2024年4月から中小企業にも適用された「働き方改革関連法」により、残業時間の上限規制や年次有給休暇の取得義務化が厳格化されています。この影響で「勤怠管理システムを導入したい」という企業の需要が急増しており、デロイトの調査では国内企業の約70%が勤怠管理のデジタル化を優先課題と認識しています。
しかし、選択肢は「SaaSを導入する」か「自社開発する」かの大きく2つに分かれ、費用は月額200円/人から自社開発800万円まで幅広い状況です。本記事では、主要SaaS 5社の料金比較と自社開発の費用相場を整理し、自社に最適な選択肢を判断するためのガイドをお届けします。
目次
- 主要SaaS 5社の料金・機能比較
- 自社開発の費用相場
- SaaS導入 vs 自社開発の判断基準
- 勤怠管理システムの必要機能マトリクス
- 他システムとの連携コスト
- 導入・開発の進め方
- よくある質問(FAQ)
1. 主要SaaS 5社の料金・機能比較
まず、市場シェアの高い勤怠管理SaaS 5社を比較します。
料金比較表
| サービス名 | 初期費用 | 月額料金(1人あたり) | 無料プラン | 最低利用人数 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| KING OF TIME | 0円 | 300円 | 30日間無料 | 1人〜 | 業界シェアNo.1、豊富な打刻方法 |
| ジョブカン勤怠管理 | 0円 | 200〜500円 | 10人まで無料 | 1人〜 | 低コスト、シンプルなUI |
| freee勤怠管理Plus | 0円 | 300円 | なし | 1人〜 | freee会計との連携が強力 |
| HRMOS勤怠 | 0円 | 100〜300円 | 30人まで無料 | 1人〜 | ビズリーチ系列、採用連携 |
| Touch On Time | 0円 | 300円 | 30日間無料 | 1人〜 | 打刻機器レンタル込み |
機能比較マトリクス
| 機能 | KING OF TIME | ジョブカン | freee勤怠 | HRMOS | Touch On Time |
|---|---|---|---|---|---|
| PC打刻 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| スマホ打刻(GPS) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ICカード打刻 | ○ | ○ | △ | △ | ○ |
| 顔認証打刻 | ○ | × | × | × | ○ |
| シフト管理 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 有休管理 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 残業アラート | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 36協定管理 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 給与計算連携 | ○ | ○ | ◎(freee連携) | ○ | ○ |
| API連携 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ |
| 英語対応 | ○ | ○ | × | △ | ○ |
100人規模の年間コスト比較
| サービス | 月額 | 年額 | 5年間総額 |
|---|---|---|---|
| KING OF TIME | 30,000円 | 360,000円 | 180万円 |
| ジョブカン(スタンダード) | 40,000円 | 480,000円 | 240万円 |
| freee勤怠管理Plus | 30,000円 | 360,000円 | 180万円 |
| HRMOS勤怠 | 30,000円 | 360,000円 | 180万円 |
| Touch On Time | 30,000円 | 360,000円 | 180万円 |
セクションまとめ:主要SaaS5社の月額料金は200〜500円/人と大きな差はありません。選定のポイントは「打刻方法の選択肢」「既存の給与計算ソフトとの連携」「UI/UXの使いやすさ」です。
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2. 自社開発の費用相場
SaaSでは対応できない独自の要件がある場合、自社開発(カスタム開発)が選択肢になります。
規模別の費用一覧
| 規模 | 費用相場 | 開発期間 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| 基本型 | 100〜300万円 | 1〜3ヶ月 | 打刻、勤務時間集計、有休管理、CSVエクスポート |
| 標準型 | 300〜500万円 | 2〜5ヶ月 | 基本型+シフト管理、残業アラート、承認ワークフロー、スマホ対応 |
| 高機能型 | 500〜800万円 | 4〜8ヶ月 | 標準型+給与連携、工数管理、多拠点対応、BI連携、AI勤怠予測 |
自社開発の費用内訳
| 工程 | 構成比 | 300万円の場合 |
|---|---|---|
| 要件定義・設計 | 15〜20% | 45〜60万円 |
| UI/UXデザイン | 10〜15% | 30〜45万円 |
| フロントエンド開発 | 20〜25% | 60〜75万円 |
| バックエンド開発 | 25〜30% | 75〜90万円 |
| テスト | 10〜15% | 30〜45万円 |
| デプロイ・ドキュメント | 5〜10% | 15〜30万円 |
ランニングコスト(自社開発の場合)
| 項目 | 月額費用 |
|---|---|
| サーバー・インフラ | 1〜5万円 |
| 保守・運用 | 5〜20万円 |
| セキュリティ対策 | 1〜3万円 |
| 月額合計 | 7〜28万円 |
100人規模で月額7〜28万円は、SaaS(月額3万円)と比較すると高く見えますが、500人規模になるとSaaS(月額15万円)と自社開発の保守費が同等になり、1,000人規模ではSaaS(月額30万円)よりも自社開発の方がコスト優位になるケースがあります。
<div class="cta-box"> <p><strong>勤怠管理システムの開発・導入相談はこちら</strong></p> <p>GXO株式会社は、SaaS導入支援からカスタム勤怠管理システムの開発まで対応。「SaaSと自社開発、どちらが良いか」の判断からご相談いただけます。</p> <p><a href="/contact/">勤怠管理システムの無料相談・見積もりはこちら →</a></p> </div>セクションまとめ:自社開発は100〜800万円の初期投資が必要ですが、従業員500名以上の企業ではSaaSのランニングコストを上回るケースがあり、長期的に見ると自社開発の方がコスト効率が良い場合があります。
3. SaaS導入 vs 自社開発の判断基準
判断チェックリスト
| 判断項目 | SaaS導入が向く | 自社開発が向く |
|---|---|---|
| 従業員数 | 500名以下 | 500名以上 |
| 勤務形態 | 一般的(固定時間・シフト制) | 特殊(裁量労働・変形労働の複雑な組み合わせ) |
| 既存システム連携 | 給与ソフトとCSV連携で十分 | 基幹システム(ERP)とリアルタイム連携が必須 |
| 拠点数 | 1〜5拠点 | 10拠点以上・海外拠点あり |
| 打刻方法 | PC・スマホ・ICカードで十分 | 独自端末・生体認証が必要 |
| 初期予算 | 〜50万円 | 100万円以上 |
| カスタマイズ要件 | 標準機能で8割カバー | 独自の承認フロー・計算ルールがある |
5年間の総コスト比較(100人規模)
| 項目 | SaaS導入 | 自社開発(基本型) | 自社開発(標準型) |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 10万円(導入設定) | 200万円 | 400万円 |
| 月額ランニング×60ヶ月 | 180万円 | 420万円 | 480万円 |
| カスタマイズ追加 | 0円 | 100万円 | 100万円 |
| 5年間総額 | 190万円 | 720万円 | 980万円 |
5年間の総コスト比較(500人規模)
| 項目 | SaaS導入 | 自社開発(標準型) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 30万円 | 400万円 |
| 月額ランニング×60ヶ月 | 900万円 | 480万円 |
| カスタマイズ追加 | 0円 | 150万円 |
| 5年間総額 | 930万円 | 1,030万円 |
500人規模では5年間の総コストがほぼ同等になり、1,000人規模ではSaaSの方が高くなる逆転現象が起きます。
SaaSとスクラッチ開発の判断基準全般についてはSaaS vs スクラッチ開発の判断フレームワークもご覧ください。
セクションまとめ:100人規模ならSaaS一択、500人規模で要件が複雑ならカスタム開発を検討、1,000人規模以上なら自社開発の方がコスト効率が高くなる可能性が高いです。
4. 勤怠管理システムの必要機能マトリクス
法令遵守に必要な機能(必須)
| 機能 | 内容 | 関連法令 |
|---|---|---|
| 労働時間の客観的記録 | PCログ/ICカード/生体認証による打刻 | 労働安全衛生法 |
| 残業時間の上限管理 | 月45時間/年360時間の上限チェック | 労働基準法(36協定) |
| 有給休暇の取得管理 | 年5日の取得義務管理 | 労働基準法 |
| 勤務間インターバル | 終業→始業の間隔チェック | 労働時間等設定改善法 |
| 長時間労働者のアラート | 80時間超の自動検知・通知 | 労働安全衛生法 |
業務効率化に有効な機能(推奨)
| 機能 | 開発コスト目安 | 効果 |
|---|---|---|
| シフト自動生成 | 50〜100万円 | シフト作成時間を80%削減 |
| 残業申請ワークフロー | 30〜60万円 | 不要な残業の抑制 |
| 工数管理(プロジェクト別) | 40〜80万円 | プロジェクト別の原価管理 |
| ダッシュボード(部門別集計) | 30〜60万円 | 労務リスクの早期発見 |
| モバイルアプリ | 100〜200万円 | 外勤・リモートワーク対応 |
セクションまとめ:法令遵守に必要な機能は主要SaaS全てが対応しています。自社開発を選ぶメリットが出るのは「工数管理」「独自の承認フロー」「基幹システム連携」など業務固有の要件がある場合です。
5. 他システムとの連携コスト
勤怠管理システムの価値は、他の業務システムとの連携によって大きく向上します。
主要な連携先と費用
| 連携先 | 連携内容 | 追加費用(SaaS導入の場合) | 追加費用(自社開発の場合) |
|---|---|---|---|
| 給与計算ソフト | 勤怠データ→給与計算に自動反映 | CSV連携:0円 / API連携:30〜80万円 | 50〜150万円 |
| 人事管理システム | 従業員マスタの同期 | API連携:20〜50万円 | 30〜80万円 |
| プロジェクト管理 | 工数×時間の紐づけ | カスタム連携:50〜100万円 | 組み込み済(高機能型) |
| 経費精算 | 交通費の自動計算 | API連携:20〜50万円 | 30〜80万円 |
| BI・分析ツール | 勤怠データの可視化・分析 | データ連携:20〜50万円 | 30〜60万円 |
API連携の費用相場について詳しくはAPI連携開発の費用相場もご参照ください。
セクションまとめ:勤怠管理を単独で導入するのではなく、給与計算・人事管理との連携を前提に費用を見積もりましょう。連携コストも含めた総額でSaaSと自社開発を比較することが重要です。
6. 導入・開発の進め方
SaaS導入の場合(1〜2ヶ月)
| ステップ | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| 要件整理 | 1〜2週間 | 勤務形態・承認フロー・連携要件の整理 |
| SaaS比較・選定 | 1〜2週間 | 3社程度のトライアル利用 |
| 初期設定・データ移行 | 1〜2週間 | 従業員マスタ登録、勤務ルール設定 |
| テスト運用 | 2〜4週間 | 一部部署で先行運用 |
| 全社展開 | 1週間 | マニュアル整備、社内研修 |
自社開発の場合(2〜8ヶ月)
| ステップ | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| 要件定義 | 2〜4週間 | 勤務ルールの洗い出し、法令要件の確認 |
| 設計 | 2〜4週間 | DB設計、画面設計、連携設計 |
| 開発 | 1〜4ヶ月 | 実装、単体テスト |
| テスト | 2〜4週間 | 結合テスト、UAT(ユーザー受入テスト) |
| 本番リリース | 1〜2週間 | デプロイ、データ移行、社内研修 |
初めてのシステム開発外注についてはシステム開発外注ガイドも参考になります。
セクションまとめ:SaaS導入なら1〜2ヶ月、自社開発なら2〜8ヶ月が目安です。まずはSaaSのトライアルで使い勝手を確認し、要件を満たせない部分がある場合に自社開発を検討する流れが効率的です。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 既存のExcel勤怠管理から移行する際の注意点は?
過去データのフォーマット統一と、勤務ルール(残業計算方法、休日出勤の扱い等)の明文化が必要です。Excel管理では「暗黙のルール」が存在するケースが多いため、移行前にルールを整理しましょう。
Q2. テレワーク・在宅勤務に対応した勤怠管理はどうすればいいですか?
主要SaaSはPC打刻・スマホGPS打刻に対応しているため、基本的にはSaaSで対応可能です。さらに「PCログ(電源ON/OFF)との突合」「在席確認」が必要な場合はカスタム開発の検討が必要です。
Q3. 勤怠管理システム導入に補助金は使えますか?
IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠で対象になる可能性が高いです。SaaS利用料も対象になるケースがあります。詳しくは補助金実務ガイドをご確認ください。
Q4. 複数の勤務形態(正社員・パート・派遣)を1つのシステムで管理できますか?
主要SaaSは複数の勤務形態に対応しています。ただし、派遣社員固有の管理要件(派遣元への報告データ生成等)がある場合はカスタム開発の方が対応しやすい場合があります。
Q5. 既存の給与計算ソフト(弥生給与など)と連携できますか?
主要SaaSはCSV出力に対応しており、弥生給与・給与奉行・PCA給与などの主要ソフトへのデータ取り込みが可能です。API連携でリアルタイム同期する場合は別途開発が必要です。Webシステム全般の費用はWebシステム開発費用の完全内訳で解説しています。
Q6. セキュリティ面で気をつけるべきことは?
勤怠データは個人情報に該当するため、通信の暗号化(SSL/TLS)、アクセス権限管理、操作ログの記録が必須です。SaaSの場合はサービス提供者のセキュリティ認証(ISMS、SOC2等)を確認しましょう。
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追加の一次情報・確認観点
この記事の内容を社内で検討する場合は、一般論だけで判断せず、次の一次情報と自社データを照合してください。特に、稟議・RFP・ベンダー選定では「何を実装するか」よりも「どのリスクをどの水準まで下げるか」を先に決めると、見積もり比較のブレを抑えられます。
| 確認領域 | 参照先 | 自社で確認すること |
|---|---|---|
| デジタル調達 | デジタル庁 | 要件定義、調達、プロジェクト管理の標準観点を確認する |
| Webアプリ品質 | OWASP ASVS | 認証、認可、入力検証、ログ、セッション管理を確認する |
| DX推進 | 経済産業省 DX | レガシー刷新、経営課題、IT投資判断の前提を確認する |
| DX推進 | IPA デジタル基盤センター | DX推進指標、IT人材、デジタル基盤の観点で現状を確認する |
| 個人情報 | 個人情報保護委員会 | 個人情報・委託先管理・利用目的・安全管理措置を確認する |
稟議・RFPで使う数値設計
投資判断では、導入前後で測れる指標を3から5個に絞ります。下表のように、現状値・目標値・測定方法・責任者をセットにしておくと、PoC後に本番化するかどうかを判断しやすくなります。
| 指標 | 現状確認 | 目標の置き方 | 失敗しやすい例 |
|---|---|---|---|
| 対象業務数 | 現状の対象業務を棚卸し | 初期は1から3業務に限定 | 対象を広げすぎて要件が固まらない |
| 月間処理件数 | 件数、担当者、例外率を確認 | 上位20%の高頻度業務から改善 | 件数が少ない業務を先に自動化する |
| 例外対応率 | 手戻り、確認待ち、属人判断を計測 | 例外の分類と承認ルールを定義 | 例外をAIやシステムだけで吸収しようとする |
| 追加要件率 | 過去案件の変更件数を確認 | 要件凍結ラインを設定 | 見積後に仕様が増え続ける |
| 障害・手戻り件数 | 問い合わせ、障害、改修履歴を確認 | 受入基準とテスト観点を定義 | テストをベンダー任せにする |
よくある失敗と回避策
| 失敗パターン | 起きる理由 | 回避策 |
|---|---|---|
| 目的が曖昧なままツール選定に入る | 比較軸が価格や機能数に寄る | 経営課題、業務課題、測定KPIを先に固定する |
| 現場確認が不足する | 例外処理や非公式運用が見落とされる | 担当者ヒアリングと実データ確認を必ず行う |
| 運用責任者が決まっていない | 導入後の改善が止まる | 業務側とIT側の責任分界をRACIで定義する |
| RFPが抽象的で見積が比較できない | 業務フロー、データ、非機能要件が不足 | 見積前に要件定義と受入条件を固める |
GXOに相談する前に整理しておく情報
初回相談では、次の情報があると診断と提案の精度が上がります。すべて揃っていなくても問題ありませんが、分かる範囲で用意しておくと、概算費用・期間・体制の見立てを早く出せます。
- 対象業務の現行フロー、利用中システム、Excel・紙・チャット運用の一覧
- 月間件数、担当人数、手戻り件数、確認待ち時間などの概算
- 個人情報、機密情報、外部委託、権限管理に関する制約
- 希望開始時期、予算レンジ、社内承認者、決裁までの流れ
- 既存システム構成、画面・帳票・データ項目、外部連携、現行ベンダー契約
GXOでは、現状整理、要件定義、RFP作成、ベンダー比較、PoC設計、本番移行計画まで一気通貫で支援できます。記事の内容を自社に当てはめたい場合は、まずは現在の課題と制約を共有してください。
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