結論:違反の約8割は「支払期日」と「条件明示」の2類型。フリーランスへの発注は、この2点を直せばリスクの大半が消える
2026年(令和8年)6月10日、公正取引委員会は 令和7年度におけるフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の運用状況 を公表した。フリーランス側からの違反被疑行為の申出は 604件、新規に調査へ着手した件数は 1,626件。措置としては 指導1,542件・勧告10件 に達し、違反行為の改善による原状回復は 総額1,734万円 となった。
注目すべきは違反の中身だ。措置件数1,552件に対し認定された違反行為2,727件のうち、期日における報酬支払義務違反が1,135件(41.6%)、取引条件の明示義務違反が1,126件(41.3%)。この2類型だけで 約8割 を占める。3番目の買いたたきは250件(9.2%)で、上位2類型から大きく離れる。
つまり、フリーランスエンジニアや副業人材に業務を発注している企業にとって、リスクの大半は高度な法解釈の問題ではない。「発注時に条件を書面等で明示しているか」「報酬を期日どおり(受領から60日以内)に払っているか」 という、発注実務の基本動作の問題だ。逆に言えば、この2点を仕組みで担保すれば、違反の約8割に相当する領域を一度に塞げる。
押さえるべき1点:企業間の外注を規律する取適法とは別に、個人(フリーランス・副業人材)への委託はフリーランス法 が規律する。点検対象が異なるため、両方の発注経路を別々に棚卸しする必要がある。
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公表数値の全体像
| 項目 | 令和7年度 | |
|---|---|---|
| フリーランスからの申出 | 604件 | |
| 新規着手件数 | 1,626件 | |
| 指導 | 1,542件 | |
| 勧告 | 10件 | |
| 原状回復額 | 総額1,734万円 | |
| 違反行為の内訳(認定2,727件中) | 件数 | 割合 |
| 期日における報酬支払義務違反 | 1,135件 | 41.6% |
| 取引条件の明示義務違反 | 1,126件 | 41.3% |
| 買いたたき | 250件 | 9.2% |
フリーランス法は2024年11月に施行された比較的新しい法律だが、施行3年目に入る前の段階で年間1,500件超の指導が出ている。申出窓口が機能しており、発注先のフリーランス本人が違反を申し出る経路が現実に使われている ことを意味する。「現場同士の信頼関係でやってきたから大丈夫」という想定は、もはや成立しない。
なお、フリーランス法の施行規則とガイドライン(考え方)の改正が 2026年(令和8年)1月1日に施行 されている。発注実務のルールは更新され続けているため、最新の規則・ガイドラインに沿った運用かどうかも合わせて確認したい。
違反の8割を防ぐ「2点チェック」
点検1:取引条件の明示(発注の書面化)
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フリーランスへの発注すべてについて、業務の内容・報酬の額・支払期日などの取引条件を、書面または電磁的方法(メール等)で 発注の都度 明示しているか
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口頭・電話・チャットの「お願いベース」発注が残っていないか(継続取引ほど明示が省略されがちで、明示義務違反1,126件の温床になりやすい)
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追加作業・スコープ変更時に、条件を明示し直しているか
点検2:報酬の支払期日(60日ルール)
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支払期日を、給付を受領した日から起算して 60日以内 に設定しているか
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「検収完了後」「月末締め翌々月末払い超過」など、実質的に60日を超える運用になっていないか
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経理処理の遅れで期日を徒過するケースがないか(支払期日関連の違反1,135件は最多類型であり、社内の支払フローそのものが点検対象になる)
この2点は、発注テンプレートと支払ワークフローを整備すれば仕組みで防げる。属人的な注意喚起ではなく、発注書面の自動生成と支払期日のシステムチェック まで落とし込むのが本筋だ。なお、企業間のシステム開発外注については、同日に公表された取適法の運用状況(勧告39件・指導8,261件)を取適法 初年度の運用状況と発注側コンプライアンスで解説している。発注先が法人か個人かで適用法が変わる点に注意してほしい。
IT内製化と外部人材活用の「構造」も見直す
フリーランスエンジニアや副業人材の活用は、IT人材不足を補う有効な手段だ。一方で、外部人材への依存度が上がるほど、発注管理の負荷とコンプライアンスリスクも比例して増える。発注件数が増え、条件明示や支払管理が追いつかなくなる構造こそが、違反2類型の背景にある。
中長期では、外部人材に「作業」を切り出すだけでなく、開発パートナーとの伴走で社内に開発力を残す選択肢も検討に値する。この論点はIT人材不足時代の伴走型・共同開発という選択肢で詳しく扱った。また、フリーランスへの委託では成果物の権利帰属も紛争の火種になりやすい。成果物の権利帰属の決め方と知財・著作権条項の落とし穴も合わせて点検したい。
よくある質問(FAQ)
Q. 副業のエンジニアに単発で発注する場合もフリーランス法の対象か? A. フリーランス法は、従業員を使用しない個人等(特定受託事業者)への業務委託を広く対象とする。取引条件の明示義務は発注事業者に広く課されるため、単発・少額の発注でも書面等での条件明示を省略しない運用が安全だ。個別の該当性判断は公正取引委員会の公表資料・ガイドラインで確認してほしい。
Q. 支払期日はどう設定すればよいか? A. 給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で設定するのが原則だ。令和7年度の違反で最多だったのは支払期日関連(1,135件・41.6%)であり、期日の設定だけでなく「期日どおりに払う」社内フローの整備までが点検範囲になる。
Q. 違反するとどうなるのか? A. 令和7年度は指導1,542件・勧告10件が行われ、原状回復は総額1,734万円に上った。フリーランス本人からの申出(604件)を起点に調査が始まる経路が機能しているため、「発注先との関係が良好だから表面化しない」とは考えない方がよい。
いつGXOに相談すべきか
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参考資料
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公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス法の運用状況(令和8年6月10日)」 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/jun/260610_FL.html
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公正取引委員会(公式サイト) https://www.jftc.go.jp/
本記事は 2026 年 6 月 11 日時点の公開情報をもとに作成。運用状況の数値は公正取引委員会の公表資料に基づく。個別取引のフリーランス法該当性・違反該当性の判断が必要な場合は、弁護士等の専門家に相談すること。
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