この記事は、M365環境でCopilotやエージェントの展開を検討するIT管理者と情シス担当者が、台帳整備という「最初の一手」を具体的に判断するための実務ガイドです。
Microsoft Agent 365はAIエージェントを「観察・統制・保護」する基盤です。2026年7月1日から、Copilot StudioとMicrosoft Foundryの一部セキュリティ機能はAgent 365対象ライセンスが必要になりました。既存のDefender契約だけでは、エージェント単位の検出・姿勢・脅威保護が継続しない場合があります。価格や対象契約は変更されるため、本記事では特定価格を判断根拠にせず、自社テナントのライセンス画面とMicrosoft Learnを正本にします。
特に危険なのは、旧リアルタイム保護ルールをBlockにしていた企業です。Microsoft Learnは、既存ルールによるブロックが7月1日に停止し、新しいポリシー画面で再定義が必要になると説明しています。また、Advanced Huntingのエージェント台帳はAIAgentsInfoからAgentsInfoへ移行し、第三者クラウドエージェントの検出経路もAgent 365 registry syncへ変わります。
Build 2026(2026年6月2日)では、AWS BedrockやGoogle Cloudとのレジストリ同期機能がパブリックプレビューに入り、Microsoftプラットフォーム外のエージェントも一元的に棚卸しできる方向性が示されました。
ここで着目すべきは、Agent 365が解こうとしている問題の構造です。Microsoftがエージェント専用の制御基盤を一般提供するほど、企業内ではすでにエージェントが氾濫し始めています。これはMicrosoft製品を使わない企業でも同じです。Copilot、ChatGPT Enterprise、Claude、RPA、RAGボット、ローコードで作られた部門別AIが増えるほど「誰が作り、何に接続し、何を実行できるのか」を把握できなくなります。
AIエージェント導入前チェックリストとあわせて、その解決策が管理台帳の整備です。
Agent 365 が可視化する項目をそのまま台帳定義に使う
Agent 365のAgent Registryが収集する情報は、社内台帳に必要な項目とほぼ対応しています。下表は両者を並べて整理したものです。
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| Agent 365 の収集項目 | 社内台帳の対応項目 | 記入例 |
|---|---|---|
| エージェント識別名 | エージェント名(業務名で識別) | 営業提案書ドラフトAI |
| エージェントオーナー | 所有部署と責任者名 | 営業部・営業企画責任者 |
| エージェントの目的 | 利用目的 | 提案書の下書き作成 |
| 接続先データソース | 接続先(SharePoint、SFA等) | SharePoint、営業SFA |
| 参照データ種別 | 参照データと禁止データ | 過去提案書○、個人情報✗ |
| 権限スコープ | 実行権限(読取/書込/送信等) | 下書き作成のみ・顧客への自動送信禁止 |
| 監査ログ設定 | ログ(入力・出力・参照元) | 全操作ログをPurviewへ保存 |
| 緊急停止設定 | 停止条件と担当者 | 誤回答・機密混入時は情シスが即時停止 |
| レビュー周期 | 最終レビュー日 | 四半期ごと |
Agent 365が自動で収集できる項目は台帳へ自動転記し、ビジネス側の文脈(利用目的・禁止操作)は人が補完する、という分担が現実的です。
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台帳整備で最初に判断する「リスク分類」
エージェントは一様ではありません。読み取り専用で議事録をまとめるエージェントと、顧客メールを自動送信するエージェントでは管理コストが大きく異なります。次の3段階で分類し、高リスクから先に台帳に落とします。
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| リスクレベル | 判定基準 | 管理の重点 |
|---|---|---|
| 高(要承認) | 顧客情報・契約・金額への書き込み、外部送信 | 情シス承認必須・ログ全件保存・月次レビュー |
| 中(要登録) | 社内文書の参照・要約・下書き生成 | 台帳登録・四半期レビュー・停止条件明記 |
| 低(届出のみ) | 個人利用・外部非公開・機密データ非接続 | 利用ルール確認・廃止時に届出 |
分類の迷い事例として多いのは「SharePointの全社文書に接続した要約AI」です。書き込みなしでも、権限外文書を参照できる状態なら「中」以上として扱い、閲覧権限の再現確認を必須とします。
既存ID基盤・セキュリティ基盤との接続が実効性の鍵
台帳は表計算ファイルや管理DBとして存在するだけでは機能しません。Entra ID、SaaS管理、端末管理、ログ基盤と連動することで、台帳上の設定が実際の制御に反映されます。
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| 連携先 | 台帳との接続で見ること |
|---|---|
| Entra ID | エージェントの所有者・利用者の在籍確認、退職者アカウントの即時停止 |
| M365管理センター | Copilot Studioエージェントのライフサイクル管理、利用状況 |
| Defender (Agent SPM) | 未登録シャドーエージェントの検出、リスクスコアのアラート |
| Purview | 機密ラベル付きデータへのアクセス監査ログ |
| SaaS管理ツール | API接続権限の棚卸し・超過スコープの検出 |
生成AIセキュリティの視点では、エージェントが「人間の代理」として動く場合、そのエージェントIDが侵害されたときの影響範囲も台帳に含める必要があります。これはAgent SPMがカバーしている領域であり、台帳の「接続先」欄を充実させるほど、Defenderが提示するブラスト半径(Blast Radius)の見積もりも精度が上がります。
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管理者が月次で見るレポート項目
台帳を運用に落とし込むには、何を定期確認するかを決めることが先です。次の5項目を月次レポートに組み込みます。
- 新規登録エージェント数と承認状況
- 90日以上未利用のエージェント(廃止候補)
- 高リスク接続の権限変更履歴
- Defenderが検出した未登録シャドーエージェント
- 費用超過アラートとCopilotクレジット消費内訳
GXOの支援
GXOでは、Agent 365の導入可否を問わず、社内AIエージェントの棚卸しから支援します。初回相談では、利用中のAIツール一覧、接続しているSaaSと社内システム、エージェントごとの実行権限の現状を確認し、リスク分類と台帳の初期構造を整理します。台帳の設計から運用ルールの文書化、AIエージェント導入前チェックリストを使った審査フロー構築まで、稟議資料に落とせる形でお手伝いします。
GXOの見解
AI導入はツール追加ではなく、業務フロー、権限、ログ、停止条件、責任分界を同時に設計する経営課題として扱う。
GXOはPoC単体ではなく、現場業務に残る承認、例外処理、監査証跡まで見て本番運用に落とすべきだと見る。
GXOは、AI活用の構想整理から要件定義、社内ルール、システム連携、運用改善まで一気通貫で支援します。
実務判断のポイント
この記事は、経営者、DX責任者、情シス、開発責任者向けです。AI導入前の業務棚卸し、権限設計、PoC、本番運用、AI利用規程を自社で進めるか、外部の専門家と整理するかを判断する材料として使えます。
GXOが重視するのは、話題性の高さよりも「自社の業務、データ、権限、予算、運用責任にどう影響するか」です。Agent 365移行後のAIエージェント防御に関する検討では、担当者だけで判断を閉じず、経営、現場、情シス、セキュリティ担当、外部パートナーの役割を早い段階で分けることが重要です。
放置した場合と整備した場合の違い
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| 観点 | 放置した場合 | 整備した場合 |
|---|---|---|
| 業務影響 | 属人的な判断が増え、対応の優先順位がぶれやすい | 影響範囲、期限、責任者を決めて進められる |
| 投資判断 | ツール導入や外注費だけが先行し、効果測定が曖昧になる | 売上、工数削減、リスク低減の指標にひも付けられる |
| 現場運用 | 例外処理や承認フローが残り、定着しにくい | 権限、ログ、教育、改善サイクルまで設計できる |
| 経営報告 | 問題が発生してから説明資料を作ることになる | 月次で状況、課題、次の打ち手を説明できる |
導入・改善前のチェックリスト
- 対象業務、対象部門、対象データを明文化しているか
- 現在の課題を、売上機会、原価、工数、リスクのいずれかに分解しているか
- 既存システム、SaaS、Excel、手作業の依存関係を棚卸ししているか
- 例外処理、承認、差し戻し、監査証跡まで確認しているか
- 社内で判断できる範囲と外部支援が必要な範囲を分けているか
- 初期費用だけでなく、保守、運用、教育、改善費用を見積もっているか
- 成功指標を、問い合わせ数、商談数、削減時間、停止リスクなどで定義しているか
- 実装後の責任者、更新頻度、レビュー会議の持ち方を決めているか
- セキュリティ、法務、個人情報、契約条件の確認ポイントを洗い出しているか
- 既存の問い合わせ、商談、障害、運用ログから優先順位を決めているか
- 経営判断に必要な資料を1枚で説明できる状態にしているか
- 次の90日で検証する範囲と、やらない範囲を明確にしているか
GXOの実務補足
AI導入はツール追加ではなく、業務フロー、権限、ログ、停止条件、責任分界を同時に設計する経営課題として扱う。
GXOはPoC単体ではなく、現場業務に残る承認、例外処理、監査証跡まで見て本番運用に落とすべきだと見る。
GXOは、AI活用の構想整理から要件定義、社内ルール、システム連携、運用改善まで一気通貫で支援します。記事のテーマを単なる情報収集で終わらせず、相談、診断、要件定義、実装、運用改善に接続することで、AIアセスメント、PoC、業務システム連携、AIエージェント運用設計へ接続。さらに、診断テンプレートと標準設計を使い、短期診断から継続伴走へ展開。
実行までの進め方
- 現在の業務、データ、ツール、担当者を棚卸しする
- 売上拡大、工数削減、リスク低減のどれに効くテーマかを決める
- 初期対応、90日以内の改善、半年以上の投資を分ける
- 必要な社内体制、外部支援、予算、セキュリティ確認を整理する
- 小さく検証し、効果測定後に本番化や横展開を判断する
よくある質問
Q1. Agent 365を導入しない企業にも管理台帳は必要ですか
必要です。Agent 365はMicrosoftのガバナンス基盤ですが、管理台帳が解く問題(所有者・接続先・権限・ログの不明確さ)はどのAI基盤でも共通です。台帳の構造はAgent 365の収集項目をそのまま参照できます。
Q2. 台帳の所有者は情シスですか、業務部門ですか
台帳を管理するのは情シスですが、「エージェントの所有者」は業務部門が担います。情シスが統制し、業務部門が責任を持つ二層構造がトラブル時の連絡を早くします。
Q3. シャドーAIが多い場合、どこから着手すべきですか
高リスク接続(顧客情報・契約・外部送信)に絞って棚卸しを始めます。すべてを洗い出そうとすると動けなくなります。Defenderのエージェント検出レポートやLLMセキュリティreadiness診断を使うと、優先度付きで現状把握を進められます。
GXO式「Agent 365移行5ゲート100点」
この監査は製品の導入点ではなく、7月1日後も防御が実際に動いている証拠を採点します。配点はGXO独自の実務基準です。
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| ゲート | 配点 | 満点の証拠 | レッドフラグ |
|---|---|---|---|
| ライセンス | 20 | 対象テナント・ユーザー・エージェントごとの適格性一覧 | 「Microsoft 365があるから対象」の口頭判断 |
| 台帳・可視化 | 20 | Copilot Studio、Foundry、第三者エージェントの所有者・接続先・権限一覧 | Agent Registryと手作業台帳の件数が合わない |
| 検知・ブロック | 25 | 新ポリシーでBlockを再定義し、テストイベントで作動を確認 | 旧ルールが画面に残るため有効だと思っている |
| ログ・ハンティング | 20 | AgentsInfo、BehaviorInfoを使う保存クエリとアラート | 廃止予定テーブルだけを参照する |
| 第三者・運用 | 15 | registry sync、月次棚卸し、退職・廃止時の失効手順 | Microsoft外のエージェントが台帳にない |
判定と停止条件
- 90〜100点:監視付きで継続。四半期ごとに台帳件数と契約を再照合する
- 75〜89点:条件付き運用。0点項目を30日以内に解消する
- 60〜74点:新しいエージェント公開を止め、既存環境を棚卸しする
- 59点以下:外部送信・更新・削除権限を一時停止し、移行をやり直す
合計点に関係なく、旧Blockルールの再定義が未確認、所有者不明の高権限エージェントがある、ログが取得できない、のいずれかがあれば本番追加を止めます。
記入例:Copilot Studio 12体、Foundry 4体の企業
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| ゲート | 得点 | 確認結果 |
|---|---|---|
| ライセンス | 20/20 | 16体と利用者の適格性を確認 |
| 台帳・可視化 | 15/20 | 所有者不明が2体 |
| 検知・ブロック | 10/25 | 新ポリシーでの再定義未実施 |
| ログ・ハンティング | 12/20 | 保存クエリ3本が旧テーブル参照 |
| 第三者・運用 | 5/15 | 他社クラウドの6体が未同期 |
| 合計 | 62/100 | 新規公開を停止 |
この会社ではライセンス購入より先に、ブロック再定義、クエリ移行、所有者設定を行います。診断結果をそのまま移行作業表にし、再テスト後に90点を超えてから公開を再開します。
ベンダーへ提出させる証拠
- 7月1日後のライセンス割当一覧
- 新旧ポリシーの対応表とテスト結果
AIAgentsInfoからAgentsInfoへ移すクエリ一覧BehaviorInfoを使う検知・対応フロー- 第三者エージェントのregistry sync結果
- 退職者・廃止エージェントの権限失効記録
これらが出ない提案は、「設定しました」ではなく「設定したはず」の状態です。AI導入可否アセスメントでは、ライセンス販売ではなく、台帳・権限・検知・ログの実効状態を第三者視点で整理します。
参考情報
- Microsoft Security Blog「Microsoft Agent 365, now generally available, expands capabilities and integrations」(2026年5月1日):https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/05/01/microsoft-agent-365-now-generally-available-expands-capabilities-and-integrations/
- Microsoft Community Hub「What's New in Agent 365: May 2026」:https://techcommunity.microsoft.com/blog/agent-365-blog/what%E2%80%99s-new-in-agent-365-may-2026/4516340
- Microsoft Foundry Blog「Build agents you can trust across any framework with open evals and a control standard」(Build 2026・Agent Control Specification):https://devblogs.microsoft.com/foundry/build-2026-open-trust-stack-ai-agents/
- Microsoft Learn「Transition Microsoft Copilot Studio and Microsoft Foundry agent security capabilities to Microsoft Agent 365」(2026年7月13日確認):https://learn.microsoft.com/en-us/defender-xdr/security-for-ai/transition-agent-security-to-agent-365
社内AIエージェントの台帳整備から始めませんか
GXOでは、AIエージェントのリスク分類・所有者設定・接続先確認・ログ設計を整理し、情シスと業務部門が共同で運用できる台帳を設計します。Agent 365の有無を問わず支援可能です。






