結論:市場は前年比113.6%で拡大中。「まだ検討中」の企業ほど、選べる選択肢が減っていく
デロイト トーマツ ミック経済研究所が2025年9月12日に発刊した調査資料「レガシー&オープンレガシーマイグレーション・モダナイゼーション市場動向 2025年度版」によれば、メインフレーム・COBOL資産の移行を対象とするレガシーマイグレーション市場は2024年度の4,504億円から2025年度は5,118億円(前年比113.6%)に拡大し、2029年度には2024年度比約1.7倍の7,540億円に達すると予測されています。
この数字が示すのは、単なる市場の拡大ではなく、レガシー刷新に着手する企業が同時多発的に増えているという事実です。富士通メインフレーム(GS21シリーズ)は2022年2月の公式発表どおり、2030年度に製造・販売を終了し、2035年度末に保守も終了します。撤退期限まで残り約4年半。この期限に向けて動き出した企業の需要が、市場データという形で数字に表れ始めています。
「まだうちは大丈夫」と検討を先送りしている間に起きるのは、システムが壊れることではなく、移行を請け負えるベンダー・技術者の争奪戦が先に始まり、着手が遅れた企業ほど選べる会社・進め方の選択肢が狭まっていくことです。本記事では市場データを正確に読み解き、自社がどの段階にいるべきかを確認するチェックリストを示します。
この記事の要点
- レガシーマイグレーション市場は2024年度4,504億円→2025年度5,118億円(前年比113.6%)、2029年度は2024年度比約1.7倍の7,540億円と予測(デロイト トーマツ ミック経済研究所、2025年9月12日発刊)
- レガシー&オープンレガシー市場全体は2025年度1兆5,737億円(前年比112.9%)
- 富士通メインフレームは2030年度に製造・販売終了、2035年度末に保守終了(2022年2月公式発表)
FREE CONSULTATION
この記事の内容について、専門家に相談できます
AI・DX・セキュリティに関するご質問やお見積もりなど、お気軽にお問い合わせください。
何が発表されたのか:市場規模の推移を正確に押さえる
まず、出典の数字をそのまま整理します。
| 区分 | 数値 | 前年比・倍率 |
|---|---|---|
| レガシーマイグレーション市場 2024年度実績 | 4,504億円 | 前年比129.4% |
| レガシーマイグレーション市場 2025年度予測 | 5,118億円 | 前年比113.6% |
| レガシーマイグレーション市場 2029年度予測 | 7,540億円 | 2024年度比 約1.7倍 |
| レガシー&オープンレガシー市場 全体 2025年度 | 1兆5,737億円 | 前年比112.9% |
出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「レガシー&オープンレガシーマイグレーション・モダナイゼーション市場動向 2025年度版【第10版目】」(発刊日:2025年9月12日)
ここで区別したいのは、「レガシーマイグレーション市場」と「レガシー&オープンレガシー市場全体」は別の数字だという点です。同調査ではメインフレーム等のホスト環境からの移行を「レガシーマイグレーション」、UNIX・VB・Java・ERP・CRM・Notes等の旧世代オープン系からの移行を「オープンレガシーマイグレーション」として区分し、両者を合わせた全体市場が2025年度1兆5,737億円(前年比112.9%)です。メインフレーム/COBOL資産に絞った市場(5,118億円)は全体の約3分の1にあたります。
同調査は成長の要因として、「保守料金高騰やホスト撤退を機に中堅ユーザーはリホスト、大手はリビルド需要が急増」していること、「モダナイゼーション売上の成長が国内トップSIer各社のDX事業をけん引」していること、そして「生成AIの活用による効率化も検証が進む」ことを挙げています。
独自の示唆:113.6%という成長率は「全体を上回るペース」で動いている
出典の数字から、当社なりの読み方を一つ提示します。レガシーマイグレーション単体の前年比113.6%は、レガシー&オープンレガシー市場全体の前年比112.9%をわずかに上回ります。構成比では全体の約3分の1にとどまるメインフレーム対象の移行が、成長ペースでは全体をリードしている計算です。
さらに2025年度(5,118億円)から2029年度(7,540億円)への伸びを単純計算すると、4年間で約1.47倍、年平均成長率(CAGR)にしておよそ10%です。市場が毎年1割前後で拡大し続けるということは、移行を請け負える人材・体制の需要も同じペースで増え続けるということでもあります。IT人材の供給が急に増えるわけではない以上、着手が遅い企業ほど、限られたベンダー・技術者を「早く動いた企業」と取り合う立場に回ります。市場拡大は追い風であると同時に、着手タイミング自体が競争条件になっていることを示すデータです。
背景:富士通メインフレーム2030年度撤退という動かせない期限
この成長の背景には、国産メインフレームベンダーが相次いで示す撤退期限があります。富士通は2022年2月、メインフレーム(GS21シリーズ)の製造・販売を2030年度に終了し、保守を2035年度末に終了すると公式発表しました。終了までの約5年間は猶予に見えますが、基幹移行は要件定義から本番稼働まで数年単位を要するため、実務上の意思決定期限は保守終了日よりはるかに手前にあります。
撤退スケジュールの詳細と移行方式の比較は富士通メインフレーム撤退と基幹システム刷新2026、生成AIによる自動変換を過信した移行が失敗する構造はGartnerによるメインフレーム離脱失敗予測の分析を参照してください。
自社のEOLリスクを今すぐ確認するチェックリスト
市場データや撤退期限の話を「他社の話」で終わらせないために、自社の状況をこの場で確認してください。
- 基幹システムが稼働するメインフレーム・オフコンのベンダーと機種を正確に把握しているか
- そのベンダーの製造・販売終了時期、保守終了時期を公式発表ベースで確認しているか
- 保守終了日から逆算し、要件定義・移行・本番稼働までのスケジュールを引いたことがあるか(基幹移行は複数年単位が前提)
- COBOL等の業務ロジックを理解する人材が、今後何年現場に残るか把握しているか
- リホスト(そのまま載せ替え)・リビルド(作り直し)・リプレース(パッケージ移行)のどれが自社に適するか比較検討したことがあるか
- 移行を依頼できるベンダー候補を複数持っているか、1社依存になっていないか
- 保守料金が既に上昇傾向、または値上げ通知を受けているか
- 経営層に「いつまでに何を決めるべきか」を期限から逆算して説明できているか
1つでも「把握していない」に該当するなら、着手が遅れている可能性があります。市場全体が前年比113.6%で動くタイミングでの先送りは、待つほど選べる選択肢が狭まることを意味します。
この記事は誰が読むべきか
- メインフレーム・COBOL資産を抱える中堅企業の経営者、システム部門長、情報システム責任者
- 基幹システムの刷新を「いつかの課題」として先送りしてきた発注担当者
- 保守ベンダーから値上げ通知や撤退の示唆を受け、対応を検討し始めた企業
- 経営会議で「なぜ今、レガシー刷新を検討すべきか」を数字で説明する必要がある担当者
いつGXOに相談すべきか
次のいずれかに当てはまる段階であれば、早めに外部の知見を入れる価値があります。
- メインフレーム・COBOL資産の保守終了時期は把握しているが、移行方式や体制がまだ決まっていない
- 基幹システムの刷新を検討し始めたが、リホスト・リビルド・リプレースのどれが自社に合うか判断がつかない
- クラウド移行を含めた刷新の全体像を、費用感とスケジュールの両面で整理したい
- 経営層への説明に使える「なぜ今動くべきか」の根拠(市場データ・期限)を整理したい
GXOでは、現行システムの棚卸しから移行方式の比較、要件定義までを伴走するレガシーシステム刷新を提供しています。刷新をクラウド移行まで含めた全体構想として進めたい場合はDX・システム開発の相談窓口、移行後の基盤をクラウド上でどう構築するか詰めたい段階ならクラウド移行支援が次のステップです。
市場が動き出しているタイミングだからこそ、着手の順番を間違えないことが重要です。自社の状況を整理したい方は、レガシーシステム刷新からお問い合わせください。
FAQ
Q. この市場調査のデータはいつ発表されたものですか。古い情報ではありませんか。 A. 発刊日は2025年9月12日、対象は「2025年度版」の市場予測(2029年度までの見通しを含む)です。約10か月前のデータですが、本記事が扱う富士通メインフレームの撤退期限(2030年度・2035年度末)自体は動いていない事実で、着手を急ぐべき理由としての現在性は薄れていません。
Q. レガシーマイグレーション市場とオープンレガシーマイグレーション市場は何が違いますか。 A. レガシーマイグレーションはメインフレーム等のホスト環境からの移行、オープンレガシーマイグレーションはUNIX・VB・Java・ERP・CRM・Notesといった旧世代オープン系からの移行を指します。両者を合わせた全体市場が2025年度1兆5,737億円(前年比112.9%)、うちメインフレーム対象が5,118億円です。
Q. 自社にメインフレームがなければ関係ありませんか。 A. 自社にホストがなくても、取引先や親会社の基幹システムがメインフレームで動いていれば、EDIやデータ連携の仕様変更という形で余波を受ける可能性があります。まずは主要取引先の基幹システムがどの環境で動いているか確認することをお勧めします。
Q. 何から着手すればよいですか。 A. まず自社の基幹システムの棚卸し(ベンダー・機種・保守終了時期・業務ロジックの把握度)から始めてください。そのうえで、リホスト・リビルド・リプレースのどれが自社の予算・体制・スケジュールに合うかを比較検討する段階に進みます。






