物流倉庫の人件費分析方法を解説します。人件費を最適化したいが、どこから手をつければいいか分からない——そんな現場管理者の方に向けた記事です。
結論から言えば、人件費の分析は「4つの切り口」で分解することから始まります。
雇用形態別:正社員・派遣・パートのコスト構造を比較し、最適な人員配置を見極める
工程別:入荷・ピッキング・梱包など、どの工程にコストが集中しているかを特定する
時間帯別:通常時間・残業・休日出勤の割合を可視化し、削減余地を見つける
この記事でわかること
人件費を正確に把握するための4つの分析軸と、それぞれの具体的な手順
分析結果を物流コスト削減につなげるための優先順位のつけ方
人件費率や労働生産性などのKPIを活用した改善効果の測り方
Excel管理の限界と、クラウド型人員管理への移行が必要な理由
人件費が「見えにくい」理由
物流倉庫における人件費は、物流コスト全体の60〜70%を占めるといわれています。業種や規模によりますが、倉庫人件費率の目安は売上高の40〜60%程度とされており、この数値を大きく超えている場合は改善余地があると考えられます。にもかかわらず、多くの現場では「なんとなく高い」という感覚にとどまり、具体的にどこにコストがかかっているかを把握できていないケースが目立ちます。
その原因は、人件費の原価構造が複雑であることにあります。正社員の基本給に加え、派遣スタッフの派遣料金、パート・アルバイトの時給、残業代、社会保険料、福利厚生費など、複数の費目が混在しています。さらに、倉庫のコスト構造は作業工程ごとに必要な人員数も異なるため、単純な「人数×単価」では実態を正確に捉えることができません。
また、多くの現場ではExcelや紙の日報で人件費を管理しているため、リアルタイムでのコスト把握が難しいという構造的な問題もあります。月末に締めてみて初めて「今月は人件費が高かった」と気づくようでは、タイムリーな改善策を打てません。
だからこそ、物流倉庫のコスト構造を分析し、人件費を複数の「切り口」で分解して、どこにコストが集中しているかを特定する作業が不可欠です。
切り口①:雇用形態別に分析する

なぜ雇用形態別に見るのか
最初に取り組むべきは、雇用形態ごとの人件費の把握です。正社員、派遣スタッフ、パート・アルバイトのそれぞれについて、月間の総人件費と1人あたりの単価を算出します。
正社員は基本給だけでなく、賞与、退職金の積立、社会保険の会社負担分を含めた「総額人件費」で見る必要があります。この総額人件費を総労働時間で割ったものが、実質的な時間あたりコストです。一方、派遣スタッフは派遣料金に管理費が含まれているため、見かけの単価と実質コストに差が出にくいという特徴があります。パート・アルバイトは時給ベースで管理しやすい反面、繁忙期のシフト増加によりコストが想定以上に膨らむことがあります。
具体的な分析手順
まず、雇用形態ごとに「人件費率」(売上高に対する人件費の割合)を算出します。たとえば、月間売上が3,000万円で人件費が1,500万円であれば人件費率は50%です。この人件費率を雇用形態別に分解することで、どの雇用形態にコストが偏っているかが明確になります。
ある物流センターでは、この雇用形態別分析を実施した結果、派遣スタッフの比率が全体の55%に達していることが判明しました。派遣スタッフの一部をパートに切り替え、教育体制を整備することで、月間の人件費を約120万円(15%)削減することに成功しています。
切り口②:工程別に分析する
工程ごとのコスト構造を可視化する
次に、入荷、検品、保管、ピッキング、梱包、出荷といった作業工程ごとに人件費を分解します。この分析により、どの工程に人手が集中しているか、またどの工程の労働生産性が低い状態にあるかが明確になります。
工程別分析のポイントは、各工程の「作業量あたりの人件費」を算出することです。たとえば、ピッキング工程であれば「1件あたりのピッキングコスト」、梱包工程であれば「1箱あたりの梱包コスト」を計算します。こうした単位あたりのコストをKPIとして設定することで、工程間の比較が可能になり、改善の優先順位を客観的につけられるようになります。
物流現場でよくあるケース
ピッキング工程に人件費が偏っている倉庫は少なくありません。この場合、ロケーション配置の見直しやハンディターミナルの活用方法の改善といった施策を行うことで、ピッキング1件あたりのコストを大幅に下げられる可能性があります。具体的には、出荷頻度の高い商品をトラックバース近くに配置するだけでも、歩行距離が短縮され、1時間あたりの処理件数が向上します。
切り口③:時間帯別に分析する
残業・休日出勤のコストインパクト
通常時間、残業、休日出勤のそれぞれに分けて人件費を算出します。残業代は通常の1.25倍、休日出勤は1.35倍と割増率が高いため、ここにコストが集中している場合は改善効果が大きくなります。
時間帯別分析で着目すべきは「恒常的な残業の有無」です。毎月一定の残業が発生している場合、それはシフト設計や人員配置の構造的な問題を示しています。一時的な繁忙ではなく、慢性的に残業が発生しているのであれば、シフトの見直しや増員のほうがトータルコストを抑えられるケースがあります。
分析の実務ポイント
時間帯別の分析では、「いつ・どの工程で・誰が」残業しているかまで掘り下げることが重要です。たとえば、出荷締め時間の前後に残業が集中している倉庫では、午後のシフトを30分前倒しにするだけで、月間の残業時間が平均15時間から8時間に削減されたという事例もあります。残業代に換算すると、年間で約200万円の削減に相当します。
このように、労働生産性をKPIとして時間帯ごとにモニタリングすることで、物流コスト削減のポイントが具体的に見えてきます。
切り口④:荷主別に分析する(3PLの場合)
荷主ごとの採算性を見極める
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3PL(サードパーティロジスティクス)事業者の場合は、荷主ごとの人件費を把握することも重要です。荷主によって取り扱う商材や出荷頻度、作業の複雑さが異なるため、人件費の負担にも偏りが生じます。
荷主別分析では、各荷主の売上(委託料)に対する人件費率を算出します。人件費率が高い荷主については、作業単価の見直しや業務フローの改善を検討する必要があります。場合によっては、委託料の再交渉が必要になることもあるでしょう。
正確なデータ収集のために
この分析を行う際は、荷主ごとの作業時間を正確に記録することが前提となります。作業日報や入退場記録をもとに、どの荷主の作業にどれだけの時間を費やしているかをデータとして蓄積していくことが求められます。しかし、Excelでの手動集計では荷主別の按分が曖昧になりがちで、正確な人件費率の算出が困難です。入退場管理やシフト管理をクラウドシステムで一元化することで、荷主別の工数データを自動的に蓄積し、精度の高い分析が可能になります。
分析結果を改善につなげる3つのステップ

4つの切り口で分析した結果を、実際の改善につなげるためのステップを紹介します。
まず、割合の大きいところから着手することが鉄則です。全体の人件費に占める割合が最も大きい項目を特定し、そこから改善策を検討します。全体の5%にすぎない項目を10%削減しても効果は限定的ですが、50%を占める項目を5%削減すれば大きなインパクトがあります。改善効果の試算には「削減見込み額 = 対象コスト × 削減率」というシンプルな算式を使い、費用対効果の高い施策から優先的に実行します。
次に、他拠点や過去データとの比較を行います。同じ会社の別拠点の人件費率や労働生産性と比較することで、自拠点の改善余地が見えてきます。また、過去3〜6か月の推移を追うことで、コスト増加のトレンドや季節変動を把握できます。
最後に、異常値を発見し原因を追究します。特定の月だけ人件費が急増している場合、その原因が一時的なものなのか、構造的な問題なのかを切り分けることで、適切な対策を打てるようになります。
今日から始められる初動アクション
分析の重要性は理解できたが、具体的に何から始めればいいか迷うこともあるでしょう。初回の分析にかかる時間は、データが揃っていれば半日〜1日程度が目安です。まずは以下の3つのアクションから着手することをおすすめします。
1つ目は、直近3か月の人件費データを雇用形態別に集計することです。正社員・派遣・パートの3区分で月別の総額を出すだけでも、コストの偏りが見えてきます。まだ集計できていない場合は、給与台帳や派遣会社への支払い明細をもとに一覧表を作成するところから始めましょう。
2つ目は、残業時間の多い工程・時間帯を特定することです。勤怠データを確認し、「どの工程で」「何時ごろに」残業が集中しているかを洗い出します。恒常的に残業が発生しているポイントが見つかれば、シフト調整の検討材料になります。
3つ目は、分析結果を定期的に確認する仕組みをつくることです。月に1回、人件費の推移を確認するミーティングを設定するだけでも、コスト意識が現場に浸透し、継続的な改善につながります。
人件費分析の簡易テンプレート
以下のような表を作成し、毎月データを更新していくことで、人件費の変動を継続的に把握できます。
分析軸 | 区分 | 人数 | 月間人件費(万円) | 人件費率 | 前月比 |
|---|---|---|---|---|---|
雇用形態別 | 正社員 | ― | ― | ―% | ―% |
雇用形態別 | 派遣 | ― | ― | ―% | ―% |
雇用形態別 | パート | ― | ― | ―% | ―% |
工程別 | 入荷・検品 | ― | ― | ―% | ―% |
工程別 | ピッキング | ― | ― | ―% | ―% |
工程別 | 梱包・出荷 | ― | ― | ―% | ―% |
時間帯別 | 通常時間 | ― | ― | ―% | ―% |
時間帯別 | 残業 | ― | ― | ―% | ―% |
時間帯別 | 休日出勤 | ― | ― | ―% | ―% |
このテンプレートの「人件費率」欄には、売上高に対する各区分の人件費割合を記入します。「前月比」を毎月記録することで、コストの増減トレンドが一目で把握できるようになります。Excel等で管理する場合は、このフォーマットに「作業量(件数)」と「1件あたりコスト」の列を追加すると、労働生産性の推移も同時に追えます。
人件費分析のセルフチェックリスト
人件費分析を進めるにあたり、以下のチェックリストで自社の状況を確認してみてください。
雇用形態別(正社員・派遣・パート)の人件費内訳を把握しているか
各雇用形態の「総額人件費」(社会保険料・福利厚生費込み)で比較しているか
売上高に対する人件費率をモニタリングしているか
主要な作業工程ごとの人件費を算出しているか
工程ごとの「作業量あたりのコスト」をKPIとして管理しているか
残業時間と残業代の月間推移を把握しているか
恒常的に残業が発生している工程・時間帯を特定しているか
荷主別の人件費率を算出しているか(3PLの場合)
他拠点や過去データとの比較を定期的に行っているか
分析結果をもとに具体的な改善アクションを設定し、効果を検証しているか
3つ以上「いいえ」がある場合は、人件費の可視化が不十分な状態です。まずは雇用形態別の集計から始めることをおすすめします。
よくある失敗パターン
人件費分析で陥りがちな失敗パターンも押さえておきましょう。
1つ目は「単価だけで比較する」失敗です。派遣スタッフの時給とパートの時給を単純比較して「派遣が高い」と判断するケースがありますが、派遣には採用・教育コストが含まれているため、トータルの原価構造で見ると逆転する場合があります。必ず付帯コストを含めた総額で比較しましょう。
2つ目は「月次の合計額だけで判断する」失敗です。月間の人件費総額が前月より増えたとしても、出荷件数も増えていれば1件あたりのコストは下がっている可能性があります。必ず労働生産性(作業量÷投入工数)や人件費率といったKPIとセットで評価することが重要です。
3つ目は「分析して終わり」の失敗です。分析結果を報告書にまとめただけで、具体的な改善アクションに落とし込めていないケースは少なくありません。分析は改善のための手段であり、目的ではないことを意識する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 人件費分析はどのくらいの頻度で行うべきですか?
月1回の確認が基本です。 給与締め後に雇用形態別・工程別の集計を行い、前月比と目標値との差異を確認します。繁忙期や人員の入れ替えがあった月は、時間帯別分析まで踏み込むと効果的です。最低でも四半期に1回は、4つの切り口すべてで総合分析を実施しましょう。
Q. Excelでの人件費分析には限界がありますか?
雇用形態別の集計まではExcelで対応可能ですが、クロス分析の段階で限界が出ます。 工程別×時間帯別の分析や複数拠点のデータ統合を行うと、手作業による集計ミスやデータ更新の遅れが問題になります。倉庫人件費率の目安と自社データをリアルタイムで比較したい場合や、自動レポート生成が必要な場合は、クラウド型の人員管理システムの導入が有効です。
Q. 小規模な倉庫でも人件費分析は必要ですか?
小規模倉庫こそ必要性が高いです。 人員が少ないほど1人あたりのコスト変動が全体に与える影響が大きく、1名の残業増加や退職による採用コストが経営を直接圧迫します。まずは雇用形態別の人件費率だけでも把握しておくことをおすすめします。
まとめ
人件費の最適化は、正確な分析から始まります。雇用形態別、工程別、時間帯別、荷主別の4つの切り口で人件費を分解し、コストが集中しているポイントを特定しましょう。分析結果をもとに、人件費率や労働生産性などのKPIを設定し、割合の大きいところから優先的に改善策を実行していくことが、物流の人件費削減方法として最も確実なアプローチです。
重要なのは、一度の分析で終わらせず、定期的にデータを更新し、改善の効果を検証し続けることです。
人件費分析を「後回し」にするリスク
人件費の分析は重要だと分かっていても、日々の業務に追われて後回しにしてしまうケースは少なくありません。しかし、分析を先延ばしにするほど、見えないコストは積み上がっていきます。
たとえば、恒常的な残業を放置すれば、年間で数百万円の割増賃金が利益を圧迫し続けます。荷主別の採算性を把握しないまま契約更新を迎えれば、適正な価格交渉ができず、不採算案件を抱え続けることになります。さらに、人件費の実態が見えていない状態では、コスト削減の根拠を示すことができず、経営層への改善提案も説得力を欠きます。
物流業界では人手不足と人件費の上昇が続いており、「今のやり方」で何とかなる時間は限られています。分析の仕組みを早期に整えることが、中長期的な競争力の維持につながります。
Excel管理の限界と、クラウド型人員管理のすすめ
ここまで解説した4つの切り口による分析は、正確なデータがあってこそ機能します。しかし、Excelや紙の日報に頼った管理では、データの入力漏れや集計ミス、更新の遅れが避けられません。とくに、工程別×時間帯別といったクロス分析や、複数拠点のデータ統合は、Excelの手作業では現実的に限界があります。
クラウド型の人員管理システムを導入すれば、入退場データやシフト実績が自動で蓄積され、リアルタイムでの人件費分析が可能になります。分析のたびにデータを手動で集める手間がなくなるため、現場管理者は「分析」ではなく「改善」に時間を使えるようになります。
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