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DX人材は採用より社内育成へ|2026年のリスキリングと助成金活用ガイド

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この記事の想定読者:DXを進めたいが専門人材の採用に苦戦している中堅企業の経営者、情報システム・人事の責任者。「外から採れないなら、中で育てるしかない」と気づき始めた方に向けて、リスキリングの考え方と、2026年時点で使える助成制度、社内育成の現実的な進め方を整理する。

DXの必要性は誰もが認める。問題は「誰がやるのか」だ。求人を出しても応募が来ない、来ても採用競争で大手に持っていかれる、ようやく採れても定着しない。中堅企業のDXは、技術ではなく人で詰まることが多い。

採用市場が動かないなら、視点を変えるしかない。すでに自社の業務を理解している社員を、デジタルを使いこなせる人材へと育て直す。これが「リスキリング」であり、2026年の今、国も助成制度でこれを後押ししている。本記事では、採用に頼らない社内育成の道筋を、一次情報をもとに実務的に描く。

目次

  • DX人材不足は「採用で解決しない」構造になっている
  • リスキリングとは何か、採用とどう違うか
  • 2026年に活用できる主な支援制度
  • 社内育成の進め方(5ステップ)
  • 外部伴走の使いどころ
  • よくある質問
  • まとめ
  • 参考資料

DX人材不足は「採用で解決しない」構造になっている

IPA(情報処理推進機構)が2025年6月に公開した「DX動向2025」によれば、DXを推進する人材について「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた日本企業は合計で8割を超える。米国やドイツと比べても突出して高く、しかもこの状況はここ数年で大きく改善していない。

つまり、不足しているのは自社だけではない。国内のほぼすべての企業が同じ人材を奪い合っている。採用単価は上がり続け、資金力で勝る大手が有利になる。中堅企業が「良い人を採れば解決する」と構えている限り、この競争から抜け出せない。

ここで発想を変える。市場で取り合いになっている人材を外から獲得するのではなく、自社の業務と顧客をすでに理解している社員を、デジタル側へ育てる。業務知識はゼロから採用するより圧倒的に早く身につかない部分であり、そこを持っている既存社員は、実は最も有望な「DX人材の原石」である。

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リスキリングとは何か、採用とどう違うか

リスキリングとは、これまでとは異なる業務や役割、特にデジタル領域で必要となるスキルを、働きながら新たに身につけることを指す。単発の研修受講で終わらせず、新しい業務に実際に就いて使えるようにするところまでを射程に入れる点が特徴だ。

採用との違いを整理しておく。

観点中途採用社内リスキリング
業務・顧客理解ゼロから立ち上げ。立ち上がりに時間がかかる既に保有。即戦力化しやすい
確保のしやすさ競争激化で困難・高コスト既存社員が対象で着手しやすい
定着・離職リスク早期離職の不確実性があるキャリア機会の提供で定着につながりやすい
立ち上がり速度採用〜オンボーディングに数か月業務知識がある分、習得を業務に直結させやすい
コスト採用費・年収水準が上振れしやすい研修費中心。助成制度を活用しやすい

もちろん採用が不要になるわけではない。高度専門人材や、社内にまったく知見がない領域は外部から迎える必要がある。要は「採用一本足」をやめ、育成を主軸に据えたうえで採用を補完的に使う設計に切り替えることだ。

2026年に活用できる主な支援制度

社内育成のネックは費用と工数だ。ここで使えるのが国の助成・支援制度である。2026年時点で中堅企業が押さえておきたい代表的なものを整理する。助成率・上限額・要件は年度や公募回ごとに変動するため、必ず最新の一次情報で確認してほしい。

制度名所管概要主な対象
人材開発支援助成金厚生労働省事業主が従業員に職務に関連した訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度。複数のコースで構成される従業員を雇用する事業主
├ 人材育成支援コース厚生労働省職務に関連した知識・技能を習得させる訓練への助成事業主
├ 人への投資促進コース厚生労働省デジタル人材・高度人材の育成、労働者の自発的訓練、定額制訓練等への助成事業主
├ 事業展開等リスキリング支援コース厚生労働省新規事業の立ち上げなど事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる訓練への助成事業主
└ 教育訓練休暇等付与コース厚生労働省有給の教育訓練休暇制度を導入し、労働者が休暇を取得して訓練を受講した場合の助成事業主
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業経済産業省在職者本人のキャリア相談・講座受講・転職支援を一体で行う、個人向けの補助事業在職者個人(企業も関与)

ポイントを補足する。

  • **人材開発支援助成金(厚生労働省)**は、企業が主体となって従業員を育てる場合の中心的な制度だ。「人への投資促進コース」はデジタル人材育成や定額制研修(サブスク型のeラーニング等)も視野に入り、リスキリングと相性がよい。「事業展開等リスキリング支援コース」は新規事業や業態転換に伴う学び直しを後押しする。
  • **リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)**は企業の助成金ではなく、在職者「個人」を主対象とした補助だ。修了時に受講費用(税別)の1/2相当額(上限40万円)、さらに転職して1年継続就業した場合に1/5相当額(上限16万円)が追加され、最大で合計56万円が補助される。事業は2027年3月末まで実施予定とされている。自社内で育てる文脈とは性質が異なるが、社員が自発的に学ぶ選択肢として知っておくとよい。

なお、人材開発支援助成金の各コースは制度改正が随時行われている。コース名・対象訓練・助成内容は更新されるため、金額や要件は厚生労働省の最新パンフレット・公募要領で必ず裏取りすること。本記事では確実に裏が取れた範囲のみを記載している。

2026年5月14日以降の注意点:厚生労働省は2026年(令和8年)5月14日付で申請書類を改め、人材育成支援コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースの支給申請時に、「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要になった。計画届の提出時期にかかわらず、5月14日時点で支給申請が未了、または申請済みでも支給決定前の案件は提出対象とされている。受講料の妥当性を確認するための書類であり、外部研修やeラーニングを使う場合は早めに様式第28号の準備を見込んでおきたい。

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社内育成の進め方(5ステップ)

制度を使う前提として、まず「育てる仕組み」がなければ助成金は活きない。中堅企業で現実的に回る進め方を5ステップで示す。

  1. 育成対象の見極め — 全社員を一律に学ばせるのではなく、業務理解が深く、変化に前向きで、育成後の役割が描ける人材を選ぶ。情シス兼任者、業務改善に関心のある現場リーダーなどが候補になりやすい。
  2. 到達目標を業務で定義する — 「何の資格を取るか」ではなく「育成後にどの業務を任せるか」から逆算する。例:基幹データを自分で集計・可視化できる、業務フローを自動化ツールで組める、ベンダーと対等に要件を詰められる、など。
  3. 外部研修×OJTを組み合わせる — 体系的な知識は外部研修やeラーニングで効率よく入れ、実践は自社の実データ・実業務で行う。座学だけでは「分かるが使えない」で止まる。OJTで実務に紐づけて初めて定着する。
  4. 助成制度とのマッチング — 育成計画が固まったら、人材開発支援助成金の該当コースに当てはまるかを確認する。多くの場合、訓練実施前に計画の届け出が必要なため、研修を始める前に申請手続きの順序を確認することが重要だ。
  5. 内製化の現実解を見定める — すべてを内製化する必要はない。日々の運用・改善は社内、専門性が高い設計や初期構築は外部、という役割分担が中堅企業には現実的だ。育成は「全部を自前でやる人材」ではなく「外部とうまく協働できる人材」を目標にすると無理がない。

このステップで肝になるのは、3の「外部研修×OJT」と5の「内製化の線引き」だ。多くの失敗は、研修を受けさせただけで現場に戻し、使う場面がないまま忘れられるパターンに陥る。学んだ直後に実務で使う設計をセットにすることが、投資を回収する鍵になる。

外部伴走の使いどころ

社内育成といっても、最初の立ち上げを完全に独力で行うのは負担が大きい。ここで外部の伴走支援が効いてくる。使いどころは主に次の場面だ。

  • 何を学ばせるべきかの設計 — 自社のDXの方向性に対し、どのスキルを誰に習得させるべきか。育成の地図を描く段階は、経験のある外部の視点が役立つ。
  • OJTの実案件づくり — 学んだスキルを使う「実際の業務改善テーマ」を用意する場面。伴走者が小さな成功事例を一緒に作ることで、育成と業務改善が同時に進む。
  • 内製と外注の線引き — どこまで自社でやり、どこから外部に委ねるか。この判断は経験がないと過大にも過小にもなりやすく、伴走支援の価値が高い。
  • ベンダーとの対話の補助 — 育成途上の社内人材が外部ベンダーと要件を詰める際、間に立って通訳・整理する役割。

外部伴走は「丸投げ」とは違う。あくまで主役は社内人材で、伴走者は立ち上がりを支え、自走できる状態へ引き上げる役割を担う。最終的に外部の手が要らなくなることをゴールに置くのが、健全な使い方だ。

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※ 助成制度の助成率・上限額・要件は年度・公募回ごとに変動します。最新の公募要領・パンフレットを一次情報でご確認ください。

よくある質問

Q. 未経験の既存社員を本当にDX人材に育てられますか?

A. 全員を高度なエンジニアにする必要はない。中堅企業で求められるのは、業務を理解したうえでデジタルツールを使いこなし、外部ベンダーと対等に話せる人材であることが多い。業務知識はゼロから採用するより育ちにくい資産であり、それを持つ既存社員は有力な候補だ。到達目標を「任せたい業務」から定義すれば、現実的な育成設計ができる。

Q. 助成金はいくらもらえますか?

A. 助成率・上限額は制度・コース・年度によって変動するため、本記事では断定しない。人材開発支援助成金(厚生労働省)は訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度で、コースごとに内容が異なる。必ず厚生労働省の最新パンフレット・公募要領で確認してほしい。金額の確認は、育成計画と並行して早めに進めるのが安全だ。

Q. 申請のタイミングはいつですか?

A. 人材開発支援助成金は、多くの場合、訓練を実施する前に計画の届け出が必要となる。研修を先に始めてしまうと対象外になる恐れがあるため、育成計画が固まった段階で、研修開始前に申請手続きの順序を確認することが重要だ。

Q. 全部を社内でやる(内製化する)べきですか?

A. すべてを内製化する必要はない。日々の運用・改善は社内、専門性の高い設計や初期構築は外部、という役割分担が中堅企業には現実的だ。育成のゴールは「全部を自前でこなす人材」ではなく「外部とうまく協働できる人材」に置くと、無理なく続けられる。

Q. 経済産業省の支援事業と厚生労働省の助成金はどう違いますか?

A. 厚生労働省の人材開発支援助成金は、企業が従業員を育てる際に企業へ支給される。経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、在職者「個人」を主対象とし、キャリア相談・講座受講・転職支援を一体で行う補助だ。社内で育てる文脈では前者が中心になる。

まとめ

DX人材は、もはや採用だけでは確保しきれない構造になっている。国内のほぼすべての企業が同じ人材を奪い合う中で、中堅企業の現実的な勝ち筋は、業務を理解した既存社員をデジタル側へ育てる「リスキリング」だ。

進め方は、育成対象の見極め、業務からの目標定義、外部研修×OJT、助成制度とのマッチング、内製化の線引きという順序が基本になる。費用面は人材開発支援助成金などの制度が後押しするが、助成率・要件は変動するため一次情報での確認が欠かせない。立ち上げの負担は外部伴走で軽くし、最終的に社内が自走できる状態を目指す。採用の競争に消耗する前に、足元の人材を育てる一歩を踏み出したい。

参考資料

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