なぜ今、IT内製化が求められているのか

「システム改修のたびに外注先との調整に時間がかかる」「ちょっとした変更にも数週間かかり、ビジネスのスピードについていけない」——こうした悩みを抱える中小企業の経営者やIT担当者は少なくありません。本記事では、外注依存から脱却し、自社のIT開発力を段階的に高めるための「内製化ロードマップ」を3つのフェーズに分けて解説します。人材育成の進め方、よくある失敗パターンとその対策、そして今すぐ着手できる具体的なアクションまで、実践で使える内容をお伝えします。
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」では、レガシーシステムの刷新が進まなければ2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしました。いわゆる「2025年の崖」問題です。この課題を乗り越えるためには、外部ベンダーに依存した体制から、自社でシステムを理解し、必要に応じて改修・運用できる体制への移行が不可欠です。
また、IPA(情報処理推進機構)の「DX白書2024」によると、DXに取り組む企業のうち「内製化を推進している」と回答した企業は年々増加傾向にあります。内製化は一部の大企業だけの取り組みではなく、中小企業においても競争力を維持するための重要な戦略となっています。
IT内製化とは何か——基本的な考え方を整理する
IT内製化とは、これまで外部のシステム開発会社やベンダーに委託していたIT業務を、自社の社員が担う体制に移行することを指します。ただし、内製化といっても「すべてを自社で行う」ことが正解とは限りません。自社の事業戦略やリソース状況に応じて、どの範囲を内製化するかを見極めることが重要です。
内製化には大きく分けて「完全内製」と「部分内製」の2つのアプローチがあります。完全内製は、企画・設計・開発・運用・保守のすべてを自社で行う形態です。一方、部分内製は、たとえば企画・設計と運用は自社で行い、開発の一部は外部パートナーと協働するといった形態を指します。多くの中小企業にとっては、いきなり完全内製を目指すのではなく、段階的に内製範囲を広げていく部分内製のアプローチが現実的です。
内製化によって得られるメリットは多岐にわたります。まず、システムに関する知見が社内に蓄積されるため、改修や機能追加の判断を迅速に行えるようになります。外注先との仕様調整や見積もり取得に要していた時間を大幅に削減できるのです。また、自社のビジネスを深く理解した社員が開発に携わることで、現場のニーズに即したシステムを構築しやすくなります。さらに、長期的に見れば外注コストの削減にもつながる可能性があります。
3フェーズで進める内製化ロードマップ
内製化は一朝一夕で実現できるものではありません。無理なスケジュールで進めると、既存業務に支障をきたしたり、育成途中の人材が疲弊して離職したりするリスクがあります。ここでは、多くの企業で実績のある3フェーズのロードマップをご紹介します。
フェーズ1:現状把握と基盤整備(3〜6ヶ月)
最初のフェーズでは、現在のIT資産と外注状況を棚卸しすることから始めます。どのシステムがどのベンダーに依存しているのか、年間でどれくらいの外注費用が発生しているのか、契約内容はどうなっているのかを可視化します。この作業を通じて、内製化の優先順位を判断するための材料が揃います。
同時に、社内のIT人材の現状スキルを評価することも重要です。プログラミング経験の有無だけでなく、業務プロセスへの理解度、コミュニケーション能力、学習意欲なども含めて多角的に把握します。この評価結果をもとに、どの領域から内製化を始めるか、どのような育成プログラムが必要かを検討します。
このフェーズでは、小規模なツール開発やノーコード・ローコードツールを活用した業務改善から着手することをお勧めします。たとえば、Excelで管理していた業務をKintoneなどのノーコードツールに移行するプロジェクトは、比較的リスクが低く、成功体験を積みやすい取り組みです。
フェーズ2:パイロットプロジェクトと人材育成(6〜12ヶ月)
第2フェーズでは、特定の領域を選定してパイロットプロジェクトを実施します。対象としては、ビジネスへの影響が比較的小さく、かつ成功した場合の効果が見えやすい領域を選ぶのがポイントです。社内向けの管理ツールや、既存システムの一部機能の改修などが候補となります。
パイロットプロジェクトと並行して、計画的な人材育成を進めます。外部の研修プログラムの活用、社内勉強会の開催、OJTによる実践的なスキル習得など、複数のアプローチを組み合わせることが効果的です。特に重要なのは、技術スキルだけでなく、要件定義や設計といった上流工程のスキルも育成対象に含めることです。
このフェーズでは、外部パートナーとの協働体制も検討します。すべてを自社だけで進めようとするのではなく、経験豊富な外部の専門家から技術指導を受けたり、難易度の高い部分は協力して開発したりする「伴走型」の支援を活用することで、内製化の成功確率を高められます。
フェーズ3:内製範囲の拡大と定着(12ヶ月以降)
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第3フェーズでは、パイロットプロジェクトで得られた知見をもとに、内製化の範囲を段階的に拡大していきます。成功事例を社内で共有し、他部門への横展開を図ることで、組織全体のIT活用レベルを底上げします。
このフェーズで重要なのは、内製化を一時的な取り組みではなく、継続的な組織能力として定着させることです。そのためには、技術的な負債を溜めない開発プロセスの確立、ナレッジの文書化と共有の仕組み、継続的な学習機会の提供といった基盤づくりが欠かせません。
また、採用戦略の見直しも検討すべきポイントです。内製化を本格的に進めるためには、中途採用によるIT人材の確保や、新卒採用におけるIT人材の比率向上といった施策が必要になる場合もあります。
内製化でよくある失敗パターンと対策

内製化に取り組む企業が陥りやすい失敗パターンがいくつかあります。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
1つ目は「いきなり大規模なプロジェクトに着手してしまう」失敗です。内製化への意気込みが強いあまり、基幹システムの刷新など難易度の高いプロジェクトから始めてしまうケースがあります。経験の浅いチームが大規模プロジェクトを担当すると、品質問題やスケジュール遅延が発生しやすく、結果として「やはり内製は無理だ」という誤った結論に至りかねません。まずは小さく始めて成功体験を積むことが鉄則です。
2つ目は「人材育成を軽視してしまう」失敗です。ツールやシステムの導入には投資するものの、それを使いこなす人材の育成には十分なリソースを割かないケースが見られます。内製化の成否は最終的に人材にかかっています。育成には時間がかかることを前提に、中長期的な視点で計画を立てる必要があります。
3つ目は「外注先との関係を断ち切ってしまう」失敗です。内製化を進めるからといって、これまでの外注先との関係を急に解消すると、トラブル時の対応や専門知識の補完ができなくなります。内製化の過渡期においては、外部パートナーとの良好な関係を維持しながら、徐々に自社の比重を高めていくアプローチが賢明です。
御社が今すぐ始められる5つのアクション
内製化を成功させるために、今日から着手できる具体的なアクションを5つご紹介します。
1つ目は、IT資産と外注費用の棚卸しです。現在稼働しているシステムの一覧、各システムの保守・運用を担当しているベンダー、年間の外注費用を一覧表にまとめてください。この作業によって、内製化の対象候補と優先順位が見えてきます。
2つ目は、社内IT人材のスキルマップ作成です。IT部門だけでなく、各部門にいるITに強い社員も含めて、保有スキルと習得意欲を可視化します。内製化の担い手となりうる人材の発掘につながります。
3つ目は、ノーコード・ローコードツールの試験導入です。Kintone、Power Apps、Bubbleなどのツールを使って、小規模な業務改善プロジェクトを実施してみてください。プログラミング経験がなくてもアプリケーションを構築できるこれらのツールは、内製化の第一歩として最適です。
4つ目は、内製化の目的と目標の明文化です。なぜ内製化に取り組むのか、3年後にどのような状態を目指すのかを経営層を含めて議論し、文書化します。目的が曖昧なまま進めると、途中で方向性がぶれたり、関係者の協力を得られなくなったりするリスクがあります。
5つ目は、外部の専門家への相談です。内製化の進め方について、経験豊富な専門家の意見を聞くことで、自社の状況に適したアプローチを見つけやすくなります。
伴走型の支援で内製化を確実に成功させる
内製化は重要な経営課題である一方、自社だけで進めるには不安を感じる企業も多いのではないでしょうか。特に、IT人材が限られている中小企業においては、外部の専門家による伴走型の支援が有効です。
GXOは、DX・システム開発の領域で180社以上の支援実績を持ち、成功率92%という高い成果を上げてきました。福岡本社とベトナム開発拠点を活かした体制で、上流の戦略策定から実際の開発・運用まで一気通貫でサポートしています。内製化を進めたいが何から始めればよいかわからない、パイロットプロジェクトを伴走してほしい、人材育成のプログラムを一緒に設計してほしいといったご相談に対応しています。
まとめ
IT内製化は、外注依存から脱却し、ビジネスのスピードと競争力を高めるための重要な戦略です。ただし、一足飛びに完全内製を目指すのではなく、現状把握から始めて、パイロットプロジェクトで経験を積み、徐々に範囲を拡大していく段階的なアプローチが成功の鍵となります。人材育成に十分な時間とリソースを投資すること、そして必要に応じて外部の専門家の力を借りることも忘れないでください。
内製化の第一歩として、まずはIT資産の棚卸しと社内人材のスキル把握から始めてみてはいかがでしょうか。具体的な進め方についてお悩みの場合は、ぜひGXOにご相談ください。
お問い合わせはこちら:https://gxo.co.jp/contact-form
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