経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2025年更新版)では、2030年に最大79万人のIT人材が不足すると推計されています。IT人材不足が深刻化する中、SES(システムエンジニアリングサービス)の活用は多くの企業にとって現実的な開発リソース確保の手段です。
しかし、SES単価の相場感を把握せずに契約すると、適正価格を大幅に上回るコストを支払うリスクがあります。本記事では、2026年時点のSES単価を役割別・スキル別・技術別に網羅的に整理し、適正な単価で契約するための交渉ポイントを解説します。
目次
- SES単価の相場一覧(役割別・経験年数別)
- 技術スタック別の単価相場
- SES vs フリーランス vs 受託開発の比較
- SES単価を左右する要因
- 単価交渉のポイント
- SES活用の注意点
- まとめ
- FAQ
1. SES単価の相場一覧(役割別・経験年数別)
JISA(情報サービス産業協会)「情報サービス産業 基本統計調査 2025年版」およびレバテック、Midworks等のSESマッチングプラットフォームの公開データを参考に、2026年時点の単価相場をまとめました。
役割別・経験年数別の月額単価
| 役割 | 経験年数 | 月額単価(税抜) | 備考 |
|---|---|---|---|
| PM(プロジェクトマネージャー) | 5年以上 | 100〜150万円 | PMP等の資格保有で上振れ |
| SE(システムエンジニア) | 5年以上 | 80〜120万円 | 上流工程(要件定義・設計)対応 |
| SE(システムエンジニア) | 3年程度 | 65〜90万円 | 詳細設計・実装・テスト |
| PG(プログラマー) | 3年以上 | 55〜80万円 | 実装・単体テスト |
| PG(プログラマー) | 1年程度 | 40〜60万円 | 実装補助・テスト |
| テスター | 経験不問 | 35〜50万円 | テスト実行・バグ報告 |
| インフラエンジニア | 3年以上 | 70〜110万円 | AWS/Azure/GCP構築・運用 |
| セキュリティエンジニア | 3年以上 | 90〜130万円 | 脆弱性診断・ISMS対応 |
| AI/MLエンジニア | 3年以上 | 100〜150万円 | 機械学習モデル開発・MLOps |
| データエンジニア | 3年以上 | 85〜120万円 | データ基盤構築・ETL設計 |
経験年数による単価の変動幅
同じ「SE」でも経験年数によって単価が大きく異なります。以下はSEの経験年数別の単価推移です。
| 経験年数 | 月額単価目安 | 対応可能な工程 |
|---|---|---|
| 1〜2年 | 45〜60万円 | プログラミング、単体テスト |
| 3〜4年 | 65〜85万円 | 詳細設計、結合テスト |
| 5〜7年 | 80〜110万円 | 基本設計、要件定義補助 |
| 8〜10年 | 100〜130万円 | 要件定義、プロジェクト推進 |
| 10年以上 | 110〜150万円 | PM補佐、技術選定、アーキテクチャ設計 |
人月単価の構造やエンジニアの費用体系については中小企業のシステム開発費用ガイドでも解説しています。
セクションまとめ:SES単価はPGの40万円からPM・AI/MLエンジニアの150万円まで幅広く分布しています。同じ役割でも経験年数によって1.5〜2倍の差があります。自社に必要なスキルレベルを明確にしてから調達することをおすすめします。
2. 技術スタック別の単価相場
使用する技術(プログラミング言語・フレームワーク・クラウド)によっても単価は変動します。需要と供給のバランスが単価に直結するためです。
プログラミング言語別の単価(経験3年以上のPG/SE)
| 言語/技術 | 月額単価目安 | 需要動向(2026年) |
|---|---|---|
| Java | 65〜95万円 | 安定(大規模基幹系で根強い需要) |
| PHP | 55〜80万円 | 安定(Web系で広く利用) |
| Python | 75〜110万円 | 上昇(AI/ML、データ分析の需要拡大) |
| Go | 80〜120万円 | 上昇(マイクロサービス、高負荷系で需要増) |
| TypeScript/JavaScript | 65〜95万円 | 安定〜上昇(フロントエンド+Node.jsの需要) |
| React | 70〜100万円 | 上昇(フロントエンドの事実上の標準) |
| Vue.js | 65〜90万円 | 安定(国内Web開発で根強い人気) |
| Swift/Kotlin | 70〜100万円 | 安定(モバイルアプリ開発) |
| Rust | 90〜130万円 | 上昇(システムプログラミング、高セキュリティ) |
| C#/.NET | 65〜90万円 | 安定(エンタープライズ系) |
クラウド・インフラ別の単価
| 技術 | 月額単価目安 | 備考 |
|---|---|---|
| AWS | 75〜115万円 | 最も需要が多い。SAP等の資格保有で上振れ |
| Azure | 70〜110万円 | エンタープライズ案件で需要増 |
| GCP | 75〜115万円 | データ分析・ML案件で需要 |
| Kubernetes/Docker | 80〜120万円 | コンテナ運用の専門性で高単価 |
| Terraform/IaC | 75〜110万円 | Infrastructure as Codeの需要増 |
単価が高い技術の傾向(2026年)
2026年時点で単価が上昇傾向にある技術は以下の通りです。
- AI/ML関連(Python + TensorFlow/PyTorch):100〜150万円
- Go言語:マイクロサービスアーキテクチャの普及で需要拡大
- Rust:セキュリティ重視のシステム開発で需要増
- Kubernetes/クラウドネイティブ:コンテナオーケストレーションの専門家は希少
セクションまとめ:Python(AI/ML)、Go、Rust、Kubernetesが2026年の高単価トレンドです。Java/PHPは安定需要ですが単価は横ばいです。技術選定時にSES調達の容易さとコストも考慮することをおすすめします。
3. SES vs フリーランス vs 受託開発の比較
エンジニアリソースの調達方法はSES以外にもあります。それぞれの特徴とコストを比較します。
| 項目 | SES | フリーランス | 受託開発 |
|---|---|---|---|
| 費用形態 | 月額(時間精算) | 月額(時間精算)or 成果物 | プロジェクト一括 |
| SE相当の月額費用 | 65〜120万円 | 60〜100万円 | 80〜120万円/人月相当 |
| 契約形態 | 準委任契約 | 準委任 or 請負 | 請負契約 |
| 指揮命令権 | なし(SES企業経由) | なし(直接指示はNG) | なし(成果物で管理) |
| メリット | 人材の安定供給、リスク分散 | コスパ、スキルの直接確認 | 成果物保証、管理が楽 |
| デメリット | マージンが20〜40%、離職リスク | 個人依存、稼働不安定 | 仕様変更に弱い、コスト高 |
| 適したケース | 長期の開発体制構築 | 特定スキルのスポット補充 | 仕様が固まった案件 |
SESのマージン構造
SES企業が介在することで、エンジニアの実際の取り分と顧客が支払う金額には差があります。
| 項目 | 金額(月額80万円の場合) |
|---|---|
| 顧客支払額 | 80万円 |
| SES企業マージン(25〜40%) | 20〜32万円 |
| エンジニア手取り(社員の場合) | 48〜60万円 |
多重下請け構造(2次請け、3次請け)になると、エンジニアの手取りはさらに低くなり、モチベーションや品質に影響します。契約時に「何次請けか」を確認することが重要です。
社内エンジニアの採用とSES活用のコスト比較については社内SEと外注のコスト比較で詳しく解説しています。受託開発の費用感は業務システム開発の費用相場を参照してください。
セクションまとめ:SESは安定したリソース確保に適し、フリーランスはスポット活用に、受託は仕様確定済みの案件に向いています。SESのマージン(25〜40%)を理解した上で、複数の調達手段を組み合わせるのが最適です。
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4. SES単価を左右する要因
同じスキルセットのエンジニアでも、以下の要因によってSES単価は大きく変動します。
要因1:商流の深さ(多重下請け構造)
| 商流 | 単価の目安 | マージン累積 |
|---|---|---|
| エンド直請け | 最も安い(マージン1層分) | 20〜30% |
| 2次請け | +10〜20万円 | 35〜50% |
| 3次請け以降 | +20〜40万円 | 50〜65% |
同じエンジニアに同じ仕事を依頼しても、商流が1段深くなるごとに月額10〜20万円上乗せされます。可能な限りエンド直請けのSES企業と契約することをおすすめします。
要因2:稼働場所
| 稼働形態 | 単価への影響 |
|---|---|
| フルリモート | 基準単価(地方在住エンジニアも対象になり供給増) |
| ハイブリッド(週2〜3日出社) | 基準単価〜+5万円 |
| フル出社(都心) | +5〜15万円(通勤圏エンジニアに限定されるため) |
要因3:契約期間
| 契約期間 | 単価への影響 |
|---|---|
| 3ヶ月以下 | +5〜10%(短期プレミアム) |
| 6ヶ月〜1年 | 基準単価 |
| 1年以上 | −5〜10%(長期ディスカウント) |
要因4:業界・セキュリティ要件
金融、医療、官公庁など、セキュリティクリアランスや業界固有の知識が必要な案件は、単価が10〜30%上乗せされる傾向があります。
要因5:地域
| 地域 | 東京を100とした場合の単価水準 |
|---|---|
| 東京 | 100 |
| 大阪 | 90〜95 |
| 名古屋 | 85〜90 |
| 福岡 | 80〜90 |
| その他地方 | 75〜85 |
ただし、フルリモート案件の増加により地域間の単価差は縮小傾向にあります。
セクションまとめ:SES単価は商流の深さで20〜40%、稼働場所で5〜15万円、契約期間で±10%変動します。エンド直請け+フルリモート+長期契約が最もコスト効率が良くなります。
5. 単価交渉のポイント
SES単価を適正に保つための交渉ポイントを整理します。
ポイント1:市場相場を把握してから交渉する
本記事の相場表を参考に、提示された単価が市場相場の範囲内かを確認します。相場を大幅に超える単価が提示された場合は、根拠の説明を求めましょう。
ポイント2:商流を確認する
「何次請けか」「エンジニアの所属はどこか」を契約前に確認します。3次請け以降の場合、エンド直請けのSES企業に切り替えることで月額10〜20万円のコスト削減が可能です。
ポイント3:スキルシートを精査する
提示されたスキルシートの経験年数やスキルレベルが単価に見合うかを確認します。「Java歴5年」でも、業務システムの開発経験があるのか、研修レベルなのかで実力は大きく異なります。可能であれば面談(スキル確認の場)を設けることをおすすめします。
ポイント4:複数名の一括調達で交渉する
3名以上の一括調達であれば、ボリュームディスカウント(1人あたり3〜5万円の減額)を交渉できるケースが多くあります。
ポイント5:長期契約を条件にする
6ヶ月以上の契約を前提にすることで、5〜10%の単価ディスカウントが期待できます。SES企業にとっても稼働の安定はメリットがあるため、交渉に応じやすくなります。
開発プロジェクト全体の予算設計については中小企業のシステム開発費用ガイドが参考になります。ITアドバイザーの活用を検討する場合はITアドバイザー・技術顧問の費用ガイドも併せて確認してください。
セクションまとめ:エンド直請け確認、商流の透明化、スキルシートの精査、複数名一括調達、長期契約がSES単価を適正に保つ5つの交渉ポイントです。
6. SES活用の注意点
SES契約にはメリットだけでなく、注意すべきリスクもあります。
注意点1:偽装請負のリスク
SES契約(準委任契約)では、発注者がSESエンジニアに直接指揮命令することは法律上認められていません。実態として発注者が直接指示を出している場合、「偽装請負」として労働者派遣法違反に該当する可能性があります。
注意点2:エンジニアの入れ替えリスク
SES企業の都合でエンジニアが交代するリスクがあります。プロジェクトの途中でキーパーソンが抜けると、引き継ぎコスト(1〜2ヶ月分の生産性低下)が発生します。契約時に「最低稼働期間」や「交代時の事前通知期間」を明記しておきましょう。
注意点3:ノウハウの社内蓄積が進まない
SESに開発を依存し続けると、技術ノウハウが社内に蓄積されません。長期的には社内エンジニアの採用・育成も並行して進めましょう。
注意点4:品質管理の責任所在
SES契約は「労働力の提供」であり、成果物の品質を保証するものではありません。品質に問題があった場合、責任の所在が曖昧になりがちです。レビュー体制やテスト基準を契約前に合意しておくことが重要です。
セクションまとめ:偽装請負のリスク、エンジニア交代リスク、ノウハウ蓄積の課題、品質管理の責任所在が主な注意点です。契約書に最低稼働期間・通知期間・品質基準を明記しましょう。
SES調達の適正価格、開発体制の最適化を支援します
「提示された単価が適正か分からない」「SESとフリーランスのどちらが良いか迷っている」——開発リソースの調達は、プロジェクト成功の重要な要素です。GXOが適切な体制設計をサポートします。
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7. まとめ
2026年のSES単価相場を総括します。
| 区分 | 月額単価レンジ |
|---|---|
| PG(1年) | 40〜60万円 |
| PG(3年+) | 55〜80万円 |
| SE(3年) | 65〜90万円 |
| SE(5年+) | 80〜120万円 |
| PM | 100〜150万円 |
| インフラ | 70〜110万円 |
| セキュリティ | 90〜130万円 |
| AI/ML | 100〜150万円 |
単価を適正に保つためのポイントを再整理します。
- 商流を浅く:エンド直請けのSES企業を選ぶ(2次請け以降で月10〜20万円上乗せ)
- リモート活用:フルリモートで地方在住エンジニアも候補に入れる
- 長期契約:6ヶ月以上で5〜10%のディスカウント交渉
- 複数比較:最低3社から見積もりを取得し、市場相場と照合
開発プロジェクトの全体設計については業務システム開発の費用相場、テスト工程の効率化はテスト自動化戦略ガイドも参照してください。
FAQ
Q1. SES単価は消費税込みでしょうか?
一般的にSES単価は税抜表示です。月額80万円と提示された場合、実際の支払いは88万円(消費税10%込み)となります。見積もり比較の際は税抜・税込を統一して比較してください。
Q2. SES単価に含まれないコストはあるでしょうか?
交通費(出社の場合)、PC等の機材費、ツールライセンス費は別途発生するケースがあります。契約前に「単価に含まれるもの・含まれないもの」を明確にしておいてください。
Q3. SESエンジニアの単価が年々上がっている理由は何でしょうか?
IT人材の需給ギャップが最大の要因です。経済産業省の推計では2030年に最大79万人のIT人材が不足するとされており、需要に対して供給が追いついていません。特にAI/ML、クラウド、セキュリティ分野の単価上昇が顕著です。
Q4. SES契約と派遣契約の違いは何でしょうか?
SES契約(準委任契約)では指揮命令権はSES企業側にあり、派遣契約では指揮命令権は派遣先(発注者)にあります。SESの方が自由度は低いですが、エンジニアの管理責任はSES企業が負うため、発注者の管理負荷は軽減されます。
Q5. 新人エンジニアのSES単価が40万円は妥当でしょうか?
経験1年程度のPGで40万円は市場相場の下限です。ただし、「新人」の定義に注意してください。IT業界未経験からの転職1年目なのか、学生時代からプログラミング経験があるのかで実力は大きく異なります。スキルシートと面談で実力を確認してから判断してください。