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令和7年度の勧告39件・指導8,261件|下請法から取適法への移行初年度、システム開発の外注で問われる「発注側コンプライアンス」への備え方

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COLUMN

結論:執行は「年8,000件超の指導」が常態。従業員数基準の追加で、これまで対象外だった中堅企業が「発注側」規制の当事者になった

2026年(令和8年)6月10日、公正取引委員会は 「令和7年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組」 を公表した。なお令和7年度(2025年4月〜2026年3月)は、年度途中の2026年1月1日に旧下請法が取適法へ移行した年度であり、以下の件数は旧下請法期間と取適法期間を通算した令和7年度全体の数字である。数字は重い。勧告39件、指導8,261件。違反行為の改善により中小受託事業者が受けた原状回復は、委託事業者177名から中小受託事業者5,165名に対し総額25億5,698万円相当 に上る。さらに、違反を自ら申し出る「自発的申出」は同年度に53件受け付けられ、自発的申出による原状回復は 対象中小受託事業者1,234名・12億1,019万円相当 に達した。

ここで押さえるべき構造変化が一つある。令和7年度(2025年4月〜2026年3月)は、年度途中の 2026年1月1日に旧下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」へ移行した年度 だ。取適法では、従来の資本金基準に加えて 従業員数基準(300人・100人) が追加され、規制と保護の対象が拡大した。資本金を1,000万円以下に抑えて旧下請法の「親事業者」に該当してこなかった企業でも、従業員数によっては発注側(委託事業者)として規制の当事者になる

システム開発・保守・Web制作などの外注は、取適法の対象取引である「情報成果物作成委託」に正面から該当する。発注書面の明示、受領から60日以内の支払期日、仕様変更時の代金処理、検収を口実にした支払遅延——これらは今後、発注側の経営リスク として管理すべきテーマだ。

押さえるべき1点:年間8,261件の指導は「摘発されるのは一部の悪質企業だけ」という想定をすでに超えている。自社が委託事業者に該当するかの判定と、発注実務の点検を先に済ませた企業から、リスクは消えていく。

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公表数値の全体像:勧告39件の中身は「利益提供要請」が突出

公正取引委員会の公表によれば、令和7年度の勧告39件の対象となった違反行為類型は次のとおりだ(1件の勧告に複数の違反行為類型が含まれる場合があるため、合計は勧告件数と一致しない)。

違反行為類型(勧告対象)件数
不当な経済上の利益の提供要請31件
製造委託等代金の減額6件
返品6件
不当な給付内容の変更等1件
買いたたき1件

「不当な経済上の利益の提供要請」とは、自己のために中小受託事業者に金銭や役務等を不当に提供させる行為だ。情報成果物作成委託の文脈に置き換えれば、契約外の無償作業・無償サポート・協賛金等の要請 がこの類型に近づく。「減額」「返品」「不当な給付内容の変更等」も、システム開発の現場では 検収後の値引き要求、一方的な発注取消し、無償でのやり直し・追加作業 として現れる。

なお、同じ週の6月8日には独占禁止法違反事件の処理状況(令和7年度)も公表されており、排除措置命令11件、課徴金納付命令は総額95億5,373万円、優越的地位の濫用関連では注意27件などの処理が示された。取引適正化への執行は、取適法と独占禁止法の両輪で強化されている。

自社が「委託事業者」に該当するか:判定表

取適法の適用は「①取引の内容」と「②資本金基準又は従業員数基準」で決まり、いずれかの基準に該当すれば適用対象 となる。システム開発の外注に関係が深い部分を整理する(公正取引委員会リーフレット準拠)。

取引の内容発注側(委託事業者)受託側(中小受託事業者)
プログラム作成の委託(製造委託等と同区分)資本金3億円超資本金3億円以下
資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下
従業員300人超従業員300人以下
プログラム作成以外の情報成果物作成委託(Webデザイン等)資本金5千万円超資本金5千万円以下
資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下
従業員100人超従業員100人以下

太字の従業員数基準が2026年1月施行の取適法で追加された部分だ。資本金1,000万円以下でも従業員数が基準を超えていれば委託事業者に該当し得る。「うちは親事業者ではないから関係ない」という旧下請法時代の整理は、もはや通用しない。

あわせて取適法では、手形払の禁止(その他の支払手段も、支払期日までに代金相当額満額を得ることが困難なものは禁止)と、協議に応じない一方的な代金決定の禁止(価格協議の求めに応じない、必要な説明を行わない等)が新たに規定された。発注側の支払条件と価格交渉プロセスそのものが規制対象になったということだ。

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システム開発・保守の発注で問題になりやすい3場面

委託事業者には4つの義務(発注内容等の明示、書類等の作成・保存〔2年間〕、受領から60日以内の支払期日設定、遅延利息〔年率14.6%〕の支払)と11の遵守事項が課される。情報成果物作成委託で特に事故が起きやすいのは次の3場面だ。

1. 仕様変更時の代金処理:開発途中の仕様変更で作業が増えたのに代金を据え置く、無償で「ついで対応」をさせる——中小受託事業者に責任がないのに無償でやり直しや追加作業をさせることは「不当な給付内容の変更、やり直し」として禁止行為に当たり得る。仕様変更管理と代金改定のルールを契約段階で決めておくことが防波堤になる。契約形態の設計はAI開発・システム開発の契約形態の選び方で詳しく整理している。

2. 検収と支払サイト:支払期日は「検収完了日」ではなく 給付の受領日から起算して60日以内 で定める必要がある。検収を理由に支払を遅らせる運用は支払遅延のリスクを抱える。検収そのものの設計は検収基準・受入条件の決め方を参照してほしい。

3. 発注書面の明示:給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法等を書面又は電磁的方法で明示する義務がある。チャットや口頭での「とりあえず着手して」は、明示義務違反と後日の紛争の両方の火種になる。

なお、個人のフリーランスエンジニアへの発注は取適法ではなく フリーランス法 の射程となる。同日に公表されたフリーランス法の運用状況(指導1,542件)はフリーランス法違反、指導1,542件の中身で別途解説している。企業間委託と個人委託で点検対象が異なる点に注意したい。

発注側コンプライアンス点検チェックリスト

  • 該当性判定:自社の資本金・従業員数と、外注先の資本金・従業員数を突き合わせ、取引ごとに委託事業者該当性を判定したか。

  • 発注書面:全ての外注について、給付内容・代金額・支払期日・支払方法を書面又は電磁的方法で明示しているか(口頭・チャット発注の残存洗い出し)。

  • 支払サイト:支払期日が受領日から60日以内に設定されているか。検収起算になっていないか。手形払等が残っていないか。

  • 仕様変更ルール:変更管理手順と代金改定の協議プロセスが契約・運用に組み込まれているか。無償やり直しの慣行がないか。

  • 価格協議:受託側からの価格協議の求めに応じる窓口とプロセスがあるか。協議拒否・説明拒否が起きない体制か。

  • 記録保存:取引記録を2年間保存する運用が回っているか。

  • 現場教育:購買・情シス・事業部門の発注担当者が、禁止行為11項目を知っているか。

チェックの勘所:規程を作るだけでは現場の発注は変わらない。発注書面の自動生成・支払期日の自動チェック・変更管理の証跡化 など、システムで統制する仕組みまで落とし込むことが、年8,000件超の指導時代の実務だ。

よくある質問(FAQ)

Q. 仕様変更で追加作業が発生したのに追加費用を払わないのは違反か? A. 中小受託事業者に責任がないのに発注内容の変更や無償のやり直し・追加作業をさせることは、取適法の禁止行為(不当な給付内容の変更、やり直し)に該当し得る。仕様変更時は協議のうえ代金に反映するのが原則であり、令和7年度の勧告でも「不当な経済上の利益の提供要請」が31件と突出している点は重く見るべきだ。

Q. 資本金1,000万円以下の会社でも発注側として規制されるのか? A. され得る。2026年1月施行の取適法で従業員数基準(プログラム作成等は300人、それ以外の情報成果物作成委託等は100人)が追加されたため、資本金が小さくても従業員数が基準を超えていれば委託事業者に該当し得る。資本金と従業員数の両方で判定が必要だ。

Q. 違反に気づいた場合はどうすべきか? A. 公正取引委員会は違反行為の自発的申出を運用しており、令和7年度は53件の申出があり、自発的申出による原状回復は12億1,019万円相当に上った。社内調査で問題を把握したら、是正と原状回復を先送りしないことが結果的に傷を浅くする。具体的な対応は弁護士等の専門家に相談してほしい。

いつGXOに相談すべきか

  • 外注先との発注書面・検収・支払期日の運用がバラバラで、取適法対応を仕組み化したい

  • 仕様変更・追加作業の変更管理と代金協議の証跡をシステムで残せるようにしたい

  • そもそも外注に依存しすぎた開発体制を見直し、内製とのバランスを再設計したい

発注側コンプライアンスは、規程の整備だけでなく、発注・検収・支払のプロセスをシステムとして統制できるかで決まる。GXOはシステム開発の実務を踏まえ、購買・発注管理の業務システム構築から、開発委託契約の進め方の整理、DX・業務システムの再設計までを支援する。発注実務の点検を「紙のチェックリスト」で終わらせたくない場合に相談してほしい。→ 発注管理・システム開発の無料相談はこちら

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参考資料

本記事は 2026 年 6 月 11 日時点の公開情報をもとに作成。運用状況の数値は公正取引委員会の公表資料に基づく。個別取引の取適法該当性・違反該当性の判断が必要な場合は、弁護士等の専門家に相談すること。

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