結論から言う。富士通メインフレームを使い続ける企業にとって、基幹システムの刷新はもはや「いつかやる課題」ではなく「期限の決まった課題」になった。 富士通は2022年(日経xTECHが2月10日に報じ、富士通公式は2月14日に発表)、メインフレーム(GS21シリーズ)の販売を2030年度に終息し、保守サポートを2035年度末に終了すると公表した(製造・販売からの撤退として広く報じられている)。会計・人事給与・生産管理といった基幹業務をメインフレーム上のCOBOLで動かしている企業は、撤退・保守終了までに移行を完了させる必要がある。
本記事では、撤退スケジュールを正確に押さえたうえで、移行方式の比較、費用と体制、人材の手当てまでを、刷新の意思決定者向けに整理する。
この記事の要点
- 富士通メインフレームは製造・販売が2030年度、保守が2035年度末に終了(2022年2月公表)。
- UNIXサーバも販売終息が2029年度、保守終了が2034年度。
- 移行方式は大きく4つ(リホスト/リライト/リビルド/パッケージ・SaaS)。
- 期限が決まっている以上、判断を遅らせるほど選択肢と交渉力が減る。
富士通メインフレーム撤退の正確なスケジュール
富士通は、1964年発売の「FACOM 230シリーズ」に始まるメインフレーム事業から撤退する(1964年から2030年度の撤退完了まで約66年の歴史になる)。2022年2月に公表されたスケジュールは次のとおりだ。
| 対象 | 販売終息 | 保守サポートの終了 |
|---|---|---|
| メインフレーム(GS21) | 2030年度 | 2035年度末 |
| UNIXサーバ | 2029年度 | 2034年度 |
※富士通公式は「販売終息」と表現している。製造・販売からの撤退として報じられている(日経xTECH等)。
ポイントは、「製造・販売の終了」と「保守の終了」は別だということだ。製造・販売が終わっても保守期間中は使い続けられるが、保守が切れた後は、メーカーの通常保守・サポートを前提とした運用ができなくなる可能性が高い。2035年度末という保守終了は「最終的なリミット」であって、実務上はそれより前に移行を終えておく必要がある。
膨大なCOBOL資産(大規模なものでは1システムで数十万ステップを超える例もある)の移行には数年単位の期間がかかる。逆算すると、多くの企業にとって2026年は「もう動き出すべき」タイミングだ。これは経済産業省が警鐘を鳴らしてきた「2025年の崖」(レガシーシステムの放置による競争力低下・保守リスク)とも地続きの問題である。
なぜ移行は「容易ではない」のか
メインフレーム上のアプリケーションの多くはCOBOLで書かれ、長年の改修で複雑化・属人化している。移行が難しい主な理由は次の3つだ。
- ブラックボックス化:仕様書が古く、現行の挙動を正確に把握できる人材が退職・高齢化している。
- 規模の大きさ:基幹業務は会計・販売・生産・人事など広範で、相互に連携している。
- 止められない:基幹システムは事業の根幹であり、移行中も業務を止められない。
だからこそ、移行は「現行システムの棚卸し」から始める必要がある。何が・どこで・どう動いているかを可視化しないと、移行方式も費用も見積もれない。自社の現在地は基幹システム(ERP)刷新レディネス診断やIBM i/レガシー基盤のモダナイゼーション診断で測れる。
移行方式の比較:リホスト/リライト/リビルド/パッケージ
基幹システムの刷新には、大きく4つのアプローチがある。どれが最適かは、現行資産の状態・予算・期限・将来戦略によって変わる。
| 方式 | 概要 | 向くケース | 留意点 |
|---|---|---|---|
| リホスト(移送) | COBOL資産をできるだけ活かし、オープン環境へ載せ替える | 期限が近く、まず脱メインフレームを優先したい | 中身の複雑さは残り、根本的な刷新は後回しになる |
| リライト(書き換え) | COBOLをJava等へ書き換える | 言語を刷新しつつ業務ロジックは維持したい | 大規模だと工数・コストがかさむ |
| リビルド(再構築) | 業務を見直し、新規にスクラッチ開発する | 業務プロセスごと変革したい | 期間・費用・リスクが最も大きい |
| パッケージ/SaaS | ERPパッケージやクラウドサービスへ移行する | 標準業務に寄せられる、保守負担を減らしたい | 既存業務をパッケージに合わせる必要がある |
多くの企業は、全システムを一律ではなく、業務ごとに方式を使い分けるのが現実的だ。例えば、止められない基幹はまずリホストで脱メインフレームし、周辺はパッケージ/SaaSへ寄せる、といった組み合わせである。
移行方式や費用感の考え方はレガシーシステムのモダナイゼーション(2025年の崖以降)やIBM i/AS400モダナイゼーションのコストとロードマップで詳説している。基幹の選択肢としてSAPを検討する場合はSAP ERP 2027年問題とS/4HANA移行も併せて確認したい。
費用と体制、そして人材の壁
基幹システムの刷新は、規模・移行方式・現行資産の複雑さによって費用が大きく変わり、案件差が非常に大きい。一般的な相場として断定できる金額はなく、正確な見積もりは現行資産の棚卸しと要件定義を経て初めて出せる。まずは自社の前提に沿った概算から把握したい。おおよその開発費の目安は60秒でわかる開発費の概算(見積シミュレーション)で確認できる。
費用と並んで深刻なのが人材だ。COBOLや現行業務を理解する人材は高齢化・減少しており、一方で移行を担うIT人材も全国的に不足している。自社だけで移行要員を揃えるのは難しく、外部パートナーとの共同体制が現実的になる。委託先を見極める観点はシステム開発会社の選び方が参考になる。
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いつ動き出すべきか:逆算スケジュール
保守終了(2035年度末)から逆算すると、大規模な基幹刷新は決して余裕のあるスケジュールではない。
- 現状把握(数か月〜):現行システムの棚卸し・可視化、移行範囲の確定。
- 方式選定・計画(数か月):リホスト/リライト/リビルド/パッケージの選定、概算費用、体制設計。
- 要件定義・設計(半年〜):To-Be業務とシステム要件の確定。
- 開発・移行(1〜数年):データ移行、並行稼働、切り替え。
- 本番稼働・安定化:運用定着、現行システムの廃止。
規模の大きい企業ほど、計画から本番まで数年を要する。「保守終了はまだ先」と捉えるのではなく、逆算すると今が着手のタイミングだと考えたい。
よくある質問(FAQ)
Q1. 富士通メインフレームの保守はいつまで使える?
2022年2月の発表によれば、保守サポートの終了は2035年度末だ。製造・販売の終了(2030年度)とは別で、保守期間中は使い続けられる。ただし保守終了後は障害時のサポート保証がなくなるため、それより前の移行完了が望ましい。
Q2. とりあえずリホストで延命するのはあり?
期限が近く、まず脱メインフレームを優先したい場合の有力な選択肢だ。ただしリホストは業務ロジックの複雑さをそのまま持ち越すため、根本的な刷新は別途必要になる。将来戦略と合わせて、リホスト後の道筋まで描いておきたい。
Q3. COBOL人材がいなくても移行できる?
可能だが、現行業務とCOBOL資産を理解する工程は避けて通れない。社内に人材がいない場合は、現行解析からモダナイゼーションまでを担える外部パートナーと共同で進めるのが現実的だ。
Q4. 費用はどのくらいかかる?
現行資産の規模・複雑さと移行方式によって大きく変わり、案件差が非常に大きいため、一律の相場を示すのは難しい。まずは現状把握と、自社前提に沿った概算から始めたい。目安は見積シミュレーションで確認できる。
まとめ:期限が決まった今こそ、棚卸しから
富士通メインフレームの販売終息は2030年度、保守終了は2035年度末。期限が確定した以上、基幹システムの刷新は先送りできない。判断を遅らせるほど、選択肢も交渉力も減りやすい。まずは現行システムの棚卸しと移行方式の検討から動き出したい。
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参考情報
- 富士通株式会社 公式ニュース(2022年2月14日付)「メインフレーム/UNIXサーバの今後の方針」:https://info.archives.global.fujitsu/jp/news/2022/02/14-1.html (メインフレーム製造・販売は2030年度、保守は2035年度末に終了。UNIXサーバは製造・販売が2029年度、保守が2034年度に終了)
- 富士通株式会社 メインフレーム(GS21)公式情報「富士通からの3つのお約束」:https://www.fujitsu.com/jp/products/computing/servers/mainframe/gs21/topics/fujitsu-3promise.html
- 日経xTECH「富士通がメインフレーム製造・販売から2030年度に完全撤退へ、66年の歴史に幕」(2022年2月の発表を報道):https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06546/
- 経済産業省「DXレポート」(いわゆる「2025年の崖」に関する問題提起):https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html