結論:淘汰されたのは「コンサル」ではなく「AIで代替できる付加価値の薄い業務」。同じ構造は全業種にある

帝国データバンクが今月公表した調査によれば、経営コンサルタント業の倒産・休廃業解散は2026年1〜5月で計242件(倒産74件+休廃業・解散168件)にのぼり、前年同期を1割超上回るペースで推移している(うち休廃業・解散は168件で前年同期149件から12.8%増)。このままいけば 年間600件超、2000年以降で最多 になると予測される。経営コンサルティング市場自体は2023年度に4兆円を突破し従業員数は17万人に達した成長産業だが、伸び率は縮小し、拡大期からの転換が鮮明 になったと分析されている。

退出の背景として同調査が挙げる要因は示唆的だ。第一に、基礎的リサーチや汎用的な研修コンテンツが生成AIで急速に代替 され、専門性による差別化が難しくなったこと。第二に、IT導入補助金などの申請代行を主要収入源としてきた事業者 が、審査の厳格化・参入増・顧客需要の一巡で立ち行かなくなったこと。加えて、代行業務のみへの依存や節税スキーム指南のような制度の“さや抜き”主体のビジネス、1案件への依存度が高い小規模事業者の脆弱性も指摘されている。

これを「コンサル業界の話」と読むのはもったいない。淘汰されたのはコンサルという職業ではなく、「調べて、まとめて、定型の成果物にする」という、生成AIが最も得意とする業務を主力にしていた事業構造 だ。同じ構造——情報の仲介、定型文書の作成、横流しに近い代行——は、製造・卸・士業・広告・人材・受託開発まで、ほぼすべての業種の中に部分的に存在する。問われているのは「自社の中のどの業務が“代替される側”で、どこで“AIを使う側”に回るか」である。

押さえるべき1点:生成AIの脅威は「仕事が消える」ことではなく、自社の付加価値の源泉が“AIで誰でもできること”に置かれていたと判明する ことだ。先に気づいた側が、AIを道具にして差を広げる。


調査の要点(帝国データバンク公表・2026年6月)

項目内容
退出件数(2026年1〜5月)計242件(倒産74件・休廃業/解散168件)。前年同期を1割超上回るペース(休廃業・解散は前年同期149件→168件で12.8%増
年間予測600件超(2000年以降で最多の見込み)
市場規模2023年度に4兆円突破、従業員数17万人。ただし伸び率は縮小し拡大期から転換
要因①基礎的リサーチ・汎用的研修コンテンツが生成AIで急速に代替され、差別化が困難に
要因②IT導入補助金等の申請代行依存ビジネスが、審査厳格化・参入増・需要一巡で限界
要因③代行のみ依存・制度の“さや抜き”主体・1案件依存の小規模事業者の脆弱性

注意したいのは、市場全体は4兆円規模で存在し続けていることだ。つまりこれは「業界消滅」ではなく 業界内の再分配 である。AIで代替できる業務しか持たない事業者から、AIを使いこなして単価の高い仕事に集中する事業者へ、仕事と利益が移っている。


「代替される側」に共通する3つの構造

退出した事業者の構造を裏返すと、自社を点検する物差しになる。

構造1:付加価値の中身が「情報の非対称性」だけ 顧客が知らないことを知っている——それだけが価値の源泉だった業務は、顧客自身が生成AIに聞けば数秒で埋まる。基礎リサーチ、相場情報の提供、一般論の研修はその典型だ。生き残る価値は「自社の文脈に当てはめて意思決定まで伴走する」部分にしかない。

構造2:収益が制度・特需の“さや抜き”に依存 補助金申請代行のような制度依存ビジネスは、制度変更ひとつで需要が消える。自社の売上の何割が「制度がある間だけ成立する仕事」かを直視する必要がある。

構造3:定型作業の量で稼ぐモデル 文書作成・転記・集計・定型報告の工数を人月で売るモデルは、発注側がAIで内製した瞬間に消える。これは受託側だけでなく、社内の間接部門にも同じ刃が向く。「AIを導入したのに成果が出ない」企業の多くは、AI導入企業の約4割が期待外れに終わる構造で解説した通り、この定型業務の見直しに踏み込まず周辺ツールだけ入れている。


自社業務のAI代替リスク自己診断(5問)

経営者・事業責任者向けに、自社(または自部門)の点検質問を5つ挙げる。

  1. 自社の主力業務のうち、「調べる・まとめる・定型文書を作る」が占める割合は何%か?——3割を超えるなら、その部分は顧客・発注元がAIで内製する候補である
  2. 顧客が生成AIを使いこなした場合、それでも自社に頼む理由を一文で言えるか?——言えないなら付加価値の再定義が先決
  3. 売上のうち、特定の制度・特需(補助金・規制対応・一時的ブーム)に依存する割合は?——制度終了を想定したシナリオがあるか
  4. 社内の定型業務(転記・集計・報告書作成)をAIで自動化した場合、何人月分が浮くか試算したことがあるか?——試算がない=競合だけが先に原価を下げるリスク
  5. 過去1年で、AIを使って「新しい商品・サービス・提供方法」を1つでも出したか?——守り(効率化)だけで攻めがゼロなら、再分配の受け手側に回れていない

3問以上で答えに詰まる場合、自社は「使う側」ではなく「代替される側」の構造を内包している可能性が高い。現在地を客観的に測りたい場合は、DX成熟度診断で自社のデジタル活用の立ち位置を確認するところから始めるとよい。


「AIを使う側」に回る経営判断:順番を間違えない

代替リスクへの正しい応答は「AIを禁止する」でも「とりあえず全社にチャットAIを配る」でもない。退出事例の裏返しとして、打ち手の順番はこうなる。

  1. 付加価値の再定義(経営マター):自社が顧客に選ばれる理由のうち、AIで代替できない部分(固有データ、現場知、関係性、責任の引き受け)を言語化する
  2. 定型業務の原価圧縮(守り):診断4問目で試算した定型業務から自動化する。浮いた工数は削減ではなく、1で定義した付加価値業務へ再配置する
  3. 固有データの武器化(攻め):自社にしかない業務データ・顧客データをAIで使える形に整える。ここは味の素のAI-Readyデータ基盤事例が示す通り、ツール選定よりデータ側の整備が本丸だ
  4. 外部の手の選び方を変える(調達):「作って終わり」の受託や代行型の支援は、まさに淘汰されつつあるモデルである。内製力が移転される伴走型を選ぶべきで、その判断軸はIT人材不足時代の伴走型共同開発で詳しく解説している

幸い、道具側の条件は急速に良くなっている。Claude Fable 5のような最上位モデルが従量課金で使えるようになり、「大企業しかAIを使えない」時代は終わった。差がつくのは予算規模ではなく、どの業務に当てるかの経営判断の質と速さ である。


よくある質問(FAQ)

Q. コンサル業界の話が、なぜ製造業や中小企業に関係あるのか? A. 退出要因(基礎リサーチ・定型成果物のAI代替、制度依存、代行依存)は職業ではなく業務構造の問題であり、同じ構造はあらゆる業種の社内・取引先に存在するからだ。自社の業務と外注先の双方を同じ物差しで点検する材料になる。

Q. まず何から始めればよいか? A. 本記事の自己診断5問を経営会議で答えること。特に「定型業務をAI化したら何人月浮くか」の試算と「顧客がAIを使っても自社に頼む理由」の言語化が出発点になる。数字がなければ判断も投資もできない。

Q. AI導入はベンダーに任せれば済むか? A. 済まない。淘汰されたのは「任せれば済む」型の代行ビジネスそのものだ。付加価値の再定義は経営にしかできず、外部パートナーは試算・設計・実装と内製力の移転を担う分業が健全である。


いつGXOに相談すべきか

  • 自社業務のどこがAIに代替されやすく、どこで使う側に回れるか、経営判断に使える形で棚卸しできていない
  • 定型業務の自動化で 何人月・いくら浮くかの試算 がなく、投資判断が進まない
  • 固有データを武器にしたいが、データ整備とシステム化の進め方 が分からない

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参考資料

  • 帝国データバンク「経営コンサルタント業の倒産・休廃業解散動向(2026年1-5月)」(PR TIMES掲載・2026年6月5日公表) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001352.000043465.html

本記事は2026年6月11日時点の公開情報をもとに作成。倒産・休廃業解散の件数・予測値は帝国データバンクの公表資料に基づく。年間予測は同社の見通しであり、実績値は今後変動する。


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