「なんとなく非効率だと感じているけど、どこを改善すればいいか分からない」——そんな悩みを抱える物流現場は少なくありません。
結論から言えば、倉庫作業の非効率は「7つのムダ」で整理できます。
7つのムダ:運搬・在庫・動作・待ち・作りすぎ・手直し・加工
見つけ方:現場観察→作業者ヒアリング→データ分析の3ステップ
削減の順番:頻度×影響度で優先順位をつけ、動作・運搬のムダから着手
この記事では、トヨタ生産方式で知られる「7つのムダ」を物流倉庫の文脈で解説し、それぞれの見つけ方と具体的な削減策を紹介します。
倉庫作業における7つのムダ

「7つのムダ」は、トヨタ生産方式で提唱された改善の基本概念です。製造業で生まれた考え方ですが、物流倉庫の現場にもそのまま当てはまります。それぞれのムダを、物流現場の具体例とともに見ていきましょう。
①運搬のムダ
運搬のムダとは、必要以上にモノを動かしている状態を指します。運搬そのものは付加価値を生まないため、できる限り減らすべき作業です。
物流倉庫でよく見られる運搬のムダには、出荷頻度の高い商品が倉庫の奥に配置されているケース、ピッキングエリアと梱包エリアが離れているケース、仮置き場を経由して何度も商品を移動させているケースなどがあります。
削減策としては、出荷頻度に応じたロケーション配置の見直し、作業エリアのレイアウト変更、仮置きの廃止または削減が有効です。
②在庫のムダ
在庫のムダとは、必要以上の在庫を抱えている状態です。過剰在庫はスペースを圧迫するだけでなく、管理コストの増加、商品の劣化リスク、棚卸作業の負担増加にもつながります。
物流倉庫では、「欠品が怖い」という心理から安全在庫を過剰に積み増すケースや、販売終了した商品がそのまま残っているケース、返品商品の処理が滞っているケースなどが典型的です。
削減策としては、適正在庫基準の見直し、滞留在庫の定期的な棚卸と処分ルールの策定、返品処理フローの整備が挙げられます。
③動作のムダ
動作のムダとは、作業に直接関係のない動きや、非効率な動作を指します。歩く、探す、持ち替える、かがむといった動作は、積み重なると大きな時間ロスになります。
物流倉庫でよくある動作のムダは、商品やラベルを探す時間、工具や資材が定位置にないために探し回る時間、棚の高い位置や低い位置への繰り返しアクセスなどです。
削減策としては、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底、作業に必要な道具の定位置管理、出荷頻度の高い商品を取りやすい高さ(ゴールデンゾーン)に配置することが効果的です。
④待ちのムダ
待ちのムダとは、次の作業を待っている時間、つまり手待ち状態を指します。作業者が手を止めている時間は、そのまま生産性の低下につながります。
物流倉庫では、入荷待ちでトラックバースが空いているのに作業者が待機しているケース、検品完了待ちで梱包作業者が手待ちになっているケース、フォークリフトの順番待ちが発生しているケースなどが該当します。
削減策としては、入荷予定の事前共有と人員配置の調整、工程間の作業バランスの見直し、フォークリフトの台数や動線の最適化が有効です。
⑤作りすぎのムダ
作りすぎのムダとは、必要以上に前作業や準備作業を行っている状態です。製造業では「作りすぎ」ですが、物流倉庫では「準備しすぎ」「前倒し作業」として現れます。
具体的には、出荷指示が確定する前にピッキングを始めて、後からキャンセルや変更で手戻りが発生するケース、必要以上にラベルを事前印刷して使い切れないケース、翌日分の梱包資材を大量に準備しすぎるケースなどがあります。
削減策としては、出荷指示確定後に作業を開始するルールの徹底、必要数に応じたジャストインタイムの準備、作業の平準化が挙げられます。
⑥手直しのムダ
手直しのムダとは、ミスや不良による手戻り、やり直し作業を指します。一度完了した作業をもう一度やり直すことは、時間と労力の二重ロスです。
物流倉庫では、ピッキングミスによる再ピッキング、誤出荷による返品対応、ラベル貼り間違いによる貼り直し、検品漏れによる再検品などが典型的な手直しのムダです。
削減策としては、ハンディターミナルによるバーコード検品の導入、ダブルチェック体制の見直し、ミスが起きやすい商品の識別表示強化、作業手順書の整備が効果的です。
⑦加工のムダ
加工のムダとは、必要以上の作業や過剰な品質をかけている状態です。顧客が求めていないレベルの作業は、ムダな工数を消費しています。
物流倉庫では、過剰な緩衝材の使用、必要以上に丁寧な梱包、求められていない検品項目の追加、形式的なチェックシートの記入などが該当します。
削減策としては、顧客要求品質の明確化、梱包基準の見直し、検品項目の精査、本当に必要な帳票かどうかの確認が有効です。
ムダを見つける3つのステップ
7つのムダを理解しても、実際に現場でムダを見つけるのは簡単ではありません。以下の3つのステップで、体系的にムダを発見しましょう。
ステップ1:現場観察
まずは実際に現場を歩き、作業を観察します。このとき重要なのは、「当たり前」と思っていることを疑う姿勢です。
観察のポイントは、作業者の動線はスムーズか、待ち時間は発生していないか、探す動作はないか、同じ作業を繰り返していないかなどです。できれば異なる時間帯、異なる曜日に複数回観察すると、より多くのムダが見えてきます。
ステップ2:作業者へのヒアリング
現場観察だけでは見えないムダもあります。実際に作業しているスタッフに「やりにくいと感じていること」「無駄だと思う作業」を聞いてみましょう。
ヒアリングのコツは、「なぜその作業が必要なのか」を深掘りすることです。「昔からやっているから」「そういうルールだから」という答えが返ってきたら、そこにムダが潜んでいる可能性があります。
ステップ3:データ分析
感覚だけでなく、データでムダを可視化することも重要です。工程ごとの作業時間、ミス発生率、滞留時間などを計測し、どこにボトルネックがあるかを数値で把握します。
特に「時間がかかっている工程」「ミスが多い工程」「人員が滞留している時間帯」は、ムダが集中しているポイントです。
ムダ削減の優先順位の決め方

7つのムダをすべて同時に改善することは現実的ではありません。効果の大きいものから優先的に取り組むことが重要です。
優先順位を決める際は、「頻度」と「影響度」の2軸で評価します。毎日発生するムダと月に1回のムダでは、前者を優先すべきです。また、作業時間に大きく影響するムダと、わずかな影響しかないムダでは、前者を優先します。
一般的に、物流倉庫で効果が出やすいのは「動作のムダ」と「運搬のムダ」の削減です。レイアウト変更やロケーション見直しは、比較的低コストで実施でき、効果も実感しやすいためです。
改善事例:ムダ削減で作業効率25%向上
ある物流センターでは、7つのムダの観点で現場を見直した結果、以下の改善を実現しました。
まず、出荷頻度の高い商品をピッキングエリアの手前に移動させ、運搬のムダを削減。次に、工具や資材の定位置管理を徹底し、動作のムダを削減しました。さらに、入荷予定の事前共有により、待ちのムダも大幅に減少。
これらの取り組みにより、1人あたりの作業効率は25%向上し、残業時間は月平均15時間から8時間に削減されました。
現場で使える7つのムダチェックリスト
自社の現場にどのムダが潜んでいるか、以下のチェックリストで確認してみてください。
運搬のムダ □ 出荷頻度の高い商品が倉庫の奥にある □ 同じ商品を複数回移動させている □ ピッキングと梱包の距離が遠い
在庫のムダ □ 3ヶ月以上動いていない在庫がある □ 返品商品が放置されている □ 安全在庫の基準が曖昧
動作のムダ □ 商品やラベルを探す時間がある □ 工具や資材の置き場所が決まっていない □ 高い棚や低い棚へのアクセスが頻繁
待ちのムダ □ 入荷待ちで作業者が手待ちになる □ フォークリフトの順番待ちがある □ 前工程の完了待ちが発生する
作りすぎのムダ □ 出荷確定前にピッキングを始めている □ ラベルを必要以上に事前印刷している □ 翌日分の準備をしすぎている
手直しのムダ □ ピッキングミスが週に複数回ある □ ラベル貼り間違いが発生している □ 検品漏れによる再検品がある
加工のムダ □ 過剰な緩衝材を使っている □ 顧客が求めていない検品をしている □ 形式的な帳票を記入している
3つ以上チェックがついた項目は、優先的に改善を検討しましょう。
まとめ
倉庫作業の効率化は、「7つのムダ」の観点で現場を見直すことから始まります。運搬・在庫・動作・待ち・作りすぎ・手直し・加工——それぞれのムダを見つけ、一つずつ改善していくことで、現場は着実に変わっていきます。
まずは現場を歩き、作業者の声を聞き、データを見る。この3つのステップで、自社のムダを可視化してみてください。
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