開発完了後こそ本当の勝負が始まる

オフショア開発でシステムを構築したものの、保守運用フェーズに入った途端にトラブルが続出する——そんな経験をお持ちの企業は少なくありません。本記事では、オフショア開発における保守運用フェーズの注意点を解説します。スムーズな引き継ぎの方法、継続的な改善を実現する仕組み、そして長期安定運用のための体制づくりまで、実践で使えるノウハウをお伝えします。
経済産業省の「DXレポート」によると、日本企業の約8割が老朽化したシステムの保守運用に課題を抱えているとされています。オフショア開発においては、この課題がさらに複雑化します。開発チームと保守チームが異なる国にいる場合、言語や時差の壁に加えて、暗黙知の共有が難しくなるためです。だからこそ、開発フェーズの終盤から保守運用を見据えた準備を始めることが、プロジェクト成功の鍵となります。
保守運用フェーズで発生しやすい問題とは
オフショア開発の保守運用フェーズでは、国内開発とは異なる特有の問題が発生します。最も多いのが「ドキュメント不足による属人化」です。開発時には口頭やチャットで補完していた情報が、保守フェーズに入ると参照できなくなるケースが頻発します。
IPAの「IT人材白書2023」によると、IT企業の約65%が「ドキュメント整備の不足」を保守運用の課題として挙げています。オフショア開発では、この傾向がより顕著です。開発メンバーが別のプロジェクトに移動した後、なぜそのような設計判断をしたのかがわからなくなり、改修のたびに大きな工数がかかってしまうのです。
次に多いのが「コミュニケーションの断絶」です。開発フェーズでは毎日のように行われていたミーティングが、保守フェーズでは月に1回程度になることも珍しくありません。その結果、小さな問題が放置され、気づいたときには大きな障害に発展しているケースがあります。
さらに「技術的負債の蓄積」も見逃せません。開発時の納期優先で後回しにされたリファクタリングや、テストカバレッジの不足が、保守フェーズで一気に表面化します。特にオフショア開発では、開発コストを抑えることが目的の一つであるため、品質管理への投資が後回しにされがちです。
引き継ぎを成功させるための3つの原則
保守運用フェーズへの引き継ぎを成功させるには、開発終盤から計画的に準備を進める必要があります。ここでは、多くの企業で効果が実証されている3つの原則をご紹介します。
第一の原則は「ドキュメントの標準化と強制力」です。引き継ぎドキュメントを作成するだけでは不十分です。重要なのは、ドキュメントのフォーマットを標準化し、作成を開発プロセスの必須タスクとして組み込むことです。たとえば、各機能の実装が完了した時点で、設計意図・制約事項・将来の拡張ポイントを記載したドキュメントを作成しないと、その機能は「完了」とみなさないルールを設けます。
第二の原則は「段階的な引き継ぎ」です。開発チームから保守チームへの一括引き継ぎは、情報の漏れや誤解を招きやすくなります。開発の最終3ヶ月程度は、保守担当者を開発チームに参画させ、実際のコードや設計思想を直接学ぶ機会を設けることが効果的です。これにより、ドキュメントだけでは伝わらない暗黙知も共有できます。
第三の原則は「知識のビデオ化」です。複雑な業務フローやシステム間連携は、文書だけでは理解しにくいものです。開発チームのキーパーソンに、画面を共有しながら操作方法や注意点を説明してもらい、その様子を録画します。保守チームはいつでもこの動画を参照でき、言語の壁がある場合でも視覚的に理解しやすくなります。
継続改善を実現する仕組みづくり

保守運用フェーズは、単にシステムを維持するだけの期間ではありません。ビジネス環境の変化に合わせてシステムを進化させ続ける「継続改善」の期間です。この継続改善を実現するには、仕組みとして定着させることが不可欠です。
まず重要なのが「改善提案の制度化」です。保守チームが日々の運用で気づいた改善点を、定期的に提案できる仕組みを設けます。月に一度の改善提案会議を開催し、提案内容を評価・優先順位付けした上で、四半期ごとの改善計画に反映させます。この仕組みがあることで、保守チームのモチベーション維持にもつながります。
次に「定量的なKPIの設定」が必要です。保守運用の品質を可視化するために、障害発生件数、平均復旧時間(MTTR)、ユーザーからの問い合わせ件数などの指標を定期的に計測します。これらの数値を日本側と海外拠点で共有し、改善の進捗を客観的に評価できるようにします。
さらに「技術的負債の計画的な返済」も欠かせません。開発時に発生した技術的負債を放置すると、時間の経過とともに改修コストが増大します。保守運用の工数の一定割合(目安として20%程度)を、技術的負債の解消に充てるルールを設けることで、システムの健全性を長期的に維持できます。
長期安定運用のためのチーム体制
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オフショア開発の保守運用を長期的に安定させるには、適切なチーム体制の構築が重要です。ここでは、多くの企業で成果を上げている体制モデルについて解説します。
基本となるのは「ハイブリッド型チーム」の構築です。日本側には業務知識に精通したブリッジSE(BSE)を配置し、海外拠点には技術力の高い保守エンジニアを配置します。BSEが業務要件を正確に伝え、海外のエンジニアが技術的な解決策を実装するという役割分担により、コミュニケーションの齟齬を最小限に抑えられます。
また「専任チームの維持」も重要なポイントです。保守運用を複数のプロジェクトを兼任するエンジニアに任せると、対応の遅れやミスが発生しやすくなります。可能な限り、対象システムに専任するチームを維持することで、システムへの理解が深まり、障害対応のスピードも向上します。
加えて「計画的なスキル移転」を行うことで、チームの持続可能性を高められます。特定のエンジニアへの依存度が高い状態は、その人材が離職した際のリスクが大きくなります。定期的な勉強会やペアプログラミングを通じて、知識とスキルをチーム全体に分散させる取り組みが必要です。
御社で今すぐ取り組めること
ここまで解説してきた内容を踏まえ、御社で今すぐ取り組める具体的なアクションを整理します。
1つ目は「現状の棚卸し」です。現在進行中のオフショア開発プロジェクトについて、保守運用フェーズへの移行準備がどの程度進んでいるかを確認します。ドキュメントの整備状況、引き継ぎ計画の有無、保守チームの体制などを洗い出し、課題を明確にしましょう。
2つ目は「引き継ぎチェックリストの作成」です。本記事で紹介した引き継ぎの3つの原則を参考に、自社のプロジェクトに合わせたチェックリストを作成します。このチェックリストを開発完了の必須条件として位置づけることで、引き継ぎ品質の標準化が図れます。
3つ目は「保守運用KPIの定義」です。現在、保守運用の品質をどのような指標で測定しているかを見直します。定量的な指標が設定されていない場合は、障害発生件数や平均復旧時間など、最低限の指標から設定を始めましょう。
4つ目は「コミュニケーション頻度の見直し」です。保守フェーズでのミーティング頻度が極端に低下していないかを確認します。週次での定例ミーティングを設定し、小さな課題を早期に発見・解決できる体制を整えましょう。
5つ目は「技術的負債の可視化」です。開発時に先送りされた課題や、改善が必要だと認識されている箇所をリスト化します。このリストをもとに、計画的な改善スケジュールを立てることで、中長期的なシステム品質の維持が可能になります。
GXOが提供する長期保守支援
GXOでは、ベトナム拠点を活用したオフショア開発から保守運用まで、一気通貫でご支援しています。開発フェーズから保守運用を見据えた設計・ドキュメント整備を行い、スムーズな移行を実現します。
保守運用フェーズでは、福岡本社のBSEとベトナム拠点の技術チームが連携し、日本語でのコミュニケーションが可能な体制を構築しています。180社以上の支援実績で培ったノウハウをもとに、継続的な改善提案も含めた伴走型の支援を提供しています。
オフショア開発の保守運用でお困りの方、これから保守フェーズへの移行を控えている方は、ぜひ一度GXOにご相談ください。現状の課題整理から、最適な保守体制の構築まで、御社の状況に合わせたご提案をいたします。
お問い合わせはこちら:https://gxo.co.jp/contact-form
まとめ
オフショア開発の保守運用フェーズを成功させるには、開発終盤からの計画的な準備が不可欠です。ドキュメントの標準化、段階的な引き継ぎ、知識のビデオ化という3つの原則を押さえることで、スムーズな移行が実現できます。継続改善の仕組みとしては、改善提案の制度化、定量的なKPI設定、技術的負債の計画的返済が効果的です。長期安定運用のためには、ハイブリッド型チームの構築と計画的なスキル移転が重要になります。御社の現状を棚卸しした上で、できるところから取り組みを始めてみてください。
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