中堅製造業(年商20〜500億円、国内2〜3工場、自社便+傭車混在)の物流部長から「2024年問題で稼働時間に上限が掛かり、同じ売上を運ぶのに必要な車両台数が増えた」「配車が属人化し、ベテランが休むと稼働率が10〜15%落ちる」「燃料費高騰で運送原価が前年比12%上がった」という相談が連続している。配車表をホワイトボードやExcelで運用している企業は、TMS(Transport Management System)導入の臨界点に到達している。本稿ではTMS4製品を比較する。
中堅製造業のTMS導入トリガー
想定読者
- 役職:物流部長 / 配車係主任 / 工場長
- 規模:年商20〜500億円、自社便+傭車合計50〜300台、配送先200〜2,000箇所/月
- 現状:Excel配車表、配送実績の手集計、燃費・拘束時間の月次集計が翌月10日以降
数値ペイン
- 車両稼働率:70〜80%(目標90%超)
- 配車工数:1日1〜3時間 × 配車係2〜5名
- 燃料費:売上高比3〜6%(目標▲0.5〜1pt)
- 拘束時間超過:月10〜30件(2024年問題で上限960h/年)
TMS比較4製品 概要
| 製品 | 提供形態 | 月額目安 | 初期 | 中堅製造業への適合度 |
|---|---|---|---|---|
| LOGINEXT | クラウド | 30〜100万円 | 300〜800万円 | 高(多拠点・グローバル) |
| Loogia | クラウド | 10〜50万円 | 100〜300万円 | 高(中堅専門) |
| モノフル トラック簿 | クラウド | 5〜30万円 | 30〜200万円 | 中(小規模からスケール) |
| 富士通 配車支援システム | オンプレ/クラウド | 50〜200万円 | 1,000〜5,000万円 | 大規模・基幹級 |
1. LOGINEXT
特徴
- インド発のグローバルTMS。リアルタイム配車最適化・動的ルーティングが強み。
- ドライバー専用モバイルアプリ・電子サイン受領・顧客向け配送追跡URLを標準提供。
- API連携が豊富で、ECサイト・基幹システム・WMSとの連動が容易。
適合パターン
- 配送先2,000箇所超/月、当日配送・時間指定が多い
- 海外子会社や輸出物流も視野
想定費用
- 初期:300〜800万円
- 月額:30〜100万円(車両台数・機能で変動)
2. Loogia
特徴
- 中堅製造業・卸・運送会社の自社便最適化に特化した国産クラウドTMS。
- 「ある制約条件下での最適配車」をAI/最適化エンジンで自動算出。
- 配車係の意思決定を支援する「半自動」モードに優位性。
適合パターン
- 自社便50〜200台、固定ルート+スポット混在
- ベテラン配車係のノウハウをシステム化したい
想定費用
- 初期:100〜300万円
- 月額:10〜50万円
3. モノフル トラック簿
特徴
- 入退場・荷待ち管理に強いクラウドサービス。配車最適化は限定的だが、構内オペ可視化が手厚い。
- スマホ・タブレットだけで稼働可能、初期費用が低い。
- 月額従量制で、車両台数の増減に追従しやすい。
適合パターン
- 構内荷待ち時間削減が最優先
- 自社便30〜100台規模、低コストスタート
想定費用
- 初期:30〜200万円
- 月額:5〜30万円
4. 富士通 配車支援システム
特徴
- 国内大手キャリア・大手製造業の基幹級TMS。要件定義から伴走可。
- ERP・WMS・倉庫運用システムとの統合シナリオで強い。
- 単独製品というよりSI込みの提案。
適合パターン
- 全社物流再構築プロジェクト、5〜10年運用前提
- 売上1,000億円以上 or 200車両超の本格運用
想定費用
- 初期:1,000〜5,000万円
- 月額:50〜200万円
選定マトリクス:自社の前提から逆引き
| 前提条件 | 推奨候補 |
|---|---|
| 自社便最適化 + 配車係ノウハウ継承 | Loogia |
| 多拠点・グローバル・リアルタイム | LOGINEXT |
| 構内荷待ち削減 + 低コスト | モノフル |
| 全社物流基幹リプレース | 富士通 |
ROI試算:中堅製造業の典型ケース
年商200億円・自社便80台・傭車40台・配送先1,200箇所/月の前提で、Loogia導入時の効果試算を示す。
| 項目 | 削減/向上 | 年間効果 |
|---|---|---|
| 1台あたり月20〜40時間の走行時間削減 | 80台 × 30h × ¥3,500(人件費+燃料+減価償却) | 約3,360万円 |
| 配車工数削減 | 1日2h × 22日 × 3名 × 1年 × ¥3,000 | 約475万円 |
| 拘束時間超過削減 | 月20件→月3件、罰則回避+追加傭車減 | 約600万円 |
| 燃料費削減 | ▲0.7pt(売上比) | 約1,400万円 |
| 効果合計(年間) | 約5,800万円 |
導入時の落とし穴4つ
- マスタ整備不足:配送先住所・営業時間・荷下ろし制約・前段ルールがマスタ化されていないと、最適化エンジンが現実解を返さない。
- ドライバー教育の難しさ:50〜60代ドライバー比率が高い場合、スマホアプリ移行に2〜3ヶ月の助走期間が必要。
- 傭車との情報共有:自社便だけ最適化しても、傭車側に情報連携できないと全体効果が半減。
- 基幹システム連携:受注情報・出荷指示が基幹からTMSに自動連携しないと、配車係の二重入力が発生し稼働率が下がる。
FAQ
Q1. LoogiaとLOGINEXTのどちらが中堅製造業向きか。
A. 自社便中心ならLoogia、海外含む多拠点ならLOGINEXT。同価格帯のスタートはLoogiaが現実的。
Q2. 配車係ベテランが反発しないか。
A. 「最適解の提示→ベテランが微調整」の半自動運用が定着しやすい。完全自動化を急がず、3〜6ヶ月の並行運用期間を設ける。
Q3. 2024年問題対応として最低限必要なのは。
A. 拘束時間・運転時間の自動集計とアラート機能。これだけでもTMS導入価値はある。
Q4. ハンディ・スマホ・タブレットのどれが良いか。
A. ドライバーには5〜6インチスマホが標準。配車係はPC+大型モニター推奨。
Q5. 補助金は使えるか。
A. 物流効率化・自動化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金が対象になり得る。トラック輸送業界向けの専門補助もあるため、認定支援機関と要相談。
「2024年問題で配送原価が上がった、TMSで打ち手が打てるか相談したい」
中堅製造業(年商20〜500億)のSaaS選定を100件以上支援した経験から、貴社に合った進め方をご提案します。
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追加の一次情報・確認観点
この記事の内容を社内で検討する場合は、一般論だけで判断せず、次の一次情報と自社データを照合してください。特に、稟議・RFP・ベンダー選定では「何を実装するか」よりも「どのリスクをどの水準まで下げるか」を先に決めると、見積もり比較のブレを抑えられます。
| 確認領域 | 参照先 | 自社で確認すること |
|---|---|---|
| 脆弱性・注意喚起 | IPA 情報セキュリティ | 対象製品、影響範囲、更新手順、社内展開状況を確認する |
| インシデント対応 | JPCERT/CC | 初動、封じ込め、復旧、対外連絡の役割分担を確認する |
| 管理策 | NIST Cybersecurity Framework | 識別、防御、検知、対応、復旧のどこが弱いかを確認する |
| DX推進 | IPA デジタル基盤センター | DX推進指標、IT人材、デジタル基盤の観点で現状を確認する |
| 個人情報 | 個人情報保護委員会 | 個人情報・委託先管理・利用目的・安全管理措置を確認する |
稟議・RFPで使う数値設計
投資判断では、導入前後で測れる指標を3から5個に絞ります。下表のように、現状値・目標値・測定方法・責任者をセットにしておくと、PoC後に本番化するかどうかを判断しやすくなります。
| 指標 | 現状確認 | 目標の置き方 | 失敗しやすい例 |
|---|---|---|---|
| 対象業務数 | 現状の対象業務を棚卸し | 初期は1から3業務に限定 | 対象を広げすぎて要件が固まらない |
| 月間処理件数 | 件数、担当者、例外率を確認 | 上位20%の高頻度業務から改善 | 件数が少ない業務を先に自動化する |
| 例外対応率 | 手戻り、確認待ち、属人判断を計測 | 例外の分類と承認ルールを定義 | 例外をAIやシステムだけで吸収しようとする |
| 復旧目標時間 | RTO/RPOを業務別に確認 | 重要業務から優先順位を設定 | 全システム同一水準で考える |
| 検知から初動までの時間 | ログ、通知、責任者を確認 | 初動30分以内など明確化 | 通知だけあり対応者が決まっていない |
よくある失敗と回避策
| 失敗パターン | 起きる理由 | 回避策 |
|---|---|---|
| 目的が曖昧なままツール選定に入る | 比較軸が価格や機能数に寄る | 経営課題、業務課題、測定KPIを先に固定する |
| 現場確認が不足する | 例外処理や非公式運用が見落とされる | 担当者ヒアリングと実データ確認を必ず行う |
| 運用責任者が決まっていない | 導入後の改善が止まる | 業務側とIT側の責任分界をRACIで定義する |
| バックアップが復旧できない | 取得だけで復元テストをしていない | 四半期ごとに復旧訓練を実施する |
GXOに相談する前に整理しておく情報
初回相談では、次の情報があると診断と提案の精度が上がります。すべて揃っていなくても問題ありませんが、分かる範囲で用意しておくと、概算費用・期間・体制の見立てを早く出せます。
- 対象業務の現行フロー、利用中システム、Excel・紙・チャット運用の一覧
- 月間件数、担当人数、手戻り件数、確認待ち時間などの概算
- 個人情報、機密情報、外部委託、権限管理に関する制約
- 希望開始時期、予算レンジ、社内承認者、決裁までの流れ
- 直近の障害・インシデント履歴、バックアップ方式、EDR/MDR/SOCの導入状況
GXOでは、現状整理、要件定義、RFP作成、ベンダー比較、PoC設計、本番移行計画まで一気通貫で支援できます。記事の内容を自社に当てはめたい場合は、まずは現在の課題と制約を共有してください。