「ムダを減らせ」と言われても、どこがムダなのか分からない。毎日同じ作業を繰り返しているうちに、それが当たり前になってしまっている。物流現場では、こうした「見えないムダ」が積み重なり、気づかないうちに大きなロスを生んでいます。
本記事では、見えていないムダをどうやって見つけるか、その具体的な方法を解説します。
結論から言えば、ムダは「意識して見る仕組み」をつくることで発見できます。
観察と計測:作業者の動きを数値で把握し、感覚ではなくデータでムダを特定する
現場の声:実際に作業している人へのヒアリングで、管理者には見えない非効率を拾い上げる
構造化分析:動線図や「なぜなぜ分析」で、根本原因まで掘り下げて改善策を導く
なぜムダが見えないのか
物流倉庫でムダが見えなくなる背景には、大きく3つの理由があります。
慣れによる盲点化
毎日繰り返している作業は、いつの間にか「当たり前」になります。たとえば、10メートル歩いて資材を取りに行く動作。それが日常になっていると、「もっと近くに置けないか」という発想が生まれにくくなります。
ある物流センターでは、ピッキング作業者が1日に歩く距離を計測したところ、平均で8キロメートルを超えていました。しかし、作業者本人は「そんなに歩いている感覚はない」と話していました。慣れは、ムダを当たり前に変えてしまうのです。
余裕のなさによる思考停止
日々の作業に追われていると、「もっと良いやり方はないか」と立ち止まって考える余裕がありません。出荷件数に追われ、クレーム対応に時間を取られ、目の前の仕事をこなすだけで精一杯。そんな状況では、改善のための観察や分析に時間を割くことが難しくなります。
現場責任者の多くが「改善が大事なのは分かっているが、そのための時間が取れない」と感じているのは、この構造的な問題があるからです。
比較対象の不在
「他の物流センターはどうやっているのだろう」という比較対象がないと、自分たちのやり方が効率的かどうか判断できません。長年同じ方法で作業してきた現場ほど、外部の視点を取り入れる機会が少なく、ムダに気づきにくい傾向があります。
ムダを見つける5つの方法

見えないムダを可視化するための具体的な方法を、5つのステップで解説します。
方法①:現場を「観察」する
改善の基本は、現場の観察です。普段見慣れた現場を、「初めて見る目」で観察することが重要です。
作業者の動きをじっくり見てみましょう。歩いている時間はどれくらいか、何かを待っている時間はあるか、探している動作はないか、手戻りは発生していないか。これらの視点で現場を眺めると、今まで気づかなかった非効率が見えてきます。
観察のポイントは、特定の作業者を30分〜1時間、集中して追いかけることです。全体をぼんやり見ていても、ムダは見つかりません。「この人の動きを徹底的に見る」と決めて観察することで、具体的な改善点が浮かび上がります。
方法②:作業者に聞く
実際に作業している人に直接聞くことは、ムダ発見の近道です。「やりにくいと感じることはありますか?」「もっとこうだったらいいのに、ということはありますか?」と問いかけてみましょう。
現場の人は、日々の作業の中で「ここが不便」「これは二度手間」と感じていることが多いものです。ただし、聞き方には工夫が必要です。「何か問題はありますか?」と漠然と聞くよりも、「この作業で一番時間がかかるのはどこですか?」と具体的に聞く方が、有益な情報を引き出せます。
ある物流センターでは、月1回の改善提案会議を設けたところ、作業者からの提案件数が月間3件から25件に増加しました。「聞く場」をつくることで、現場に眠っていた改善アイデアが表に出てきたのです。
方法③:時間を測る
感覚ではなく、実際に時間を測ることで、ムダの大きさが数字で見えるようになります。
ある作業に何分かかっているか、そのうち実際に手を動かしているのは何分か、歩いている時間や待っている時間は何分か。ストップウォッチで測ってみると、想像以上にムダな時間があることに気づきます。
たとえば、ピッキング作業を計測したところ、1件あたりの作業時間3分のうち、実際に商品を手に取っている時間は40秒だけで、残りの2分20秒は歩行と検索に費やされていた、というケースがあります。このように数値化することで、どこに改善の余地があるかが明確になります。
方法④:動線を書き出す
作業者の動きを図に書き出すことで、非効率な移動が可視化されます。スタート地点から、どこを通って、どこに行くか。紙に動線を描いてみましょう。
動線図を見ると、「なんでこんなに遠回りしているんだ」「同じ場所を何度も往復している」といった発見があります。特にピッキング作業では、商品の配置とピッキング順序を動線図で分析することで、大幅な効率化が可能になることがあります。
ある倉庫では、動線分析の結果、高頻度で出荷される商品を出荷口の近くに再配置したところ、1日あたりの総歩行距離が約30%削減されました。
方法⑤:「なぜ?」を5回繰り返す
ムダを見つけたら、「なぜ?」を繰り返して根本原因を探りましょう。
「なぜ、ここまで歩いて資材を取りに行くのか?」→「資材置き場がここにあるから」→「なぜ、資材置き場はここなのか?」→「昔からここだから」→「なぜ、見直さないのか?」→「誰も提案しないから」。
このように「なぜ?」を繰り返すと、表面的な問題の奥にある根本原因が見えてきます。トヨタ生産方式で有名な「なぜなぜ分析」は、物流現場でも非常に有効な手法です。5回繰り返すことで、対症療法ではなく、根本的な解決策にたどり着くことができます。
ムダを見つけるセルフチェックリスト
現場を観察する際に活用できるチェックリストです。各項目に該当する動きがないか、確認してみてください。
チェック項目 | 関連するムダ |
|---|---|
長い距離を歩いていないか | 運搬のムダ |
何かを待っている時間はないか | 待ちのムダ |
やり直している作業はないか | 手直しのムダ |
探している動作はないか | 動作のムダ |
同じことを何度もチェックしていないか | 加工のムダ |
仕掛品が溜まっていないか | 在庫のムダ |
必要以上に前倒しで作業していないか | 作りすぎのムダ |
情報を転記している作業はないか | 処理のムダ |
同じ質問を何度も受けていないか | 属人化のサイン |
紙の書類を探す時間が発生していないか | 情報管理のムダ |
ムダ発見でよくある失敗パターン

ムダを見つけようとして、うまくいかないケースもあります。以下の失敗パターンに心当たりがないか、確認してみてください。
1つ目は、「犯人探し」になってしまうパターンです。ムダを見つけると、「誰がこんなやり方を始めたんだ」と責任追及に走りがちですが、これでは現場が萎縮し、改善提案が出なくなります。ムダは「仕組み」の問題として捉え、個人を責めないことが重要です。
2つ目は、観察が形骸化するパターンです。「観察しなければ」と思って現場に行っても、何を見ればいいか分からず、ただ歩き回って終わってしまう。事前に「今日は待ち時間を見る」「今日は歩行距離を見る」とテーマを決めて観察することで、この失敗を防げます。
3つ目は、データを取って満足してしまうパターンです。時間を測り、動線を描き、問題点をリストアップした。しかし、そこで終わってしまい、改善のアクションにつながらない。データは改善のための手段であり、目的ではありません。「このデータをもとに、何を変えるか」まで落とし込むことが大切です。
まとめ:ムダは「意識して見る」ことで見つかる
ムダは、意識しないと見えません。日々の業務に追われる中で、立ち止まって現場を見つめ直す時間をつくることが、改善の第一歩です。
観察する、聞く、測る、図に書く、「なぜ?」を繰り返す。これら5つの方法を実践することで、今まで見えていなかったムダが見えてきます。まずは1時間だけ、特定の作業を集中して観察することから始めてみてはいかがでしょうか。
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