「マニュアルに書いてあるんだけど…」を繰り返す日々から抜け出すために
社内ヘルプデスクの問い合わせ対応は、情シス担当者の業務時間を最も圧迫しているノンコア業務です。AIチャットボットとFAQ自動化を組み合わせれば、定型的な問い合わせの多くを自動対応に切り替え、担当者がコア業務に集中できる環境を作れます。本記事では、ひとり情シスやIT担当者の負荷を軽減するための具体的な方法とステップを解説します。
「パスワードのリセット方法を教えてほしい」「VPNに接続できない」「経費精算システムの使い方がわからない」——こうした問い合わせが毎日のように繰り返され、本来やるべきIT戦略の策定やセキュリティ対策に手が回らないという状況は、多くの情シス担当者に共通する悩みです。OrangeOne社の調査では、情シス部門で最も多くの時間を使っている業務は「問い合わせや障害対応」で54.7%を占め、約7割が人材不足を感じているという結果が出ています。一方、ソフトクリエイト社の調査でも「コア業務に関与したいが、ノンコア業務が課題」と回答した情シス担当者は40%を超えています。
ひとり情シスの負担はなぜ減らないのか

問い合わせ対応の負荷が減らない原因は、大きく3つあります。
第一に、「ひとり情シス」の状態が常態化していることです。ノークリサーチが2025年5月に実施した調査によれば、年商500億円未満の中堅・中小企業のうち24.5%が情シス担当者1名の「ひとり情シス」であり、2023年の21.3%から3.2ポイント増加しています。しかも情シス人材不足を感じている企業の約75%が「人員増加の予定がない」と回答しており、人を増やすことで解決するシナリオは現実的ではありません。
第二に、FAQやマニュアルが「作っただけ」で活用されていないことです。多くの企業が社内FAQを整備していますが、従業員が必要な情報を見つけられず、結局は電話やチャットで直接問い合わせるというパターンが繰り返されています。「FAQに書いてあるのに検索してもらえない」というのは、情シス担当者の永遠の課題ともいえるでしょう。
第三に、問い合わせ対応が属人化していることです。特定の担当者にしか回答できない状態が続くと、その人が不在のときに対応が止まります。中小企業の76%が「兼務型」のひとり情シスであるという調査結果もあり、IT以外の業務も抱えながら問い合わせに対応しているのが実情です。
AIチャットボットで「聞かれる前に答える」仕組みを作る
AIチャットボットは、こうした構造的な課題を技術で解決するアプローチです。従来のFAQが「従業員が自分で検索して回答を探す」受動的な仕組みであるのに対し、AIチャットボットは「質問を投げかけると、AIが最適な回答を返す」能動的な仕組みです。SlackやTeamsといった日常的に使っているビジネスチャットツール上で動作するため、わざわざ別のシステムを開く手間もありません。
最近のAIチャットボットは、RAG(検索拡張生成)の技術を取り入れたものが増えています。RAGとは、AIが回答を生成する前に社内のマニュアルやFAQデータベースから関連情報を検索し、その情報をもとに回答を作成する仕組みです。この方式であれば、社内規定やマニュアル、PDFファイルなどをアップロードするだけで、AIがそれらの情報に基づいて回答を自動生成します。「マニュアルに書いてあるのに読んでもらえない」という問題を、AIが代わりにマニュアルから答えを探して返すことで解決できるわけです。
ある企業の事例では、AIチャットボットの導入により定型的な問い合わせの約60%を自動応答で処理できるようになり、担当者の対応工数が80〜100時間削減されたと報告されています。さらに、24時間365日稼働するため、夜間や休日の問い合わせにも対応でき、従業員側の利便性も向上します。
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AIチャットボットの導入と並行して取り組みたいのが、FAQ自体の自動化です。社内FAQが活用されない最大の理由は、情報が古くなっていたり、検索しても欲しい回答が見つからなかったりすることにあります。FAQの作成・更新を人手で行い続けるのは、ひとり情シスにとって大きな負担です。
生成AIを活用したFAQ自動化では、日々の問い合わせ内容をAIが学習し、よく聞かれる質問とその回答を自動で蓄積・更新していく仕組みが実現できます。新しいシステムを導入したときや社内ルールが変わったときも、関連するマニュアルを更新するだけで、AIが自動的に回答内容に反映します。「FAQのメンテナンスに追われる」という、FAQ運用そのものの課題も同時に解決できるのです。
また、蓄積された問い合わせデータを分析すれば、「どの部署からどんな質問が多いのか」「どの時期に問い合わせが集中するのか」といった傾向が可視化されます。この情報は、社員教育の重点分野の特定や、ITシステムの改善ポイントの発見にも活用できます。たとえば「毎月月末に経費精算システムの問い合わせが急増する」というパターンが見えれば、月末前に操作ガイドを全社配信するという予防的な対応が可能になります。問い合わせが発生してから対応するのではなく、発生そのものを減らす仕組みへと進化させられるのです。
導入を成功させるための3つのステップ

AIチャットボットとFAQ自動化の導入を検討する際は、以下の3つのステップで進めることをおすすめします。
最初に取り組むべきは、現状の問い合わせ内容の棚卸しです。過去1〜3か月分の問い合わせ履歴を振り返り、「同じ質問が繰り返されているもの」「マニュアルを見れば解決するもの」をリストアップします。これらの定型的な問い合わせこそ、AIによる自動化の対象になります。逆に、個別の判断が必要な問い合わせや、セキュリティに関する高度な問題は、引き続き人間が対応する領域として切り分けます。この「AIに任せる範囲」と「人が対応する範囲」の線引きが、導入成功の鍵です。
次に、社内にあるナレッジ資産を整理します。社内マニュアル、FAQ、手順書、過去のメール対応履歴など、すでに存在するドキュメントを洗い出します。RAGベースのAIチャットボットであれば、これらのドキュメントをそのまま学習データとして活用できます。完璧なデータを揃える必要はなく、まずは「よく聞かれる質問に対応するドキュメント」から優先的に整理するのが実務的です。
最後に、スモールスタートで導入し、段階的に拡大します。最初から全社展開を目指すのではなく、まずは情シス部門への問い合わせなど、特定の領域で試験運用を始めます。利用者のフィードバックをもとにAIの回答精度を改善し、効果が確認できた段階で人事・経理・総務といった他のバックオフィス部門にも展開していきます。導入事例を見ても、段階的に拡大していった企業のほうが、回答精度の向上と社内定着の両面で高い効果を得ています。
まとめ
ひとり情シスの問い合わせ対応負荷は、人を増やすだけでは解決しません。AIチャットボットによる定型問い合わせの自動対応と、FAQ自動化によるナレッジの継続的な蓄積・更新を組み合わせることで、担当者がコア業務に集中できる環境を作ることが可能です。まずは現状の問い合わせ内容を棚卸しし、AIに任せられる範囲を特定することから始めてみてください。
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