自社のSalesforce管理者は、いまSMSや認証アプリのコードでログインしていないだろうか。それはもうすぐ通用しなくなる。 Salesforceは2026年5月、セキュリティ強化として、特権ユーザーへの「フィッシング耐性MFA」必須化と、全従業員へのMFA強制化を公式に告知した。本番環境での適用は、特権ユーザーが2026年7月1日、全従業員が7月20日だ。重要なのは、SMSや認証アプリのワンタイムコード(TOTP)は「フィッシング耐性MFA」に該当しないため、特権ユーザーはパスキーやセキュリティキー等への移行が必要になる点だ。
本記事では、Salesforceを使う企業の情シス向けに、対象者の線引きと、締切に向けた準備の進め方を整理する。
この記事の要点
- Salesforceは2026年5月5日付の公式情報で、MFAの強制化と、特権ユーザーへの「フィッシング耐性MFA(PRMFA)」必須化を告知(任意ではなく強制)。
- 適用日:特権ユーザーのPRMFA=Sandbox 6/22・本番 7/1/全従業員のMFA=Sandbox 6/22・本番 7/20。全従業員は「標準MFA」、特権ユーザーのみ「フィッシング耐性MFA」が必要。
- 特権ユーザーの定義は、システム管理者プロファイル、または「すべてのデータの編集/参照」「アプリケーションのカスタマイズ」「Apexの作成」のいずれかの権限を持つユーザー。
- フィッシング耐性MFAに該当:パスキー、セキュリティキー(WebAuthn/FIDO2・YubiKey等)、内蔵認証(Touch ID/Face ID/Windows Hello)。SMSや認証アプリのTOTPは該当しない。
- 背景には、SaaS利用者を狙うソーシャルエンジニアリング(不正なコネクテッドアプリの認可・OAuthトークンの悪用等)がある。
何が、いつから変わるのか
Salesforceの公式情報(2026年5月5日付)によれば、変更点は2つの軸に分かれる。
| 対象 | 必要なMFA | Sandbox適用 | 本番適用 |
|---|---|---|---|
| 特権ユーザー | フィッシング耐性MFA(PRMFA) | 2026年6月22日 | 2026年7月1日 |
| 全従業員ユーザー | 標準MFA | 2026年6月22日 | 2026年7月20日 |
ポイントは、全従業員には「標準MFA」、特権ユーザーには一段強い「フィッシング耐性MFA」が求められることだ。そして、これは推奨ではなく強制である。Salesforceは設定を無効化できないようロックし、要件を満たさないユーザーはログイン時にブロックされるとしている。
なお、レポート操作に対するステップアップ認証など関連する変更もあるが、本記事では上記2つのMFA軸に絞る。
「特権ユーザー」とは誰か
自社の誰が7/1の対象になるのか。Salesforceの定義では、特権ユーザーは次のいずれかに該当する。
- システム管理者プロファイルを持つユーザー
- すべてのデータの編集(Modify All Data)権限
- すべてのデータの参照(View All Data)権限
- アプリケーションのカスタマイズ(Customize Application)権限
- Apexの作成(Author Apex)権限
つまり、肩書きの「管理者」だけでなく、強い権限を持つ実務担当者も対象になりうる。まずは自社のSalesforceで、これらの権限を持つユーザーを棚卸しすることが第一歩だ。「誰が特権ユーザーか把握できていない」状態は、それ自体が権限管理上のリスクでもある。
フィッシング耐性MFAとは:SMS・認証アプリでは不十分
「フィッシング耐性MFA(Phishing-Resistant MFA)」とは、偽サイトに認証情報を入力させる中間者(AiTM)型のフィッシングに耐性を持つ認証方式を指す。Salesforceの整理では、次が該当する。
- パスキー
- セキュリティキー(WebAuthn/FIDO2・YubiKey等)
- 内蔵認証(Touch ID/Face ID/Windows Hello)
一方、次は特権ユーザーのフィッシング耐性MFA要件を満たさない。
- SMS(弱い認証に分類)
- 認証アプリのワンタイムコード(TOTP)(Salesforce Authenticatorアプリ等も含め「標準MFA」に分類)
ここが見落とされやすい。「うちはもうMFAを入れているから大丈夫」と思っていても、それがSMSや認証アプリのコードなら、特権ユーザーは7/1までにパスキー等へ移行する必要がある。パスキー・セキュリティキーの配布と運用設計(紛失時の再発行、複数デバイス対応など)には準備期間が要る。認証基盤の考え方はIAM(Okta/Entra ID/Keycloak)とゼロトラスト・ゼロトラスト・セキュリティの実装ガイド(中小企業向け)が参考になる。
なぜ今、強制化なのか
この強制化の背景には、SaaS利用者を狙うソーシャルエンジニアリングの高度化がある。近年、攻撃者はMFAそのものを突破するのではなく、利用者をだまして不正なコネクテッドアプリを認可させ、OAuthトークンを乗っ取って大量のデータを持ち出す手口に移っている。電話を使った音声フィッシング(ビッシング)による標的型の事例も、セキュリティ各社から報告されている(攻撃者の特定や手口の詳細は各社の報告に基づくもので、Salesforce公式の断定ではない)。
つまり、MFAの「強さ」と「正しい運用」が、SaaS時代の侵害対策の要になっている。これはSalesforceに限らず、自社が使う主要SaaS全般に通じる論点だ。複数SaaSの認証を束ねるSSO/IdP統合の考え方はSSO・IdP統合(中堅企業向け)で扱っている。
7/1までに、特権ユーザーのパスキー移行は間に合いますか
GXOでは、SalesforceをはじめとするSaaSの認証強化(特権ユーザーの棚卸し、パスキー・セキュリティキーの導入設計、SSO/IdP統合)を支援しています。「誰が特権ユーザーかも把握できていない」段階のご相談を歓迎します。
※ 営業電話はしません | オンライン対応可 | 構想段階の相談だけでもOK
よくある質問(FAQ)
Q1. 締切はいつですか?
本番環境では、特権ユーザーのフィッシング耐性MFAが2026年7月1日、全従業員のMFAが7月20日に適用されます(Sandboxはいずれも6月22日)。要件を満たさないユーザーはログイン時にブロックされるとされているため、それまでに準備を完了する必要があります。
Q2. 今のSMS認証や認証アプリではダメなのですか?
全従業員向けの「標準MFA」としては有効ですが、特権ユーザーに求められる「フィッシング耐性MFA」には該当しません。特権ユーザーは、パスキー、セキュリティキー(WebAuthn/FIDO2)、内蔵認証(Touch ID/Face ID/Windows Hello)のいずれかへ移行する必要があります。
Q3. 自社の特権ユーザーをどう特定すればよいですか?
システム管理者プロファイル、または「すべてのデータの編集/参照」「アプリケーションのカスタマイズ」「Apexの作成」のいずれかの権限を持つユーザーが対象です。Salesforceの権限設定から該当ユーザーを棚卸ししてください。この機会に過剰な権限付与を見直すと、セキュリティと運用の両面で効果があります。
Q4. パスキー導入で気をつけることは?
デバイス紛失時の再発行手順、複数デバイス対応、入社・退職時の運用などを設計しておく必要があります。場当たり的に配布すると、ログインできない・サポート負荷が増えるといった問題が起きます。SSO/IdPと組み合わせて、他のSaaSも含めた認証基盤として設計するのが望ましいです。
まとめ:MFAは「入れた」より「正しく運用できている」かが問われる
Salesforceの2026年のMFA強制化は、SaaS時代のセキュリティが「MFAを入れたか」から「フィッシングに耐える方式で、正しく運用できているか」へ移っていることを示している。特権ユーザーは7/1、全従業員は7/20が本番適用の締切だ。まずは自社の特権ユーザーを棚卸しし、SMS・認証アプリからパスキー・セキュリティキーへの移行を計画したい。
これはSalesforceに限らず、自社が使う主要SaaS全般に通じる課題でもある。GXOは、特権ユーザーの棚卸しから、パスキー導入設計、SSO/IdP統合まで支援している。詳細はセキュリティ運用伴走・セキュリティ事業をご覧いただきたい。
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参考情報
- Salesforce公式「Phishing-Resistant MFA for Privileged Users」(2026年5月5日公開。特権ユーザーのPRMFA必須化:Sandbox 6/22・本番 7/1。特権ユーザー定義/対応する認証方式):https://help.salesforce.com/s/articleView?id=005321563&type=1
- Salesforce公式「MFA Enforcement for All Employee Users」(全従業員のMFA強制化:Sandbox 6/22・本番 7/20):https://help.salesforce.com/s/articleView?id=005321561&type=1
- ※ 攻撃者の特定(UNC6040/ShinyHunters等)や音声フィッシング(ビッシング)の手口に関する記述は、セキュリティ各社の報告に基づく二次情報であり、Salesforce公式の断定ではない。最新・正確な適用条件は上記Salesforce公式ページで確認のこと。