コストを抑えたい、ノウハウを社内に残したいといった理由で、AI開発を内製で進める判断は珍しくない。しかし、人材や時間が足りないまま始めると、特定の担当者に作業が集中し、その人が忙しくなった途端に止まる。「内製のつもりが、いつの間にか回らなくなっていた」という状態は、AI開発でよく起きる失敗である。

本記事では、内製が回らなくなる問題を発注者の視点で整理し、内製と外注の切り分けや、外部支援を含めた立て直しの観点を示す。内製は悪い選択ではない。問題は、内製で抱えるべき範囲と、外部に任せたほうがよい範囲を切り分けずに、すべてを社内で抱え込んでしまうことにある。


結論:内製と外注を切り分け、属人化を避ける体制で進める

内製が回らなくなる最大の原因は、人材・時間が足りないまま、すべてを社内で抱え込むことにある。GXOが整理で重視するのは、内製で抱える範囲と外部に任せる範囲を切り分け、属人化を避ける体制で進めることである。

  • 内製で抱えるべき範囲と、外部に任せたほうがよい範囲を切り分ける
  • 特定の担当者に依存しない形で、手順や設定を残す
  • 本業と両立できる工数の範囲で、無理のない計画にする

すべてを内製で抱えると、担当者が忙しくなった途端に止まり、結局は外注より時間とコストがかかることがある。


なぜ内製が回らなくなるのか

人材・時間が足りないまま始める

AI開発には、データの整備、モデルの調整、評価、運用といった幅広い作業が必要になる。これらを担える人材や時間が足りないまま始めると、途中で手が回らなくなる。

特定の担当者に作業が集中する(属人化)

社内で詳しい一人に作業が集中すると、その人が忙しくなったり離れたりした途端に、誰も引き継げず止まる。手順や設定がその人の頭の中にしかない状態は、内製が止まる典型的な原因である。

運用の引き継ぎが設計されていない

作った後の運用を、誰が、どう担うかを決めずに始めると、構築は進んでも運用で止まる。AIは導入後の改善が前提のため、運用の担い手がいないと使われなくなる。運用の担い手については運用担当者が決まらず放置される問題でも扱った論点である。

本業との両立が難しい

内製を担う人材は、多くの場合、本業を抱えている。本業が忙しくなると内製は後回しになり、進捗が止まる。両立できる工数を見込まずに計画すると、無理が生じる。

「とりあえずプロンプトで」から先に進めない

社内で生成AIを試し、プロンプトの工夫だけで進めようとすると、業務に組み込む段階で行き詰まる。プロンプトだけに頼る限界はプロンプトだけで業務に組み込もうとする問題でも扱った論点である。


内製が止まるサインと、その原因

サイン起きていること原因
特定の人がいないと進まない属人化手順・設定が共有されていない
構築後に放置される運用の担い手不在運用の引き継ぎ未設計
進捗が断続的に止まる本業との両立難工数の見込み不足
試作から先に進まない業務組み込みの壁プロンプト頼みの限界
評価・改善が進まない精度を測れない評価の設計不足

これらは能力の問題ではなく、抱える範囲と体制の設計がずれていることに起因する。


内製と外注を切り分ける

内製を活かすには、すべてを社内で抱えるのではなく、範囲を切り分けたい。次のような観点で考えると整理しやすい。

  1. 社内に残したい知見か:自社の業務に深く関わり、長く社内で持ちたい知見は、内製で抱える価値がある。一方、汎用的で社外でも調達できる部分は、外注で支えたほうが早いことが多い。
  2. 継続的に手がかかるか:日々の運用や改善のように継続して手がかかる部分は、担える人材が社内にいるかを見極める。いなければ、外部支援を組み合わせたい。
  3. 専門性が高いか:データ設計やセキュリティ、評価の設計など、専門性が高い部分は、外部の知見を借りると立ち上がりが早い。
  4. 本業を圧迫しないか:内製で抱える範囲が本業を圧迫しないかを確認する。圧迫するなら、範囲を絞るか外部に任せる。

内製と外注は二者択一ではない。要所を外部に支えてもらいながら、社内に知見を残す進め方が現実的なことが多い。


属人化を避け、引き継げる状態にする

内製を止めないために、属人化を避ける工夫を取り入れたい。

  • 手順、設定、判断の理由を、担当者の頭の中ではなく文書や設定として残す
  • 一人に集中させず、複数人が触れる状態にする
  • 外部の支援を受ける場合も、ノウハウが社内に残る形で引き継ぐ
  • 運用の担い手と、その役割を明確にする

属人化を避けておくと、担当者が忙しくなったり離れたりしても、内製が止まりにくくなる。


外部支援を組み合わせて立て直す

すでに内製が止まっている場合も、外部支援を組み合わせて立て直せることが多い。次のような進め方がある。

  • 止まっている原因(人材・運用・評価など)を切り分け、どこを外部で支えるかを決める
  • 社内に残したい部分は内製で続け、専門性の高い部分や継続的な運用を外部で補う
  • 外部支援を受けながら、ノウハウが社内に残る形で進める

全部を外注に切り替える必要はない。内製の良さを活かしながら、足りない部分を外部で補う形が現実的である。複数社の比較観点は開発会社選びで見るべき7項目も参考になる。


内製の段階ごとに必要になる力

内製が回らなくなるのは、段階によって必要になる力が違うことを見込めていないことも一因である。試作の段階で必要な力と、業務に組み込んで運用する段階で必要な力は同じではない。試作は社内で進められても、評価の設計やデータの整備、運用の継続といった段階で手が止まることがある。

  • 試作の段階:生成AIを試し、できそうかの感触を得る
  • 業務組み込みの段階:既存システムとの連携や、現場の業務に合わせた作り込みが必要になる
  • 運用の段階:精度の確認、情報の更新、改善を継続して担う力が必要になる

段階が進むほど、必要な力は専門的になり、継続的な手もかかる。最初の試作がうまくいったからといって、すべての段階を社内だけで担えるとは限らない。どの段階で力が足りなくなりそうかを早めに見込んでおくと、止まる前に外部支援を組み合わせる判断ができる。


発注前に確認すべき項目

  • 内製で進める理由と、社内に残したい知見を整理したか
  • 試作・業務組み込み・運用の各段階で必要な力を見込んだか
  • 内製を担う人の本業の状況と、両立できる工数を確認したか
  • 手順・設定・判断の理由を、属人化しない形で残す方針を決めたか
  • 運用の担い手と役割を明確にしたか
  • 外部に任せたほうがよい範囲の見当をつけたか

GXOに相談する前に整理するとよい情報

  • 内製で進めようとした理由(コスト・ノウハウ蓄積・既存人材など)
  • いま内製で詰まっている箇所(人材・運用・評価・業務組み込みなど)
  • 内製を担っている人と、その人の本業の状況
  • 社内に残したい知見と、外部に任せてもよい範囲の見当
  • 改善したい業務と、その現状

内製の状況が整理されていると、「どこを内製で続け、どこを外部で支えるか」を判断しやすくなる。運用体制の整え方は運用担当者が決まらず放置される問題も参考になる。


参考にした外部観点

内製化やDXの推進は、公的機関が指針を示している。IPAのDX推進指標は、内製を含むDXの現状や課題を関係者で共有するための観点を提供しており、IPA(情報処理推進機構)はシステム開発や人材育成に関する情報を公開している。AIリスク管理の枠組みとしてはNIST AI Risk Management Frameworkが参考になる。これらは、内製と外注の切り分けや体制づくりを考えるための出発点になる。

内製の見直しでは、詰まっている箇所、属人化の有無、運用の担い手、本業との両立、社内に残したい知見を確認すると、立て直しの方向を見つけやすい。


関連記事


よくある質問

Q1. 内製とうちのどちらが正解ですか

どちらか一方が正解とは限らない。社内に残したい知見は内製で抱え、専門性の高い部分や継続的な運用は外部で支える、という組み合わせが現実的なことが多い。範囲を切り分けて考えたい。

Q2. すでに内製が止まっています。やり直すしかないですか

やり直す必要はないことが多い。止まっている原因を切り分け、社内に残したい部分は続けつつ、足りない部分を外部で補えば立て直せる。これまでの取り組みを無駄にせず進められる。

Q3. 属人化を防ぐには、何から始めればよいですか

手順、設定、判断の理由を、担当者の頭の中ではなく文書や設定として残すことから始めるとよい。一人に集中させず、複数人が触れる状態にしておくと、担当者が離れても止まりにくくなる。

Q4. 外部に頼むと、ノウハウが社内に残らないのではないですか

進め方による。ノウハウが社内に残る形で引き継ぐことを前提に依頼すれば、外部支援を受けながら社内に知見を残せる。最初に「どこを社内に残したいか」を共有しておくと、内製の良さを保ちながら立て直せる。


『内製のつもりが回らない』状態を、整理して立て直しませんか

GXOでは、内製で抱える範囲と外部に任せる範囲を切り分け、属人化を避けながらノウハウを社内に残す形でのAI開発の立て直しを支援します。

内製の立て直しを相談する

※ 初回相談では、営業資料の説明よりも現状整理とリスク確認を優先します。