メインフレーム撤廃は「いつか」ではなく「いつまでに」の問題になった
メインフレームからの脱却は、もはや「やるかどうか」ではなく「いつまでに完了させるか」の問題です。本記事では、メインフレームからクラウドへの移行を現実的なタイムラインで整理し、手法の選び方とフェーズ別の進め方を解説します。
富士通は2022年に、メインフレームの製造・販売を2030年度末に終了し、保守サポートを2035年度末に終了すると発表しました。約66年にわたる同社のメインフレーム開発の歴史に幕が下りることになります。日立製作所もメインフレームの新規製造から撤退し、OS開発に限定する方針を示しています。国内メーカーでメインフレーム事業を継続するのはNECのACOSシリーズのみとなり、2032年ごろまでのロードマップが公表されている状況です。
これらの動きは、メインフレームを利用する企業にとって明確な「期限」を突きつけるものです。特に富士通のメインフレームは国内シェアが高く、影響を受ける企業は金融、製造、流通、公共と広範囲にわたります。保守サポート終了の2035年度末までに移行を完了させるためには、計画策定から実行完了まで3〜5年を要することを考えると、2030年前後には移行プロジェクトを本格稼働させていなければなりません。
メインフレーム移行の3つの手法——コスト・期間・リスクの比較

メインフレームからクラウドへの移行手法は大きく3つに分類されます。それぞれの特性を理解した上で、自社のシステム規模や優先度に応じて選択することが重要です。
「リホスト」は、既存のアプリケーションやプログラムを大きく変更せず、実行環境だけを新しいプラットフォーム(クラウドやオープンサーバー)に移す手法です。COBOLなどのプログラム資産をそのまま活用できるため、3つの手法の中で最も移行期間が短く、コストも抑えやすい傾向にあります。保守サポート終了までの期間が限られている場合や、まず安全にメインフレームから離脱することを最優先とする場合に適しています。ただし、COBOLという旧言語への依存や、技術者不足の根本的な問題は解消されないため、将来的にはリライトやリビルドへの段階的な移行を見据える必要があります。
「リライト(リプラットフォーム)」は、COBOLなどのレガシー言語で書かれたプログラムをJavaやPythonなどの現代的な言語に変換し、クラウド環境に移行する手法です。変換ツールを活用することで、設計工程の多くを省略しつつ、技術的負債を解消できるのがメリットです。ただし、変換ツールによる機械的な変換では手続き型の構造がそのまま残るため、将来的にはコードの最適化フェーズを設ける必要があります。移行期間はリホストより長くなりますが、リビルドほどの工数は要しません。
「リビルド(再構築)」は、業務要件をゼロから定義し直し、クラウドネイティブなアーキテクチャで新しいシステムを構築する手法です。DX推進と業務改革を同時に実現できるため、長期的な投資対効果は最も高いといえます。しかし、コストと期間はいずれも最大となり、メインフレーム上の複雑な業務ロジックの要件定義に膨大な工数がかかるリスクがあります。
実務的には、システム全体を1つの手法で移行するのではなく、機能や業務領域ごとに最適な手法を組み合わせるハイブリッドアプローチが有効です。頻繁に変更が発生する機能はリビルドでクラウドネイティブに再構築し、安定稼働している定型業務はリホストで迅速に移行し、不要な機能は廃棄する——こうした仕分けを行うことで、コストとリスクを最適化できます。経済産業省のDXレポートでも、機能ごとに四象限で評価してシステム再構築を計画するアプローチが推奨されています。
現実的なロードマップ——4つのフェーズで進める
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メインフレームからクラウドへの移行を「4つのフェーズ」に分けて、現実的なタイムラインを示します。
フェーズ1は「現状分析と資産の棚卸し」(6〜12ヶ月)です。メインフレーム上で稼働しているプログラムの全量を把握し、「現在使われている機能」「すでに使われていない機能」「他のシステムで代替可能な機能」に仕分けします。プログラム資産の棚卸しに加えて、データの量と構造、外部システムとの連携状況、バッチ処理のスケジュールと所要時間なども洗い出します。この工程を省略すると、移行の中盤以降で想定外の依存関係が発覚し、計画全体が大きく狂う原因になります。
フェーズ2は「移行戦略の策定と手法選定」(3〜6ヶ月)です。棚卸しの結果をもとに、各機能・業務領域ごとにリホスト・リライト・リビルド・廃棄のいずれの手法を適用するかを決定します。並行して、移行先のクラウド基盤の選定(AWS、Azure、Google Cloudなど)、移行中の並行運用の設計、切り戻し手順の策定も行います。このフェーズで経営層の合意を得ておくことが、プロジェクト全体の推進力を維持するために欠かせません。
フェーズ3は「段階的な移行の実行」(2〜4年)です。最もリスクが低い領域から着手し、成功実績と知見を積み上げながら、段階的に移行範囲を拡大していきます。各フェーズの完了後には、新環境での動作検証と旧環境との照合テストを実施し、問題がなければ次のフェーズに進みます。メインフレーム上のバッチ処理は特にパフォーマンスの検証が重要です。メインフレームの高い処理能力に依存していたバッチ処理が、クラウド環境で同等以上の処理速度を実現できるかは、事前の検証が必要です。
フェーズ4は「メインフレームの完全撤廃と運用移管」(6〜12ヶ月)です。すべての機能の移行が完了し、新環境での安定稼働が確認できた段階で、メインフレームを正式に撤廃します。同時に、新環境の運用体制を確立し、保守・監視の仕組みを整備します。
2026年の今、動き始めるべき理由

富士通メインフレームの保守サポート終了は2035年度末です。一見すると10年近い猶予があるように見えますが、上記のロードマップを現実的に見積もると、フェーズ1からフェーズ4までの所要期間は4〜6年です。そこにパートナー選定やRFP作成の期間を加えると、2026年の今から動き始めても決して早すぎることはありません。
さらに、メインフレーム関連の技術者の高齢化と減少が進んでいるため、現行システムの仕様を理解している技術者が在籍している「今」こそが、棚卸しと現状分析を行う最善のタイミングです。技術者が退職してからでは、システムの仕様を解析する工程にさらに多くの時間とコストが必要になります。
AWSやGoogle Cloudなどの大手クラウドベンダーも、メインフレームからの移行を支援する専用サービスを強化しています。AWSの「Mainframe Modernization」サービスなど、COBOLアプリケーションのクラウド移行を自動化するツールの実用化が進んでおり、数年前と比べて移行の技術的なハードルは着実に下がっています。
もうひとつ見落とされがちなのが、移行プロジェクトに対応できるパートナー企業のリソースの問題です。富士通メインフレームの影響を受ける企業は広範囲にわたるため、保守終了が近づくにつれて移行需要が集中し、経験豊富なパートナーの確保が困難になることが予想されます。早期に着手する企業ほど、パートナー選定の選択肢が広く、移行品質を確保しやすいというメリットがあります。
また、メインフレームからの移行は単なる基盤の入れ替えにとどまらず、業務プロセスの見直しやデータ活用基盤の構築など、DX推進の起点にもなり得ます。移行を「やむを得ないコスト」ではなく「事業を前に進めるための投資」と捉えることで、プロジェクトの意義を経営層と共有しやすくなります。
まとめ:期限が決まっている以上、計画は早いほど有利
メインフレームの撤廃は、製造終了・保守終了という明確な期限がある以上、「先送り」のリスクが年々増大する課題です。現状分析に着手するのが1年遅れれば、移行の選択肢はその分狭くなり、コストは膨らみます。まずはフェーズ1の「現状分析と資産の棚卸し」に着手し、自社のメインフレーム上にどのような資産がどれだけ存在しているのかを可視化すること。これが、移行プロジェクト全体の精度とスピードを左右する最初の一手です。
GXOでは、180社以上の支援実績をもとに、メインフレームの現状分析からクラウド移行戦略の策定、段階的な移行の設計・実行まで一気通貫で伴走しています。「メインフレームからの移行を検討したいが何から始めればよいかわからない」「移行のタイムラインを整理したい」という方は、まずは現状ヒアリングからご相談ください。
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