日本政策金融公庫「飲食業の景況等調査」(2024年10月公表)によると、飲食店経営者の約7割が「人手不足」を経営上の最大課題に挙げている。人件費は上がり続け、食材原価も高止まりしている。この状況でITツールを導入して業務効率化を図りたいが、「投資に回す余裕がない」という声は多い。実は、IT補助金を活用すれば導入費用の最大4/5を国が負担してくれる。この記事では、飲食店が使える補助金の種類、対象となるツール、申請の流れ、そして実際の導入事例と費用シミュレーションを紹介する。


目次

  1. 飲食店が使える補助金枠
  2. 補助対象になるITツール一覧
  3. 費用シミュレーション(補助前後)
  4. 申請の流れ
  5. 導入事例3選
  6. 申請時の注意点
  7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

飲食店が使える補助金枠

飲食店のIT導入に使える主な補助金を整理する。

補助金名補助率補助上限額主な対象
IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)1/2〜4/5最大450万円ソフトウェア、クラウドサービス導入費用
小規模事業者持続化補助金2/3最大50万円(インボイス特例で最大200万円)販路開拓に伴うIT投資(HP、予約システム等)
ものづくり補助金1/2〜2/3最大1,250万円生産性向上の設備投資・システム構築

(出典:中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」公式サイト、中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」公式サイト、中小企業庁「ものづくり補助金総合サイト」)

飲食店の場合、最も使いやすいのはIT導入補助金だ。POSレジ、モバイルオーダー、予約システム、会計ソフトなど、飲食店で必要となるITツールの多くが補助対象になっている。小規模事業者持続化補助金は、従業員5人以下(商業・サービス業)の店舗であれば申請できるため、個人経営の飲食店に向いている。

補助金制度全体の最新情報はIT補助金2026完全ガイドで体系的にまとめている。

セクションまとめ: 飲食店が使える補助金は主に3種類。IT導入補助金が最も汎用性が高く、小規模店舗には持続化補助金も有力な選択肢になる。


補助対象になるITツール一覧

飲食店のIT化でよく使われるツールと、対応する補助金を整理する。

ツールカテゴリ具体例対応補助金月額目安
POSレジスマレジ、Airレジ、Square POSIT導入補助金0〜12,000円
モバイルオーダーOkage Go、QR Order、Retty OrderIT導入補助金5,000〜30,000円
予約管理システムTableCheck、トレタ、TORETAIT導入補助金10,000〜30,000円
会計ソフトfreee、マネーフォワード クラウドIT導入補助金2,000〜5,000円
シフト管理ジョブカン、KING OF TIMEIT導入補助金200〜500円/人
在庫・食材管理インフォマート、FoodFrontiaIT導入補助金10,000〜30,000円
キャッシュレス端末Square、Airペイ、STORES 決済持続化補助金0〜3,000円

2026年度のIT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)では、インボイス対応枠として会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトの導入費用が補助対象になっている。飲食店にとっては会計ソフトとPOSレジの組み合わせ導入がインボイス枠の対象になりやすい。

セクションまとめ: POSレジ、モバイルオーダー、予約管理、会計ソフトなど飲食店の主要ITツールはほぼ全て補助対象。インボイス対応枠も活用できる。


費用シミュレーション(補助前後)

飲食店で多いITツール導入パターン3つの費用シミュレーションを示す。

パターン1:POSレジ+会計ソフト導入(小規模店舗)

項目金額
POSレジ導入(端末+初期設定)30万円
会計ソフト(2年分クラウド利用料)12万円
合計42万円
IT導入補助金(補助率3/4、インボイス枠)▲31.5万円
自己負担額10.5万円

パターン2:モバイルオーダー+POSレジ+予約管理(中規模店舗)

項目金額
モバイルオーダーシステム導入80万円
POSレジ連携設定20万円
予約管理システム導入40万円
合計140万円
IT導入補助金(補助率1/2)▲70万円
自己負担額70万円

パターン3:セルフオーダー+キッチンディスプレイ+在庫管理(多店舗展開)

項目金額
セルフオーダーシステム(3店舗)180万円
キッチンディスプレイシステム60万円
在庫・食材管理システム80万円
導入支援・研修30万円
合計350万円
IT導入補助金(補助率1/2)▲175万円
自己負担額175万円

セクションまとめ: 小規模店舗なら自己負担10万円台からIT化が可能。多店舗展開でも補助金で半額以下に抑えられる。


飲食店のIT補助金、いくら使える?

店舗の規模・従業員数・導入したいツールをもとに、使える補助金と補助額の目安をお調べします。対象外だった場合も、他に使える制度がないか一緒に確認します。

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申請の流れ

IT導入補助金の申請ステップを飲食店向けに整理する。

ステップ1:gBizIDプライムの取得(2〜3週間)

法人・個人事業主を問わず、gBizIDプライムの取得が必要だ。申請から発行まで2〜3週間かかるため、補助金の公募開始前に済ませておく。

ステップ2:IT導入支援事業者の選定

IT導入補助金はベンダー(IT導入支援事業者)と共同で申請する。POSレジメーカーや予約システムの提供会社がIT導入支援事業者に登録しているケースが多い。導入したいツールの販売元が登録済みかを先に確認する。

ステップ3:交付申請(ベンダーと共同作成)

ベンダーと協力して交付申請書を作成する。事業計画には「導入前の課題」「導入後の効果」を具体的な数字で記載する。飲食店なら「ピーク時の注文待ち時間」「会計処理にかかる時間」「食材ロス率」などの数字が書きやすい。

ステップ4:採択通知後にツール導入

交付決定通知を受け取ってからツールを導入する。採択前にツールを購入・契約すると補助対象外になるので要注意。

ステップ5:事業実績報告

導入完了後、利用状況や効果を報告する。補助金はこの報告後に支払われる(後払い方式)。

申請スケジュールの詳細はIT補助金2026後期スケジュールと対象要件を参照されたい。

セクションまとめ: 申請は5ステップ。gBizIDの取得を早めに済ませ、採択前の購入を避けることが最重要ポイント。


導入事例3選

事例1:居酒屋チェーン(福岡市・3店舗)——モバイルオーダー導入

課題: ピーク時にホールスタッフが足りず、注文待ちのクレームが多発。アルバイトの採用も困難だった。

導入ツール: セルフオーダーシステム(QRコード式)、POSレジ連携

補助金: IT導入補助金(通常枠・補助率1/2)、導入費用120万円のうち60万円を補助

効果:

  • ホール人員を1店舗あたり2名→1名に削減(ピーク時以外)
  • 注文から提供までの平均時間が8分→5分に短縮
  • 客単価が約12%向上(おすすめ表示機能による追加注文増)
  • 月間の人件費削減効果:約25万円/3店舗合計

事例2:カフェ(個人経営・福岡県)——予約+POS+会計の一括導入

課題: 電話予約の対応に時間を取られ、予約の取りこぼしも発生。手書き伝票での会計に毎月丸1日かかっていた。

導入ツール: 予約管理システム、クラウドPOSレジ、会計ソフト連携

補助金: IT導入補助金(インボイス枠・補助率3/4)、導入費用50万円のうち37.5万円を補助

効果:

  • Web予約が全予約の65%を占めるようになり、電話対応が大幅減少
  • 月次の会計処理が1日→2時間に短縮
  • 予約の取りこぼしがゼロに

事例3:ラーメン店(5店舗展開・北九州市)——在庫管理+セルフオーダー

課題: 各店舗で食材の仕入れ量がバラバラ。食材ロスが売上の約5%に達していた。券売機が老朽化しメンテナンスコストも増加。

導入ツール: 在庫・食材管理システム、タブレット式セルフオーダー

補助金: IT導入補助金(通常枠・補助率1/2)、導入費用280万円のうち140万円を補助

効果:

  • 食材ロス率が5%→2%に低下(月間約15万円のコスト削減)
  • セルフオーダー化でホール業務の効率が向上
  • 本部で全店舗の在庫状況をリアルタイム把握

セクションまとめ: 個人経営のカフェから多店舗チェーンまで、規模を問わずIT補助金を活用した導入事例がある。人件費削減・ロス削減・売上向上の3つが主な効果。


申請時の注意点

1. 採択前のツール購入は対象外

交付決定通知が届く前にツールを購入・契約してしまうと、補助対象外になる。「急いで導入したい」場合でも、必ず採択結果を待つこと。

2. IT導入支援事業者の選定を先に行う

IT導入補助金はベンダーとの共同申請が必須。導入したいツールのメーカーがIT導入支援事業者に登録されていなければ、そのツールでは申請できない。先にIT導入支援事業者の登録状況を確認する。

3. 加点項目を活用する

賃上げ計画の表明、インボイス制度対応、「くるみん」認定などの加点項目がある。飲食店では賃上げ計画が該当しやすい。加点項目をひとつ押さえるだけでボーダーラインの当落が変わることがある。

デジタル化・AI導入補助金の最新動向はデジタル化・AI導入補助金2026ガイドでも解説している。

セクションまとめ: 「採択前の購入は不可」「ベンダー登録の確認」「加点項目の活用」の3点が飲食店の申請で押さえるべきポイント。


まとめ

飲食店がIT補助金を活用すれば、POSレジ・モバイルオーダー・予約管理・会計ソフトの導入費用の半額以上を国に負担してもらえる。小規模店舗なら自己負担10万円台、多店舗展開でも数十万円単位でIT化を進められる。人手不足と原価高騰が続く飲食業界において、ITツールの導入による業務効率化は「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」の問題だ。補助金の公募には期限がある。まずは自店舗がどの補助金の対象になるか確認するところから始めてほしい。

GXO株式会社の会社概要はこちら開発事例はこちらもご参照ください。


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よくある質問(FAQ)

Q1. 個人経営の飲食店でもIT補助金は使えますか?

A1. 使えます。IT導入補助金は個人事業主も申請可能です。従業員5人以下であれば、小規模事業者持続化補助金も併せて検討できます。gBizIDプライムの取得が必要なので、早めに準備しておくことをおすすめします。

Q2. POSレジの端末(ハードウェア)も補助対象になりますか?

A2. IT導入補助金の通常枠ではハードウェアは原則対象外ですが、インボイス枠(デジタル化基盤導入枠)ではPOSレジ端末も補助対象になります。ハードウェアの補助率は最大1/2、補助上限は20万円です。ソフトウェアとセットで申請する形になります。

Q3. すでに使っているPOSレジのバージョンアップは補助対象ですか?

A3. 既存ツールのバージョンアップは原則として補助対象外です。IT導入補助金は「新たなITツールの導入」が対象です。ただし、旧システムから新システムへの乗り換え(新規契約)であれば補助対象になるケースがあります。詳細はIT導入支援事業者に確認してください。

Q4. 申請から導入完了までどのくらいの期間がかかりますか?

A4. gBizIDの取得に2〜3週間、交付申請から採択結果の通知まで約1ヶ月、導入・検証に1〜2ヶ月が目安です。全体で3〜4ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。


参考資料

  • 中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/
  • 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金」公式サイト https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/
  • 日本政策金融公庫「飲食業の景況等調査」(2024年10月公表) https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/seikatsu_findings241025.pdf
  • 中小企業庁「2024年版 中小企業白書」(2024年4月公表) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/chusho.html