と若手不足が加速している
国土交通省「建設労働需給調査」(2024年11月公表)によると、建設業就業者の約35%が55歳以上だ。一方で29歳以下は約12%にとどまる。あと5年もすればベテランの大量退職が始まるが、同じ人数を採用できる見込みはない。少ない人数で同じ品質を保つには、手作業を減らす以外に方法がない。
2026年からBIM活用が一部義務化
2026年から、建築確認申請においてBIM(Building Information Modeling)の活用が一部義務化される。3次元モデルで設計情報を管理する仕組みだが、紙の図面とExcelだけで仕事をしてきた会社にとっては大きな転換点になる。「来年から急に対応しろ」と言われても間に合わない。今から準備を始めている会社とそうでない会社の差は、受注できる仕事の幅に直結する。
それでも6割が「導入予定なし」
JAPAN BUILD TOKYO 2024の来場者調査では、建設業のデジタル化について「必要性は感じているが着手できていない」と回答した企業が最も多かった。理由の上位は「何から始めればいいかわからない」「費用対効果が見えない」「現場のベテランが使えるか不安」の3つだ。裏を返せば、この3つを解消できれば動ける会社は多い。
成功企業に共通する3つのこと
デジタル化に取り組んで成果を出している建設会社には、共通するパターンがある。KENTEMの導入事例やJAPAN BUILDの成功企業の取り組みから、3つの共通点を整理した。
1. 「全部やる」ではなく「1つだけ」から始めた
成功企業は、最初から工程管理も写真管理も安全書類もまとめてデジタル化しようとはしなかった。「毎日一番時間がかかっている作業」を1つだけ選び、そこに集中した。多くの場合、最初に手をつけたのは工事写真の整理か日報の作成だ。1つの作業が楽になると、現場の反応が変わる。「次はこれもできないか」という声が自然に出てくる。
2. 現場の「一番パソコンが苦手な人」を基準にツールを選んだ
ITに詳しい社長や若手が「これがいい」と選んだツールが、現場で使われないケースは非常に多い。成功企業は、50代60代のベテラン職人が「これなら使える」と言ったツールを採用した。画面がシンプルで、ボタンが大きく、操作の手順が少ないこと。スマホで完結すること。この基準で選ぶだけで、定着率は大きく変わる。
3. 補助金で「持ち出しゼロ」に近づけた
「費用がかかるから」と先送りする会社が多い中、成功企業は補助金を活用して初期費用を大幅に圧縮していた。現在、建設業のデジタル化に使える主な補助金は以下の通りだ。
| 補助金名 | 上限額 | 対象 |
|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 最大1,250万円 | 生産性向上のためのシステム導入・設備投資 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 最大450万円 | AIやデジタルツールの導入 |
| IT導入補助金 | 最大450万円 | ITツールの導入費用 |
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建設業のデジタル化、導入3ステップ
ステップ1:現場で一番時間がかかっている作業を洗い出す(1週間)
まず、現場監督や事務員に「毎日一番面倒な作業は何か」を聞く。写真の整理、日報の作成、安全書類の記入、工程表の更新など、候補はいくつも出てくるはずだ。その中から「一番時間がかかっている作業」を1つだけ選ぶ。ここで欲張って複数選ぶと失敗する。
ステップ2:無料体験できるツールを3つ試す(2週間)
選んだ作業に対応するツールを3つほどピックアップし、無料体験期間で実際に現場で使ってみる。このとき、社長や若手ではなく「一番パソコンが苦手な人」に使ってもらうのがポイントだ。その人が「まあ、これなら使える」と言えば、全員が使える。
ステップ3:補助金の申請を進めながら本導入する(1〜2ヶ月)
ツールが決まったら、補助金の申請準備と並行して本導入を進める。補助金の申請には事業計画書の作成が必要だが、ツール提供会社やDX支援会社がサポートしてくれるケースが多い。自社だけで抱え込む必要はない。
まとめ
2024年問題から2年。動いた会社は「1つの作業」から始めて成果を出し、動かなかった会社は今も同じ課題を抱えている。補助金を使えば持ち出しは最小限に抑えられる。「うちの会社は対象になるのか」「何から始めればいいのか」——まずはその確認から始めてほしい。
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よくある質問(FAQ)
Q1. うちは従業員10人以下の小さな工務店ですが、補助金の対象になりますか?
対象になる。IT導入補助金やものづくり補助金は中小企業・小規模事業者を主な対象としており、従業員数が少ない会社ほど採択率が高い傾向にある。建設業の場合、資本金3億円以下または従業員300人以下であれば中小企業に該当する(中小企業基本法)。まずは補助金の公募要領を確認するか、DX支援会社に「うちは対象か」と相談するのが最も早い。
Q2. 現場のベテラン職人がスマホ操作に慣れていません。それでもデジタル化はできますか?
できる。成功企業の多くが「一番パソコンが苦手な人でも使えるツール」を選定基準にしている。最近の現場管理アプリは、スマホで写真を撮るだけで自動的にクラウドに保存・整理されるものが多く、特別な操作スキルは不要だ。導入初日に全員で一緒に触る時間を30分確保するだけで、定着率は大きく変わる。
Q3. デジタル化にかかる費用はどのくらいですか?
工事写真管理アプリであれば月額5,000円〜2万円程度、安全書類のクラウド化であれば初期費用込みで年間30万〜100万円程度が相場だ。補助金を活用すれば、この1/2〜2/3が補填される。たとえば年間60万円のツール導入費用に対して、IT導入補助金で40万円が戻るケースもある。まずは「補助金込みでいくらになるか」の見積もりを取ることを勧める。
参考資料
- エイトレッド「建設業のデジタル化に関する実態調査」 https://www.atled.jp/
- JAPAN BUILD TOKYO 2024 来場者調査 https://www.japan-build.jp/
- KENTEM(建設システム)導入事例 https://www.kentem.jp/
- 国土交通省「建設労働需給調査」(2024年11月公表) https://www.mlit.go.jp/
- 中小企業庁「ものづくり補助金」公募要領 https://portal.monodukuri-hojo.jp/
- 経済産業省「デジタル化・AI導入補助金」 https://www.meti.go.jp/