社員が使うパソコンやスマートフォンといった端末は、攻撃の入口になりやすい。メールの添付や不正なサイトから侵入が始まり、そこを起点に社内へ被害が広がる。この端末を守るのがエンドポイント対策である。従来はウイルスを既知のパターンで止める方式が中心だったが、近年はそれだけでは防ぎきれない攻撃が増えている。
本記事は、端末を守る対策を、EDRとMDRという考え方を中心に整理する。読者として想定しているのは、中小企業の経営者、情シス担当、事業責任者である。従来型の対策との違い、運用の負荷、そしてその負荷を外部に委託するMDRという選択肢を扱う。連載の全体像は限られた予算で何から始めるかを参照されたい。
結論:検知と対応を備え、運用は外部委託も視野に入れる
端末対策の要は、侵入を防ぐだけでなく、侵入された後に不審な挙動を検知して対応することである。そして、その運用に人手がいる点を踏まえ、専任がいなければ外部委託も検討する。GXOが重視するのは、次の3点である。
- 既知のパターンで止める対策に、挙動の検知と対応を加える
- 検知だけで終わらせず、対応する運用までを備える
- 専任の担当がいなければ、運用を外部に委託する選択肢を持つ
検知の仕組みを入れても、それを見て対応する人がいなければ機能しない。仕組みと運用は、セットで考えたい。
なぜ従来型の対策だけでは足りないのか
従来のウイルス対策は、既知の不正なプログラムをパターンで照合して止める方式が中心である。これは今も基本として有効だが、近年の攻撃には、この方式だけでは止めきれないものが増えている。
- 既知のパターンに当てはまらない、新しい手口が使われる
- 正規のツールを悪用するなど、不正と判別しにくい動きをする
- 侵入後、時間をかけて社内で被害を広げる
こうした攻撃に対しては、「何が起きているか」を見て、不審な挙動を検知する仕組みが要る。これがEDRである。従来型の対策を置き換えるのではなく、補う位置づけで考えたい。
EDRとMDRの違いを整理する
端末対策を検討すると、EDRとMDRという言葉が出てくる。混同しやすいが、役割が異なる。
| 区分 | 役割 | 運用の担い手 |
|---|---|---|
| 従来型の対策 | 既知の不正を止める | 自動で動く |
| EDR | 不審な挙動を検知し、対応を支える | 自社で監視・対応 |
| MDR | EDRの監視・対応を代行する | 外部の専門事業者 |
EDR
EDRは、端末の挙動を記録・監視し、不審な動きを検知する仕組みである。検知した後、何が起きたかを調べ、対応するところまでを支える。ただし、検知された内容を見て判断し、対応するのは人である。
MDR
MDRは、このEDRの監視・対応を外部の専門事業者が代行するサービスである。自社に専任の担当がいなくても、検知から対応までを任せられる。運用負荷を抱えきれない中小企業にとって、現実的な選択肢になる。
運用負荷をどう考えるか
EDRは導入すれば終わり、ではない。検知された不審な挙動を、誰かが見て、問題かどうかを判断し、対応する必要がある。この運用負荷を見落とすと、せっかくの検知が活かされない。
- 検知を見る人が要る:通知を受け、内容を確認する担当が必要になる
- 判断と対応に知識が要る:何が問題で、どう対応すべきかの判断には専門性がいる
- 見落とすと意味がない:検知されても対応されなければ、被害は止まらない
専任のセキュリティ担当がいない中小企業では、この運用を自社だけで担うのは難しいことが多い。そこで、MDRのように運用を外部に委託する選択肢が現実的になる。何を自社で行い、何を任せるかの切り分けは、優先順位付けと外部委託で扱う。
導入を検討するときの考え方
EDRやMDRの導入を検討するときは、製品の機能だけでなく、運用まで含めて考えたい。
- 守る端末を把握する:社内にどのような端末が、何台あるかを整理する
- 運用を誰が担うか決める:自社で監視するのか、外部に委託するのか
- 既存の対策との関係を確認する:従来型の対策と重複・補完の関係を整理する
- 検知後の連絡経路を決める:問題が見つかったとき、誰にどう伝わるかを決める
検知後の対応は、社内の体制とつながっている。誰が報告を受け、どう動くかは、インシデント対応とBCPとあわせて設計したい。
自社運用と外部委託をどう選ぶか
EDRを入れたあと、その監視・対応を自社で担うか、MDRとして外部に委託するかは、大きな分かれ道になる。どちらが適しているかは、社内の体制で決まる。
| 観点 | 自社で運用する | 外部に委託する(MDR) |
|---|---|---|
| 必要な人手 | 監視・対応する担当が要る | 外部が担う |
| 必要な知識 | 自社に専門性が要る | 外部の専門性を使える |
| 対応の速さ | 担当の稼働時間に左右される | 体制に応じて広い時間帯を任せられる |
| 費用 | 製品費用が中心 | 運用費用が加わる |
専任のセキュリティ担当がいて、対応の知識を持っているなら、自社運用も選べる。一方、専任がいない、夜間や休日の対応まで手が回らないという場合は、MDRで運用を任せるほうが現実的である。自社の体制を踏まえ、無理なく続けられる形を選びたい。
エンドポイント対策でよくある失敗
EDRやMDRの導入では、次のような失敗が起きやすい。仕組みだけに目を向け、運用を軽く見ると効果が出ない。
- 検知を放置する:EDRを入れたが、通知を見る担当がおらず、検知が活かされない
- 対応する人を決めていない:問題が見つかっても、誰が動くか決まっておらず初動が遅れる
- 従来型の対策を外してしまう:EDRがあるからと既知の不正を止める対策をやめ、足元が手薄になる
- 守る端末を把握していない:対象から漏れた端末が、攻撃の入口として残る
エンドポイント対策は、検知の仕組みと、それを見て対応する運用の両輪で機能する。導入時に、運用を誰がどう担うかまで決めておきたい。製品によっては、サイバー保険の加入条件として導入が確認されることもある。関連はサイバー保険の厳格化と加入条件で扱う。
相談・検討前に整理しておくとよいこと
エンドポイント対策の導入を検討するときは、次の点を整理しておくと、自社運用か外部委託かの判断や、製品選びがしやすくなる。
- 守る端末の種類と数:社内のパソコン・スマートフォンなどが、どのような構成で何台あるか
- 今の対策:すでに導入している従来型のウイルス対策の状況
- 運用に割ける人手:検知された内容を見て対応できる担当がいるか
- 対応したい時間帯:夜間や休日の対応まで必要か、平日の日中で足りるか
- 連絡経路:問題が見つかったとき、誰に伝わる仕組みがあるか
これらが見えていると、自社で運用を回せるのか、MDRで外部に任せたほうがよいのかが判断しやすくなる。専任の担当がいない場合でも、運用を委託する前提で考えれば、無理なく検知・対応の備えを持てる。検知後にどう動くかは、社内の対応体制とあわせて設計しておきたい。
よくある質問
Q1. 従来のウイルス対策は、もう不要になるのですか
不要にはならない。既知の不正を止める従来型の対策は、今も基本として有効である。EDRは、それを置き換えるのではなく、止めきれない攻撃を検知・対応で補う位置づけである。両方をあわせて備えるのが現実的である。
Q2. 専任の担当がいなくても、EDRを使えますか
EDR単体だと、検知された内容を見て対応する担当が必要になる。専任がいなければ、その運用を代行するMDRを利用することで、検知から対応までを外部に任せられる。自社の体制に合わせて選びたい。
Q3. 小さい会社でも、ここまでの対策が必要ですか
すべての中小企業に一律で必要とは言えないが、攻撃は対策の弱いところを広く狙う。扱う情報の重要性や、止まったときの影響を踏まえ、優先度を判断したい。運用を外部に委託すれば、小規模でも無理なく導入できる場合がある。
端末の守り方を、運用まで含めて整理しませんか
GXOでは、従来型の対策に検知と対応を加えるべきか、運用を自社で担うか外部に委託するかを整理するご支援をしています。専任の担当がいない中小企業でも無理なく続けられる、端末対策の進め方を一緒に検討します。
※ 初回相談では、営業資料の説明よりも現状整理とリスク確認を優先します。
