結論:社内AIは「便利な検索」ではなく、既存権限を増幅する
Microsoft 365 Copilotを悪用した「SearchLeak」と呼ばれる攻撃手法について、2026年6月中旬に複数の海外メディアが報じた。報道によれば、攻撃者が細工したCopilot検索リンクをユーザーにクリックさせ、Copilotの検索結果に含まれるメール、OneDrive、SharePointなどの情報を外部へ送らせる可能性が指摘されている。
現時点でGXOが確認できた範囲では、SearchLeakの詳細な公式一次ソースやMicrosoft Security Response Center上の公開情報は確認できなかった。そのため、本記事ではSearchLeakそのものを断定的に解説するのではなく、報道をきっかけとして、企業がMicrosoft 365 Copilotや社内AIを導入する前に確認すべき権限とデータ管理の論点を整理する。
重要なのは、Microsoft 365 CopilotがユーザーのMicrosoft 365権限を前提に、メール、チャット、文書、予定、会議、連絡先などの組織データを参照して回答を作る点である。Microsoft Learnでも、CopilotはMicrosoft Graphを通じて組織データへアクセスし、ユーザーが少なくとも閲覧権限を持つデータだけを表示すると説明されている。
つまり、Copilotを安全に使えるかどうかは、AIの設定だけで決まらない。導入前から社内のSharePoint、OneDrive、Teams、メール、外部共有、ゲストアクセス、機密ラベル、監査ログが整理されているかで決まる。
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SearchLeak報道で見るべきポイント
TechRadarやWindows Centralは、Varonis Threat Labsの調査として、Microsoft 365 Copilot Enterprise Searchを悪用したデータ流出リスクを報じている。報道内容を要約すると、論点は次の3つである。
| 論点 | 内容 | 企業が見るべきこと |
|---|---|---|
| プロンプト注入 | URL内の検索パラメータを通じて、AIに意図しない指示を解釈させる | AIに渡る入力を信頼しすぎない |
| 横断検索 | Copilotがメール、OneDrive、SharePointなどを横断して情報を取得する | 既存権限が過剰だと、AIの参照範囲も広がる |
| 検知しにくさ | ユーザーからは通常の検索に見える可能性がある | AI操作ログ、検索ログ、外部通信、異常検知が必要 |
ここで注意すべきなのは、「Copilotを使うな」という話ではない。むしろ、社内AIを業務に入れるなら、AIが参照できるデータの範囲を事前に棚卸ししなければならない、という話である。
Microsoft公式情報から見たCopilotのデータアクセス
Microsoft Learnの「Data, Privacy, and Security for Microsoft 365 Copilot」では、Microsoft 365 Copilotが次の要素を組み合わせて動くと説明されている。
- 大規模言語モデル
- Microsoft Graph内のコンテンツ
- ユーザーが日常的に使うMicrosoft 365アプリ
同ページでは、CopilotがMicrosoft Graphを通じて、文書、メール、予定、チャット、会議、連絡先などの組織データにアクセスし、ユーザーの作業文脈と組み合わせて回答を生成すると説明している。さらに、Copilotは個々のユーザーが少なくとも閲覧権限を持つ組織データだけを表示し、SharePointなどの権限モデルを正しく使うことが重要だとしている。
この公式説明は、企業にとって非常に重要である。
Copilotは、存在しない権限を勝手に作るわけではない。一方で、すでに過剰に共有されているファイル、退職者由来のフォルダ、外部ゲストに開いたままのサイト、全社閲覧になっている資料は、AIの回答に現れる可能性がある。社内AIは、良くも悪くも既存の権限設計を可視化し、増幅する。
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中小企業が導入前に確認すべき7項目
1. SharePointサイトの全社公開を確認する
「全社員」「Everyone」「全社共有」などで閲覧できるSharePointサイトに、契約書、見積、給与、人事、M&A、顧客情報が混ざっていないか確認する。AI導入前の最優先チェックである。
2. OneDriveの外部共有リンクを棚卸しする
過去に発行した共有リンクが残っていると、本人も忘れたまま外部から閲覧できる状態になっていることがある。期限なしリンク、匿名リンク、退職者が発行したリンクは重点的に確認する。
3. Teamsのゲストと共有チャネルを確認する
Microsoft Learnは、テナント間コラボレーションで外部ユーザーに与えた権限も考慮すべきだとしている。Teamsのゲスト、共有チャネル、外部共同編集者がどのファイルにアクセスできるか確認する。
4. メールと予定表の扱いを決める
Copilotはメールや予定の文脈も活用できる。役員、経理、人事、営業責任者など、機密性の高いメールを扱うユーザーでは、AIの利用範囲、監査、履歴保存、端末管理を先に決める。
5. 機密ラベルとDLPを整備する
「社外秘」「人事」「契約」「顧客情報」などのラベルが形だけになっていないか確認する。ラベルが未付与、または付与ルールが属人的だと、AI導入後に参照範囲を制御しにくい。
6. AI操作ログを監査対象に入れる
Microsoft Learnでは、Copilotのプロンプト、応答、引用情報などのやり取りが保存され、管理者がMicrosoft Purviewなどで扱えると説明している。社内規程上も、AIの検索、要約、生成、参照履歴を監査対象に含める必要がある。
7. 「AIに見せてよいデータ」を業務単位で決める
全社一律でCopilotを有効化する前に、営業、経理、人事、開発、経営企画など業務単位で、AIに参照させてよいデータと禁止データを決める。AI導入はライセンス配布ではなく、データアクセス設計である。
30日でできる権限棚卸し
| 期間 | 実施内容 | 成果物 |
|---|---|---|
| 1週目 | SharePoint、OneDrive、Teams、メールの主要データを洗い出す | データ所在一覧 |
| 2週目 | 全社公開、外部共有、ゲストアクセス、退職者所有ファイルを確認する | 過剰共有リスト |
| 3週目 | 機密ラベル、DLP、アクセス権、共有リンク期限を整理する | AI参照可否ルール |
| 4週目 | Copilot利用対象部門、監査ログ、問い合わせ窓口、停止手順を決める | AI導入前チェックシート |
この30日棚卸しをせずにCopilotや社内AIを入れると、AI導入後に「なぜこの情報が見えたのか」を追うことになる。順番は逆である。先に権限を整理し、その後にAIを使う。
AI導入で商談化しやすい相談テーマ
GXOに寄せられる相談として、次のようなテーマは商談化しやすい。
| 相談テーマ | 相談内容 | GXOの支援範囲 |
|---|---|---|
| Copilot導入前診断 | ライセンス配布前に何を見ればよいか | 権限棚卸し、導入ロードマップ |
| SharePoint整理 | ファイルが多すぎて権限が分からない | サイト構造、権限、外部共有整理 |
| 社内AI/RAG構築 | 自社データをAI検索したい | データ整備、検索設計、回答監査 |
| AIセキュリティ | 情報漏えいが怖くてAI導入できない | DLP、ラベル、ログ、承認設計 |
| AI運用ルール | 社員にどう使わせるか決まっていない | 利用規程、禁止事項、監査設計 |
公開前に決めるべき禁止事項
AI導入前に、少なくとも次の禁止事項は明文化しておきたい。
- 機密ファイルを全社共有フォルダに置かない
- 外部共有リンクを期限なしで発行しない
- 個人OneDriveを部門の正式保管場所にしない
- 人事、契約、請求、顧客情報をAIに無制限参照させない
- AIの回答を確認なしで顧客に送らない
- AIが参照した情報の出典を確認せず意思決定しない
GXOで支援できること
GXOでは、Microsoft 365 Copilotや社内AI導入前の権限棚卸し、SharePoint/OneDrive整理、AI参照範囲設計、DLP/機密ラベル設計、監査ログ設計を支援する。
AI活用は、プロンプト研修から始めるよりも、社内データと権限の棚卸しから始めた方が失敗しにくい。Copilot、ChatGPT Enterprise、社内RAG、AIエージェントのいずれでも、最初に見るべき論点は同じである。
参考資料
-
Microsoft Learn: Data, Privacy, and Security for Microsoft 365 Copilot
-
TechRadar: Microsoft 365 Copilot can be turned into a one-click data theft tool
-
Windows Central: A critical Microsoft Copilot exploit exposes AI gullibility
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