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判断基準の標準化

PoC(概念実証)の進め方2026|目的設定・費用相場・撤退基準チェックリスト

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GXO COLUMN

DX・業務改善

先に結論をまとめる。 PoC(概念実証)は「AIやシステムが使えるか試すこと」ではない。本格投資に進むかどうかを、少ない金額で判断するための意思決定プロセスである。だからPoCの成否は、動くデモができたかどうかでは決まらない。「Go(本導入)」「No-Go(中止)」「Pivot(作り直し)」のどれを選ぶべきかを、事前に決めた基準で言い切れる状態にできたかどうかで決まる。

中小企業のPoCがつまずく理由はほぼ一点に集約される。開始前に「何が達成できたら合格か」と「どこまで届かなければ撤退か」を数字で合意していないことだ。合格ラインがないから、検証が終わっても「まあまあ良かった」「もう少し様子を見よう」という曖昧な結論になり、判断が先送りされ、費用だけが積み上がっていく。Gartnerは2024年7月のプレスリリースで、生成AIプロジェクトの少なくとも30%が2025年末までにPoC後に見送られると予測した(Gartner, 2024年7月29日発表)。技術が悪いのではなく、設計と判断基準の欠如が原因だ。

この記事は、その一点を潰すために書いている。PoCの目的設定、KGI/KPIの立て方、費用・期間の相場、Go/No-Go/Pivotの撤退基準、ベンダーとの進め方、発注前に確認すべきチェックリストまで、「試す前に決めておくべきこと」を一本で網羅する。読み終えたとき、あなたのPoCが「やりっぱなし」になる確率は確実に下がっているはずだ。


この記事を読むべき人

  • 「上からAIで何かやれと言われたが、何から手をつければいいか分からない」情シス担当・兼任情シスの人
  • 「基幹システムを刷新したいが、いきなり数千万円は出せない。まず小さく試したい」経営者・事業責任者
  • 過去にPoCをやったが本導入に進めず、費用だけかかって終わった経験がある人
  • ベンダーから「まずPoCをやりましょう」と提案され、その見積もりが妥当か判断できずにいる人
  • 補助金を使ってAI・システム開発をしたいが、いきなり本開発を申請してよいか迷っている人

これらのうち一つでも当てはまるなら、この記事はあなたのための実務ガイドだ。


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PoCとは何か(1分で理解する)

PoCは「Proof of Concept=概念実証」の略だ。日本語訳の「概念実証」という言葉が硬すぎて誤解を生むが、要は**「本番に大金を投じる前に、成立するかどうかの証拠を小さく集める工程」**である。

ここで押さえるべきは、PoCの目的が「技術が動くかの確認」だけではないという点だ。実務でPoCが集めるべき判断材料は次の三層に分かれる。

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検証の層問い具体例
技術的実現性そもそも技術的に成立するか自社の手書き注文書でAI-OCRの認識率が実用水準に届くか
業務適合性現場のオペレーションに乗るか既存の承認フローや例外処理を崩さずに使えるか
投資対効果本導入して元が取れるか削減できる工数・人件費が、本開発と運用の費用を上回るか

多くの失敗PoCは、一番上の「技術的実現性」だけを見て「認識率が出た=成功」と判断してしまう。だが経営判断に必要なのは下の二層だ。技術的に95%出ても、現場が「今のやり方のほうが速い」と言えば使われないし、削減効果が本開発費を下回れば投資として成立しない。PoCで検証すべきは技術ではなく「投資判断の材料」である——これがGXOがPoC設計で最初に確認する軸だ。

PoC・プロトタイプ・MVPの違い

似た言葉が混同されやすいので整理しておく。ベンダーとの会話で言葉の定義がずれていると、成果物の期待値がずれ、後で揉める。

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項目PoC(概念実証)プロトタイプ(試作品)MVP(実用最小限の製品)
主目的「成立するか」の判断材料集め「使い勝手」の確認「市場・現場で回るか」の検証
成果物検証レポート・数値・判断根拠動く画面・操作イメージ一部の実業務で使える最小プロダクト
使う相手意思決定者(Go/No-Go)現場・関係者のレビュー一部の実ユーザー
期間の目安2〜8週間3〜8週間1〜3か月

PoCの最終成果物は「動くデモ」ではなく**「意思決定ドキュメント」**だと考えるのが正しい。検証した仮説に対して、結果・根拠・次のアクションが書かれた紙——これが出てこないPoCは、いくら派手なデモができても失敗である。


なぜPoCは「やりっぱなし」で終わるのか

PoCが本導入につながらない現象は、日本の中小企業に限った話ではない。前述のGartnerは生成AIプロジェクトの30%がPoC後に放棄されると予測し、その理由として「データ品質の低さ、リスク管理の不備、コストの増大、ビジネス価値の不明確さ」を挙げている(Gartner, 2024年7月29日発表)。さらにGartnerは2025年6月、AIエージェント案件の40%超が2027年末までに中止されると予測している(Gartner, 2025年6月25日発表)。エージェント型のように期待が先行しやすい領域ほど、検証設計が甘いまま走って頓挫する率が高い。

これらの数字が示すのは、PoCの失敗は例外ではなく構造的に起きるということだ。理由を分解すると、次の三つに集約される。

  1. 目的が「AIを使うこと」になっている ── 手段が目的化し、「何の課題をいくら改善するか」が決まっていない。
  2. 合格ラインと撤退ラインが数字で合意されていない ── だから終わっても判断できず、延命される。
  3. 判断者と現場と技術が別々の情報を見ている ── 経営者が最終報告でしか結果を知らず、承認が止まる。

裏を返せば、この三つを開始前に潰せばPoCの成功率は跳ね上がる。以降の章は、その潰し方を具体化したものだ。


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PoC失敗の典型パターン5つ(現場で本当に起きること)

数字の一般論より、実際に「うちのことだ」と気づける具体像のほうが役に立つ。GXOがAI・システム開発の現場で繰り返し見てきた失敗の型を挙げる。

パターン1:目的が「AIで何かやる」になっている。 「とりあえず生成AIを試そう」で始まったPoCは、検証項目が決まらないまま時間だけが過ぎる。改善したい業務も、削減したい工数も、達成すべき数字も無いので、結果を見ても誰も良し悪しを言えない。目的は「AI導入」ではなく「月200時間かかっている○○業務の入力工数を半減できるか」のように、業務と数字で書けなければならない。

パターン2:検証範囲が広すぎる。 「受発注も在庫も請求も、まとめて見たい」というPoCは必ず破綻する。対象が広いと、どの要素がどの結果に効いたのか切り分けられず、期間内に結論が出ない。PoCは変数を絞る実験である。対象業務は原則一つに絞る。

パターン3:現場が蚊帳の外。 情シスとベンダーだけで進めたPoCは、本導入時に現場が「使いにくい」「前のほうが速い」と拒否して頓挫する。現場の運用実態・例外処理・繁忙期の負荷は、現場担当者しか知らない。PoC段階で巻き込まないと、後から取り返しがつかない。

パターン4:検証データが足りない/汚い。 AIの精度はデータの質と量で決まる。手書き帳票の読み取りをサンプル5枚で試して「いけそう」と判断しても、本番の多様な書式・かすれ・押印に当たった瞬間に精度は崩れる。逆に、データがそろわないこと自体がPoCの重要な発見になる場合もある。「本導入前にデータ整備が必須」と分かるのも成果だ。

パターン5:出口設計がない。 結果が出た後に「で、どうする?」となる。Go/No-Go/Pivotの判断基準を事前に決めていないと、良い結果でも稟議に上げられず、悪い結果でも中止を決められず、宙に浮く。PoCの最大の失敗は「結果が経営判断につながらないこと」である。

この5つに一つでも心当たりがあるなら、次に発注するPoCは同じ轍を踏む可能性が高い。設計段階で外部の目を入れて詰めておくだけで、数十万〜数百万円の空振りを避けられる。


PoC設計の7ステップ

ここからが本題だ。PoCは「やってみる」ものではなく「設計する」ものである。以下の7ステップを開始前に紙に落とし、関係者で合意する。

ステップ1:目的を1文で書く(KGI)

PoCで達成したいゴール(KGI=重要目標達成指標)を、業務と数字で1文にする。

  • 良い例:「自社の手書き注文書(月200枚)をAI-OCRで読み取り、入力工数を現状比50%削減できるか検証する」
  • 良い例:「社内マニュアル500ページをRAGに投入し、問い合わせの一次回答を人手を介さず返せる割合を検証する」
  • 悪い例:「AIの可能性を探る」「DXを推進する」「業務効率化ができるか試す」

目的が1文で書けないなら、PoCの対象が絞れていない証拠だ。 この段階で書けないまま発注に進むのが、最も高くつく失敗である。

ステップ2:合格基準(KPI)を技術と業務の2軸で決める

KGIを測るための合格基準(KPI)を数値で置く。ここで重要なのは、技術KPIと業務KPIを必ずセットにすることだ。技術的に精度が出ても業務が回らなければ意味がなく、その逆もまた然りだからである。

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検証テーマ技術KPIの例業務KPIの例
AI-OCR(帳票読取)認識率が実用水準に到達目視修正込みの入力工数が削減
RAG(社内文書検索)一次回答の正答性問い合わせ対応時間の短縮
チャットボット自動応答でき有人に回さない割合一次窓口の対応件数の削減
需要予測予測誤差が許容範囲内発注・在庫調整の判断に使える

合格ラインの数字は、業界標準ではなく自社の現状と、本導入したときに投資回収できる水準から逆算して決める。「認識率95%」という数字を借りてくるのではなく、「今の入力工数を何割減らせれば投資が成立するか」から必要精度を割り出すのが正しい順序だ。

ステップ3:対象範囲を1業務に絞る

PoCの対象は原則一つに絞る。絞り込みの判断は次の3条件で行う。

  1. 検証に使える実データが十分にある(サンプルではなく本番相当のデータが手元にある)
  2. 効果が測れる(現状の工数・コスト・エラー率が数値で把握できている)
  3. 現場が協力的(対象業務の担当者がPoC参加に前向き)

この3条件がそろう業務が、最も早く・確実に判断材料を出せる。逆に「一番困っている業務」を選びがちだが、データが無い・効果が測れない業務を選ぶとPoC自体が成立しない。「困っている度合い」ではなく「検証可能性」で対象を選ぶのがコツだ。

ステップ4:期間を決める(2〜8週間)

PoCの期間は2〜8週間が現実的だ。2週間未満だと十分なデータで判断できず、8週間を超えると社内の関心が薄れ、判断者が異動・繁忙で離脱するリスクが上がる。

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PoCの型目安期間
特定技術の精度検証(AI-OCR等)2〜3週間
チャットボット・一次応答3〜4週間
RAG・社内文書検索4〜6週間
業務システムの一部機能検証6〜8週間

期間内にGo/No-Goの材料が出るところまでスコープを削るのが設計の腕の見せ所だ。「全部見てから判断」ではなく「判断に足りる最小限だけ見る」。

ステップ5:予算を見積もる(本開発の10〜20%が目安)

PoCの予算は本開発の10〜20%が一つの目安になる。中小企業のPoC費用の内訳はおおむね次の通りだ。

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費用項目中身見落としがちな点
ベンダー費用要件整理・環境構築・検証実施・レポートどこまでが定額か、追加はいくらか
データ準備費用整理・クレンジング・アノテーションここが最も膨らみやすい
ツール・API費用AI利用料・クラウド環境費従量課金は検証量で変動する
社内人件費担当者のPoC参加工数見積書に載らないが確実に発生する

ここで最も重要な注意は、データ準備費用と社内人件費が見積書から抜け落ちやすいことだ。ベンダーの見積もりは「ベンダー作業分」だけを指すことが多く、データ整備を自社でやるのか委託するのかで総額は大きく変わる。次章の「見積もりの読み方」で詳述する。

ステップ6:体制を組む(最低3役)

PoCには最低3つの役割が要る。1人が兼ねてもよいが、役割としては欠けてはいけない。

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役割担い手責務
PoCオーナー経営者・部門長投資判断、Go/No-Goの最終決定
PoCリーダー情シス・企画担当進行管理、ベンダー窓口、技術評価
現場代表対象業務の担当者実データ提供、使い勝手評価、運用フロー確認

週1回の進捗共有を設定し、3者が同じ数字を見ている状態を維持する。経営層が最終報告で初めて結果を知る体制は、承認遅延と差し戻しの温床だ。 判断者を最後に呼ぶのではなく、最初から巻き込む。

ステップ7:評価方法を先に決める

何をもって合否とするかを開始前に決めておくと、検証中に「何を記録すべきか」が明確になり、後から「あのデータを取っておけばよかった」を防げる。評価は定量・定性の2軸で設計する。

  • 定量評価:技術KPI・業務KPIの達成度、本導入時のROI試算
  • 定性評価:現場のフィードバック、既存フローへの影響度、本導入時に残る課題(データ整備・連携・セキュリティ)

定性評価を軽視しないこと。数字上は合格でも「現場が使いたがらない」「既存システムとの連携が重い」といった定性課題が、本導入を止める真因になることは珍しくない。


Go/No-Go/Pivot:撤退基準を先に決める

PoC設計で最も差がつくのが、この撤退基準の事前定義だ。Goの基準よりも先にNo-Goの基準を合意する——これがGXOがベンダーとして最初に握る作法である。「ここまで届かなければ止める」という線が引かれていると、感情的な延命判断(もったいないから続けよう)を防げる。

判断は3択で定義する

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判断条件次のアクション
Go(本導入)技術KPI・業務KPIともに合格ライン到達本開発の要件定義に着手
Pivot(作り直し)片方は達成、片方が未達対象業務・手法・データを変えて再検証
No-Go(中止)両KPIとも合格ラインから遠い別アプローチ検討、または時期を改める

Go/No-Go判断シート(テンプレート)

次のようなシートをPoC開始時に作り、合格基準を先に埋めて関係者で合意しておく。実測値と判定は検証後に埋める。

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評価項目合格基準(開始時に合意)実測値(検証後)判定
技術精度(認識率・正答性等)例:目視修正込みで実用に足る水準___Go / No-Go
業務効果(工数・時間削減)例:投資回収に必要な削減率___Go / No-Go
現場評価(5段階)例:3.5以上___Go / No-Go
本導入ROI例:想定回収期間内に黒字化___Go / No-Go
データ品質例:追加整備が現実的な範囲___Go / No-Go

運用ルールも先に決める。 例えば「全項目Goなら本導入、2項目以上No-GoならPivotまたは中止」のように閾値を数える。判断を人の空気ではなく紙のルールに委ねること——これがPoCを「やりっぱなし」にしない最大のポイントだ。

稟議に通るPoC報告書の構成

Goが出ても稟議で止まっては意味がない。経営層・稟議に耐える報告書は次の順で組む。

  1. 検証概要(目的・対象業務・期間・費用)
  2. 技術検証結果(KPI達成度と実測データ)
  3. 業務適合性(現場フィードバック、既存フローへの影響)
  4. 本導入の費用対効果(ROI試算・投資回収期間)
  5. Go/No-Go判定(判断シートの結果)
  6. 本導入のスケジュールと概算費用

稟議で効くのは推計値より**「実データで○○を達成した」という事実**だ。だからPoC段階で、稟議に使える実測値を意図的に取りに行く。報告書の型を先に決めておくと、そのために何を記録すべきかが逆算できる。


PoC費用・期間の相場と「見積もりの読み方」

中小企業がよく検討するテーマ別の相場を示す。金額はベンダー・スコープ・データ状態で上下するため、あくまで初期検討用の目安である。

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PoCテーマ検証内容期間費用目安必要データ量の目安
AI-OCR(帳票読取)自社帳票の認識率検証2〜3週間30万〜80万円帳票50枚以上
チャットボット社内問い合わせの自動応答率検証3〜4週間50万〜120万円Q&A 100件以上
RAG(社内文書検索)社内ナレッジの正答性検証4〜6週間80万〜200万円文書100件以上
需要予測AI販売データからの予測精度検証4〜6週間100万〜250万円12か月以上の販売データ
業務システム刷新一部業務の画面・機能検証6〜8週間100万〜300万円現行業務フロー
RPA(定型業務自動化)特定業務の自動化率検証2〜4週間30万〜100万円対象業務の手順書

見積書のどこを疑うか(GXOのチェック軸)

PoCの見積書を受け取ったら、金額の大小より**「何が入っていて、何が入っていないか」**を見る。中小企業が追加費用でつまずくのは、たいていこの境界の見落としだ。

  • 成果物の定義があるか。 「検証レポート」とだけ書かれていないか。稟議に使える判断シート・ROI試算・本導入見積もりまで含むのかを明記させる。
  • データ準備が誰の担当か。 データ整理・クレンジング・アノテーションを自社でやるのか委託するのか。ここが総額の分かれ目になる。委託なら別費用として明示されているかを確認する。
  • API・クラウドの従量課金の扱い。 検証量が増えると変動する費用が、定額に含まれるのか実費精算なのか。
  • 合格基準がベンダーと握れているか。 見積もりの前提として、何が達成できたら合格とするかがベンダーと合意されているか。ここが曖昧な見積もりは、後で「これはPoCの範囲外です」と言われる余地を残す。
  • 本導入見積もりの提示条件。 Goが出たときの本開発概算を、PoC成果物として出してもらえるか。これが無いと、Go後に一から見積もり交渉に逆戻りする。

「PoCが安い」ことより「PoC後の判断とその先の道筋まで含まれている」ことのほうが、総額では得になる。安いPoCが、判断できないレポート一枚で終わって結局やり直し——というのが最も高くつくパターンだ。

見積もりの読み方をさらに詰めたい場合は、システム開発の開発会社の選び方と5つの判断基準も合わせて確認してほしい。PoCベンダーをそのまま本開発ベンダーにするかは、この段階で見極めておきたい論点だ。


PoCから本開発へ——移行時に確認すること

Goが出たら本開発に進むが、PoCと本開発は前提が違う。ここを甘く見ると、PoCで出た数字が本番で再現しない。

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項目PoC本開発
対象範囲1業務関連業務全体
データサンプル〜一部全データ・多様な例外
ユーザー数2〜3名全対象者
可用性落ちてもよい業務停止できない水準
セキュリティ簡易本番レベル・権限設計

PoCで得た知見は、そのまま本開発の要件定義の進め方と実践テンプレートの入力になる。PoCの検証データと判断シートがあれば、複数ベンダーに正確な条件で相見積もりを取ることも可能になる。本開発の展開は全社一斉ではなく、PoCで検証した部門から段階的に広げるのが安全だ。

なお、PoCから本番運用への「再現しないギャップ」(データ品質・運用体制・精度劣化)をどう埋めるかは論点が深いため、本記事では移行時の確認軸までにとどめる。本番化フェーズ固有の落とし穴は別途扱う。


ベンダーに聞くべき質問(発注前チェックリスト)

PoCを外部に委託する前に、次の質問をぶつけてほしい。答えに詰まるベンダーは、設計より作業を売ろうとしている可能性が高い。

  • このPoCの成功基準(技術KPI・業務KPI)を、開始前に一緒に数字で決めてもらえるか。
  • No-Go(撤退)の基準もセットで定義してくれるか。
  • 成果物に、稟議で使える判断シートとROI試算、本導入の概算見積もりは含まれるか。
  • データ準備は誰の担当で、その費用はどこに入っているか。
  • 検証データが不足・低品質だった場合、どう扱うか(それ自体を発見として報告してくれるか)。
  • 現場担当者へのヒアリングやフィードバック収集は工程に入っているか。
  • 従量課金(API・クラウド)は定額に含まれるか、実費精算か。
  • Goが出た後の本開発を、このPoCの成果物を前提に見積もれるか。

このリストに沿って会話するだけで、ベンダーの実力と誠実さがかなり見える。「まずPoCやりましょう」とだけ言って合格基準を決めないベンダーには、発注前に立ち止まったほうがよい。


第三者の目をどこで入れるか

PoCで意外と多い失敗が、「ベンダーの提案どおりにPoCを組んだら、そのベンダーが得意な技術を検証するだけのPoCになっていた」というものだ。検証項目がベンダー都合で決まると、本当に確かめたかった業務効果ではなく、技術デモの成功が目的化する。

だからGXOは、PoCの前段——「そもそもこのテーマはPoCに値するのか」「合格基準は自社の投資判断から逆算できているか」——を、実装ベンダーとは別の第三者の目で一度整理することを勧めている。社内にIT判断力が乏しく、ベンダーの言い値を検証しづらい中小企業ほど、この一手の効果が大きい。PoCに数十万〜数百万円を投じる前に、PoCの前に「そもそも使えるか」を見極めるAI導入診断・第三者診断で、テーマの筋と検証設計を第三者視点で確認しておくと、空振りPoCの確率を下げられる。

検証テーマがすでに固まっていて具体的な設計・実装に進みたい場合はAI開発の相談・要件整理、問い合わせ対応や商談準備をAIで自動化したい場合はAIエージェント導入の相談から、目的に合った入口を選べる。いずれも、PoC設計の合格基準と撤退基準を先に握るところから始めるのがGXOの進め方だ。


補助金でPoC費用を抑える

PoCおよびその先の本開発費用は、補助金の対象になり得る。ただし制度の名称・補助率・上限額は年度ごとに改定されるため、最新の要件は必ず公募要領で確認すること。ここでは実務上の注意点だけ挙げる。

  • 補助金は原則「交付決定後」に発生した経費が対象になる。PoCを先に始めてしまうと対象外になる場合がある。
  • 申請から交付決定まで時間がかかるため、PoCのスケジュールは交付決定を織り込んで組む。
  • PoCの検証結果と本導入計画は、本開発の申請時に説得力のある根拠資料になる。PoCを補助金申請の前段として位置づけるのが賢い。

2026年度の制度動向・申請スケジュール・採択のコツはデジタル化・AI導入補助金2026後期の申請ガイドで個別に解説している。


GXOに相談すべきタイミング

以下のいずれかに当てはまるなら、PoCに費用を投じる前に一度整理することをおすすめする。

  • ベンダーから「まずPoCを」と提案されたが、その合格基準・撤退基準が自社の投資判断から逆算されているか自信がない。
  • 過去にPoCをやったが本導入に進めず、次こそ「やりっぱなし」を避けたい。
  • 社内にIT判断力がなく、見積書の妥当性やベンダー提案の当否を検証できない。
  • 補助金を使いたいが、PoCと本開発をどう申請フローに組み込むか分からない。

構想段階・予算化前・RFP作成前でも相談できる。むしろ発注が固まる前のほうが、設計をやり直すコストが低い。


よくあるご質問(FAQ)

Q1. PoCの費用はどのくらいですか?

テーマと期間で変わるが、中小企業では30万〜300万円が目安だ。AI-OCRの精度検証なら30万〜80万円、業務システムの一部機能検証なら100万〜300万円が相場感になる。ただし総額はベンダー費用だけでなく、データ準備費用と社内人件費を足して見る必要がある。見積書に入っていない費用がないかを必ず確認してほしい。

Q2. PoCの期間はどのくらいですか?

2〜8週間が標準だ。特定技術の検証なら2〜3週間、業務システムの一部検証なら6〜8週間。8週間を超えると社内の関心が薄れ判断者が離脱しやすくなるため、対象を絞って期間内に結論を出す設計が重要だ。

Q3. PoCで「失敗」したら費用は無駄ですか?

無駄ではない。「この方法では投資に値しない」という判断材料を得ることが、PoCの正当な成果だ。No-Goを早く決められれば、本開発で数百万〜数千万円を空振りするリスクを回避できる。むしろPoCを飛ばして本開発に突っ込んで失敗するほうが、損失ははるかに大きい。

Q4. 社内にIT担当がいなくてもPoCはできますか?

できる。設計・実施・評価は外部に委託できる。社内で最低限必要なのは、対象業務の実データを出せる担当者と、Go/No-Goを決める意思決定者の2名だ。ただし「ベンダー任せ」にすると検証がベンダー都合になりやすいので、合格基準・撤退基準の合意だけは自社(または第三者)が主導したい。

Q5. PoCとMVP・プロトタイプはどう使い分けますか?

「成立するかの判断材料が欲しい」ならPoC、「使い勝手を関係者に見せたい」ならプロトタイプ、「一部の実業務で回るか試したい」ならMVPだ。多くの中小企業はまずPoCで投資判断の材料を得て、Goなら本開発(またはMVP的な段階リリース)に進むのが現実的な順序になる。

Q6. Go/No-Goの基準は誰が決めるべきですか?

意思決定者(経営者・部門長)が最終責任を持つが、基準はPoC開始前に、技術評価者・現場・ベンダーを交えて数字で合意しておく。検証が終わってから基準を議論し始めると、結果に引きずられて客観的な判断ができなくなる。基準は必ず「先に」決める。


PoCに進む前に、自社の準備度を数分で点検する

本記事のGo/No-Go設計は、対象業務・合格基準・撤退基準・意思決定者がそろって初めて機能する。着手前に自社がどこまで揃っているかは、PoC実施前の準備度診断で数分ほど点検でき、抜けを先に洗い出せる。検証範囲が固まり本開発まで進む見込みが立ったら、その規模の費用感は60秒でわかる開発費の概算(見積シミュレーション)で当たりをつけられる。No-Goで終わる場合も、その判断材料を得ること自体がPoCの正当な成果であり、無駄にはならない。


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