DX・業務改善📖 1分で読了

SaaS間のデータサイロ解消|統合設計の考え方部門ごとのSaaS乱立による情報分断を防ぐ実践手法

SaaS間のデータサイロ解消|統合設計の考え方

SaaS導入が進む中で深刻化するデータサイロ問題。部門間の情報分断が起きる構造と、統合設計による解消方法を解説。自社で実践できる5つのアクションも紹介します。

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SaaS導入が進むほど深刻化する「データサイロ」という新たな課題

多くの中小・中堅企業でSaaSの導入が加速しています。営業部門はCRM、マーケティング部門はMAツール、経理部門は会計ソフト、人事部門は勤怠管理システムと、業務ごとに最適なクラウドサービスを選定する流れは今や当たり前になりました。しかし、この「部門最適」の積み重ねが、企業全体で見ると深刻な問題を引き起こしています。それが「データサイロ」です。本記事では、SaaS乱立によってデータが分断される構造を解説し、統合設計によって情報の壁を取り払う具体的な方法をお伝えします。

総務省の「令和5年版情報通信白書」によると、日本企業のクラウドサービス利用率は72.2%に達しています。一方で、ガートナーの調査では、企業が利用するSaaSの平均数は100を超えるとされており、大企業だけでなく中堅・中小企業でも10〜30のSaaSを併用しているケースは珍しくありません。この状況が「データはあるのに活用できない」という矛盾を生み出しています。

データサイロとは何か——情報が「島」になる状態

データサイロとは、組織内の各部門やシステムにデータが閉じ込められ、他の部門やシステムから参照・活用できない状態を指します。もともとサイロとは穀物を貯蔵する縦長の倉庫のことで、各倉庫が独立して存在し、中身が混ざり合わない構造を比喩的に表現しています。

具体的な例を挙げると、営業部門のCRMには顧客の商談履歴が蓄積され、マーケティング部門のMAツールにはWebサイトの行動履歴が記録され、カスタマーサポートのチケット管理システムには問い合わせ履歴が保存されています。それぞれのシステムでは有用なデータが日々生まれていますが、システム間でデータが連携していなければ、顧客の全体像を把握することはできません。営業担当者が「この顧客は過去にどんな問い合わせをしていたか」を知りたくても、サポートチームに確認するしかない状況が生まれます。

IPAの「DX白書2023」では、DX推進の阻害要因として「部門間のデータ連携の困難さ」を挙げる企業が多いことが報告されています。データサイロは単なる不便さの問題ではなく、企業のデジタルトランスフォーメーションを根本から阻害する構造的な課題なのです。

なぜSaaS導入でデータサイロが生まれるのか

SaaS導入がデータサイロを引き起こす背景には、いくつかの構造的な要因があります。

第一に、導入の意思決定が部門単位で行われることが挙げられます。営業部門は営業に最適なCRMを、マーケティング部門はマーケティングに最適なMAツールを選定します。それぞれの判断は合理的ですが、全社的なデータ連携の視点は後回しにされがちです。各部門が「自分たちの業務効率化」を優先した結果、気づけばバラバラのシステムが乱立し、データの行き来ができない状態に陥ります。

第二に、SaaSベンダー側の事情もあります。多くのSaaSは特定の業務領域に特化して設計されており、他社製品との連携はAPIを通じて可能ではあるものの、標準機能としては限定的です。連携を実現するには追加の開発や外部ツールの導入が必要となり、コストと手間がかかります。そのため「まずは単独で使い始めて、連携は後から考える」というアプローチが取られ、そのまま放置されるケースが少なくありません。

第三に、データ形式やマスタの不統一という問題があります。顧客コードの付け方が部門ごとに異なる、商品名の表記が揺れている、日付の形式がシステムによって違うといった「細かいが致命的な」差異が、データ統合を技術的に困難にします。これらの問題は後から解決しようとすると膨大な工数がかかるため、多くの企業が手をつけられずにいます。

データサイロがもたらす経営への影響

データサイロの弊害は、現場の不便さにとどまりません。経営判断の質そのものに影響を与えます。

まず、意思決定のスピードが低下します。経営会議で「直近の売上と顧客満足度の関係を分析したい」と求めても、売上データは販売管理システムに、顧客満足度データはサポートシステムにあり、それぞれを抽出して突き合わせる作業に数日かかるといった事態が発生します。リアルタイムに近い経営判断が求められる時代に、データ集計に時間がかかることは競争力の低下に直結します。

次に、顧客体験の一貫性が損なわれます。あるお客様がWebサイトで資料請求し、営業担当者と商談し、導入後にサポートに問い合わせるという流れにおいて、各接点の情報が分断されていると、お客様は毎回同じことを説明させられることになります。「御社は私のことを何も分かっていない」という印象を与えてしまい、顧客ロイヤルティの低下につながります。

さらに、データ活用人材の疲弊も見逃せません。分析担当者やIT担当者は、本来の分析業務ではなく「データを集めて整形する」作業に多くの時間を費やすことになります。マッキンゼーの調査では、データサイエンティストの業務時間の約80%がデータの収集・整備に費やされているとされています。これでは高度な分析による価値創出に時間を割くことができません。

統合設計の基本的な考え方

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データサイロを解消するためには、後付けの対処療法ではなく、システム導入時から「統合設計」の視点を持つことが重要です。統合設計とは、個別システムの導入を検討する際に、全社的なデータの流れを見据えて連携方針を先に決めておくアプローチです。

統合設計の第一歩は、「マスタデータの一元管理」です。顧客マスタ、商品マスタ、組織マスタといった基幹となるデータを、どのシステムで管理し、他のシステムにどう配信するかを定義します。たとえば顧客マスタはCRMを正とし、他のシステムはCRMから顧客情報を取得するというルールを決めることで、顧客情報の不整合を防ぎます。

第二に、「データ連携基盤の整備」があります。各SaaS間を個別にAPIで接続するのではなく、iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれる連携基盤を中心に据え、各システムがハブを介してデータをやり取りする構成を取ります。これにより、新しいSaaSを追加する際もハブとの接続のみで済み、連携の複雑さが抑えられます。

第三に、「データウェアハウスの構築」です。各システムの operational なデータをそのまま分析に使うのではなく、分析用の統合データベースに集約し、データの形式やコードを統一した状態で蓄積します。経営ダッシュボードやBI分析は、このデータウェアハウスを参照することで、システム横断的な分析が可能になります。

今すぐ始められる5つのアクション

データ統合は大規模なプロジェクトに思えますが、小さな一歩から始めることができます。

1つ目は、現状のSaaS棚卸しです。社内で利用しているSaaSをすべてリストアップし、どの部門が何のために使っているか、どんなデータが蓄積されているかを可視化します。この作業だけでも、重複しているツールや連携すべきデータの候補が見えてきます。

2つ目は、マスタデータの責任部署の明確化です。顧客情報は営業管理部門、商品情報は商品企画部門といった具合に、各マスタの管理責任者を定めます。責任の所在が曖昧なままでは、データの品質は向上しません。

3つ目は、最優先で連携すべきデータの特定です。すべてを一度に連携しようとすると挫折します。「営業とマーケティングの顧客データ連携」など、ビジネスインパクトが大きく、かつ実現可能性の高いテーマから着手することをお勧めします。

4つ目は、新規SaaS導入時の連携要件チェックです。今後新たにSaaSを導入する際は、「既存システムとのAPI連携が可能か」「データエクスポート機能は十分か」を必ず確認する運用ルールを設けます。

5つ目は、データ統合の方針を経営課題として位置づけることです。現場任せではなく、経営層がデータ統合の重要性を認識し、予算と人員を確保することで、全社的な取り組みとして推進できます。

データ統合は「目的」ではなく「手段」

データサイロの解消やシステム統合は、それ自体が目的ではありません。真の目的は、データを活用して顧客体験を向上させること、経営判断の精度とスピードを上げること、そして従業員が本来の業務に集中できる環境を作ることです。統合設計に取り組む際は、「何のためにデータを統合するのか」というビジネス目標を常に意識することが成功の鍵となります。

技術的なアプローチだけでなく、組織の壁を越えたコミュニケーションも欠かせません。データサイロは技術の問題であると同時に、組織の問題でもあります。部門横断のプロジェクトチームを組成し、各部門の要望と制約を理解し合いながら進めることで、持続可能なデータ活用基盤が構築できます。

まとめ

SaaS導入の加速により、多くの企業でデータサイロが深刻化しています。部門ごとの最適化が全社最適を阻害するこの構造的な課題は、後付けの対応では解決が困難です。マスタデータの一元管理、連携基盤の整備、データウェアハウスの構築といった統合設計の考え方を取り入れ、早い段階から全社的なデータの流れを設計することが求められます。まずは自社のSaaS棚卸しから始め、段階的にデータ統合を進めていくことをお勧めします。

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