作業実績を取りたい。でも、現場に負担をかけたくない。物流倉庫の管理者であれば、一度はこのジレンマに直面したことがあるのではないでしょうか。入荷・ピッキング・検品・出荷と、各工程でどれだけの時間がかかっているのかを把握できれば、作業実績管理やシフト最適化の精度は格段に上がります。しかし、現場スタッフに余計な作業を増やせば、本来の業務効率が下がり、不満の原因にもなりかねません。
結論から言えば、物流倉庫の作業実績収集は「既存システムのログ活用」を最優先で検討すべきです。
最優先:WMSやハンディターミナルのログを活用し、追加負担ゼロで高精度データを取得する
次善策:既存システムがなければ、タブレット簡易入力で低コストに開始する
段階的に:紙の日報はデジタル化を前提とし、早期にシステム移行を計画する
この記事でわかること
4つの収集方法(WMS連携・ハンディターミナルログ・タブレット入力・紙日報)の特徴と選び方
規模別のおすすめ:小規模〜大規模・多拠点まで、自社に合った方法の見極め方
導入3ステップと失敗回避策:現場の抵抗感を抑えながら確実にデータ活用を始める方法
そもそも作業実績管理とは
作業実績管理とは、物流倉庫における各工程の作業時間・処理件数・作業者ごとのパフォーマンスを記録・集計し、現場改善に活用する取り組みのことです。入荷からピッキング、検品、出荷まで、どの工程に何時間かかり、誰がどれだけの量を処理したかを数値で把握することで、人員配置の最適化やコスト削減、生産性向上の根拠となるデータが得られます。作業実績管理の精度は、そのデータをどのような方法で収集するかによって大きく左右されます。
作業実績を収集する4つの方法を比較する

作業実績の収集方法は、大きく分けて4つあります。以下の比較表で全体像を把握したうえで、それぞれの詳細を確認していきましょう。
方法 | 負担 | 精度 | コスト |
|---|---|---|---|
WMS連携 | ◎低 | ◎高 | △高 |
ハンディターミナルログ | ◎低 | ○中 | ○中 |
タブレット入力 | ○中 | ○中 | ○中 |
紙の日報 | △高 | △低 | ◎低 |
規模別のおすすめ収集方法
どの方法を選ぶかは、倉庫の規模と既存システムの有無によって大きく変わります。
小規模(スタッフ30名以下)の倉庫では、システム投資を抑えられるタブレット入力が現実的です。フォーム作成から運用開始まで短期間で進められるため、まずは1工程からデータを取り始めるのに適しています。
中規模(30〜100名)の倉庫では、ハンディターミナルを活用した入出荷業務のログ収集が効果的です。すでにハンディターミナルを導入している現場が多く、追加コストを抑えつつ精度の高いデータを取得できます。シフト最適化や人員管理の改善に必要なデータ量も十分に確保できるでしょう。
大規模(100名以上)や多拠点展開の倉庫では、WMS連携によるデータ自動収集が不可欠です。拠点間のデータ統合や横断的な生産性比較を行うためには、システム間の連携が前提となります。
WMS連携:導入済みなら最も効率的な方法
WMS(倉庫管理システム)をすでに導入している倉庫であれば、そのシステムに蓄積されるログデータを活用するのが最善の選択です。入荷処理、ピッキング、出荷検品など、WMS上で行われる作業はすべてタイムスタンプ付きで記録されています。つまり、現場スタッフが特別な操作をしなくても、通常業務をこなすだけで作業実績が自動的に収集されるのです。
たとえば、ピッキング作業であれば「何時何分にどの商品を何個処理したか」がWMS上に記録されます。このデータを集計すれば、1人あたりの処理件数やピッキング速度を時間帯別に把握でき、生産性向上の施策立案に直結します。物流センターの繁忙期と閑散期の差を可視化し、人員配置を最適化するための根拠として活用できるでしょう。
ただし、WMS連携にはシステム側の対応が必要です。既存のWMSがデータのエクスポート機能を持っているか、API連携が可能かを事前に確認しておくことが重要です。また、データの粒度(工程単位か作業者単位か)によって取得設定が異なるため、どのレベルまで実績を把握したいかを明確にしてから設計に入りましょう。
ハンディターミナルログ:現場の動きをそのまま記録
ハンディターミナルを使った入出荷作業やピッキングを行っている倉庫では、端末の操作ログを活用する方法が有効です。バーコードをスキャンするたびに記録されるデータには、作業時刻・作業者ID・対象商品などの情報が含まれています。
WMS連携と同様に、現場スタッフの追加負担がほとんど発生しない点が大きなメリットです。ハンディターミナルのログは、WMSほどの詳細なデータは取れないものの、作業開始・終了時刻や処理件数の把握には十分な精度を確保できます。これらのデータを分析すれば、シフト最適化や工程間の人員再配置といった改善にすぐ着手できます。
注意点としては、すべての作業がハンディターミナルを使うわけではないことです。たとえば、仕分け作業やパレット整理など、端末を使わない工程の実績は別の方法で補完する必要があります。ハンディターミナルでカバーできる範囲を正確に把握し、不足する工程にはタブレット入力を組み合わせるのが実用的な運用方法です。
タブレット入力:低コストで始められる現実的な選択肢
WMSもハンディターミナルも導入していない倉庫、あるいは一部の工程だけ実績を取りたい場合には、タブレット端末での簡易入力が現実的な方法です。各作業エリアにタブレットを設置し、作業の開始時と終了時にタッチ操作で記録する仕組みです。
導入コストが抑えられるうえ、Excelやクラウドの簡易フォームを使えば、特別なシステム開発なしで始められます。物流現場では、検品エリアの入口にタブレットを置いて「検品開始」ボタンを押すだけ、といったシンプルな運用が効果的です。人員管理の第一歩として、まず「どの工程に何時間かかっているか」を把握するところから始めるのに最適な方法といえます。
ただし、現場スタッフに「入力する」という追加動作を求めることになるため、操作を極力シンプルにし、入力忘れへの対策(アラート通知など)を用意しておく必要があります。画面は大きなボタンで構成し、手袋をしたままでも操作できるようにするのが物流現場での鉄則です。
紙の日報:導入の手軽さとデータ活用の壁
紙の日報は、システム投資ゼロで始められる反面、データの集計・分析に大きな手間がかかります。現場スタッフが手書きで記録するため記入内容にばらつきが出やすく、転記ミスやデータの抜け漏れも発生しがちです。
物流倉庫では「作業日報は書いているが、集計は月末にまとめてExcelに入力している」というケースが少なくありません。この場合、リアルタイムでの現場把握ができないため、繁忙時の人員不足に気づくのが遅れるという問題が生じます。生産性向上やコスト削減の取り組みを進めるにも、データの鮮度が低いことが足かせになります。
紙の日報を使っている現場では、まずタブレット入力への移行を検討し、段階的にデジタル化を進めるのが現実的です。
導入ステップ:3段階で始める実績収集

作業実績管理の仕組みを新たに導入する場合、いきなり全工程を対象にするのではなく、段階的に進めることが成功のポイントです。
まず第1段階として、最も改善効果が見込める1つの工程に絞って収集を開始します。たとえば、ピッキング工程のように作業者ごとの差が出やすい工程が適しています。次に第2段階として、収集したデータをもとに人員配置の見直しやシフト最適化などの改善施策を実施し、効果を検証します。数値で改善効果が示せれば、現場スタッフの協力も得やすくなります。そして第3段階で、対象工程を入荷・検品・出荷と順次広げていきます。
この「小さく始めて成果を見せる」アプローチは、現場の抵抗感を抑えつつデータ活用の文化を根付かせるために非常に効果的です。
数値で見る改善効果:食品物流センターの事例
従業員30名規模の食品物流センターでは、紙の日報による作業実績管理からWMS連携によるデータ自動収集に切り替えたところ、以下のような改善が見られました。
日報記入にかかっていた1日あたり約30分の作業が、自動収集により約5分に短縮されました。現場スタッフの負担が大幅に軽減されただけでなく、データの精度も向上しています。手書き日報では記入漏れや転記ミスにより実用的なデータとして活用しづらい状態でしたが、WMS連携後はほぼすべての作業実績を正確に記録できるようになりました。
さらに、リアルタイムでデータが可視化されたことで、繁忙時間帯の人員配置を見直し、残業時間を月平均12時間から7時間に削減することにも成功しています。コスト削減と現場満足度の向上を同時に実現した好事例です。
導入時のよくある失敗パターン
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作業実績の収集を導入する際には、いくつかのつまずきやすいポイントがあります。事前に把握しておくことで、同じ失敗を避けることができます。
1つ目は、現場への説明不足による反発です。「なぜデータを取るのか」「自分たちの評価に使われるのか」という不安を解消しないまま導入を進めると、入力拒否や形骸化を招きます。導入前に「人員配置の最適化やシフト改善が目的であり、個人の監視ではない」ことを丁寧に説明する必要があります。
2つ目は、入力項目を欲張りすぎることです。最初から多くの項目を記録させようとすると、現場の負担が増えて継続できなくなります。まずは「作業開始時刻」「終了時刻」「処理件数」の3項目に絞り、運用が定着してから徐々に項目を追加するのが鉄則です。
3つ目は、収集したデータを活用しないことです。データを取るだけ取って改善に反映しなければ、現場は「結局意味がなかった」と感じてしまいます。最低でも月1回はデータに基づく改善報告を現場に共有し、実績収集の意義を実感してもらうことが継続のカギです。
収集方法を選ぶ前のセルフチェックリスト
自社に合った収集方法を選ぶために、以下の7項目を確認してみてください。
現在WMSを導入しているか
ハンディターミナルを日常的に使用しているか
WMSやハンディターミナルのデータエクスポート機能を確認したか
実績を取りたい工程は明確になっているか
現場スタッフへの説明・周知の体制はあるか
集計・分析を担当する人員は確保できるか
収集したデータの活用目的(人員管理・コスト削減など)は定まっているか
上記の項目を整理することで、4つの収集方法のうちどれが自社の現状に最もフィットするかが見えてきます。
よくある質問(FAQ)
作業実績の収集で最も負担が少ない方法は?
WMSやハンディターミナルをすでに導入している場合は、それらのログデータを活用する方法が最も負担が少ないです。通常業務の中で自動的にデータが記録されるため、現場スタッフに追加の作業を求める必要がありません。
タブレット入力で実績を取る際の注意点は?
入力画面をできるだけシンプルにすることが最も重要です。大きなボタンで構成し、手袋のまま操作できる設計にしましょう。また、入力忘れ防止のアラート通知を設定しておくと、データの抜け漏れを減らせます。項目は最初から欲張らず、開始・終了・件数の3つに絞って始めるのがおすすめです。
紙の日報からデジタル化するにはどうすればいい?
まずはタブレット入力への移行から始めるのが現実的です。Excelやクラウドフォームで入力画面を作成し、1つの工程から試験運用を開始します。運用が定着したら対象工程を広げ、将来的にはハンディターミナルやWMSとの連携を検討するとよいでしょう。
Excel管理から移行するにはどうすればいい?
Excel管理からの移行は、3つのステップで進めるのが効果的です。まずステップ1として、現在のExcelで管理している項目を棚卸しし、本当に必要なデータと惰性で取っているデータを整理します。次にステップ2で、必要な項目だけをタブレットやクラウドフォームに移し替え、1つの工程で2週間ほど並行運用を行います。問題がなければステップ3としてExcel管理を停止し、新しい仕組みに完全移行します。並行運用期間を設けることで、現場の不安を軽減しながらスムーズに切り替えられます。
まとめ
作業実績の収集は、現場の負担を最小限にすることが継続の鍵です。WMSやハンディターミナルを導入済みであれば、まずはそのログデータの活用を検討してください。導入していない場合でも、タブレット入力による簡易的な収集から始めることで、低コストかつ短期間で人員管理やシフト最適化に必要なデータを確保できます。
今すぐ始めるなら、まずは自社のWMSやハンディターミナルにデータエクスポート機能があるかを確認してみてください。機能がある場合は、ピッキングなど1工程のログを1週間分だけ抽出し、作業時間と処理件数を集計するところからスタートできます。既存システムがない場合は、クラウドフォームで「開始・終了・件数」の3項目だけを記録する簡易シートを作成し、明日から1工程で試してみましょう。
重要なのは、最初から完璧な仕組みを作ろうとしないことです。1つの工程で成果を出し、それを足がかりに対象を広げていく段階的なアプローチが、作業実績管理の第一歩として最も確実に生産性向上とコスト削減につながります。
結論まとめ
既存システムのログ活用が最優先:WMSやハンディターミナルがあれば追加負担ゼロで高精度データを取得できる
なければタブレット入力から小さく始める:低コスト・短期間で1工程からデータ活用をスタートできる
段階的に広げて定着させる:成果を見せながら対象工程を拡大し、作業実績管理の文化を根付かせる
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