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アナログ規制の答え合わせが本日公表──「法令で決まっているから紙」を条項で確かめる

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GXO COLUMN

法改正・制度

社内で「これは法令上、紙でないといけない」と説明されている業務がある。その説明が今も正しいかを、条項単位で確かめられる材料が本日そろった。

デジタル庁は2026年8月17日、「アナログ規制の見直しに係る工程表等のフォローアップ結果」を公表した。法令と告示・通知通達を合計した集計は次のとおりである。

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規制分類該当条項等数うち見直しが"不要"うち見直しが"必要"2026年5月末時点で完了2026年6月以降完了予定
目視3,5461,5481,9981,9971
実地監査161201411410
定期検査・点検1,4953221,1731,16310
常駐・専任1,3713511,0201,0200
対面講習627305975970
書面掲示1,1192548658596
往訪閲覧・縦覧1,7484571,2911,2829
FD等2,0951,0611,0341,0340
その他経済界要望43043403
合計12,2054,0438,1628,13329

資料には「見直しが必要な規制8,162件の約99%(8,133件)について工程表等に基づく見直しが完了」と記されている。ここで基準日に注意したい。8,133件は「2026年5月末時点で見直し完了」の件数であり、残る29件は「2026年6月以降完了予定」として整理された件数である。本日の公表資料はこの区分で作られており、8月17日時点で29件がまだ全部残っているかどうかは、この資料からは分からない。

この表を「規制改革が進んだ」というニュースとして読み終えると、経営判断には何も残らない。本稿は、この数字を自社の業務システム投資の判断材料としてどう使うかに絞って扱う。

この記事を読むべき人

  • 紙の台帳、押印、現地での目視点検が業務に残っている会社
  • 「法令上、紙で保管が必要」という説明を社内で受けたことがあるが、根拠条文を確認していない経営者
  • 設備の定期点検、有資格者の配置、講習の実施を業務として抱えている会社
  • ペーパーレス化の投資判断を先送りしてきた会社
  • 業務システムの刷新を検討していて、対象業務の絞り込みで止まっている会社

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「見直し不要」の4,043件を読み違えてはいけない

まず、いちばん誤読されやすい列を正確に押さえる。「うち見直しが"不要"」の4,043件である。

これを「アナログのまま残される規制」と読むのは誤りである。

同時に公表されたExcelには、この列の見出しに注記が付いている。原文はこうだ。「見直し『否』かつ、現在Phaseが2又は3の条項は、見直しを要さずともデジタル原則適合性が確保できていることを確認済」。

つまり、「見直し不要」と整理された条項には、条文をいじらなくても既にデジタルのやり方で対応できることが確認されたものが含まれる。紙を義務づけ続けるから触らない、という意味ではない。

この違いは、投資判断を正反対にする。

「不要=紙が残る」と読めば、その領域への投資は無駄になると判断してしまう。しかし実際には、条文を変えるまでもなくデジタルで対応できると確認されている領域が含まれる。そこに紙が残っているとすれば、原因は規制ではなく自社の側にある可能性が高い。

なお、Excelは条項ごとに法令名、所管省庁、条項、規制等の内容概要、類型、現在Phase、見直し要否、見直しの状況までを一覧で持っている。自社に関係しそうな法令があれば、条項単位で引ける。注記が付く条件は「見直し『否』かつ現在Phaseが2又は3」であり、4,043件すべてがこの条件に当たるとは資料上書かれていない。該当するかは条項ごとに確認する必要がある。

6月以降完了予定の29件がどこに集中しているか

2026年6月以降完了予定として整理された29件の内訳は次のとおりである。

  • 定期検査・点検:10件
  • 往訪閲覧・縦覧:9件
  • 書面掲示:6件
  • その他経済界要望:3件
  • 目視:1件

この29件の中では、設備の定期検査・点検が最も多い。製造業、物流、不動産、エネルギー関連など、現場に設備を抱える会社にとっては、この10件が自社の該当領域かどうかが直接効く。なお、これらが8月17日時点でも未完了のままかどうかは、公表資料からは分からない。

なお、法令等(9,671件)と告示・通知通達(2,534件)に分けた集計では、この29件はすべて法令等の側にある。告示・通知通達に該当する1,756件は、見直しが必要とされたものが全件完了している。

ただし、この集計から言えるのは「見直しの作業が終わった」ことまでである。個別の手続きについて、実際に電子的な方法で受け付けてもらえるか、様式や受付の仕組みが整っているかまでは、この表からは分からない。自社に関係する条項については、Excelの見直し内容の欄と、所管省庁の現行の案内を確認する必要がある。

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「完了」=「デジタル化できる」ではない

もう一つ、数字の読み方で注意が要る点がある。「見直し完了」の8,133件が、すべて「デジタルでできるようになった条項」ではない。

公表されたExcelの見直し内容の欄には、技術検証を行った結果、点検を実施できるような技術が存在しないことが判明したため、新たな規制の在り方を検討することが困難であるとして、見直しは行わないと結論づけた条項が含まれている。調査検討の結果、現時点では検査等の撤廃ができる有効な点検方法がなく、撤廃は困難であることを確認した、という記載も見られる。

これらは工程表上の対応としては完了しているが、現場のやり方が変わったわけではない。

したがって、「8,133件完了」を「自社の紙業務も対象外になったはず」と読むことはできない。判定は件数ではなく、自社に関係する条項について、見直し内容の欄に何と書かれているかを読むことでしか行えない。

それでも現場が変わらない3つの理由

規制側の見直しが約99%まで到達していても、現場の紙と目視は残る。GXOが実務で見てきた範囲では、原因は次の3つに分かれる。この切り分けをしないまま「DXが進まない」と言っても、打ち手が決まらない。

理由1:社内規程が更新されていない。法令が改正されても、それに合わせて作られた社内規程や業務マニュアルは自動では変わらない。規制の根拠が消えた後も、社内規程だけが残って業務を縛る。この場合に必要なのは規程の改定であって、システム開発を伴わない可能性が高い。ただし費用がゼロという意味ではない。法務の確認、社内の承認、マニュアルの改定、現場への周知、委託先への連絡といった作業は別途発生する。どれだけかかるかは、対象となる規程の数、承認の経路、教育の範囲、委託先契約の変更要否によって変わる。システム開発と比べて安く済むかどうかは、両方を見積もってから判断すべきである。にもかかわらず、この選択肢そのものが検討されないまま開発の話に進むことが多い。

理由2:委託先の運用が紙を前提にしている。点検業務や保守を外部に委託している場合、委託先の報告フォーマットが紙のままなら、自社だけ電子化しても受け取り側で紙に戻る。この場合に必要なのは契約と業務フローの見直しであり、次回の契約更新のタイミングが実行の節目になる。

理由3:システムが対応していない。ここで初めてシステム投資の話になる。逆に言えば、理由1と理由2を切り分けずにシステムの検討から入ると、必要のない開発を発注することになる。

自社の紙・目視業務を分類する4つの質問

次の4つは、GXOが投資の要否を切り分けるときに使っている問いである。デジタル庁が示した手順ではない。

質問1:その業務が紙・目視・対面である根拠は、法令か、社内規程か、慣行か。 根拠となる条文を示せない場合、それは規制由来ではない可能性が高い。「法令で決まっている」と説明されている業務の相当数が、実際には社内規程か慣行である。

質問2:根拠が法令である場合、その条項は今回のフォローアップでどう整理されているか。 公表されたExcelで、法令名と条項から引ける。ここで見るべきは要否や状況の欄ではなく、「見直しの内容」の欄である。「完了済み」であっても、その中身が条文や通知の改正なのか、技術がないため見直さないという結論なのかで意味がまったく違う。「見直し不要」であれば、現在Phaseの欄を見て、注記の条件に当たるかを確認する。そのうえで、現行の条文と所管省庁の案内に当たる。「法令が紙を求めているから変えられない」という説明が今も成り立つかは、この3つを見て初めて判断できる。

質問3:条文が変わっている場合、実務でいつから電子化できるのか。 条項の見直しが完了していても、実際に電子的な方法が使えるかは所管省庁の運用や様式の整備状況による。「法令上は可能になった」と「実務で受け付けてもらえる」の間には時間差がある。所管の窓口に確認してから設計に入りたい。

質問4:電子化した場合、誰の業務が減るのか。 これに答えられない場合、投資対効果の計算ができない。「紙がなくなる」ことと「工数が減る」ことは別である。入力の手間が現場に移るだけの電子化は、現場の抵抗で定着しない。

制度対応を理由に発注するときの注意点

制度変更を理由にしたシステム発注は、要件が「制度に対応すること」で止まりやすい。

制度対応を目的にすると、要件定義の議論が「法令が求める項目を満たしているか」に集中し、日常の業務がどう変わるかの検討が抜ける。その結果、法令上は問題ないが現場では使われないシステムができる。

発注前に確認したいのは次の3点である。

  • 制度対応のために必要な機能と、業務効率化のために欲しい機能を、見積書の中で分けて示してもらえるか
  • 制度が今後さらに変わった場合、どこまでが保守の範囲で、どこからが追加費用か
  • 電子化後に紙の運用を完全に止めるのか、並走させるのか。並走させる場合、その期間と終了条件は誰が決めるのか

3番目が最も見落とされる。並走期間の終了条件を決めずに始めた電子化は、ほぼ確実に恒久的な二重運用になる。

よくある質問

Q. 今回のフォローアップで、自社が何かを届け出る必要はあるのか。 A. ない。これは政府側の規制見直しの進捗を公表した資料であり、民間企業に新たな義務を課すものではない。自社の業務を見直す材料として使うものである。

Q. 「見直し不要」なら、その規制は何も変わっていないということか。 A. そうとは限らない。Excelの注記は、見直し「否」かつ現在Phaseが2又は3の条項について、見直しを要さずともデジタル原則適合性が確保できていることを確認済としている。条文を変えていないことと、デジタルで対応できないことは別である。

Q. 自社に関係する条項をどうやって探せばよいか。 A. 公表されたExcelは法令名と条項を持っているため、自社の業務に関係する法令名で検索するのが早い。該当が見つかったら、規制等の内容概要と見直しの状況の列を読む。所管省庁の欄もあるため、問い合わせ先の見当もつく。

Q. 6月以降完了予定の29件は、今はどうなっているのか。 A. 本日の資料からは分からない。この29件は2026年5月末時点で未完了だったものであり、公表資料の区分は「2026年6月以降完了予定」である。6月から8月にかけて完了したものが含まれるかどうかは示されていない。自社に関係する領域があれば、所管省庁の情報を個別に確認する必要がある。

Q. 目視の3,546件という数字は、何を数えたものか。 A. 目視を求めるアナログ規制に該当する条項等の数である。条項の数であって、企業が実施している点検業務の数ではない。自社の業務が何件に相当するかは、この表からは分からない。

Q. 中小企業でも関係があるのか。 A. 業種による。公表資料の分類は、目視、実地監査、定期検査・点検、常駐・専任、対面講習、書面掲示、往訪閲覧・縦覧、FD等の記録媒体、その他経済界要望の9つである。設備の点検や有資格者の配置がない業種でも、目視や往訪閲覧・縦覧に関係する条項が自社の業務にかかっている場合がある。分類名だけで「うちは関係ない」と判断せず、自社に関係する法令名でExcelを検索して確認してほしい。

Q. 何から手をつけるべきか。 A. 紙・目視・対面で行っている業務を10件程度書き出し、それぞれについて「根拠は法令か社内規程か」を確認するところからでよい。この作業は担当者1人でも始められ、システムの検討に入る前に投資額を大きく左右する。

制度を理由に投資するかどうかを決めきれないとき

制度の側は、2026年5月末時点で、見直しが必要とされた8,162件の約99%まで到達している。ただし「完了」の中身は条項ごとに異なり、デジタルで対応できるようになったものもあれば、技術がないため見直さないと結論づけたものもある。まず自社に関係する条項がどちらなのかを確認し、そのうえで紙が残っている理由が規程なのか、委託先なのか、システムなのかを切り分ける。この2段階を飛ばして発注すると、必要のない開発費が乗る。

自社の業務のどこから着手すべきかを整理したい場合はDX成熟度診断で現在地を確認できる。紙・目視業務の棚卸しと優先順位づけから相談したい場合はDX推進トータルサポート、電子化に伴う業務システムの設計と開発はDX・システム開発で対応している。既にベンダーから見積もりを受け取っていて、制度対応の範囲と追加費用の切り分けを第三者に見てほしい場合は、見積もりの内訳を相談するで受け付けている。

一括法の施行内容と7類型そのものの解説はアナログ規制見直しが完全施行 2026で扱っている。本稿は、本日公表されたフォローアップ結果の数字を、自社の投資判断にどう使うかに絞っている。

参照した情報

規制分類ごとの条項等数、見直しが"不要"とされた件数、見直しが"必要"とされた件数、2026年5月末時点で見直しが完了した件数、2026年6月以降に完了予定の件数、合計値(12,205/4,043/8,162/8,133/29)、および「見直しが必要な規制8,162件の約99%(8,133件)について工程表等に基づく見直しが完了」という記載は、上記PDFを直接取得して確認した。法令等の合計(9,671/3,265/6,406/6,377/29)と告示・通知通達の合計(2,534/778/1,756/1,756/0)も同PDFの記載である。

「見直し完了」の中に、技術検証の結果として見直しを行わないと結論づけた条項が含まれる点は、上記Excelの「見直しの内容」欄の記載(点検を実施できるような技術が存在しないことが判明したため新たな規制の在り方を検討することが困難であり、新たな規制の導入に向けた見直しは行わない旨、および現時点では検査等の撤廃ができる有効な点検方法がなく撤廃は困難であることを確認した旨)を直接読んで確認した。なお本稿は、これらが完了件数全体に占める割合を算出していないため、その規模については述べていない。

「見直し不要」の意味に関する記述は、上記Excelの「見直し要否」列に付された注記「見直し『否』かつ、現在Phaseが2又は3の条項は、見直しを要さずともデジタル原則適合性が確保できていることを確認済」に基づく。この注記は「否」のうち現在Phaseが2又は3のものを条件としているため、本稿は4,043件のすべてがこの条件に当たるとは述べていない。該当するかは条項ごとにExcelで確認する必要がある。Excelが法令名、所管省庁、条項、規制等の内容概要、類型、現在Phase、見直し要否、見直しの状況の各列を持つことも同ファイルで確認した。Phaseの定義そのものは同ファイルに記載がないため、本稿では説明していない。

紙が残る理由を3つに分ける整理、投資判断のための4つの質問、および発注前に確認する3点は、投資判断の支援を重ねる中でGXOが形にした整理であって、デジタル庁の基準や推奨ではない。個別の条項がどの業種のどの業務に対応するかは資料上示されていないため、本稿では自社該当の判定方法のみを扱い、特定の業務が該当するという断定はしていない。電子的な方法が実務で受け付けられるかは所管省庁の運用によるため、具体的な手続きは所管窓口で確認してほしい。

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