制度が変わる前後は、動くべき日と動けない日が混在する。今回それが1週間の中に収まっている。
IPA(情報処理推進機構)と経済産業省は2026年8月3日、DX推進指標の自己診断フォーマットについて、2026年8月下旬から9月上旬を目途に提出方法を刷新すると公表した。現行のExcel形式からWebフォームへ移行する。あわせてガイダンス資料が新たに公開されている。
本稿を公開している2026年8月18日から数えると、現行フォーマットでの提出に関わる日付は目前である。
公表されている日程
プレス発表に記載されている日程は次の通りである。
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| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 現行フォーマットでの回答受付停止 | 2026年8月26日(水)から8月31日(月)を予定 |
| Webフォームの公開 | 準備が整い次第、2026年8月下旬から9月上旬に公開予定 |
| ベンチマークレポートを閲覧できる提出期間 | 2026年4月3日(金)から8月25日(火)に提出した企業 |
この3行のうち、いま判断が要るのは3行目である。 プレス発表には、4月3日から8月25日に提出した企業については、Webフォーム公開日よりベンチマークレポートの閲覧が可能であると記載されている。
8月25日は火曜日で、本稿公開日の1週間後にあたる。
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この記事を読むべき人
- DX推進指標を提出したことがない、または数年前に一度提出したきりの会社
- 社内でDXの優先順位が決まらず、議論が毎回同じところで止まる会社
- 経営会議でDXの現在地を説明する材料が手元にない経営者
- 他社と比べて自社がどの位置にいるかを知りたい会社
- 補助金や外部への説明で、自社のDX状況を客観的に示す必要が出てきた会社
何が変わるのか
プレス発表が挙げている主な変更点は2つである。
変更点1は操作の利便性である。 Webフォーム化に伴い、Excelでのローカルインストールが不要になり、手軽に入力できるようになると記載されている。
変更点2はベンチマークレポートの発行タイミングである。 これまで年2回の発行だったベンチマークレポートが、提出後5分から10分程度で確認できるようになるとされている。
2つ目の変更が、この制度の使い方を実質的に変える。
年2回の発行という前提では、自己診断は「提出して待つもの」だった。 提出してから比較結果が届くまでに時間があるため、提出時点の議論と、結果を見た時点の議論が分断される。半年前に何を考えて回答したかを覚えている人は多くない。
提出後5分から10分で結果が見られるなら、使い方は変わる。 経営会議やDXの検討会の場で回答し、その場で比較結果まで見て議論できる。自己診断が「提出作業」から「議論の材料」に変わる余地が出る。
ただし、この使い方が実際に成立するかどうかは、Webフォームの公開後に確認するしかない。プレス発表には画面イメージについて「本画面イメージは開発中のものです」との注釈が付されている。
8月25日までに動くべきかの判断
結論から言えば、「すでに回答内容が固まっている会社」以外は急ぐ必要はない。
理由は単純である。提出の仕組みがなくなるわけではなく、Webフォームの公開後は再び提出できる見込みである。受付停止は8月26日から8月31日までの予定とされ、Webフォームの公開は「準備が整い次第、8月下旬から9月上旬」と記載されている。停止の終わりと公開日が同じ日であるとは書かれていないため、8月31日の翌日から必ず提出できると読むことはできない。
では8月25日までに提出する意味はどこにあるか。 プレス発表の記載に沿えば、4月3日から8月25日までに提出していれば、Webフォーム公開日からベンチマークレポートを閲覧できるという点である。
したがって判断は次のように分かれる。
すでに今年度、現行のExcelで回答を作成済み、または作成中の会社は、8月25日までに提出を済ませるほうがよい。作りかけのまま8月26日を迎えると、受付停止期間を挟むうえ、Webフォームでの入力し直しになる可能性がある。プレス発表は、現行フォーマットで提出済みの内容がWebフォームへどう引き継がれるかについて、データ移行のために受付停止期間を設ける旨は記しているが、利用者側の作業がどうなるかまでは記していない。
まだ着手していない会社は、無理に7日で仕上げる必要はない。急いで作った回答は、社内の実態を反映しない。むしろWebフォームの公開を待ち、入力の手間が下がった状態で、関係者を集めて回答するほうが目的に合う。
数年前に提出したきりの会社は、今回が見直しの機会になる。ただし、過去の回答と比較したい場合は、当時の回答内容が手元に残っているかを先に確認したい。
自己診断で測れるもの、測れないもの
制度の日程とは別に、押さえておきたい前提がある。
DX推進指標は自己診断である。 自社の担当者が自社を評価する。したがって、評価の精度は回答者が把握している範囲に左右される。
GXOが実務で見ている限り、自己診断が機能しにくくなるのは次の場合である。以下はIPAおよび経済産業省の見解ではなく、GXOが案件で観察してきた傾向である。
- 回答者が1人で完結している場合。 情シス担当者だけ、あるいは経営企画だけで回答すると、現場の実態と乖離する。
- 前回の回答を写している場合。 前回値を基準にすると、変化していない項目が「変化していない」と認識されない。
- 点数を上げることが目的化している場合。 診断は現在地の把握が目的であり、点数は結果である。
- 結果を見る人と、投資を決める人が違う場合。 診断結果が経営判断に接続されない。
一方で、自己診断だから得られるものもある。 それは社内の認識のズレが見える形になることである。同じ設問に対して経営層と現場が違う回答をした場合、そのズレ自体が価値のある情報になる。複数の立場の人に別々に回答させ、差分を見る使い方は、点数を出すことより実務に効く。 認識差を把握する方法はヒアリングや第三者診断など他にもあるが、同じ設問への回答という形で残るぶん、後から見返しやすい。
なお、この社内差分の見方はGXOが実務で使っているものであって、IPAが案内している使い方ではない。 プレス発表が述べているのは、提出企業向けのベンチマークレポートが提出後5分から10分程度で確認できるようになるという点までである。それでも、外部との比較結果を同じ検討会の中で扱えるようになれば、社内の差分を議論する場と外部比較を分けずに済む余地は出てくる。
提出の前に社内で決めておきたい4点
Webフォームの公開を待つ会社も、いま決められることがある。
1:誰が回答するかを決める。 1人ではなく、経営層、業務部門、システム担当の3者から出すことを推奨する。役職名ではなく個人名で決める。
2:何を判断するために提出するかを決める。 「DXの現在地を知る」では曖昧すぎる。「来期のIT予算をどこに配分するかを決めるため」まで具体化すると、結果の読み方が定まる。
3:結果を誰にいつ報告するかを決める。 提出そのものが目的化しやすいのは、結果を受け取る相手と期日が空欄のままだからである。
4:結果を受けて何をするかの選択肢を、先に3つ挙げておく。 選択肢がない状態で結果を見ると、「そうか」で終わる。先に「システム更改」「業務の標準化」「人材の確保」のように候補を出しておくと、結果が優先順位づけに使える。
よくある質問
Q. 8月26日から31日は、まったく何もできないのか。 A. プレス発表には現行フォーマットでの回答受付を停止する予定と記載されている。この期間中に社内での検討や回答内容の作成ができないわけではない。提出の受付が止まるという記載である。
Q. Webフォームの公開日は決まっているのか。 A. 決まっていない。プレス発表の記載は「準備が整い次第、8月下旬から9月上旬に公開を予定」である。具体的な日付は示されていないため、日程を確定させたい場合は公式ページを確認したい。
Q. 提出は義務なのか。 A. プレス発表は自己診断ツールとして案内しており、提出を義務づけるものではない。提出しないことによる不利益についても記載はない。
Q. ベンチマークレポートは何のために使えるのか。 A. プレス発表には、他の提出企業と比較できるものとして案内されている。比較そのものより、比較して差が出た項目について社内で理由を議論することに実務的な価値がある。
Q. 自己診断の結果が悪かった場合、どうすればよいか。 A. 結果が悪いこと自体は問題ではなく、悪い項目のうちどれを先に手当てするかが決まらないことが問題である。項目間の優先順位は自己診断では出ないため、そこは別途整理する必要がある。
Q. ガイダンス資料は読んだほうがよいか。 A. プレス発表では、DX推進指標改訂のポイント、提出・活用方法、全体構成、回答のポイントを網羅的に説明したものとして案内されており、提出の際の一読が推奨されている。回答者を複数立てる場合、事前に共有しておくと回答の粒度が揃いやすい。
8月25日まで、そしてWebフォーム公開後
IPAはDX推進指標を、自社の課題や次のアクションを明確にするための診断ツールと説明している。ただし、そこで挙がった課題のどれを、どの順番で、いくらかけて実行するかまでは、診断票の外側の作業になる。
8月25日までの1週間でやれることは、提出そのものより準備に寄る。回答者を3者立てる、何を判断するために出すのかを1行に書く、報告先を決める。ここまでは社内だけで完結する。
Webフォームが公開され、ベンチマークが手元に届いたあとが本題になる。差が出た項目について「なぜ差が出たか」を社内で議論できれば診断は成功で、議論が止まればそこから先は診断票の外側の作業である。
外側の作業は、大きく3つに分かれる。成熟度を打ち手の順序へ落とし込むこと(DX成熟度診断)、投資の是非を数字で示すこと(ROI試算)、補助金を絡めた資金計画に落とすこと(補助金診断)である。そこから実行に移る段階ではDX・システム開発が受け皿になり、老朽化した基幹システムの扱いが論点ならレガシー刷新ガイドにまとめている。
自己診断は自社の目で自社を見るものなので、外の目を一度入れると読み方が変わることがある。 診断結果をもとに相談するから受け付けている。
DX推進指標の集中実施期間と、公式ページに掲載されているスケジュールの読み方についてはDX推進指標の集中実施期間と公式ページの日程で扱っている。ベンチマークの提供方法は今回の刷新で変わるため、提出時期を検討する際は本稿の日程を優先されたい。
参照した情報
- IPA プレス発表「『DX推進指標自己診断フォーマット』のWebフォーム化・ガイダンス資料を公開」(2026年8月3日公開): https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2026/press20260803.html
提出方法の刷新が2026年8月下旬から9月上旬を目途である旨、現行のExcel形式からWebフォーム化される旨、Excelでのローカルインストールが不要になる旨、ベンチマークレポートがこれまで年2回の発行だったこと、提出後5分から10分程度で確認できるようになる旨、2026年4月3日(金曜日)から8月25日(火曜日)に提出した企業がWebフォーム公開日よりベンチマークレポートを閲覧できる旨、現行フォーマットでの回答受付停止が2026年8月26日(水曜日)から8月31日(月曜日)を予定している旨、Webフォームの公開が準備が整い次第8月下旬から9月上旬を予定している旨、ガイダンス資料が新たに公開された旨とその内容、および画面イメージが開発中のものである旨は、上記のプレス発表を取得して確認した。
Webフォームの具体的な公開日と、現行フォーマットで提出済みの内容が利用者側でどう扱われるかについては、プレス発表に記載がなかった。 受付停止期間はプレス発表に「8月26日(水曜日)から8月31日(月曜日)を予定」と明記されているため、本稿でも予定として扱っている。記載のない範囲を超えて書いていないので、実際に動く前に公式ページの最新情報を確認されたい。
自己診断が機能しにくくなる4つの場合、複数の立場に回答させて差分を読む使い方、提出前に決めておく4点——これらはIPAおよび経済産業省が示した運用方法ではない。 DX投資の相談を受ける中でGXOが観察してきた傾向をもとに書いている。また本稿は、DX推進指標を提出すべきである、あるいは提出しなくてよいという結論を出すものではない。






