「クラウドに移行すべきか」迷ったときの判断基準
自社のシステム基盤を「オンプレミスのまま維持するか、クラウドへ移行するか」という判断に悩む企業は少なくありません。本記事では、オンプレミスとクラウドの根本的な違いを整理したうえで、移行すべきかを見極める5つの判断基準を解説します。コスト比較の考え方から、セキュリティ・運用面での検討ポイントまで、経営判断に必要な情報をお伝えします。
総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は77.7%に達しています。一方で、基幹システムについてはオンプレミスを維持する企業も依然として多く、「どちらが正解か」は一概には言えません。重要なのは、自社の状況に照らして最適な選択ができるかどうかです。
オンプレミスとクラウドの基本的な違い

オンプレミスとは、サーバーやネットワーク機器などのITインフラを自社で保有・管理する形態を指します。自社の建物内やデータセンターに物理的な機器を設置し、ハードウェアの購入からソフトウェアのライセンス管理、日々の運用保守まですべてを自社で担います。
これに対しクラウドは、インターネット経由でITリソースを利用するサービス形態です。サーバーやストレージといったインフラはクラウド事業者が所有・運用し、利用企業は必要な分だけリソースを借りて使います。代表的なサービスとしては、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などがあります。
両者の違いを端的に表すと、「所有」か「利用」かという点に集約されます。オンプレミスは資産として所有するため初期投資が大きくなりますが、カスタマイズの自由度が高く、データを完全に自社管理できます。クラウドは初期投資を抑えられ、必要に応じてリソースを柔軟に増減できる反面、継続的な利用料が発生し、サービス提供事業者への依存度が高まります。
IPAの「DX白書2024」では、DXに取り組む企業の約7割がクラウドサービスを活用していると報告されています。ただし、すべてのシステムをクラウド化することが最適解とは限りません。システムの特性や事業要件に応じて、オンプレミスとクラウドを適切に使い分ける「ハイブリッド」な構成を採用する企業も増えています。
コスト比較の考え方|初期費用と運用費用の全体像
クラウド移行の検討において、多くの企業が最初に気にするのはコストです。しかし、単純に「月額料金」だけを見て判断すると、実態を見誤る可能性があります。正確な比較のためには、5年程度の期間でTCO(総保有コスト)を試算することが重要です。
オンプレミスの場合、初期費用としてサーバー・ストレージ・ネットワーク機器の購入費用、設置工事費、ソフトウェアライセンス費用などがかかります。これに加えて、運用費用として電気代、空調費、保守契約費、運用担当者の人件費、そして3〜5年ごとのハードウェア更新費用が継続的に発生します。
クラウドの場合は、初期費用は移行作業にかかるコストが中心となり、ハードウェア購入は不要です。運用費用としては、月額のサービス利用料(コンピューティング、ストレージ、データ転送量などに応じた従量課金)が発生します。
ここで注意すべきは、クラウドの利用料は使い方次第で大きく変動するという点です。常時稼働が必要なシステムや、大量のデータを扱うシステムでは、想定以上にコストが膨らむケースがあります。逆に、利用時間が限られるシステムや、負荷変動の大きいシステムでは、クラウドの従量課金モデルが有利に働きます。
TCO試算においては、現行システムの運用実態を正確に把握することが出発点となります。サーバーの稼働率、ストレージ使用量の推移、ネットワークトラフィック量などを可視化し、クラウド移行後の利用料をシミュレーションすることで、より現実的な比較が可能になります。
移行すべきかを判断する5つの基準
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クラウド移行の要否を判断するにあたっては、コストだけでなく複数の観点から総合的に検討する必要があります。ここでは、実務で特に重要となる5つの判断基準を解説します。
第一の基準は「システムの更新時期」です。現行のオンプレミス環境でハードウェアの保守期限が近づいている場合、更新投資のタイミングでクラウド移行を検討するのは合理的な選択肢です。逆に、直近で大規模な設備投資を行ったばかりであれば、その投資を回収する期間はオンプレミスを維持するほうが経済的です。
第二の基準は「事業の成長性・変動性」です。事業拡大に伴ってシステム負荷が急増する見込みがある場合や、季節変動でリソース需要が大きく上下する場合は、クラウドのスケーラビリティが活きます。一方、負荷が安定しており大きな変動が見込まれない場合は、オンプレミスでも十分に対応できます。
第三の基準は「セキュリティ・コンプライアンス要件」です。業界規制や取引先からの要請により、データの国内保管や特定の管理体制が求められるケースがあります。クラウドサービスでもこれらの要件に対応できるものは増えていますが、要件によってはオンプレミスでの管理が必須となる場合もあります。自社のセキュリティポリシーと照らし合わせた検討が不可欠です。
第四の基準は「社内の運用体制・スキル」です。オンプレミス環境の運用には、ハードウェア管理からOS・ミドルウェアの保守まで幅広い知識が求められます。IT人材の確保が難しい企業では、インフラ運用の負担をクラウド事業者に委ねることで、限られた人員をより付加価値の高い業務に集中させることができます。
第五の基準は「既存システムとの連携性」です。基幹システムと密接に連携するサブシステムをクラウドに移行する場合、オンプレミスとクラウド間の通信遅延やデータ同期の課題が生じる可能性があります。システム全体のアーキテクチャを俯瞰し、移行によって新たなボトルネックが生まれないかを検証することが重要です。
これら5つの基準について自社の状況を整理することで、移行の方向性が見えてきます。すべての基準でクラウドが優位とは限らず、項目によってはオンプレミス維持が適切という判断になることもあります。
よくある失敗パターンと回避策
クラウド移行プロジェクトにおいて、しばしば見られる失敗パターンがあります。これらを事前に理解しておくことで、同じ轍を踏むリスクを減らせます。
一つ目の失敗パターンは「コスト見積もりの甘さ」です。クラウドの従量課金を過小評価し、移行後に想定外の高額請求に直面するケースがあります。特にデータ転送量(エグレス料金)やストレージのI/O性能オプションなど、見落としやすい課金要素には注意が必要です。本番稼働前にPoC(概念実証)環境で実際の利用パターンを検証し、コストを精緻化することが有効です。
二つ目は「リフト&シフトの限界」です。既存システムをそのままクラウドに移すだけでは、クラウドのメリットを十分に享受できません。オンプレミス前提で設計されたアーキテクチャは、クラウドネイティブな構成に比べて運用効率やコスト効率が劣ることがあります。移行を機にアプリケーションの見直しや、マネージドサービスの活用を検討することで、より大きな効果が得られます。
三つ目は「移行後の運用体制の不備」です。クラウド化によってインフラ運用の負担は軽減されますが、ゼロになるわけではありません。クラウド特有の監視設計、コスト管理、セキュリティ設定など、新たに必要となる運用業務があります。これらを担う体制やスキルを事前に整備しておくことが、移行成功の鍵となります。
御社が今すぐ取り組むべきアクション
ここまでの内容を踏まえ、クラウド移行を検討する企業が今すぐ着手すべきアクションを整理します。
まず取り組むべきは「現行システムの棚卸し」です。自社で運用しているシステムの一覧を作成し、それぞれについてハードウェアの保守期限、利用頻度、事業上の重要度を整理します。この情報が、移行優先度を判断する基礎資料となります。
次に「5年TCOの試算」を行います。現行環境を維持した場合のコストと、クラウド移行した場合のコストを、それぞれ5年間で比較します。試算には、ハードウェア更新費用や人件費など間接コストも含めることが重要です。
続いて「セキュリティ・コンプライアンス要件の確認」です。自社のセキュリティポリシー、業界規制、取引先からの要請などを洗い出し、クラウドサービスで対応可能かを確認します。必要に応じて、法務部門や情報セキュリティ担当者と連携して検討を進めます。
さらに「運用体制の現状評価」を実施します。現在のIT運用チームのスキルセットと人員体制を把握し、クラウド運用に必要なスキルとのギャップを特定します。外部パートナーの活用も選択肢に含めて検討することをお勧めします。
最後に「スモールスタートでの検証」を計画します。いきなり基幹システムを移行するのではなく、影響範囲の小さいシステムから試験的に移行し、知見を蓄積するアプローチが有効です。この経験が、その後の本格移行における精度の高い計画策定につながります。
まとめ
オンプレミスとクラウドには、それぞれ異なる特性とメリットがあります。重要なのは、どちらが優れているかではなく、自社の事業要件やシステム特性に照らして最適な選択をすることです。移行判断にあたっては、システム更新時期、事業の変動性、セキュリティ要件、運用体制、既存システムとの連携性という5つの基準を軸に検討を進めることで、より確度の高い意思決定が可能になります。
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