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EU AI Act「デジタル・オムニバス」改正、理事会が最終承認(6/29)|延期は高リスクのみ、8/2の表示義務は変わらず

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目次

2026年6月29日、EU理事会はAI Act(Regulation (EU) 2024/1689)を簡素化する「デジタル・オムニバス」改正案を最終承認した。欧州議会も6月16日に承認済みで、EUの立法プロセス上の主要な手続きは完了した。改正の柱は、単体で提供される高リスクAIシステム(附属書III)の義務適用を2026年8月2日から2027年12月2日へ、製品組込型の高リスクAI(附属書I)を2027年8月2日から2028年8月2日へ延期することだ。一方、チャットボットや生成AIの利用者向け表示義務(第50条)は延期の対象になっておらず、2026年8月2日のまま適用が始まる。あわせて、実在の人物の性的・親密な画像を同意なく生成・加工するAI(いわゆるヌーディファイア)を禁止する規定も新設され、2026年12月2日から適用される。

「延期」という一語だけがひとり歩きしている状況が、今回の理事会最終承認で終わった。5月の暫定合意・6月の議会承認は途中経過だったが、6月29日で両立法機関の承認がそろい、あとは官報公布と発効を待つ段階に入った。

早見表:延期される項目・変わらない項目・新設される禁止

区分これまでの適用予定日今回の改正後
高リスクAI(附属書III・単体提供)2026年8月2日2027年12月2日へ延期
高リスクAI(附属書I・製品組込)2027年8月2日2028年8月2日へ延期
生成AI表示義務(第50条・チャットボット等)2026年8月2日変更なし、2026年8月2日のまま
生成物の機械可読マーキング(電子透かし等・第50条2項)2026年8月2日2026年8月2日より前に市場投入済みの既存システムに限り2026年12月2日へ猶予。8月2日以降に新規投入するシステムは8月2日から即時対応必須
加盟国の規制サンドボックス整備義務2026年8月2日2027年8月2日へ延期
ノーコンセント性的画像生成AIの禁止(新設)(規定なし)2026年12月2日から適用
禁止行為(第5条・既存分)/汎用AIモデル規則2025年2月・2025年8月から適用済み変更なし、既存分は延期対象に含まれない

延期されているのは表の上2行、すなわち高リスクAIシステムそのものの義務(適合性評価、リスク管理体制、技術文書など重い実装コストを伴う項目)である。生成AIやチャットボットを使ったサービスを提供している企業が最も気にすべき第50条の表示義務は、一貫して据え置かれたままだ。

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なぜ「6月29日の最終承認」が重要なのか

これまでのAI Act延期の報道は、法的には確定していない段階のものだった。5月上旬の政治合意は交渉担当者間の暫定的な一致にすぎず、6月16日の欧州議会承認もEU立法プロセスの片側でしかない。理事会が最終承認する6月29日までは、法律事務所の解説でも「現行の8月2日という期日は依然有効」という留保付きの説明が続いていた。

今回の承認で共同立法者である欧州議会と理事会の双方がそろった。残る手続きは改正規則の署名とEU官報への公布で、規則は公布の3日後に発効する。正確な公布日は本稿執筆時点(2026年7月2日)では未確定だが、8月2日の期日到来前に公布・発効する見通しで進んでいる。「延期されるらしいが確定は先」という前提で情報収集していた企業も、今回の承認で日程の骨格はほぼ固まったとみてよい段階に移った。

裏を返せば、日程が固まった今こそ「高リスクだけが延びた」「表示義務は変わらない」という2点を社内の期限管理表に正式な数字として落とし込むタイミングである。延期が暫定段階だった時点の整理はEU AI Act 高リスク義務が延期合意か|公布前の今、日本の輸出企業がやめてはいけない準備、第50条の実装論点はEU AI法 第50条「透明性義務」8月2日施行:締切まで約5週間で何をすべきかを参照してほしい。

どんな日本企業が対象になりうるか

AI Actは、EU域内に法人があるかどうかではなく、EU市場に製品・サービスを提供しているか、AIシステムの出力がEU域内で利用されているかで適用が判断される域外適用の枠組みを持つとされる。見落としやすいのは、越境ECサイトのAIレコメンド・チャット窓口、EU向け製品を持つ製造業・SaaSの問い合わせAI、EU向け広告クリエイティブを生成AIで作る代理店など、自社で「高リスクAI」を意識していない立場だ。

こうした企業がまず整理すべきなのは、自社が高リスクAIの提供者・利用者に該当するかどうかではなく、EU向けにAIと対話する画面や生成コンテンツを届けているかどうかである。高リスクの該当性は多くの中小企業にとって限定的だが、チャットボットの表示義務は該当範囲が広く対応漏れが起きやすい。

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自社影響チェックリスト

  • EU向けWebサイト・アプリに、AIチャットボットや自動応答機能があるか棚卸しした
  • そのチャットボットに「AIと対話している」旨の表示が実装されているか確認した
  • EU向けにAIで生成した画像・音声・動画・テキストを配信している業務があるか洗い出した
  • 生成コンテンツへの機械可読マーキング対応について、自社のシステムが8月2日より前の既存システム(12月2日まで猶予)か、8月2日以降の新規システム(猶予なし・即時対応)かを区別して社内で共有した
  • 自社サービスの画像生成・加工機能に、実在人物の性的・親密な画像を生成しうる用途が含まれていないか点検した
  • 自社のAI機能が高リスク(附属書III・附属書I)に該当する可能性があるか、一次仕分けを行った

この記事を読むべき人

越境EC・海外事業の責任者(高リスク延期と表示義務維持の切り分け)、法務・コンプライアンス担当者(6月29日最終承認による法的位置づけの変化)、プロダクト・開発責任者(表示・マーキングの実装期限)、そして「延期=対応不要」と誤解しかけている経営層に向けた記事である。

いつGXOに相談すべきか

  • EU向けサービスにAIチャットボットや生成AI機能があるが、第50条の表示義務への該当性を自社だけで判断できない
  • 高リスクAIの該当性と表示義務の対象範囲を切り分けた棚卸しを、技術と法令の両面から進めたい
  • 生成コンテンツへのマーキング実装や、チャットボットの開示UIをどう設計すればよいか分からない

GXOでは、自社のAI活用状況とリスクを可視化するAIアセスメント、生成AIのガバナンス設計や利用ルール整備を支援するAIガバナンス・LLMOps構築支援、チャットボットや生成AI機能そのものの実装を担うAI・自動化支援を組み合わせ、EU規制を意識したAI導入・運用の整理を支援している。

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FAQ

Q1. 高リスクAIの義務が延びたので、自社のチャットボットの対応も先送りしてよいですか。

先送りは推奨しない。延期の対象は高リスクAIシステム(附属書III・附属書I)の義務であり、生成AI・チャットボットの表示義務を定める第50条は延期されておらず、2026年8月2日のまま適用が始まる。両者は別の義務であり、混同すると対応漏れにつながる。

Q2. 生成コンテンツへの電子透かし(マーキング)対応も8月2日に間に合わせる必要がありますか。

機械可読マーキングの義務(第50条2項)は、2026年8月2日より前に市場投入済みの既存システムに限り、今回の改正で2026年12月2日まで対応が猶予される「グランドファザリング」規定が設けられた。8月2日以降に新規で市場投入する生成AIシステムは、この猶予の対象外で8月2日から即時対応が必要になる点に注意してほしい。一方、表示義務そのもの(AIとの対話や生成物であることを伝える対応。第50条1項・3項・4項)は新旧システムを問わず一貫して8月2日のままで、移行期間は設けられていない。猶予されるのはあくまで電子透かし等の技術的なマーキング実装部分に限られる。同じ12月2日から、ノーコンセント性的画像生成AI(ヌーディファイア)の禁止も適用される。

Q3. 日本にしか拠点がなくても対象になりますか。

なりうる。AI Actは、EU市場に製品・サービスを提供している場合や、出力がEU域内で利用される場合に域外適用が及ぶ枠組みを持つとされる。EU法人の有無ではなく「EU向けにAIを提供・利用しているか」で判断される。最終的な適用判断は、EU法に精通した専門家への確認を前提とする。

まとめ

6月29日のEU理事会最終承認により、AI Act「デジタル・オムニバス」改正は法的な骨格がほぼ固まった。延期されるのは高リスクAIシステムの義務だけであり、チャットボットや生成AIの表示義務(第50条)は8月2日のまま変わらない。ノーコンセント性的画像生成AIの禁止も12月2日から新たに適用される。「延期されたから安心」のまま8月2日を迎えると、表示義務の対応漏れにつながる。自社のAI機能がどの義務に当たるかを棚卸しし、対応を切り分けてほしい。

出典

本記事は2026年7月2日時点の公開情報をもとに作成。正式な公布日・発効日はEU官報での公布内容を確認すること。個別企業の適合判断はEUに精通した法務・規制専門家に確認することを前提とする。

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