「プリンターをなくす」という選択肢

「社内からプリンターを完全に撤去することは、本当に可能なのか」。この問いに対する答えは「可能」です。本記事では、実際にプリンターを全廃した企業の事例をもとに、完全ペーパーレス化を実現するための具体的な手順を解説します。コスト削減だけでなく、業務効率の向上やセキュリティ強化にもつながるこの取り組みは、特にひとり情シス体制の企業にとって、管理負担を大幅に軽減する有効な選択肢となります。
ペーパーロジック株式会社が2023年に実施した調査によると、ペーパーレス化に取り組んでいる企業のうち、約35%が「紙の使用量を半分以下に削減できた」と回答しています。一方で、「プリンターを完全に廃止した」と回答した企業は全体の5%未満にとどまっており、多くの企業が「減らす」ことはできても「なくす」ことには踏み切れていない現状があります。しかし、この5%の企業が実践している方法は、決して特別なものではありません。
ペーパーレス化とプリンター廃止の違い
ペーパーレス化という言葉は広く使われていますが、その意味するところは企業によって大きく異なります。多くの企業が取り組んでいる「ペーパーレス化」は、紙の使用量を減らすことを目的としており、プリンターの台数を削減したり、両面印刷を推奨したりする施策が中心です。これに対して、プリンター廃止は「紙を使わない業務プロセスを構築する」という、より根本的な変革を意味します。
この違いは、単なる程度の差ではありません。紙を減らすアプローチでは、紙を前提とした業務フローが残り続けるため、効率化の効果は限定的です。一方、プリンターを完全に廃止するアプローチでは、業務プロセス自体をデジタルを前提として再設計することになります。結果として、単に紙を減らすよりも大きな業務効率の向上が期待できるのです。
経済産業省の「DXレポート2.1」でも指摘されているように、日本企業のDX推進において、紙を前提とした業務慣行の見直しは避けて通れない課題です。プリンター廃止は、この課題に正面から取り組む施策といえます。
プリンター完全廃止を実現した企業の取り組み
ある従業員120名規模の製造業では、2022年にオフィスからプリンターを完全に撤去する決断をしました。この企業では、それまで月間約15万枚の紙を使用しており、プリンターの保守費用やトナー代、紙代を合わせると年間で約480万円のコストが発生していました。
廃止に踏み切った背景には、ひとり情シス体制における管理負担の問題がありました。10台以上のプリンターの保守対応、トナー発注、紙詰まり対応、ドライバー更新など、プリンター関連の問い合わせだけで週に5時間以上を費やしていたのです。この時間を本来のIT戦略立案や基幹システムの運用に充てるべきだという判断から、プリンター廃止に向けた検討が始まりました。
この企業がまず取り組んだのは、「何のために印刷しているのか」の徹底的な洗い出しです。調査の結果、印刷物の用途は大きく4つに分類されました。社内での確認・承認用が全体の45%、取引先への提出用が30%、会議資料が15%、保管・アーカイブ用が10%という内訳でした。
社内での確認・承認用については、ワークフローシステムの導入によってすべて電子化しました。取引先への提出用については、事前に取引先と調整を行い、98%の取引先からPDFでの提出について了承を得ることができました。残り2%の取引先については、外部の印刷サービスを利用することで対応しています。会議資料については、会議室へのディスプレイ設置とタブレット端末の配布により、紙を使わない会議運営に切り替えました。保管・アーカイブ用については、文書管理システムを導入し、電子データでの保管に移行しました。
この取り組みの結果、年間約480万円のコスト削減に加え、ひとり情シス担当者の業務時間を週あたり5時間以上削減することができました。さらに、ペーパーレス化に伴う業務フローの見直しにより、承認プロセスの所要時間が平均3日から0.5日に短縮されるという副次的な効果も生まれています。
完全ペーパーレス化を阻む3つの壁と乗り越え方

プリンター廃止を検討する際、多くの企業が直面する課題があります。それは「法的要件」「取引先との関係」「社内の抵抗」という3つの壁です。
まず法的要件についてですが、「紙での保管が法律で義務付けられている」という認識は、必ずしも正確ではありません。2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法により、国税関係書類の電子保存要件が大幅に緩和されました。タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、一定の要件を満たせば、請求書や領収書なども電子データでの保存が認められています。契約書についても、電子署名法に基づく電子契約であれば、紙の契約書と同等の法的効力が認められます。
取引先との関係については、先述の事例でも示したように、事前の丁寧なコミュニケーションが重要です。多くの場合、取引先も同様にペーパーレス化を検討しており、電子データでのやり取りを提案すると好意的な反応が得られることが少なくありません。どうしても紙での対応が必要な取引先については、外部の印刷・郵送サービスを利用することで、社内にプリンターを置かずに対応することが可能です。
社内の抵抗については、段階的なアプローチが有効です。いきなり全社でプリンターを撤去するのではなく、まずは特定の部署や業務から始めて成功事例を作り、その効果を社内に共有しながら展開範囲を広げていく方法が現実的です。また、「紙がないと仕事ができない」という声に対しては、具体的にどの業務で紙が必要なのかをヒアリングし、一つひとつ代替手段を提示していくことが大切です。
ひとり情シスこそプリンター廃止を検討すべき理由
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ひとり情シス体制の企業にとって、プリンター廃止は単なるコスト削減策を超えた意味を持ちます。プリンター関連の問い合わせ対応や保守作業は、ITインフラ全体の中でも「時間がかかるわりに戦略的価値が低い」業務の代表格だからです。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、情報システム部門の業務時間のうち、約25%が「定型的な問い合わせ対応」に費やされているとされています。このうちプリンター関連の対応が占める割合は企業によって異なりますが、前述の事例のように週5時間以上を費やしているケースは珍しくありません。
この時間をセキュリティ対策の強化やクラウドサービスの活用検討、業務システムの改善提案など、より戦略的な業務に振り向けることができれば、ひとり情シスであっても企業のDX推進に貢献することが可能になります。プリンター廃止は、ひとり情シスが「御用聞き」から「戦略パートナー」へと役割を変革するための、具体的な第一歩となり得るのです。
また、プリンターの管理負担がなくなることで、リモートワーク環境の整備も容易になります。オフィスにプリンターがなければ、「印刷のために出社する」という非効率な働き方が発生しません。従業員の柔軟な働き方を支援しながら、情シス担当者自身もリモートで業務を完結できる環境が整います。
今すぐ始められる5つのステップ
プリンター完全廃止に向けて、明日から取り組めるアクションを5つ紹介します。
最初のステップは、現状の印刷実態を把握することです。プリンターの管理ツールや複合機のカウンター機能を使って、部署別・時間帯別の印刷量を1か月間計測してください。これにより、どの部署で、どのような用途で、どれくらいの量を印刷しているかが明確になります。
次に、印刷物の用途を分類します。「社内確認用」「取引先提出用」「会議資料」「保管用」など、用途ごとに印刷量を整理し、それぞれについてデジタル化の可能性を検討します。多くの場合、社内確認用と会議資料は比較的容易にデジタル化できます。
3つ目のステップとして、代替手段を具体化します。ワークフローシステム、電子署名サービス、文書管理システムなど、必要なツールをリストアップし、導入コストと期待効果を試算します。最近はクラウドサービスが充実しており、初期投資を抑えながら導入できる選択肢が増えています。
4つ目は、パイロット部署を選定することです。ITリテラシーが高く、紙への依存度が比較的低い部署を選んで、先行的にプリンターレス運用を開始します。この部署での成功体験が、全社展開に向けた説得材料になります。
最後に、経営層への提案資料を準備します。コスト削減効果、業務効率化効果、情シス担当者の工数削減効果を定量的に示し、プリンター廃止が経営課題の解決にどう貢献するかを説明できるようにしておきましょう。
業務改善の専門家に相談するという選択肢
プリンター廃止を含むペーパーレス化は、単にツールを導入すれば実現できるものではありません。業務フローの見直し、従業員への教育、取引先との調整など、多岐にわたる取り組みが必要です。特にひとり情シス体制では、日常業務をこなしながらこれらの変革を推進することは容易ではないでしょう。
GXOでは、180社以上の企業に対して業務改善やDX推進の支援を行ってきた実績があります。Kintoneをはじめとするノーコードツールの導入支援から、業務プロセスの可視化・再設計、ペーパーレス化に向けたロードマップ策定まで、御社の状況に合わせた伴走型の支援を提供しています。「何から手をつければよいかわからない」「社内を説得するための材料がほしい」といったお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
社内からプリンターを完全に廃止することは、決して不可能な挑戦ではありません。法的要件の緩和、クラウドサービスの充実、働き方改革の進展により、ペーパーレス化を実現する環境は整いつつあります。特にひとり情シス体制の企業にとっては、プリンター関連の管理負担から解放されることで、より戦略的な業務に時間を使えるようになるというメリットがあります。
まずは現状の印刷実態を把握し、デジタル化の余地がある業務から段階的に取り組んでいくことが成功への近道です。プリンター廃止は、御社のDX推進における象徴的な一歩となるでしょう。
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