「国内だけ」でも「オフショアだけ」でもない第三の選択肢
IT人材の不足と人件費の高騰が続く中、多くの企業がオフショア開発に関心を持っています。しかし、「すべてをオフショアに任せるのは不安」「国内だけで開発するにはリソースが足りない」というジレンマを抱えている企業も少なくありません。そこで注目されているのが、国内開発とオフショア開発を組み合わせた「ハイブリッド体制」です。
本記事では、ハイブリッド体制の基本的な考え方、国内チームとオフショアチームの役割分担、体制構築の4ステップ、そして実際の成功パターンを解説します。「オフショアの導入を検討しているが、一気に切り替えるのはリスクが高い」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。
ハイブリッド体制とは何か――2つの型を理解する

ハイブリッド体制には、大きく分けて2つの型があります。
ひとつ目は「工程分担型」です。上流工程(要件定義、基本設計、UI/UX設計)を国内チームが担当し、下流工程(詳細設計、コーディング、単体テスト)をオフショアチームが担当する形態です。日本のエンドユーザーの感覚を理解した国内チームが「何を作るか」を定義し、技術力とコストメリットを持つオフショアチームが「どう作るか」を実装するという役割分担であり、最もオーソドックスなハイブリッド体制といえます。
ふたつ目は「領域分担型」です。システム全体を機能領域やモジュールで分割し、高い即時対応性や機密性が求められる部分を国内チームが、それ以外の部分をオフショアチームが並行して開発する形態です。たとえば、ユーザーに直接触れるフロントエンド部分を国内で開発し、バックエンドのAPI開発やデータベース構築をオフショアに任せるといった分担が典型例です。
いずれの型も、「国内チームの強み(ビジネス理解、ユーザー感覚、即時対応力)」と「オフショアチームの強み(コストメリット、豊富なエンジニアリソース、技術力)」を組み合わせることで、品質とコストの最適なバランスを実現するという点では共通しています。
役割分担の設計――何を国内に、何をオフショアに任せるか
ハイブリッド体制の成否は、役割分担の設計に大きく依存します。基本原則は「判断が必要な工程は国内に、実行が中心の工程はオフショアに」です。
国内チームが担うべき領域は、まず「要件定義と基本設計」です。ビジネス要件をシステム要件に落とし込む作業は、エンドユーザーのニーズや業務プロセスを深く理解している国内チームが最適です。次に「プロジェクトマネジメント」です。全体の進捗管理、品質管理、リスク管理は国内のPM(プロジェクトマネージャー)が一元的に統括します。さらに「UI/UXの最終判断」も国内が担うべきです。日本のユーザーの使い勝手は、日本市場を知る国内チームでなければ正確に評価できません。そして「受け入れテスト」も国内の責任です。最終的な品質判断は、エンドユーザーに最も近い立場にいる国内チームが行います。
オフショアチームに任せられる領域は、「詳細設計とコーディング」です。基本設計が明確に定義されていれば、詳細設計以降はオフショアチームが高い生産性で実行できます。「単体テストと結合テスト」もオフショアの守備範囲です。テストケースを国内側で定義し、テストの実行と結果報告をオフショア側が担当する分担が効率的です。「インフラ構築やCI/CD環境の整備」など、仕様が明確で技術的に標準化された作業もオフショアに適しています。加えて「保守運用フェーズでの定常作業」(監視、バグ修正、小規模な機能改修など)も、ノウハウが蓄積されたオフショアチームであれば安定的に対応できます。
なお、国内とオフショアの「間」をつなぐブリッジSEの存在は、ハイブリッド体制の要です。ブリッジSEは単なる通訳ではなく、技術的な理解と業務知識を兼ね備え、双方のチームの認識を一致させる役割を担います。ブリッジSEの質がハイブリッド体制の成否を左右するといっても過言ではありません。
ハイブリッド体制の成功事例
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ハイブリッド体制が効果を発揮する典型的なパターンを3つ紹介します。
ひとつ目は「レガシーシステムのリプレース」です。ある中堅製造業では、10年以上使用してきた基幹システムの刷新を検討していました。国内のエンジニア不足により自社だけでは対応しきれず、かといって要件の複雑さからすべてをオフショアに任せるのも困難でした。そこで、業務プロセスを熟知した社内SEが要件定義と基本設計を担当し、ベトナムのオフショアチーム(エンジニア5名)が詳細設計からコーディング、テストまでを担当するハイブリッド体制を構築しました。ブリッジSEが日次で双方のチームをつなぎ、週次の合同レビューで品質を確認する運用を行った結果、国内のみで開発した場合と比較して約40%のコスト削減を達成しつつ、予定通りの納期でリリースに成功しています。
ふたつ目は「Webサービスの継続的な機能追加」です。ある中堅サービス業では、自社のWebサービスに月次で新機能を追加し続ける必要がありました。国内のPMとUI/UXデザイナーが機能の企画と画面設計を行い、ベトナムのラボ型チーム(エンジニア3名)が実装を担当する体制を敷きました。同じチームが継続的に開発を担当するため、サービスへの理解が回を追うごとに深まり、3か月目以降はPMからの簡易な指示だけで高品質な実装が可能になりました。開発のスピードが向上しただけでなく、国内エンジニアを他のプロジェクトに配置転換できるようになり、社内リソースの最適化にもつながっています。
みっつ目は「段階的なオフショア移行」です。これまでオフショア開発の経験がなかった中堅IT企業が、まず社内ツールの小規模開発をパイロットプロジェクトとしてオフショアに委託しました。パイロットの成功を受けて、次のフェーズでは顧客向けシステムの一部モジュールをオフショアに移行。最終的には、上流は国内、実装はオフショアというハイブリッド体制を標準的な開発スタイルとして確立しました。段階的に信頼関係を構築しながら移行したことで、品質リスクを最小限に抑えつつ、全社的な開発コストの30%削減を実現しています。
体制構築の4ステップ

ハイブリッド体制を構築するための手順を4つのステップに整理します。
ステップ1は「現状の開発体制を棚卸しする」ことです。まず、自社の開発チームのスキル構成、リソースの稼働状況、現在抱えている課題(人材不足、コスト増、納期逼迫など)を整理します。そのうえで、国内に残すべき業務とオフショアに移管できる業務を仕分けしてください。前述の原則に従い、「判断が必要な工程は国内に、実行が中心の工程はオフショアに」を基準にします。
ステップ2は「パートナーを選定し、パイロットで検証する」ことです。オフショアパートナーの選定では、技術力、コミュニケーション体制(特にブリッジSEの質)、自社案件との類似実績、離職率の低さを重視してください。パートナー候補が見つかったら、小規模なパイロットプロジェクトで実力を検証します。パイロットの段階でコミュニケーションルール、レビュー体制、品質基準を試行錯誤し、本格導入に向けた運用フローを確立してください。
ステップ3は「コミュニケーション基盤を整備する」ことです。ハイブリッド体制では、国内チームとオフショアチームの情報格差が品質リスクに直結します。プロジェクト管理ツール(課題管理、バグ管理)、チャットツール(日常連絡)、ビデオ会議ツール(定例会議、レビュー)を統一し、すべての関係者が同じ情報にアクセスできる環境を構築してください。定例会議の頻度(開発初期は週2回、安定期は週1回が目安)、報告フォーマット、エスカレーションルールも事前に取り決めておきます。
ステップ4は「段階的に規模を拡大する」ことです。パイロットの成功後も、一気に大規模な体制に移行するのではなく、プロジェクトの規模やオフショアチームの人数を段階的に拡大していきます。各段階で品質、コミュニケーション、コストの状況を評価し、課題があれば対策を講じたうえで次のステップに進んでください。急ぎすぎないことが、ハイブリッド体制を長期的に安定させるための最も重要なポイントです。
まとめ
ハイブリッド体制は、国内開発の品質とオフショア開発のコストメリットを両立する、現実的かつ効果的な開発体制です。成功の鍵は「役割分担の設計」「ブリッジSEの質」「段階的な拡大」の3つにあります。すべてを一度にオフショア化する必要はありません。まずは小さく始め、信頼関係を構築しながら段階的に最適な体制を作り上げていくアプローチが、最もリスクの低い導入方法です。
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