3大クラウドの料金は 2026 年時点でも頻繁に改定されており、為替変動の影響で円建ての実コストも毎月変わる。本記事では 2026年4月時点の公式料金(東京リージョン)を 1USD=150円前提で円換算した比較表、従業員50〜500名規模の3年TCO(総所有コスト)試算、既存オンプレからの移行コスト早見表を一気通貫で提供する。稟議書に添付できる粒度で整理した。
為替前提:本記事の円建て数字はすべて 1USD=150円 で換算。為替相場により実コストは変動するため、稟議時は最新の為替レートと各社公式料金計算ツールで再試算すること。
H2 #1:なぜ今「円建て×3年TCO」で比較する必要があるのか
単月オンデマンド比較では判断を誤る3つの理由
総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、クラウドを利用する企業は 80.4% に達する(総務省、2024年7月)。一方、中小企業の多くは「単月のオンデマンド料金」だけで比較して選定し、数年後にコスト超過で移行し直すケースが後を絶たない。次の3点を織り込んだ比較が必須である。
- 予約コミットメント割引(1年/3年)の適用で単価が 35〜60% 変動
- 為替変動で円建てコストが±10〜20% 単位で動く(2023〜2026年の実績)
- 移行期の二重運用コスト・データ転送費・アプリ改修費を含めないと初年度の実負担を読み違える
比較軸サマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公式ソース | AWS / Azure / GCP 各社の公式料金ページ(2026年4月参照) |
| リージョン | 東京リージョン |
| 為替前提 | 1USD = 150円 |
| 比較領域 | コンピュート/ストレージ/RDB/AI・ML |
| TCO 期間 | 3年(初期移行+運用2年) |
| 規模モデル | 50名/200名/500名 |
まとめ:単月オンデマンド比較は入口に過ぎない。円建て×3年TCO×移行コストまで積まないと本当の安い選択はわからない。
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H2 #2:主要サービス料金比較(3領域×3社、円建て)
パターンA:コンピュート(4 vCPU / 16 GB RAM 相当)
| サービス | オンデマンド時間単価 | 月額概算(730h) | 1年予約割引率 | 予約後月額 |
|---|---|---|---|---|
| AWS EC2 m6i.xlarge | $0.192 | 約 21,000円 | 約40%(Savings Plans) | 約 12,600円 |
| Azure VM D4s v5 | $0.192 | 約 21,000円 | 約35%(Reserved) | 約 13,650円 |
| GCP Compute Engine e2-standard-4 | $0.134 | 約 14,700円 | 約37%(CUD)+SUD自動 | 約 9,300円 |
パターンB:オブジェクトストレージ(1TBあたり/月)
| 層 | AWS S3 | Azure Blob | GCP Cloud Storage |
|---|---|---|---|
| Standard | $23.00(約 3,450円) | $18.40(約 2,760円) | $20.00(約 3,000円) |
| 低頻度(IA/Cool/Nearline) | $12.50(約 1,875円) | $10.00(約 1,500円) | $10.00(約 1,500円) |
| アーカイブ(Glacier/Archive) | $3.60(約 540円) | $1.00(約 150円) | $1.20(約 180円) |
| データ転送OUT 最初100GB/月 | $9.00(約 1,350円) | $8.70(約 1,305円) | $12.00(約 1,800円) |
パターンC:マネージドRDB(MySQL/4 vCPU・16GB)
| 項目 | AWS RDS | Azure Database | GCP Cloud SQL |
|---|---|---|---|
| インスタンス月額 | 約 $280(42,000円) | 約 $260(39,000円) | 約 $230(34,500円) |
| 100GB SSD ストレージ月額 | 約 $11.50(1,725円) | 約 $13.80(2,070円) | 約 $17.00(2,550円) |
| 自動バックアップ保持 | 最大35日 | 最大35日 | 最大365日 |
| 高可用性(Multi-AZ) | 料金2倍 | ゾーン冗長 | リージョナル構成 |
パターンD:AI/ML(代表LLM API)
| 項目 | AWS Bedrock | Azure OpenAI | GCP Vertex AI |
|---|---|---|---|
| 主要モデル入力 100万トークン | Claude 3.5: $3.00(450円) | GPT-4o: $2.50(375円) | Gemini 1.5 Pro: $1.25(188円) |
| 音声文字起こし 1時間 | Transcribe $1.44(216円) | Speech $1.00(150円) | Speech $0.96(144円) |
| 無料枠 | 一部モデル無料 | $200/30日 | $300/90日 |
パターンE:無料枠/スタートアップ支援
| 項目 | AWS | Azure | GCP |
|---|---|---|---|
| 12ヶ月無料枠 | 5GB S3 等 | 5GB Blob 等 | 5GB Storage(常時) |
| スタートアップクレジット | AWS Activate(最大$100,000相当) | Microsoft for Startups(最大$150,000相当) | Google for Startups(最大$200,000相当) |
セクションまとめ:コンピュートと主要LLM APIで GCP が円建て最安水準。Azure はアーカイブストレージと日本語エコシステムで優位。AWS は幅広いサービスと国内パートナー最多が強み。
H2 #3:中小企業モデルの3年TCO試算+オンプレ移行コスト早見表
TCO試算前提(3モデル)
| モデル | 従業員数 | 想定用途 | インスタンス構成 |
|---|---|---|---|
| M50 | 50名 | コーポレートサイト+業務アプリ+ファイル共有 | Web ×2、DB ×1、ストレージ 500GB |
| M200 | 200名 | 業務基盤+分析+内製アプリ複数 | Web ×4、DB ×2、ストレージ 2TB |
| M500 | 500名 | マルチサービス本番+ステージング+分析基盤 | Web ×8、DB ×3、ストレージ 5TB |
3年TCO(1年予約コミットメント適用後、円建て、1USD=150円)
| モデル | AWS | Azure | GCP |
|---|---|---|---|
| M50 年額 | 約 77万円 | 約 76万円 | 約 58万円 |
| M50 3年TCO | 約 230万円 | 約 229万円 | 約 175万円 |
| M200 年額 | 約 280万円 | 約 272万円 | 約 215万円 |
| M200 3年TCO | 約 840万円 | 約 816万円 | 約 645万円 |
| M500 年額 | 約 680万円 | 約 660万円 | 約 520万円 |
| M500 3年TCO | 約 2,040万円 | 約 1,980万円 | 約 1,560万円 |
※ 3年TCO=年額×3。3年予約にすると割引率が最大 55〜60% に拡大するため、稼働が安定するならさらに 10〜20% 圧縮可能。
既存オンプレからの移行コスト早見表(一括/従業員規模別)
| 項目 | M50 | M200 | M500 |
|---|---|---|---|
| 現状調査+移行設計(外部委託含む) | 30〜80万円 | 80〜200万円 | 200〜500万円 |
| データ転送(アウトバウンド/Snowball等) | 10〜30万円 | 30〜100万円 | 100〜300万円 |
| 二重運用期間のクラウド費(1〜2ヶ月分) | 10〜20万円 | 40〜80万円 | 100〜200万円 |
| アプリケーション改修(Rehostなら原則不要) | 0〜100万円 | 0〜300万円 | 0〜800万円 |
| VPN/専用線初期構築 | 10〜30万円 | 20〜60万円 | 50〜150万円 |
| 運用者研修 | 10〜30万円 | 20〜50万円 | 50〜100万円 |
| 移行総コスト目安 | 70〜290万円 | 190〜790万円 | 500〜2,050万円 |
使える補助金(初期移行費の圧縮)
| 補助金 | 補助率 | 上限 | 対象 |
|---|---|---|---|
| IT導入補助金(通常枠・デジタル化基盤枠) | 1/2〜3/4 | 最大450万円 | クラウドサービス利用料(最大2年分)、ソフトウェア |
| ものづくり補助金(デジタル枠) | 1/2〜2/3 | 最大1,250万円 | クラウド基盤構築費用 |
| 事業再構築補助金 | 1/2〜3/4 | 最大1,500万円 | DXに伴うシステム刷新 |
ROI 試算例(M200 モデル)
- 前提:既存オンプレ年間運用費 450万円(ハード更新・電気・運用人件費含む)、クラウド移行後 215万円/年(GCP 1年予約)
- 投資:初期移行費 500万円
- 回収:運用費削減 235万円/年。2.1年で回収。3年目以降は純便益 235万円/年
H2 #4:FAQ
Q. 3社の中で中小企業に最もおすすめはどれですか?
A. 判断の起点は「既存IT環境」。Microsoft 365/Active Directory 中心なら Azure(SSO統合・ライセンス包括契約で有利)、Google Workspace 中心なら GCP(IAM統合・BigQuery連携)。特定依存がなくコスト最優先なら GCP が東京リージョンで円建て最安水準。AWS はサービスの幅と国内パートナー最多(約1,200社)で、多様な要件や将来の拡張を見越すなら有力。料金だけで決めず、IT環境→用途→社内スキル→サポート→コストの5軸で絞り込むのが実務的な手順である。
Q. マルチクラウド(複数ベンダー併用)は中小企業でも必要ですか?
A. 従業員50〜500名規模では、マルチクラウドは運用負荷とコミットメント割引の分散でむしろコストが上がるケースが多い。1社に集約して予約割引を最大化する方が総コストは下がる。ベンダーロックイン回避を重視する場合は、コンテナ(ECS/AKS/GKE)や Terraform などの IaC で構成を抽象化しておけば、将来の移行選択肢を残せる。本番マルチクラウドはエンタープライズ規模(1,000名超)や特殊なコンプライアンス要件がある場合に初めて検討する。
Q. 為替が円安方向に動いた場合、コストはどれくらい変動しますか?
A. 本記事は 1USD=150円 前提で円換算しているが、1USD=160円になればそのまま約 6.7% のコスト増、1USD=140円になれば 6.7% のコスト減になる。過去3年(2023〜2026年)で 1USD=130円〜160円の範囲で動いた実績があり、為替ヘッジができない中小企業の予算計画では、年間予算にバッファ 10〜15% を上乗せしておくのが現実的。3年予約を全額前払いで購入するとその期間は為替変動から切り離せるが、中小企業は事業変化が速いため 1年予約+月払いが堅実である。
H2 #5:まとめ
- 2026年4月時点、円建て(1USD=150円想定)でコンピュートと主要LLM API は GCPが最安水準、Azure はアーカイブストレージと日本語エコシステム、AWS は幅と国内パートナー最多で優位
- 3年TCO は M50 で 175〜230万円、M200 で 645〜840万円、M500 で 1,560〜2,040万円が目安(1年予約後)
- オンプレ移行の総コストは M50 で 70〜290万円、M200 で 190〜790万円、M500 で 500〜2,050万円。IT導入補助金・ものづくり補助金・事業再構築補助金で 1/2〜3/4 を圧縮できる
- 料金は為替相場で±10〜20% 変動。予算には必ず 10〜15% のバッファを確保する
- 1社集約+1年予約コミットメント+3ヶ月のオンデマンド運用後に最適プランを判定する手順が中小企業には堅実
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参考資料
- 総務省「令和6年版 情報通信白書」2024年7月 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
- MM総研「国内クラウドサービス需要動向調査」2025年3月 https://www.m2ri.jp/
- AWS公式料金ページ(2026年4月参照) https://aws.amazon.com/jp/pricing/
- Azure公式料金ページ(2026年4月参照) https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/
- Google Cloud公式料金ページ(2026年4月参照) https://cloud.google.com/pricing
- 経済産業省「DXレポート2.2」2024年7月 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
- 中小機構「IT導入補助金2026」「ものづくり補助金」公式サイト
