GXO
基幹システム刷新

積水化学の基幹刷新は「AIの前提」|海外売上1兆円を支えるS/4HANA移行に学ぶ、AI-Readyデータ整備の順序

15分で読める

READ LATER / FREE NEWSLETTER

今すぐ読み切れなくても、判断材料を逃さない

あとで読む保存は登録不要。無料メルマガでは、重要更新と発注前のチェック項目を月2回までに絞ってお届けします。

保存はこの端末だけ・メール不要 / メルマガは確認メール承認後に開始・いつでも停止

GXO COLUMN

業務改善

結論:基幹刷新の目的はコスト削減だけでは足りない。「AIを使える会社になるため」のデータ整備まで含めて設計する

積水化学工業のデジタル変革推進部長が、2026年6月11日の日経クロステックNEXT 関西 2026の基調講演で、SAP S/4HANA Cloudによる基幹システム刷新と業務標準化を「AI時代の前提」と位置づける取り組み を語ったと報じられている(日経クロステック・2026年6月12日)。報道によれば、同社は2030年度に海外売上高1兆円という目標を掲げ、ノンコア業務の標準化とデータ整備を進めながら、国内の会計領域から段階的に導入しグローバル展開を進めているという。

注目すべきは、大手化学メーカーの講演で 「一見地味な業務標準化や基幹刷新こそAI時代に重要」という順序論が語られた 点だ。生成AIの導入が「PoC止まり」になる最大の原因は、AIモデルの性能ではなく、基幹システムに散在する不統一なデータにある。つまり「AIを入れたいが基幹のデータが汚い」企業にとって、基幹刷新はAIと別の投資ではなく、AI投資の第1段階 である。

押さえるべき1点:AI導入の成否は「どのAIを選ぶか」より前の、「業務とデータが標準化されているか」でほぼ決まる。基幹刷新の稟議は、コスト削減ではなくAI活用の前提投資として書き直すべき段階に来ている。

NOCODE EXIT

Bubble/kintone の限界、スクラッチ移行で解消しませんか?

ノーコードの肥大化・応答遅延・カスタマイズ限界を Laravel+Vue 移行で根治。概算費用・移行期間・データ移行設計・並行稼働プランをその場で確認できます。

移行プランの概算を見る

報道の要点と「AI-Ready」整備の全体像

日経クロステックの報道(有料記事・二次情報)によれば、講演の骨子は次のとおりだ。

横にスクロールして確認できます

項目内容(報道ベース)
講演日経クロステックNEXT 関西 2026 基調講演(2026年6月11日・グランフロント大阪)
登壇積水化学工業 デジタル変革推進部長
経営目標2030年度に海外売上高1兆円
刷新内容SAP S/4HANA Cloud導入。国内会計領域から段階導入し、グローバル展開中
背景課題システム不統一による意思決定の遅れ、情報漏洩リスク、労働力不足への対応
位置づけノンコア業務の標準化とデータ整備を、AI時代の前提として推進

この構図は積水化学に限らない。EYと味の素が公表したAI-Readyデータ基盤の事例(味の素の「AI-Readyデータ基盤」事例で解説)でも、生成AI全社展開の鍵は「データの利用基準」だった。GENIACの製造業採択でも現場データのAI-Ready化が主題である(製造業データのAI-Ready化2026)。先行事例に共通するのは「AIの前にデータ、データの前に業務標準化」という順序である。

なぜ「AIの前に基幹刷新」なのか:順序を間違えた会社で起きること

順序論を一般化すると、AI-Ready化は次の5段階になる。

  • 業務標準化:拠点・部門ごとにバラバラな業務プロセスを標準に寄せる(Fit to Standard)。ここを飛ばすと、後続のすべてが「例外対応」で汚染される

  • コード・マスタ統一:取引先・品目・勘定科目などのマスタを全社で一本化する。同じ取引先が拠点ごとに別コードで登録されている状態では、AIは「同じもの」と認識できない

  • 基幹システム刷新:標準化した業務とマスタを載せる器を更新する。レガシーのまま残すと、紙・Excel・個別改修にデータが分散し続ける

  • データ基盤整備:基幹・周辺システムのデータを分析・AI利用可能な形で集約し、品質・権限・更新頻度の基準を決める

  • AI実装:ここで初めて、RAG・需要予測・エージェントなどのAIが「正しいデータ」の上で動く

順序を逆にして「まずAIを」と始めた会社で起きるのは、決まって同じ症状だ。RAGが古い規程と新しい規程の両方を引いて矛盾した回答を返す。需要予測が拠点ごとに異なる品目コードを別商品として学習する。 その後始末として結局データ整備に戻るため、トータルの期間と費用はむしろ膨らむ。

加えて2026年は、SAP ECCの2027年保守期限や国産メインフレーム撤退(富士通メインフレーム2030年度終了参照)など、基幹刷新の外部期限が重なっている。「いずれやる刷新」を「AI前提の刷新」として前倒しで設計できるかが、競争差になる。

FREE DOWNLOAD

AI導入チェックリスト(PoC 失敗要因 10項目)

情シス部門が PoC 前に押さえるべき失敗要因を10項目に整理した無料チェックリスト。

自社診断:AI-Ready基幹刷新チェック5問

自社が「AIを入れられる状態」かを5問で確かめる。

  • 取引先・品目・組織のマスタは全社で一本化されているか?(拠点別・システム別に重複コードがあればNO)

  • 基幹システムの外(Excel・紙・個人フォルダ)で完結している基幹業務はないか?(受発注・在庫・原価のどれかが該当すればNO)

  • 「この数字の正本はどのシステムか」を即答できるか?(売上・在庫・原価それぞれで答えが割れるならNO)

  • 基幹刷新の計画に「データ移行・クレンジング」が工程として明記されているか?(「移行は現行どおり」ならNO)

  • 刷新の目的に、AI・データ活用が経営目標と紐づいて書かれているか?(コスト削減・保守期限のみならNO)

チェックの勘所:3問以上NOなら、AIのPoCを始める前に業務標準化とマスタ統一に投資した方が、AI投資の回収は確実に早い。逆に基幹刷新の計画が走っているのに4・5がNOなら、刷新を「AI前提」に設計し直す最後の機会である。

二次報道ベースの記事としての限界と使い方

本記事の積水化学に関する事実関係は、公開報道で確認できる範囲に限定している。したがって、同社の個別プロジェクトの詳細を断定するための記事ではなく、基幹刷新とAI-Readyデータ整備を結びつけて考えるための材料として読むべきである。

実務で使う場合は、自社の基幹刷新計画に置き換えて確認する。刷新目的が保守期限・コスト削減だけになっていないか。マスタ統一やデータ品質基準が工程化されているか。AIユースケースが要件定義に入っているか。この3点を確認すれば、記事の示唆を自社の投資判断に変換できる。

よくある質問(FAQ)

Q. 基幹刷新が終わるまでAIは何もできないのか? A. そうではない。議事録要約・文書検索など基幹データに依存しないユースケースは先行できる。重要なのは、基幹データを使うAI(需要予測・原価分析・RAGの社内規程検索など)を刷新前に本番化しようとしないことだ。並行する場合も、マスタ統一の方針だけは先に固めておくと手戻りがない。

Q. 中堅企業はS/4HANAのような大型ERPでなければAI-Readyにならないのか? A. ならない。重要なのは製品ではなく「業務標準化→マスタ統一→データ基準」の順序であり、中堅規模ならクラウドERP・国産パッケージでも同じ効果が得られる。むしろ身の丈に合わない大型ERP導入は標準化の失敗要因になる。自社規模に合う選択肢の見極めは外部の中立評価を使う価値がある。

Q. データ整備はどこまでやれば「AI-Ready」と言えるのか? A. 完璧を目指す必要はない。AIユースケースから逆算し、そのAIが参照するデータ領域に限って「正本の特定・コード統一・更新ルール・アクセス権限」の4点が決まっていれば実用に入れる。全社一括ではなく、ユースケース単位で広げるのが現実的だ。

Q. 刷新を任せているSIerが「AI対応」と言っているので任せておけばよいか? A. 鵜呑みは危険だ。「AI対応」の中身がツール接続の話なのか、マスタ統一・データ品質基準・権限設計まで含む話なのかで、刷新後にできることがまったく変わる。発注側として「刷新後にどのAIユースケースを動かすか」「そのために移行時に何を整備するか」を要件として明文化し、見積もりの工程に入っているかを確認すべきである。要件にない作業はやらないのが受託開発の原則だ。

自社の業務改善テーマに変換する確認観点

DX記事を読むときは、先進企業の事例をそのまま真似るのではなく、自社の業務制約に置き換える必要がある。確認すべきは、標準化できる業務、例外が多い業務、データが散在している業務、属人化している判断、紙・Excel・個人フォルダに残る工程である。

AIやデータ活用は、業務が標準化されていない状態では効果が出にくい。まず対象業務を1つ選び、入力、判断、承認、出力、記録の流れを書き出す。そのうえで、どこをシステム化し、どこをAIに補助させ、どこを人が判断するかを分ける。

GXOへ相談する前に整理しておくと早い情報

相談前には、改善したい業務、現在の所要時間、関係部署、使っているExcelやシステム、判断が属人化している箇所、月間件数、期待する効果をまとめる。数字が粗くても、現状の流れが分かれば改善余地を見積もれる。

90日で改善テーマを実装候補へ進めるロードマップ

最初の30日は、業務の見える化に使う。誰が、何を、どの順番で、どのシステムやExcelを使って処理しているかを書き出す。属人化した判断、二重入力、承認待ち、紙の転記、例外処理を分けて記録する。

31日目から60日目は、改善候補を絞る。AIで解くべきもの、システム化で解くべきもの、ルール変更で解くべきものを分ける。AI導入が目的化している場合は、まず業務標準化やデータ整備を先に行う方が効果が出ることも多い。

61日目から90日目は、小さな実装計画にする。対象範囲、必要データ、利用者、効果指標、概算費用、運用担当を決める。大きなDX構想よりも、1つの業務で効果を測れる計画に落とす方が、社内合意と次の投資につながりやすい。

よくある失敗パターン

第一の失敗は、現場の業務を見ずにツール導入から始めることだ。ツールは業務を置き換えるものではなく、整理された業務を支えるものである。現行業務が例外だらけのままでは、どのツールを入れても手作業が残る。

第二の失敗は、効果測定を後回しにすることだ。導入前の処理時間、件数、ミス、問い合わせ、残業を測っていなければ、導入後に成果を説明できない。DX投資は「便利になった」ではなく、数字で説明する必要がある。

第三の失敗は、現場教育を軽視することだ。新しい仕組みは、利用者が使い方と目的を理解して初めて定着する。現場が納得しないまま導入すると、Excelへの逆戻りや二重運用が起きる。

成果物として残すべきもの

改善テーマごとに、現行業務フロー、課題一覧、改善後フロー、効果指標、利用者教育計画、運用担当、改善後のレビュー日を残す。小さな改善でも、成果物として残すことで横展開しやすくなる。

いつGXOに相談すべきか

  • 基幹システムの刷新を検討しているが、AI活用まで見据えた要件・順序の設計 ができていない

  • AIのPoCが続くが本番化できず、原因がデータ側にあると疑っている

  • マスタ統一・データ基盤の整備を、刷新プロジェクトとどう並行させるか を決めかねている

GXOは、レガシーモダナイゼーションによる基幹刷新の計画・実行支援、データ基盤構築によるマスタ統一・データ整備、AIアセスメントによるユースケースからの逆算設計を一体で提供している。「AIの前提としての基幹刷新」は、順序設計を誤ると数年単位の手戻りになる。構想段階での相談が最も費用対効果が高い。→ 相談はこちら

関連記事

参考資料

本記事は2026年6月12日時点の公開情報をもとに作成。積水化学工業の取り組みに関する記述は日経クロステックの報道(二次情報)に基づくものであり、講演内容の詳細・最新状況は一次情報の最新版を必ず確認すること。

「AIを入れたいが、基幹のデータが汚い」——その順序、設計から見直しませんか

基幹刷新・マスタ統一・データ基盤・AI実装を一体の順序として設計します。現行システムとデータの棚卸しから、AI活用を前提にした刷新ロードマップの策定、ベンダー選定の中立評価まで伴走します。

AI前提の基幹刷新を無料相談する

※ 営業電話はしません | オンライン対応可 | 構想段階の壁打ちから対応します

GXO 経営IT判断レター

発注前の判断チェックを無料で受け取る

AI・DX・開発会社選びの失敗条件と、自社で使える診断・チェックリストを月2回まで配信します。営業電話はありません。

ISSUE HUB

古いシステムを刷新したいの全体像を見る

この課題に関係する記事をまとめて見渡し、論点の整理、着手の優先順位、取り得る解決策を順に確認できます。

課題別ハブを見る

CATEGORY CLUSTER

同じ課題で読む

大きなテーマから具体的なテーマへとたどると、課題の全体像から個別の解決策まで順に確認できます。

関連 HUB

この記事は以下の業種・悩み hub にも掲載されています。同じテーマの実務ナレッジと支援サービスをまとめてご覧いただけます。

SAVE

気になった記事を手元に

メール登録なしでこのページから記事を保存できます。あとからメールアドレスを登録すると、保存した記事のリストをまとめて受け取れます。

保存した記事はまだありません。気になる記事があれば、このボタンから残しておけます。

お気軽にご相談ください

AI・DXに関するご質問やお見積もりなど

無料相談する

CONTACT

まずは 無料相談 から始めませんか。

サービスについてのご相談・ご質問などお気軽にお問い合わせください。
※ 営業電話はしません | オンライン対応可 | 相談だけでもOK