「内製したいが人がいない。かといって外注は丸投げで失敗した」——この手詰まりを抜ける現実的な選択肢の一つが、第3の道だ。 それが、外部パートナーと一緒に開発しながら社内に力を残していく伴走・共同開発である。

IT人材不足は年々深刻化している。経済産業省が2016年に公表した推計(高位シナリオ)では、2030年にIT人材が最大で約79万人不足するとされ、IPA「DX動向2024」では、DXを推進する人材が「大幅に不足している」とする企業が62.1%と、初めて過半数に達した。本記事では、内製と外注の二択を超える伴走・共同開発の判断軸と、失敗リスクを下げる発注設計を整理する。

この記事の要点

  • 経済産業省の2016年の推計(高位シナリオ)で、2030年にIT人材は最大約79万人不足。推計値は前提により変わる。
  • IPA「DX動向2024」で、DX推進人材が「大幅に不足」とする企業が62.1%と初めて過半数に。
  • 内製は人材確保が難しく、外注は責任分界が曖昧だと失敗しやすい——どちらも単独では限界。
  • 第3の道=伴走・共同開発。一緒に作り、社内に力を残す。


数字で見るIT人材不足の現実

IT人材不足は「なんとなく足りない」ではなく、データで裏づけられた構造的課題だ。

  • 2030年に最大約79万人不足:経済産業省が2016年に公表した推計(IT人材の最新動向と将来推計)の高位シナリオでは、IT人材の供給が需要に追いつかず、2030年に最大で約79万人(しばしば「約80万人」と表現される)が不足すると試算された。なお、2019年以降の「IT人材需給に関する調査」では前提(需要の伸びやAIによる代替など)の置き方により推計値が異なる点に留意したい。
  • DX推進人材が「大幅に不足」初の過半数:IPA(情報処理推進機構)「DX動向2024」では、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と回答した企業の割合が62.1%となり、調査開始以降で初めて過半数を超えたと報告されている。
  • 内製化の壁:システム開発の内製化については、多くの企業が人材の確保・育成の難しさを課題に挙げている。

つまり、内製化を目指しても、その担い手をそもそも採用・育成できない、という二重の壁がある。


「内製か外注か」の二択が行き詰まる理由

内製の壁:人がいない・育たない

内製は、ノウハウが社内に残り、変化に素早く対応できる魅力がある。しかし、採用競争は激しく、育成にも時間がかかる。エンジニアを採れても、設計やマネジメントを担える人材は一層希少だ。内製化の進め方はIT部門の内製化ロードマップ(中堅・3年)で整理しているが、人材の確保が前提条件として重くのしかかる。

外注の壁:丸投げで失敗する

外注は、専門性とスピードを外部から調達できる。一方で、要件や責任分界を曖昧にしたまま「丸投げ」すると、出来上がったものが業務に合わない、社内にノウハウが残らない、改修のたびに費用がかさむ、といった失敗に陥りやすい(外注そのものが悪いのではなく、曖昧な発注が問題だ)。内製と外注の比較はITの内製化と外注の比較で詳しく扱っている。

どちらも単独では限界がある。だからこそ、両者の良さを組み合わせる第3の道が現実的になる。


第3の道:伴走・共同開発という選択

伴走・共同開発とは、外部パートナーと一緒に手を動かして開発しながら、その過程で社内に知見・人材・運用力を残していくアプローチだ。「作ってもらって終わり」ではなく、「一緒に作って、自走できるようにする」。

観点丸投げ外注伴走・共同開発完全内製
立ち上げ速度速い速い遅い
社内ノウハウの蓄積残りにくい残る残る
人材の前提不要少人数でも可多くの人材が必要
変化への対応都度発注徐々に自走自走
主なリスク(傾向)業務不一致・形骸化設計次第で下げやすい立ち上がらないリスク

伴走・共同開発の典型は、「立ち上げは外部主導・運用は社内へ引き継ぐ」「戦略は社内・実装は外部」「コア機能は内製・周辺は外注」といった役割分担だ。重要なのは、改善の担い手を社内に育てながら進めることだ。これにより、PoCで止まらず、内製化に必要なリードタイムも稼げる。

もちろん、伴走・共同開発が常に最適というわけではない。標準的な機能で要件が明確、内製化の意図がなく短期に仕上げたい、といったケースでは、責任分界を明確にしたうえでの外注(完全外注)の方が合理的なこともある。自社が何を社内に残したいか次第で、最適な形は変わる。


伴走・共同開発を成功させる発注設計

伴走・共同開発は、ただ「一緒にやりましょう」では機能しない。発注時に次の観点を設計に含めたい。

  • 役割分担の明確化:どこを外部が担い、どこを社内が担うかを定義する。
  • 引き継ぎ前提の進め方:ドキュメント化・ペア作業・レビューを通じて、知見を社内に移す。
  • 段階的な内製化計画:立ち上げ→並走→社内主導の移行マイルストーンを置く。
  • 業務理解からの参画:コードだけでなく、業務ヒアリングから入れるパートナーを選ぶ。
  • 運用・改善まで含む:作って終わりでなく、回し続ける体制を設計する。

パートナー選定の観点はシステム開発会社の選び方、ベンダーとの関係設計はベンダーマネジメントが参考になる。自社が内製・外注・伴走のどれに向くかはIT内製化レディネス診断開発ソーシング診断で客観的に測れる。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 伴走・共同開発は普通の外注と何が違う?

最大の違いは「社内にノウハウを残すこと」を前提に進める点だ。成果物の納品だけを目的にした外注ではノウハウが社内に残りにくいが、伴走・共同開発は、引き継ぎ・育成・段階的な内製化を設計に組み込み、最終的に社内が自走できる状態を目指す。

Q2. 少人数の情シスでも始められる?

可能だ。ただし、最低限、週次のレビューや要件判断を担える社内責任者を1名は置けることが前提になる(受け入れ工数がまったく取れないと、伴走でも形骸化しうる)。その条件を満たせるなら、少人数で内製化を進めたい企業ほど伴走・共同開発は相性がよい。外部が立ち上げを主導しつつ、社内の担当者がペア作業やレビューを通じて徐々に主導権を引き取る形が現実的だ。

Q3. 完全内製を目指すべきか、外注で割り切るべきか?

システムが自社の競争力に直結するなら内製寄り、効率化が目的なら外注やハイブリッドが合理的だ。多くの企業にとっては、立ち上げを外部に頼り運用を社内に引き継ぐ「中間」が現実解になる。まずはIT内製化レディネス診断で自社の向き不向きを把握したい。

Q4. どのくらいの期間で自走できる?

対象システムの規模と社内体制によるが、立ち上げ→並走→社内主導へと段階的に移行するため、数か月〜数年かけて徐々に自走比率を高めるのが一般的だ。最初から「いつ・どこまで内製化するか」のマイルストーンを設計しておくとよい。


まとめ:人材不足を前提に、体制から設計する

IT人材不足は、2030年に最大約79万人不足(経済産業省2016年の推計・高位シナリオ)、DX推進人材は「大幅に不足」が62.1%で初の過半数(IPA「DX動向2024」)という、構造的な課題だ。内製も外注も単独では限界がある以上、これからは「内製か外注か」ではなく、一緒に作って社内に力を残す伴走・共同開発を含めて、体制から設計する発想が要る。

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参考情報

  • 経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計(2016年公表)」高位シナリオで2030年に最大約79万人不足:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf / その後の「IT人材需給に関する調査(2019年)」:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf (前提により推計値は異なる)
  • IPA(情報処理推進機構)「DX動向2024」(DX推進人材が「大幅に不足している」とする企業が62.1%で初の過半数):https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/index.html

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