情シスの問い合わせ対応、約6割が「基本的な内容」という現実
情報システム部門の担当者の6割以上が社内ヘルプデスク業務に課題を感じているという調査結果があります。さらに、情シスに寄せられるITサポートやツール操作に関する問い合わせのうち、約60%は「使い方がわからない」「エラーが出た」といった基本的な内容であるという実態も報告されています。つまり、問い合わせの大半は、FAQやマニュアルが整備されていれば社員が自力で解決できるものなのです。
本記事では、社内ヘルプデスクへの問い合わせを削減するためのFAQシステム構築と運用のポイントを解説します。特に「FAQを作ったのに使ってもらえない」「どの問い合わせからFAQ化すべきかわからない」という悩みを抱えている情シス担当者に向けて、FAQ整備の優先度判断フローと、利用される仕組みの設計方法をお伝えします。
FAQが使われない3つの原因

多くの企業が社内FAQを整備しているにもかかわらず、問い合わせ件数が減らないケースは珍しくありません。ある調査では、社内マニュアルが「十分に活用されている」と回答した企業はわずか35%にとどまり、残りの約65%は活用されていないという結果が出ています。FAQが使われない原因は主に3つあります。
1つ目は「探せない」です。FAQが存在していても、社員がその場所を知らない、あるいは知っていても目的の情報にたどり着けないという問題です。社内ポータルの奥深くに埋もれたFAQページ、カテゴリ分けが不適切で目的の項目を見つけられない検索機能——こうした「アクセス性の低さ」が、FAQの利用を妨げる最大の原因です。
2つ目は「情報が古い・不正確」です。一度作ったFAQが更新されないまま放置されると、システムのバージョンアップやUI変更に内容が追いつかなくなります。社員が一度FAQを試して「書いてある通りにやっても解決しなかった」という経験をすると、以後FAQを信用しなくなり、直接ヘルプデスクに問い合わせるようになります。信頼を失ったFAQの回復には時間がかかるため、情報の鮮度維持は極めて重要です。
3つ目は「回答がわかりにくい」です。技術者目線で書かれた回答は、ITに詳しくない社員にとって難解です。専門用語が多い、手順が省略されている、画面キャプチャがない——こうしたFAQは「読んでもわからない」と判断され、結局ヘルプデスクへの問い合わせにつながります。
FAQ整備の優先度判断フロー
限られたリソースの中で効果的にFAQを整備するには、「どの問い合わせからFAQ化するか」の優先度判断が不可欠です。以下の4段階のフローに沿って判断してください。
第1段階は「問い合わせデータの収集と分類」です。まず、過去1〜3か月間のヘルプデスクへの問い合わせ内容を収集します。メール、チャット、口頭での問い合わせを含め、すべてを記録してください。問い合わせ管理ツールを導入していない場合は、スプレッドシートで「日付」「問い合わせ者」「カテゴリ」「内容の要約」「対応時間」「解決方法」を記録するだけで十分です。この記録を2週間〜1か月続けるだけで、問い合わせの全体像が見えてきます。
第2段階は「頻度と対応コストによるスコアリング」です。収集した問い合わせを内容別にグルーピングし、それぞれの「月間発生件数」と「1件あたりの平均対応時間」を算出します。この2つを掛け合わせた値(月間発生件数 × 平均対応時間 = 月間対応コスト)が大きい順に並べると、FAQ化による削減効果が高い問い合わせが上位に来ます。たとえば「パスワードリセット依頼」が月30件で1件あたり10分なら月間対応コストは300分(5時間)、「VPN接続エラー」が月10件で1件あたり30分なら同じく300分です。このように数値化することで、感覚ではなくデータに基づいた優先度判断ができます。
第3段階は「FAQ化の適性判定」です。月間対応コストが高い問い合わせがすべてFAQ化に適しているわけではありません。ここで、各問い合わせに対して「定型的な手順で解決できるか」「個別の状況判断が不要か」「画面キャプチャや手順書で説明可能か」の3つの基準で判定します。3つすべてに該当する問い合わせはFAQ化に最適です。一方、個別の状況判断が必要な問い合わせ(例:「業務アプリケーションの特殊なエラー」「ネットワーク環境に依存する接続問題」など)は、FAQよりもトラブルシューティングガイドや判断フローチャートの形式が適しています。
第4段階は「優先度ランクの決定」です。月間対応コストの大きさとFAQ化の適性判定を組み合わせて、「最優先(月間対応コスト上位かつFAQ適性あり)」「次点(月間対応コスト中位かつFAQ適性あり)」「保留(FAQ適性なし、別形式で対応)」の3ランクに分類します。最優先のものから順にFAQを作成していくことで、最も少ない労力で最大の問い合わせ削減効果を得ることができます。
利用されるFAQの設計ポイント
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FAQを作っても使われなければ意味がありません。社員に「直接聞くより、FAQを見た方が早い」と思わせるための設計ポイントを5つ紹介します。
1つ目は「検索性を最優先にする」ことです。FAQは「読むもの」ではなく「検索するもの」です。社員が困ったときに最初にとる行動は「検索」であり、FAQページの一覧を上から順に読むことはありません。検索窓を目立つ位置に配置し、社員が実際に使う言葉(技術用語ではなく日常語)でヒットするようにキーワードを設定してください。「VPN」だけでなく「在宅 つながらない」「リモート 接続できない」といった表現もカバーすることが重要です。
2つ目は「1つのFAQに1つの問題」の原則を守ることです。複数の問題をひとつのFAQ記事にまとめると、検索でヒットしても目的の回答にたどり着けません。「パスワードのリセット方法」「パスワードの変更方法」「アカウントがロックされた場合」は、それぞれ独立したFAQ記事にしてください。
3つ目は「画面キャプチャ付きの手順書形式」で回答を作成することです。テキストだけの説明では、ITに詳しくない社員は手順の途中で迷います。実際の操作画面のキャプチャを貼り、「①○○をクリック → ②△△を入力 → ③□□ボタンを押す」のように、番号付きの手順で説明してください。
4つ目は「社員の導線上にFAQを配置する」ことです。社内ポータルの目立つ位置、チャットツールのピン留めメッセージ、メール署名の下——社員が日常的にアクセスする場所にFAQへのリンクを置くことで、「FAQの存在を知らない」問題を解消できます。問い合わせが来た際に回答と一緒にFAQのリンクを送る運用も、FAQの存在を周知する効果的な方法です。
5つ目は「フィードバック機能を設ける」ことです。各FAQ記事の末尾に「この記事は役に立ちましたか?」のボタンを設置し、「役に立たなかった」と評価された記事を優先的に改善する仕組みを作ります。利用者の声に基づいて改善を繰り返すことで、FAQの品質と信頼性が向上し、利用率が自然と高まっていきます。
運用改善サイクル――作って終わりにしない仕組み

FAQは「作って公開したら完了」ではなく、継続的な改善が不可欠です。月に1回、以下の3つの指標を確認し、改善サイクルを回してください。
確認すべき指標の1つ目は「問い合わせ件数の推移」です。FAQ公開前と公開後の問い合わせ件数を比較し、実際に削減効果が出ているかを確認します。2つ目は「FAQ記事別の閲覧数」です。閲覧数が多いのに問い合わせが減っていない記事は、内容がわかりにくい可能性があります。3つ目は「新たに増えている問い合わせの傾向」です。新しいシステムの導入やアップデートに伴って発生する問い合わせを早期にキャッチし、FAQに追加してください。
この「計測→分析→改善→公開」のサイクルを月次で回すことで、FAQは時間の経過とともに充実し、ヘルプデスクへの問い合わせは着実に減少していきます。理想的には、FAQ公開後3〜6か月で問い合わせ件数の20〜40%削減を目標に設定するとよいでしょう。
まとめ
社内ヘルプデスクの問い合わせ削減は、FAQを「作ること」ではなく「使われる仕組みを設計すること」がポイントです。まずは問い合わせデータを2週間記録することから始め、本記事で紹介した優先度判断フロー(収集→スコアリング→適性判定→ランク決定)に沿ってFAQ化する問い合わせを選定してください。そして、検索性を重視した設計と月次の改善サイクルを回すことで、情シスの業務負荷を大幅に軽減できます。
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