「改善したいことはたくさんある。でも、どこから手をつければいいか分からない」——物流現場の管理者なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか。
結論から言えば、効率化の優先順位は「効果」と「難易度」の2軸で決めます。
最優先:効果が大きく、すぐに実行できるもの
計画的に:効果は大きいが、時間やコストがかかるもの
後回し:効果が小さく、手間もかかるもの
この記事では、物流現場で使える優先順位の決め方を、具体的なステップとマトリクスを使って解説します。改善テーマの洗い出しから、実行順序の決定まで、この記事を読めば迷わず着手できるようになります。
なぜ優先順位が重要なのか
物流現場には、改善すべきテーマが無数にあります。ピッキング動線の見直し、在庫配置の最適化、入荷検品の効率化、シフト作成の自動化、ミス削減の仕組みづくり——挙げればキリがありません。
しかし、すべてを同時に進めることは不可能です。人員も時間も予算も限られている中で、あれもこれもと手を出すと、どれも中途半端になってしまいます。
優先順位を明確にすることで、限られたリソースを最も効果的な改善に集中できます。また、「なぜこのテーマから着手するのか」をチームに説明できるようになり、現場の納得感も高まります。
優先順位を決める3つの基準

効率化の優先順位を決める際は、以下の3つの基準で評価します。
基準①:効果の大きさ
改善によって得られる効果の大きさを見積もります。効果は主に「時間削減」と「コスト削減」の2つの観点で測定します。
時間削減であれば、「1日あたり何分短縮できるか」「月間で何時間の削減になるか」を具体的に試算します。コスト削減であれば、「人件費がいくら下がるか」「ミスによる損失がどれだけ減るか」を金額で把握します。
物流現場で効果が大きくなりやすいのは、毎日発生する作業、関わる人数が多い作業、時間がかかっている作業の改善です。たとえば、ピッキング作業は毎日全員が行うため、1人あたり5分の短縮でも、10人×20日で月間1,000分(約17時間)の削減になります。
基準②:実現の難易度
改善を実行するために必要な「時間」「コスト」「労力」を評価します。
すぐにできる改善としては、レイアウト変更、作業手順の見直し、ルールの明文化などがあります。一方、時間やコストがかかる改善としては、システム導入、設備投資、大規模な配置転換などが挙げられます。
難易度を評価する際は、「明日からできるか」「1週間でできるか」「1ヶ月以上かかるか」という時間軸で分類すると判断しやすくなります。
基準③:緊急度
今すぐ対応が必要か、後でも問題ないかを判断します。
緊急度が高いのは、安全に関わる問題、顧客クレームにつながる問題、法令違反のリスクがある問題です。これらは効果や難易度に関係なく、優先的に対応する必要があります。
一方、「あったら便利」「将来的には必要」というレベルのテーマは、緊急度は低いと判断できます。
優先順位マトリクスの使い方
3つの基準のうち、特に重要なのは「効果」と「難易度」です。この2軸でマトリクスを作成し、改善テーマを分類しましょう。
優先順位マトリクス
効果:大 | 効果:小 | |
|---|---|---|
難易度:低 | ★★★ 最優先 | ★★ 余裕があれば |
難易度:高 | ★★ 計画的に | ★ 後回し |
最優先(効果大×難易度低) は、今すぐ着手すべきテーマです。物流現場では、ロケーション配置の見直し、5Sの徹底、作業手順書の整備などが該当します。これらは低コストで実行でき、効果も実感しやすいため、現場のモチベーション向上にもつながります。
計画的に(効果大×難易度高) は、中長期的に取り組むべきテーマです。倉庫管理システム(WMS)の導入、自動化設備の検討、大規模なレイアウト変更などが該当します。予算確保や関係者の調整が必要なため、計画を立てて段階的に進めます。
余裕があれば(効果小×難易度低) は、優先度は低いものの、手が空いたときに実行するテーマです。帳票フォーマットの微修正、掲示物の更新などが該当します。
後回し(効果小×難易度高) は、現時点では着手しないテーマです。効果が小さいのに手間がかかるものは、そもそも本当に必要かを再検討しましょう。
優先順位を決める4つのステップ

実際に優先順位を決める際は、以下の4つのステップで進めます。
ステップ1:改善テーマを洗い出す
まずは、改善したいテーマをすべて書き出します。この段階では「できる・できない」を考えず、思いつく限り挙げてください。
洗い出しの方法としては、現場スタッフへのヒアリング、日報や報告書からの抽出、現場観察で気づいた点のメモなどがあります。最低でも10〜20個のテーマを挙げることを目標にしましょう。
ステップ2:効果と難易度を評価する
洗い出したテーマごとに、効果と難易度を「大・中・小」の3段階で評価します。
効果の評価は、「年間でどれくらいの時間・コスト削減になるか」を目安にします。年間100時間以上の削減なら「大」、50〜100時間なら「中」、50時間未満なら「小」といった基準を設けると判断しやすくなります。
難易度の評価は、「実行までにかかる期間」を目安にします。1週間以内なら「低」、1ヶ月以内なら「中」、1ヶ月以上なら「高」と分類します。
ステップ3:マトリクスに配置する
評価が終わったら、各テーマを優先順位マトリクスに配置します。視覚的に整理することで、どのテーマから着手すべきかが一目で分かるようになります。
ステップ4:実行計画を立てる
マトリクスをもとに、実行の順番と担当者、期限を決めます。最優先のテーマから順に、具体的なアクションプランを作成しましょう。
一度に複数のテーマを進めるのではなく、1つずつ確実に完了させることをおすすめします。小さな成功体験を積み重ねることで、改善活動が継続しやすくなります。
優先順位を間違えるとこうなる
優先順位の判断を誤ると、改善活動は失敗に終わります。よくある失敗パターンを紹介します。
失敗①:効果が小さいテーマから始めてしまう 「簡単だから」という理由で効果の小さいテーマから着手すると、時間と労力を使っても目に見える成果が出ません。現場から「改善しても何も変わらない」という声が上がり、改善活動自体が形骸化してしまいます。
失敗②:難易度の高いテーマに最初から挑戦する システム導入や設備投資など、難易度の高いテーマから始めると、途中で頓挫するリスクがあります。また、成果が出るまでに時間がかかるため、現場のモチベーションが維持できません。
失敗③:緊急度の高いテーマを後回しにする 安全や品質に関わるテーマを後回しにすると、事故やクレームにつながります。緊急度の高いテーマは、効果や難易度に関係なく優先的に対応しましょう。
改善事例:優先順位の見直しで残業20%削減
ある物流センターでは、改善したいテーマが15件以上あり、どこから手をつけるか迷っていました。
そこで、効果×難易度のマトリクスで整理したところ、最優先すべきテーマは3件に絞られました。具体的には、出荷頻度の高い商品のロケーション見直し、ピッキングリストのフォーマット改善、検品エリアのレイアウト変更です。
この3件を3ヶ月かけて順番に実行した結果、1人あたりの作業時間が1日30分短縮。月間の残業時間は20%削減されました。「やることが明確になったので、迷わず動けた」という現場の声も上がっています。
優先順位セルフチェック10問
自社の改善活動が正しい優先順位で進んでいるか、以下の10問でチェックしてみてください。
テーマ選定について □ 改善テーマを10件以上洗い出している □ 効果と難易度を数値または3段階で評価している □ マトリクスで視覚的に整理している
実行について □ 最優先テーマから着手している □ 一度に複数テーマを進めていない □ 各テーマに担当者と期限を設定している
評価について □ 改善前後の数値を記録している □ 定期的に進捗を確認している □ 完了したテーマの効果を検証している
継続について □ 次の改善テーマが明確になっている
7問以上チェックがつけば、優先順位に基づいた改善活動ができています。6問以下の場合は、優先順位の見直しを検討しましょう。
まとめ
効率化の優先順位は、「効果」と「難易度」の2軸で決めます。効果が大きく、すぐに実行できるテーマから着手することで、限られたリソースを最大限に活かせます。
改善テーマを洗い出し、マトリクスで整理し、1つずつ確実に実行する。このシンプルなプロセスを繰り返すことで、物流現場は着実に変わっていきます。
まずは、改善したいテーマを10個書き出すことから始めてみてください。
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