人件費率が50%を超えているのに、削減策が「人を減らす」だけになっていませんか。その進め方では、現場は確実に崩れます。
物流倉庫の運営コストの中で、最も大きな割合を占めるのが人件費です。一般的に、物流倉庫の人件費率は売上高の40〜60%を占めるとされており、わずか数%の改善でも年間数百万円単位のインパクトがあります。「なんとか人件費を下げたい」と考える管理者は多いものの、やり方を間違えると現場の品質が下がり、離職が加速し、結果的にコストが増えるという悪循環に陥ります。
結論から言えば、人件費削減は「人を減らす」のではなく「ムダを減らす」が正解です。人件費率が高止まりしている倉庫ほど、配置の見直しと業務効率化を今すぐ始めるべきです。
最優先:作業のムダ・待ち時間のムダを見つけて排除する
計画的に:生産性向上の仕組みを整え、同じ人数でより多くの成果を出す
段階的に:適正配置の見直しと残業の計画的削減で、無理なくコストを下げる
この記事でわかること
現場崩壊を招く「やってはいけない人件費削減」3つのパターン
品質を落とさずコストを下げる4つの正しいアプローチ
人時生産性を高めるための具体的な数値事例と改善ステップ
自社の取り組みを診断できるセルフチェックリスト
やってはいけない人件費削減の3つのパターン

人件費削減を進める前に、まず「やってはいけないこと」を押さえておく必要があります。安易なコストカットは、短期的には数字が改善しても、中長期的には現場崩壊を招く危険な方法です。
パターン①:一律の人員カット
「全部門一律で人員を10%削減」というトップダウン型の指示は、最もよくある失敗パターンです。繁忙期と閑散期で必要な人員数は異なりますし、部門ごとに業務量の波動も違います。一律に削減すると、もともとギリギリで回していた部門が真っ先に破綻します。
ある物流倉庫では、一律カットにより出荷チームの人員が不足し、出荷遅延率が月間5%から18%に悪化しました。クレーム対応に追われる時間が増え、結果として残業コストが膨らみ、削減前よりも人件費が増加するという逆転現象が起きたケースもあります。
パターン②:残業禁止の一律徹底
「今月から残業禁止」という号令だけを出すのも危険です。残業が発生している根本原因を解消しないまま禁止だけすると、サービス残業の温床になります。タイムカードを切った後に仕事を続ける、自宅に持ち帰って作業するなど、見えない残業が増えるだけでなく、労務リスクも高まります。
本来やるべきなのは、「なぜ残業が発生しているのか」を業務単位で分析することです。入荷検品に時間がかかりすぎているのか、ピッキングの動線が非効率なのか、原因を特定しないまま禁止だけしても効果は出ません。
パターン③:賃金カット・待遇悪化
賃金の引き下げや福利厚生の削減は、最も即効性があるように見えて、最もダメージが大きい方法です。人手不足が深刻化する物流業界において、待遇の悪化は直接的に離職率の上昇につながります。ベテラン作業員が辞めれば、新人の採用・教育コストが発生し、作業効率も低下します。
厚生労働省の調査によれば、物流業界の離職率は他業種と比較して高い水準にあります。賃金カットにより離職が加速すれば、採用コストの増加と生産性の低下という二重の損失が発生します。
正しい人件費削減の4つのアプローチ

では、品質を維持しながら人件費を適正化するにはどうすればよいのでしょうか。ここからは、物流現場で実際に成果が出ている4つのアプローチを紹介します。
アプローチ①:作業のムダを徹底的に排除する
人件費削減の第一歩は、現場に潜む「ムダ」を見つけて排除することです。物流倉庫には、気づかないうちに定着してしまったムダな作業が多く存在します。
たとえば、入荷時の検品で同じ商品を二重にチェックしている、ピッキングリストの印刷に毎回5分かかっている、棚卸しのたびにExcelを手入力しているなど、日常の中に改善余地が隠れています。
具体的には、まず1日の業務フローを時間帯ごとに書き出し、各作業にかかっている時間を計測します。「移動時間」「待ち時間」「手待ち時間」を区別して記録し、各工程の標準作業時間と比較すると、削減可能なムダが見えてきます。ある物流センターでは、ピッキング作業の動線分析を行った結果、1人あたりの1日の歩行距離が約2km短縮され、作業効率が約20%向上しました。
アプローチ②:生産性を上げて「同じ人数でより多く」を実現する
ムダの排除と並行して取り組みたいのが、生産性の向上です。人を減らすのではなく、1人あたりの処理能力を高めることで、結果として人件費あたりの成果(人時生産性)を改善します。人時生産性とは「粗利益÷総労働時間」で算出される指標で、物流倉庫では1人1時間あたりの処理件数やピッキング行数で測定するのが一般的です。
物流現場での生産性向上策としては、ハンディターミナルの活用によるピッキング精度の向上、ロケーション管理の最適化による移動距離の短縮、作業手順の標準化によるバラつきの解消などが挙げられます。
重要なのは、「頑張れ」という精神論ではなく、仕組みで生産性を上げることです。現クラの支援現場でも、「シフト作成に毎週半日以上かかっている」「人件費の内訳が月末の締め作業まで分からない」といった声が多く聞かれます。たとえば、シフト管理をExcelから専用システムに切り替えるだけでも、シフト作成にかかっていた時間が月15時間から3時間に削減された事例があります。管理者が現場改善に使える時間が増え、さらなる効率化の好循環が生まれます。
アプローチ③:適正配置で過不足をなくす
「人が足りない」と感じている現場でも、実際にデータを分析すると、時間帯や曜日によっては人員が過剰になっているケースは少なくありません。入荷が集中する午前中は人手が足りず、午後の出荷準備までの間は手待ち時間が発生しているという倉庫は多いものです。
適正配置の実現には、まず作業量の波動を「見える化」することが欠かせません。物流倉庫の波動対応とは、日々・週次・月次で変動する作業量に合わせて人員配置を柔軟に調整することを指します。時間帯別の出荷件数、曜日別の入荷量、季節変動のパターンなどをデータとして蓄積し、それに基づいて人員を配置します。
現クラの支援現場では、「感覚でシフトを組んでいたが、データで見ると火曜と木曜に人員が余り、月曜と金曜に不足していた」というケースが頻繁に見られます。感覚と実態のズレを数値で把握することが、適正配置の出発点です。
ある物流倉庫では、時間帯別の作業量データをもとにシフトを再設計した結果、人員の過不足が解消され、月間の総労働時間を約12%削減することに成功しました。
具体的には、この倉庫では従来、全スタッフが9時〜18時の固定シフトで勤務していました。しかし作業量データを分析すると、入荷が集中する9時〜12時に人員が不足し、14時〜16時は手待ち時間が多発していることが判明しました。そこで、早番(7時〜16時)・遅番(11時〜20時)の2交代制に移行し、ピーク時間帯に人員が重なるよう調整しました。結果として、人数を減らしたのではなく配置のタイミングを最適化しただけで、月間約45万円のコスト削減を実現しています。
アプローチ④:残業を計画的に削減する
残業を減らすには、「禁止する」のではなく「計画的に削減する」というアプローチが有効です。まず、残業が発生している業務を特定し、その原因を分類します。
残業の主な原因としては、業務量に対する人員の不足、特定の人にしかできない属人化した業務、突発的なトラブル対応、非効率な作業手順などがあります。これらを一つひとつ解消していくことで、残業は自然と減少します。
特に属人化の解消は効果が大きく、特定のベテランにしかできなかった業務をマニュアル化し、複数人で対応できる体制にすることで、残業の偏りが解消されます。ある倉庫では、属人化していた在庫管理業務の標準化により、特定作業者の残業時間が月平均18時間から6時間に削減されました。
人件費削減セルフチェックリスト
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自社の人件費削減が正しい方向に進んでいるか、以下の項目で確認してみてください。
人件費の内訳(基本給・残業代・派遣費用など)を把握しているか
時間帯別・曜日別の作業量データを収集しているか
作業のムダ(二重チェック・不要な移動・手待ち時間)を定期的に洗い出しているか
シフト作成を感覚ではなくデータに基づいて行っているか
人員管理やシフト管理をExcelの手作業から脱却できているか
属人化している業務を特定し、マニュアル化を進めているか
残業の原因を業務単位で分析しているか
人員削減ではなく「人時生産性の向上」を目標に設定しているか
削減施策の効果を定量的に測定しているか
3つ以上チェックが付かない場合、人件費削減の前に「現場の見える化」から始めることをおすすめします。
よくある失敗パターンと対策
人件費削減に取り組む中で、多くの倉庫が陥りやすい失敗パターンがあります。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
失敗①:数字だけを追って現場の声を無視する。 経営層が数値目標だけを設定し、現場の実態を把握しないまま削減を進めると、作業品質の低下やモチベーション低下を招きます。削減目標を立てる際は、必ず現場責任者と協議し、実行可能な計画を策定しましょう。
失敗②:一度に複数の施策を同時に実行する。 ムダの排除、配置変更、残業削減を同時に進めると、どの施策が効果を出しているのか分からなくなります。優先順位をつけて段階的に進め、各施策の効果を個別に検証することが重要です。
失敗③:短期的な成果だけで判断する。 人件費削減の効果は、1〜2か月で判断できるものではありません。シフトの最適化や業務標準化は、定着するまでに3〜6か月かかるのが一般的です。短期の数字だけで施策の成否を判断せず、中長期の視点で効果を検証してください。
倉庫の人件費率の目安と改善の考え方
人件費削減に取り組む前に、自社の人件費率が業界水準と比べてどの位置にあるかを把握しておくことも重要です。物流倉庫の人件費率の目安は、一般的に売上高の40〜60%とされていますが、取り扱い品目や自動化の度合いによって大きく異なります。常温倉庫で手作業中心の場合は55〜65%に達することもあり、一方で自動倉庫を導入している拠点では30%台に抑えられるケースもあります。
人件費率を改善する方法は大きく2つに分かれます。ひとつは本記事で解説した「ムダの排除と生産性向上によるコスト削減」、もうひとつは「売上(処理量)を維持・拡大しながら人件費比率を相対的に下げる」方法です。いずれにしても、まず自社の人件費率を正確に算出し、どの費目(基本給・残業代・派遣費用・福利厚生費)が大きいかを分解するところから始めてください。
そもそも物流倉庫の人件費が高くなりやすい原因としては、作業の属人化による残業の偏り、繁閑差を考慮しない固定シフト運用、Excelや紙ベースの管理による非効率、派遣スタッフの過剰手配と稼働率の低さなどが挙げられます。これらの構造的な原因を放置したまま人件費率だけを下げようとしても、一時的な効果しか得られません。
まとめ
人件費の削減は、物流倉庫の経営において避けて通れないテーマです。しかし、一律の人員カットや賃金カットといった安易な方法は、現場崩壊と離職の加速を招き、かえってコストを増大させます。
正しい人件費削減の基本は、「人を減らす」のではなく「ムダを減らし、生産性を上げる」ことです。作業のムダ排除、生産性向上、適正配置、残業の計画的削減という4つのアプローチを段階的に進めることで、品質を維持しながらコストを適正化できます。
その第一歩として、まず現場の作業量と人員配置を「見える化」するところから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 人件費削減は何から始めればいいですか?
まずは現場の「見える化」から始めるのが最も効果的です。時間帯別の作業量、人員配置の実態、残業の発生パターンをデータとして把握し、どこにムダがあるかを特定します。いきなり人を減らすのではなく、ムダの排除と適正配置の見直しから着手することで、品質を落とさずにコストを下げられます。
Q. 人件費率の適正値はどのくらいですか?
物流倉庫の人件費率は、一般的に売上高の40〜60%が目安です。ただし、取り扱い品目や自動化の度合い、常温・冷蔵などの保管条件によって大きく異なります。自社の人件費率を算出し、基本給・残業代・派遣費用などの内訳を分解して、どこに改善余地があるかを見極めることが重要です。
Q. 人を減らさずに人件費を下げることは可能ですか?
可能です。本記事で紹介した「作業のムダ排除」「人時生産性の向上」「適正配置」「残業の計画的削減」の4つのアプローチは、いずれも人員数を維持しながらコストを適正化する方法です。実際に、シフトの再設計だけで月間45万円のコスト削減を実現した倉庫の事例もあります。
Q. 人件費管理をExcelで続ける限界はどこですか?
Excelでの人件費管理は、スタッフ数が30名を超えたあたりから限界が見え始めます。シフト変更のたびに手入力が必要になる、派遣費用と自社スタッフの人件費を横並びで比較できない、リアルタイムの人件費推移が把握できないなど、管理工数が増える一方で精度が下がっていきます。月末の締め作業で初めて「今月は人件費が予算を超えていた」と気づくようでは、改善のタイミングを逃してしまいます。
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