「RFP は分かるが、RFI / RFQ って何が違うんか?」――中堅企業のシステム発注で頻繁に混同される 3 文書だ。 大企業では使い分けが定着しているが、中堅企業では「全部 RFP」で済ませている例も多く、結果として情報不足や見積ばらつきで失敗する。本記事は中堅企業向けに、3 文書の違いと使い分けを実例つきで整理する。
目次
- RFI / RFP / RFQ の違い
- 3 段階発注モデル
- RFI(Request for Information)
- RFP(Request for Proposal)
- RFQ(Request for Quotation)
- 単独発注 vs 3 段階発注の判断軸
- 中堅企業の実例 3 ケース
- 3 段階の想定期間とコスト
- よくある質問(FAQ)
RFI / RFP / RFQ の違い
| 文書 | 目的 | 段階 | ベンダーへの要求 |
|---|---|---|---|
| RFI | 情報収集 | 第 1 段階 | 自社サービス / 実績の概要回答 |
| RFP | 提案依頼 | 第 2 段階 | 課題解決の提案書 + 概算見積 |
| RFQ | 見積依頼 | 第 3 段階 | 確定見積 + 契約条件 |
一言で表すと
RFI = 「あなたの会社、何ができますか?」
RFP = 「うちの課題、どう解決しますか?」
RFQ = 「いくらでやりますか?契約条件は?」
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3 段階発注モデル
| 段階 | 目的 | 対象ベンダー数 | 期間 |
|---|---|---|---|
| RFI | 市場全体把握 | 10-20 社 | 2-4 週間 |
| RFP | 候補絞込み + 提案比較 | 3-5 社 | 4-6 週間 |
| RFQ | 最終 1-2 社の見積確定 | 1-2 社 | 2-3 週間 |
中堅企業の標準は 「RFI 省略、RFP + RFQ の 2 段階」 または 「RFP のみで RFQ も兼ねる」。市場が広く未調査な場合のみ RFI から開始。
RFI(Request for Information)
記載内容
1. 自社の事業概要と検討中のテーマ
2. ベンダーへの質問項目
- 提供サービスの概要
- 類似案件の実績件数 / 規模
- 想定費用レンジ(参考程度)
- 強み / 得意領域
3. 回答期限と提出方法
4. 回答後の選定プロセス概要
中堅企業での活用
| 活用シーン | 適合度 |
|---|---|
| 新領域(AI / IoT 等)の市場調査 | 高 |
| ベンダー候補が 20 社以上ある時 | 高 |
| 既知ベンダー数社のみが対象 | 不要(直接 RFP へ) |
注意点
- RFI は契約前提ではないため、ベンダーの回答品質はばらつく
- 詳細費用は出ないので「価格比較」目的では使えない
- 回答期限は 2 週間程度が標準(短すぎると形式回答、長すぎると忘れられる)
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RFP(Request for Proposal)
記載内容
1. 自社概要 / 体制 / 関連システム
2. 解決したい課題(背景 / 現状 / 目指す姿)
3. 機能要件(必須 / 推奨 / Nice to have)
4. 非機能要件(性能 / セキュリティ / 可用性)
5. プロジェクト体制 / スケジュール
6. 提案書の記載項目
7. 評価方法(5 軸スコアリング等)
8. 概算見積依頼(人月 / 内訳)
9. 質問期間 / 提案提出期限
提案書に求める内容
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 提案概要 | 課題理解 + 提案アプローチ |
| 機能対応マトリクス | 必須 / 推奨 / Nice to have の対応可否 |
| アーキテクチャ図 | システム構成 / データフロー |
| 体制図 | PM / リード / メンバーの経歴 |
| スケジュール | 工程別マイルストーン |
| 概算見積 | 人月 + 単価 + 諸経費 |
| リスク分析 | 想定リスクと対策 |
| 類似実績 | 同業 / 同規模の事例 |
注意点
- 必須要件の充足率を明示要求しないと「やります」と書かれて後で揉める
- 概算見積は「±20% 精度」など精度を明記
- 提案書ボリュームを指定(30-50 ページ程度が中堅企業の標準)
RFQ(Request for Quotation)
記載内容
1. RFP で合意した提案内容の確定スコープ
2. 確定見積依頼(人月 / 単価 / 諸経費 / 税)
3. 契約条件(支払 / 検収 / 保証 / 解約)
4. 納期 / 工程
5. 再委託 / オフショア利用の可否
6. SLA / サポート条件
7. 知的財産権の帰属
注意点
- RFP 段階の概算見積から大きく上振れする場合があるため、上振れ幅の上限を事前に合意
- 契約条件交渉も RFQ 段階で実施、契約書ドラフトの応酬まで含む
- RFQ で 2 社残し、最終 1 社を選ぶ「ベスト・アンド・ファイナル」方式も有効
単独発注 vs 3 段階発注の判断軸
| 案件特性 | 推奨段階 | 理由 |
|---|---|---|
| 既知ベンダー 1 社で決定済 | RFQ のみ | 提案不要、見積のみ |
| 既知ベンダー 2-3 社で比較 | RFP + RFQ | 提案比較で選定 |
| 候補ベンダー多数 + 新領域 | RFI + RFP + RFQ | 段階的絞込み |
| 緊急対応(30 日以内) | RFP のみ | 簡略化 |
中堅企業の標準パターン:
- 小規模(500 万円以下): RFP 単独
- 中規模(500 万-3,000 万円): RFP + RFQ
- 大規模(3,000 万円以上): RFI + RFP + RFQ
中堅企業の実例 3 ケース
ケース 1: 製造業 中堅 SaaS 選定(年額 800 万円規模)
背景: 既存システムの保守切れ、3 年契約の SaaS に切替検討
発注設計: RFP + RFQ の 2 段階
- RFP: 既知 4 社へ提案依頼、提案受領後に 2 社に絞込
- RFQ: 2 社にベスト・アンド・ファイナル、価格 + 契約条件で最終選定
期間: 提案開始から契約まで 3 ヶ月
ケース 2: 流通業 中堅 EC 構築(5,000 万円規模)
背景: 自社 EC を新規構築、技術選定から開始
発注設計: RFI + RFP + RFQ の 3 段階
- RFI: 12 社へ情報収集、技術 / 実績で 6 社に絞込
- RFP: 6 社へ提案依頼、3 社に絞込
- RFQ: 3 社の見積確定、最終 1 社選定
期間: 検討開始から契約まで 6 ヶ月
ケース 3: サービス業 中堅 業務システム改修(1,200 万円規模)
背景: 既存システムの改修、現行ベンダー継続も含めて検討
発注設計: RFP のみ
- RFP: 現行ベンダー含む 3 社へ提案依頼
- 提案 + 見積を一括受領、評価 + 価格交渉で決定
期間: 提案開始から契約まで 2 ヶ月
3 段階の想定期間とコスト
| 段階 | 期間 | 自社工数(中堅企業 4 名体制) |
|---|---|---|
| RFI | 2-4 週間 | 40-80 時間 |
| RFP | 4-6 週間 | 120-200 時間 |
| RFQ | 2-3 週間 | 60-100 時間 |
| 全段階 | 3-4 ヶ月 | 220-380 時間 |
工数内訳
- 文書作成: 全工数の 30-40%
- ベンダー対応 / 質疑応答: 20-30%
- 評価 / 合議: 30-40%
- 契約交渉: 10-20%
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よくある質問(FAQ)
Q. RFI を省略すると失敗するか? A. 既知ベンダーが 5 社以下に絞れているなら省略可。新領域 / 未知ベンダー多数の場合は RFI で市場全体把握しておかないと選定漏れが起きる。
Q. RFP と RFQ を 1 文書で済ませて良いか? A. 中規模以下なら可。ただし「提案 + 見積」を同時要求すると、ベンダーは安全側に見積を盛る傾向があるため、3,000 万円以上の案件は分離推奨。
Q. RFP 提出後にベンダーから質問が殺到する A. RFP 配布後 1 週間を「質問受付期間」とし、全質問への回答を全候補ベンダーに公開する仕組みが標準。
Q. ベンダー側が RFI 段階で「予算感を教えて」と聞いてくる A. RFI 段階では「概算レンジ」を伝えるか、「予算は RFP で開示」と返す。完全非開示だと提案精度が落ちる。
参考資料
- IPA「非機能要求グレード」
- 経済産業省「IT 投資の最適化に関するガイドブック」
- JISA「システム開発委託モデル契約」
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