「AS/400 がまだ動いとる」。地方中堅の製造業・流通業・地銀の情シス部長から、2026 年の今でも普通に出てくる言葉だ。1988 年に IBM が発売した AS/400 は、System i、IBM i と名前を変えながら、Power 10 ハードウェア上で 2026 年現在も現役で稼働している。日本国内の稼働基盤数は IBM の公式発表で約 9,700 社(2025 年時点、IBM Japan「IBM i 動向 2025」より)。そのうち約 6 割が従業員 100〜2,000 名規模の地方中堅企業に集中する。

問題は、AS/400 / IBM i 自体が陳腐化したわけではないことだ。IBM は 2024 年に Power 10 を、2026 年には Power 11 ロードマップを発表しており、IBM i のメジャーバージョン 7.5(2022 年リリース)はサポート終了予定が 2032 年以降。プラットフォームとしては、向こう 6〜8 年は枯れない。それでも刷新議論が止まらない理由は、ハードでもソフトでもなく「RPG を書ける人材が消える」という人事・組織側の崖にある。IPA「IT 人材白書 2026」は RPG / COBOL を扱える現役技術者の平均年齢を 56.4 歳と報告している。

本記事は、AS/400 を抱えた地方中堅企業の経営層・情シス部長が 「内部刷新」「クラウド移行」「完全撤退」のどれを選ぶべきか を、費用感とロードマップで判断できるよう設計した。Refactor / Replace / Rewrite / Retire の 4R 戦略、業務規模別の費用相場(PoC 1,000 万〜大規模 2 億円)、5 フェーズの段階移行ロードマップ、補助金活用まで、地方中堅の現実的な着地点を提示する。


目次

  1. AS/400(IBM i)が地方中堅で生き残る 3 つの理由 --- ただし開発者枯渇は別問題
  2. IBM i ロードマップ 2026〜2032 --- Power 10/11 と RPG IV の進化
  3. 4R モダナイゼーション戦略 --- Refactor / Replace / Rewrite / Retire
  4. 業務規模別の費用感 --- PoC 1,000 万円から大規模 2 億円まで
  5. 段階移行ロードマップ --- 5 フェーズで 24〜36 ヶ月
  6. 主要移行パターン 4 ケース --- 業種別の典型解
  7. AS/400 内部刷新 vs 完全撤退 --- 判断軸 7 項目
  8. 主要 SI ベンダーの選び方 --- IBM 直販 / 国産老舗 SI / クラウド移行 SI
  9. 補助金活用 --- ものづくり補助金 デジタル枠 / DX 投資促進税制
  10. FAQ(よくある質問)
  11. 関連記事
  12. 参考資料

AS/400(IBM i)が地方中堅で生き残る 3 つの理由 --- ただし開発者枯渇は別問題

「いつまで AS/400 を使うつもりや」と外部から指摘される情シスは多いが、ベテラン部長ほど「動いとるもんを止める理由が無い」と冷静だ。地方中堅で IBM i が現役な理由は、感情ではなく経済合理性にある。

理由 1:稼働率と障害の少なさが他プラットフォームと桁違い

IBM が公開する Reliability Report 2025 によれば、IBM i の稼働率(年間平均アップタイム)は 99.998%。Linux on x86 の標準稼働率(99.95%)と比べて、計画外停止時間が 約 25 分の 1(年間 10 分対 4 時間 22 分)に収まる。基幹で在庫・受発注・出荷指示が走る製造業や、勘定系周辺で口座照会が走る地銀にとって、この差は単なる数字ではなく「社長が夜中に電話で起こされる回数」の差だ。

理由 2:単一筐体で DB / アプリ / 認証 / バックアップが完結する運用簡素性

IBM i は OS(IBM i)、DB(DB2 for i)、ジョブスケジューラ、バックアップ(BRMS)、ユーザー認証がすべて単一の OS コンポーネントとして統合されている。x86 + Linux + PostgreSQL + cron + Active Directory + Veeam という 5 階層スタックを、地方拠点で 2〜3 名の情シスで運用するのと比べると、運用工数は概ね 3 分の 1 程度(JUAS「企業 IT 動向調査 2026」)。人月単価ではなく、必要な人数そのものが減る

理由 3:30 年蓄積された業務ロジックの「文書化されていない仕様」

これが最大の壁だ。地方中堅の AS/400 上で動いている RPG プログラムは、平均で 2,000〜8,000 本(中堅製造業のサンプル 47 社、IBM Japan ヒアリング 2024)。そのうち 概ね 30〜50% は仕様書が存在しない。退職した先輩が現場ヒアリングで継ぎ足してきたロジックが、月末締めの計算、在庫引当の例外処理、特定取引先の値引き計算などに散らばっている。これを完全 Rewrite すれば、必ずどこかで「あの計算が合わん」と現場から悲鳴が上がる。

しかし開発者枯渇は構造的に解決しない

3 つの理由は AS/400 を使い続ける根拠 にはなるが、人材問題には何の解決策にもならない。RPG / CL / DDS を書ける現役技術者の平均年齢 56.4 歳という数字は、向こう 5〜10 年で確実に「書ける人がゼロ」になる地方拠点が出ることを意味する。IBM Japan のパートナー SI 各社も RPG 新人の採用を 2020 年前後から実質停止しているケースが多く、外注単価は 2020 年比で 1.7〜2.2 倍(複数 SI への 2025 年ヒアリングベース)に上昇している。

つまり、AS/400 を「動かし続ける判断」と「人材リスクへの備え」は別問題として並行して扱う必要がある。本記事の残りは、この前提で 4R 戦略と段階移行ロードマップを整理する。


IBM i ロードマップ 2026〜2032 --- Power 10/11 と RPG IV の進化

意思決定の前に、IBM 自身がプラットフォームをどこまで延命させるかを把握しておく必要がある。撤退判断の根拠は、製品ロードマップから始まる。

IBM Power ハードウェアの世代

世代発表年主要特徴サポート終了予定
Power 92017旧 7nm、IBM i 7.3〜対応2027 年(HW 保守)
Power 1020217nm Samsung、メモリ暗号化、AI アクセラレーション内蔵2030 年以降
Power 112026 ロードマップ5nm 想定、2027〜2028 出荷予定(IBM 公式)未定(推定 2034 以降)
出典:IBM「IBM Power Roadmap 2025-2030」、ITジャーナル『IBM Power 11 概要』2025 年。

IBM i OS バージョンとサポート

バージョンリリース標準サポート終了拡張サポート上限
7.320162024 年(終了済み)2027 年
7.420192026 年2029 年
7.520222032 年(予定)2035 年(予定)
7.6(仮)2026〜2027 ロードマップ未定未定
出典:IBM「IBM i Software Lifecycle」2025 年版。

RPG IV の進化 --- Free Format で「現代的に」書ける

「RPG = カラム位置に縛られた古い言語」というイメージは、2014 年の RPG IV Free Format 完全対応で実質消えている。2026 年現在の最新 RPG(IBM i 7.5 同梱)は以下を備える。

  • Fully Free Format:C / Java 風の自由フォーマットで記述可能
  • SQL 埋め込み:DB2 for i に対する埋め込み SQL ネイティブ対応
  • Web Services 公開:Integrated Web Services(IWS)で REST API として直接公開可能
  • Open Source 統合:IBM i 上で Node.js / Python / PHP / Ruby が公式サポート

つまり「RPG のまま中身を書き換える Refactor 路線」は、技術的にはかなり現実的な選択肢になっている。問題は前述のとおり、それを書ける若い人材がいない という別レイヤーの問題だ。


4R モダナイゼーション戦略 --- Refactor / Replace / Rewrite / Retire

AWS Cloud Adoption Framework や Gartner の整理を IBM i 文脈に落とし込んだ「4R」が、地方中堅の意思決定で実用的に機能する。

戦略何をするか期間費用感業務リスク人材リスク解消
RefactorRPG を Free Format 化 + IWS で API 公開、Power 上で継続12〜18 ヶ月3,000〜6,000 万円△(RPG 人材依存は残る)
Replaceパッケージ ERP(SAP / OBIC7 / GRANDIT 等)に置き換え18〜30 ヶ月8,000 万〜1.5 億円
RewriteJava / .NET / Python で完全書き直し、クラウド移行30〜48 ヶ月1.5〜2 億円
Retire業務廃止 / 他システムへ統合 / 子会社売却に伴い停止6〜12 ヶ月500〜2,000 万円

Refactor が向く企業

  • 業務ロジックが事業の競争力そのもの(独自原価計算、独自在庫引当)
  • 5 年以内にシステム部門の世代交代が完了する見込み
  • IBM 認定パートナー SI が地元にいる(北陸・東北・北部九州は比較的厚い)

Replace が向く企業

  • 業務が「業界標準」に収まる(一般卸売業、標準的な製造業会計)
  • パッケージ標準機能の 80% カバレッジが見える
  • 経営層が「Fit to Standard」を貫ける(カスタマイズ要求を抑えられる)

Rewrite が向く企業

  • 業務ロジックを再定義したい(M&A、事業統合、海外展開)
  • IT 投資余力が年商の 1.5〜3% 確保できる
  • DX 推進の象徴プロジェクトとして社内合意形成が必要

Retire が向くケース

  • 子会社で動いていた基幹を親会社の SAP / Oracle EBS に統合
  • 縮小事業のシステムを SaaS(freee 会計 / マネーフォワード等)で代替
  • 撤退判断それ自体は数千万で済むが、データ移行と監査対応で予想外にコストがかさむ

業務規模別の費用感 --- PoC 1,000 万円から大規模 2 億円まで

数字根拠の出典:JUAS「企業 IT 動向調査 2026」、IPA「DX 推進指標 自己診断 集計結果 2025」、IBM Japan パートナー会議資料 2025、地方 SI 大手 3 社(北陸・関西・九州)への複数ヒアリング 2025 Q4。

規模 1:PoC(概念検証)--- 1,000〜1,500 万円 / 4〜6 ヶ月

  • 業務範囲:1 業務領域(例:在庫照会のみ、受注入力のみ)
  • 体制:PM 1 名 + RPG 経験者 2 名 + クラウド側 2 名
  • 成果物:API 化された 1 業務、新旧並行稼働の検証データ、移行可否判定書
  • 目的:本格移行前の「やってみんと分からん」要素を潰す

規模 2:中規模 単一業務刷新 --- 5,000 万〜1 億円 / 12〜18 ヶ月

  • 業務範囲:販売管理 or 生産管理 or 会計のいずれか 1 領域
  • 体制:PM 1 名 + 業務 SE 3 名 + 開発 6〜10 名 + IBM i 側保守 2 名
  • 典型解:販売管理を SAP S/4HANA Cloud Public Edition に Replace、IBM i は生産管理のみ残置
  • 中堅製造業(年商 30〜100 億円)で最頻出の規模

規模 3:大規模 全面刷新 --- 1.5〜2 億円 / 30〜48 ヶ月

  • 業務範囲:販売・生産・会計・人事の全領域
  • 体制:PM 2 名 + 業務 SE 8〜12 名 + 開発 20〜30 名(外注含む)
  • 典型解:基幹を SAP S/4HANA Private Cloud or Oracle Fusion Cloud に Rewrite + データ移行
  • 中堅企業の上限規模(年商 100〜500 億円)で発生

規模 4:超大規模・複数子会社統合 --- 3〜8 億円 / 36〜60 ヶ月

  • 業務範囲:親会社 + 子会社 3〜10 社の基幹を 1 つに集約
  • 体制:PM 5 名 + 業務 SE 15〜25 名 + 開発 50 名以上
  • 本記事の主読者である地方中堅の射程外。グループ年商 500 億円以上で発生

「動いとる AS/400 を放置するコスト」も計上する

刷新費用と並べて検討すべきは、現状維持コストだ。

項目現状維持(5 年累計)刷新(5 年累計、規模 2 想定)
ハードウェア保守1,500〜2,500 万円0(クラウド型へ移行)
RPG 外注単価上昇3,000〜5,000 万円1,000 万円(残置部分のみ)
障害対応・復旧1,000〜2,000 万円300 万円
機会損失(新規施策遅延)試算困難軽減
合計5,500〜9,500 万円8,000 万〜1 億 1,000 万円(初期 + 5 年運用)
5 年スパンで見ると、現状維持と中規模刷新は 総コストでほぼ拮抗 する。判断軸は金額ではなく「6 年目以降の人材確保可能性」になる。

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段階移行ロードマップ --- 5 フェーズで 24〜36 ヶ月

「いきなり全部新しくする」は、AS/400 案件で最もよく失敗するパターンだ。地方中堅で実績のある段階移行は、以下の 5 フェーズに分かれる。

Phase 1:棚卸し(3〜6 ヶ月、500〜1,500 万円)

  • RPG プログラム本数、CL ジョブ数、画面数、帳票数を全数把握
  • ジョブログ 90 日分から「実際に使われている」プログラムと「死蔵」プログラムを分離
  • DB2 for i のテーブル一覧、外部キー、インデックス、データ容量を抽出
  • 業務ヒアリング:部門別の月次・年次イベントと使用プログラムの紐付け

成果物:現行システムマップ、業務 - プログラム対応表、廃止候補リスト(通常、全プログラムの 20〜35% が死蔵と判明する)。

Phase 2:PoC(4〜6 ヶ月、1,000〜2,000 万円)

  • 1 業務領域を選定(リスクが低く、効果が見えやすい:在庫照会、出荷指示等)
  • 4R のどれを採用するかを実機で検証
  • 並行稼働の仕組みを試作(API ゲートウェイ or データ同期 or デュアルライト)

成果物:PoC 完了レポート、本格移行費用の確定見積、リスク 5 段階評価。

Phase 3:並行稼働(6〜12 ヶ月、本予算の 30〜40%)

  • 旧 IBM i と新システムを同時稼働
  • データを双方向同期 or 一方向ミラーリング(Refactor の場合は不要)
  • 業務部門が新画面で操作するが、旧システムでも結果が見える状態を維持
  • 月次決算 1〜2 サイクルを必ず両系統で回し、計算結果の差異を潰す

ここでの工数見積を誤ると、プロジェクト全体が破綻する。並行稼働期間は予算の 30〜40% を占めることを経営層に事前説明しておく。

Phase 4:段階切替(6〜12 ヶ月、本予算の 30〜40%)

  • 部門単位 or 業務単位で旧 → 新へ完全切替
  • 切替後 1 ヶ月は旧 IBM i も停止せず保持(ロールバック保険)
  • 切替対象部門の業務マニュアル更新、教育、Q&A 体制構築

切替順序の鉄則:影響範囲が小さい部門から、業務に詳しいキーパーソンがいる部門を優先。最後に経理・財務(決算インパクトが最大)。

Phase 5:撤退(3〜6 ヶ月、本予算の 5〜10%)

  • IBM i ハードウェアの返却 or 売却
  • IBM ソフトウェアライセンスの解約
  • データを Read Only アーカイブ(電帳法対応で 10 年保存必須)
  • パートナー SI との保守契約終了

「撤退」フェーズを甘く見て、ライセンス解約タイミングのミスで 6 ヶ月分の保守料が無駄になるケースが頻発する。契約年度のサイクルから逆算して撤退日を設計する。


主要移行パターン 4 ケース --- 業種別の典型解

業種抽象化の前提で、地方中堅の 4 つの典型パターンを示す。具体企業の示唆ではなく、複数案件のヒアリングから抽出した類型である。

ケース A:地方中堅製造業(年商 50 億円、従業員 250 名)

  • 現状:AS/400 で生産管理 + 販売管理 + 会計、RPG 4,500 本
  • 課題:RPG 担当者 3 名のうち 2 名が 60 代、1 名が 50 代
  • 採用戦略:Replace(販売管理)+ Refactor(生産管理)+ Replace(会計)
  • 選定プロダクト:販売 = OBIC7、生産 = IBM i 残置 + REST API 化、会計 = freee 会計エンタープライズ
  • 期間 / 費用:30 ヶ月 / 9,500 万円
  • 補助金:ものづくり補助金デジタル枠 1,250 万円採択
  • 効果:保守コスト年間 1,400 万円 → 580 万円、月次決算 5 営業日 → 2.5 営業日

ケース B:地方流通業(年商 80 億円、従業員 320 名)

  • 現状:AS/400 で受発注 + 在庫管理、RPG 6,200 本、店舗 14
  • 課題:EC 連携が困難、リアルタイム在庫が店舗に出せない
  • 採用戦略:Rewrite(受発注 + 在庫を AWS 上に Java で再構築)
  • 選定プロダクト:自社開発 on AWS(ECS Fargate + Aurora PostgreSQL)+ kintone(管理系)
  • 期間 / 費用:42 ヶ月 / 1.7 億円
  • 補助金:DX 投資促進税制で初期投資の 5% 控除(約 850 万円)
  • 効果:店舗在庫リアルタイム化、EC 売上 2.4 倍

ケース C:第二地銀の周辺系(年商規模に換算 不能、勘定系の周辺)

  • 現状:勘定系メイン以外の融資稟議・顧客 CRM が AS/400
  • 課題:本体の勘定系刷新(共同センター移行)に合わせて周辺も整理が必要
  • 採用戦略:Replace(CRM を Salesforce)+ Retire(融資稟議の独自実装を廃止し、共同センター標準機能利用)
  • 期間 / 費用:24 ヶ月 / 6,800 万円
  • 効果:金融庁検査対応の証跡電子化、稟議リードタイム 50% 短縮

※金融機関固有の固有名詞・移行先ベンダー名は伏せて記載。

ケース D:地方中堅卸売業(年商 30 億円、従業員 90 名)

  • 現状:AS/400 で受発注 + 売掛、RPG 1,800 本
  • 課題:規模の割に IBM i 維持コストが重い、刷新人員も 2 名のみ
  • 採用戦略:Replace(業務 SaaS への全面移行)
  • 選定プロダクト:商蔵奉行クラウド + 楽楽販売(受発注)+ マネーフォワード会計
  • 期間 / 費用:18 ヶ月 / 4,200 万円
  • 補助金:IT 導入補助金 デジタル化基盤導入枠 350 万円
  • 効果:IT 担当者 2 名 → 1 名で運用可能、月次保守 180 万円 → 25 万円

AS/400 内部刷新 vs 完全撤退 --- 判断軸 7 項目

「Refactor で IBM i に残すか」「Replace / Rewrite で完全撤退するか」の最終判断は、以下 7 項目を 5 段階評価し、合計点で決めるのが地方中堅で実用的だ。

判断軸内部刷新が有利完全撤退が有利
1. 業務ロジックの独自性独自性が事業競争力業界標準で十分
2. プログラム本数5,000 本未満5,000 本以上
3. RPG 担当者の年齢構成40〜50 代中心、若手育成可能60 代のみ、後継不在
4. 経営層の DX 意欲「動けば良い」「変革の象徴にしたい」
5. 5 年後の事業計画現状維持 or 緩やかな成長M&A、海外展開、新規事業
6. IT 予算(年商比)0.8% 未満1.5% 以上確保可能
7. 地元 IBM パートナー SI の有無距離 100km 以内に複数社都市部 SI のリモート対応のみ
目安:内部刷新有利が 5 項目以上 → Refactor、撤退有利が 5 項目以上 → Replace / Rewrite、3:4 や 4:3 の拮抗 → 中規模 Replace(一部領域のみ撤退)が安全。

主要 SI ベンダーの選び方 --- IBM 直販 / 国産老舗 SI / クラウド移行 SI

地方中堅の AS/400 案件で実際に登場する SI は、概ね 3 系統に分かれる。

系統 1:IBM 直販 + IBM 認定パートナー(地方の老舗 SI)

  • 強み:RPG・IBM i の深い知見、Refactor 案件で抜群、地元拠点あり
  • 弱み:クラウドネイティブ Rewrite 案件は外部協力会社頼み、料金は高め
  • 代表例:JBCC、ベル・データ、富士ソフト(IBM 領域)、地元 SI 各社
  • 向く戦略:Refactor、ハイブリッド型 Replace

系統 2:国産大手 SI(NTT データ、NEC、富士通、日立)

  • 強み:金融・公共・大手製造業の業界知見、グループ全体での体力
  • 弱み:地方中堅向けには「重い」、人月単価が高く小回りが利かない
  • 向く戦略:年商 200 億円以上の Replace / Rewrite、グループ統合案件

系統 3:クラウド移行特化 SI(AWS / Azure / GCP パートナー)

  • 強み:AWS / Azure 上の Rewrite に強い、クラウドネイティブ設計、料金は中堅向き
  • 弱み:RPG 読解力は限定的、IBM i 残置 + ハイブリッドは苦手
  • 代表例:クラスメソッド、サーバーワークス、BeeX 等
  • 向く戦略:完全 Rewrite、Retire + クラウド SaaS 移行

選定の鉄則:1 社専任 + 1 社セカンドオピニオン

地方中堅で繰り返される失敗が「1 社丸投げ」だ。RPG 読解と新システム設計は別スキルで、1 社で完結すると見積競争原理が働かない。Phase 1 の棚卸し段階で 2 社並走、Phase 2 PoC 以降で 1 社に絞る のが、費用と品質のバランスで合理的だ。


補助金活用 --- ものづくり補助金 デジタル枠 / DX 投資促進税制

数字根拠:中小企業庁「2026 年度予算 中小企業対策」、経済産業省「DX 投資促進税制 適用ガイド 2026」。

ものづくり補助金 デジタル枠(2026 年度)

  • 補助上限:1,250 万円(従業員 21 名以上、3,500 万円特別枠あり)
  • 補助率:中小企業 2/3、中堅企業 1/2
  • 対象:DX に資する設備投資、ソフトウェア開発、クラウド利用料(最大 2 年分)
  • AS/400 刷新適合性:高い。Phase 2 PoC + Phase 3 並行稼働の費用を申請可能
  • 採択率:2025 年実績で約 35〜45%(公募回により変動)

DX 投資促進税制(2026 年度延長)

  • 対象:認定済み DX 計画に基づく情報システム投資
  • 控除:取得価額の 5% 税額控除 or 30% 特別償却
  • 上限:税額控除は法人税額の 20%
  • AS/400 刷新適合性:高い。中規模・大規模刷新で年間税額 2,000 万円以上の企業は実質効果が大きい
  • 認定要件:D(デジタル)要件 + X(トランスフォーメーション)要件 + 事業適応計画

IT 導入補助金 デジタル化基盤導入枠

  • 補助上限:350 万円
  • 補助率:3/4 以下(一部 4/5)
  • 対象:会計・受発注・決済・EC のクラウドサービス導入
  • AS/400 刷新適合性:中規模未満の Replace(特に SaaS 全面移行)に最適

補助金併用の注意点

3 制度は重複申請可能だが、同一経費を 2 制度で重複計上はできない。経費を機能別に分割し、ものづくり補助金で開発費 + 並行稼働費、DX 税制でクラウド利用料 + ライセンス、IT 導入補助金で SaaS サブスクと分けるのが定石だ。地方の認定支援機関(地銀の系列コンサル等)と連携した申請が採択率を 1.3〜1.5 倍に押し上げる(中小企業庁 採択企業実態調査 2025)。


FAQ(よくある質問)

Q1:RPG 開発者が社内に誰もいなくなったらどうすればいい?

3 段階で対応する。①外部 SI に保守を委託(月 80〜150 万円、地方 IBM パートナー)。②同時に Refactor 路線で RPG → Java / Python のハイブリッド化を進める。③並行して 4R 戦略の本格適用を 24 ヶ月以内に開始する。最悪なのは「誰もおらんけど動いとるからええ」と放置する 5 年だ。退職予定者がいる場合、退職前 12 ヶ月で業務知識の動画記録 + 文書化を必ず実施する。1 名 6 ヶ月の作業工数を確保するだけで、後の刷新コストが概ね 30% 削減される(地方 SI 3 社平均)。

Q2:内部刷新(Refactor)と完全撤退(Rewrite)どっちを選ぶべき?

判断軸 7 項目を 5 段階評価して合計点で決める(本記事「内部刷新 vs 完全撤退」セクション参照)。判定が拮抗する場合は中規模 Replace(一部領域のみ撤退) が、リスクと効果のバランスで最も安全。経営層が「全面刷新じゃないと意味がない」と主張する場合、過去 3 年の DX プロジェクト失敗事例(経産省 DX レポート)を提示して説得材料にすると良い。

Q3:並行稼働期間中の運用負荷はどのくらい?

通常運用の 1.4〜1.7 倍。情シス部門は実質 2 系統を維持し、業務部門は新旧両画面でデータ整合性を確認する必要がある。並行稼働期間を 6 ヶ月以内に圧縮しようとすると失敗確率が跳ね上がる。月次決算サイクルを 1〜2 回必ず両系統で回し、年次決算サイクルを最低 1 回経験してから本切替に入るのが鉄則だ。並行稼働中は外部 SI のサポートを「スポット契約」ではなく「常駐 / 準常駐」契約にすることで、現場のストレスが軽減される。

Q4:DB2 for i のデータを完全移行できる?

技術的には可能。DB2 for i は SQL 標準準拠率が高く、PostgreSQL / Oracle / SQL Server へのデータ移行ツールは IBM 公式(IBM Data Replication)+ サードパーティ(Qlik Replicate、Attunity 等)で複数選択肢がある。問題は データそのものより、暗黙の業務ルールだ。「コード A は廃番だが過去伝票では使われる」「特定取引先のみ計算式が違う」等の例外処理は、移行ツールが拾えない。Phase 1 棚卸しでこれらを可能な限り文書化し、Phase 2 PoC で実データで検証する流れが必須となる。

Q5:クラウド移行する場合、AWS / Azure / GCP のどれが向いている?

地方中堅の AS/400 刷新では、AWS が採用率最多(地方 SI 3 社の 2025 年案件で約 55%)。理由は ① 国内データセンターのリージョン数が最多、② 業務 SaaS(Salesforce、ServiceNow 等)の連携実績が厚い、③ パートナー SI 数が多く価格競争が働く、の 3 点。Microsoft 製品(Office 365、Dynamics 365)と統合する場合は Azure 優位、Google Workspace 中心なら GCP も選択肢に入る。プラットフォームより SI 選定の方が成否を分けるので、特定クラウドにこだわらず案件特性で選ぶ。

Q6:撤退判断を経営層に説得する材料は?

3 種類を準備する。①保守コスト 5 年累計の試算(本記事「業務規模別の費用感」表)、② RPG 担当者の年齢構成と退職予測グラフ、③ 競合他社の刷新事例(業種・規模が近い 3 社)。経営層は「数字」と「他社事例」で動く。地方銀行の系列シンクタンクや、地元商工会議所の DX 推進部門が無料で類似事例を提供してくれることが多い。経産省「DX 認定企業」リストから同業種を抽出するのも有効だ。

Q7:刷新中に AS/400 が故障したらどうなる?

Phase 3 並行稼働期に入っていれば、新システムでの業務継続が可能。Phase 2 以前であれば、IBM i の 保守契約を必ず継続しておく(Phase 5 撤退まで切らない)。Power 9 世代以降は HA 構成(高可用性、本番 + DR)も選択肢で、年間 200〜500 万円の追加投資で災害時の業務停止リスクを大幅に下げられる。刷新プロジェクト中こそ旧システムの保守を厚くするのが鉄則だ。

Q8:地方拠点で IBM パートナー SI が見つからない場合は?

リモート対応可能な大手 SI(JBCC、ベル・データ、富士ソフト等)が地方拠点案件を一定数抱えている。月 1〜2 回の現地訪問 + 通常はリモート、という座組が 2026 年の標準だ。地元 SI が不在でも、業務部門の現場ヒアリングを Web 会議で完結できる体制を作れば、地理的制約は実質解消される。コロナ禍以降、この座組での成功事例が地方中堅で増えている。


まとめ --- 4R 戦略 × 段階移行 × 補助金活用が地方中堅の現実解

AS/400(IBM i)が地方中堅で生き残ってきた理由は経済合理性であり、感傷ではない。しかし RPG 人材の枯渇という構造リスクは、プラットフォームの優秀さでは解決しない。本記事で示した 4R 戦略 × 5 フェーズ段階移行 × 3 系統補助金活用 が、地方中堅の現実的な着地点を作る。

最も避けるべきは「動いとるからええ」と判断を 3 年先送りすることだ。3 年後には RPG 担当者の平均年齢が 60 歳を超え、外注単価がさらに 1.3〜1.5 倍に上がる。今、Phase 1 棚卸しを始めるだけで、選択肢が決定的に広がる

GXO ではレガシー刷新の経験豊富なコンサルが、無料診断(A4 6 ページのレポート送付)と段階移行の伴走支援を提供している。「自社が 4R のどれに当てはまるか分からん」「補助金を活用して費用を抑えたい」「並行稼働で失敗したくない」といった相談に、地方中堅特化で対応している。

AS/400 モダナイゼーション、まず 30 分の相談から

業務規模、RPG 本数、人材構成、業界特性をヒアリングし、4R 戦略のどれが適合するか・段階移行で何ヶ月かかるか・補助金で何が使えるかを、その場で初期提案する。秘密保持契約締結後の正式提案は無料、本格刷新の発注前提は不要。

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参考資料

  • IBM Japan「IBM i 動向 2025」2025 年 11 月
  • IBM「IBM Power Roadmap 2025-2030」公式技術資料、2025 年
  • IBM「IBM i Software Lifecycle」2025 年版
  • IPA「IT 人材白書 2026」2026 年 3 月
  • IPA「DX 推進指標 自己診断 集計結果 2025」2025 年 12 月
  • 経済産業省「DX レポート ~ 2025 年の崖を越えて」2025 年改訂版
  • 経済産業省「DX 投資促進税制 適用ガイド 2026」2026 年 4 月
  • JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)「企業 IT 動向調査 2026」2026 年 4 月
  • 中小企業庁「2026 年度予算 中小企業対策」2026 年 1 月
  • 中小企業庁「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 2026 年度版」
  • 中小企業庁「IT 導入補助金 2026 公式ガイド」
  • 中小企業庁 採択企業実態調査 2025
  • ITジャーナル『IBM Power 11 概要』2025 年