SaaS連携の課題を解決するiPaaSとは
「営業がSalesforceに入力した情報を、経理がfreeeに手入力し直している」「Slackで共有された情報をExcelに転記する作業が毎日発生している」。こうした非効率に悩む企業は少なくありません。本記事では、プログラミング不要でSaaS同士を連携できる「iPaaS」について、基本概念から具体的な導入手順、主要ツールの比較まで解説します。自社に最適なツール選定の判断基準と、明日から始められる実践ステップがわかります。
総務省の「令和5年版情報通信白書」によると、日本企業のクラウドサービス利用率は72.2%に達しています。多くの企業が複数のSaaSを導入する中で、サービス間のデータ連携が新たな課題として浮上しています。あるSaaSに入力したデータを別のSaaSに転記する作業が増え、せっかくのデジタル化が「手作業のデジタル化」に留まってしまうケースが散見されます。この課題を解決するのが、iPaaS(Integration Platform as a Service)です。
iPaaSの基本と従来の連携方法との違い

iPaaSとは、クラウド上で提供される統合プラットフォームサービスです。複数のSaaSやオンプレミスシステムをノーコードまたはローコードで接続し、データの自動連携を実現します。従来のシステム連携では、API(Application Programming Interface)を利用した個別開発が必要でした。たとえば、顧客管理システムと会計システムを連携させる場合、それぞれのAPIを理解し、プログラムを書いて接続する必要がありました。この方法では、開発コストが数百万円規模になることも珍しくありません。
iPaaSを使えば、こうした連携がドラッグ&ドロップの操作で実現できます。「Aというサービスで〇〇が起きたら、Bというサービスで△△を実行する」というルールを視覚的に設定するだけです。プログラミングの知識がない担当者でも、業務に必要な連携を自分で構築できる点が大きな特徴です。
Gartnerの調査によると、iPaaS市場は年平均成長率25%以上で拡大しており、2025年には世界市場規模が100億ドルを超えると予測されています。この成長の背景には、企業のSaaS利用数の増加があります。中堅企業でも平均して10〜20種類のSaaSを利用しているとされ、連携ニーズは今後さらに高まると考えられます。
主要iPaaSツール3選と比較ポイント
iPaaSツールは多数存在しますが、中小〜中堅企業での導入実績が多い3つのツールを紹介します。
まず「Zapier(ザピアー)」は、世界で最も利用されているiPaaSの一つです。対応アプリは6,000以上と圧倒的な数を誇り、ほとんどのSaaSと連携できます。操作画面が直感的で、ITに詳しくない担当者でも比較的短時間で使いこなせるようになります。料金は月額約2,000円から始められ、小規模なスタートには適しています。一方で、日本語サポートがないこと、連携の実行回数に応じて料金が上がることには注意が必要です。
次に「Make(旧Integromat)」は、Zapierと並ぶ人気ツールです。複雑な条件分岐や繰り返し処理を視覚的に設計できる点が強みです。たとえば「金額が10万円以上の場合のみ承認フローに回す」といった条件付きの連携も簡単に構築できます。料金体系はZapierより柔軟で、同じ予算でより多くの処理を実行できるケースが多いです。ただし、操作画面がやや複雑で、慣れるまでに時間がかかることがあります。
そして「Microsoft Power Automate」は、Microsoft 365を利用している企業に適した選択肢です。Outlook、Teams、SharePointなどMicrosoft製品との連携が特に強力で、既存のMicrosoft環境を活かした自動化が可能です。Microsoft 365のビジネスプランに含まれている場合もあり、追加コストなしで始められるケースがあります。一方、Microsoft製品以外との連携では、他ツールに比べて対応アプリ数が限られる傾向があります。
ツール選定では、自社で利用しているSaaSとの対応状況を最優先で確認してください。次に、想定される連携の複雑さを考慮します。単純な連携が中心ならZapier、複雑な条件分岐が必要ならMake、Microsoft環境が中心ならPower Automateという判断基準が一般的です。また、無料プランやトライアル期間を活用し、実際の操作感を確かめることをお勧めします。
iPaaS導入でよくある失敗と回避策
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iPaaSは導入のハードルが低い反面、計画なしに始めると期待した効果が得られないことがあります。よくある失敗パターンと、その回避策を解説します。
一つ目の失敗は「連携の目的が曖昧なまま始める」ことです。「便利そうだから」という理由で導入し、何となく連携を作ってみたものの、業務改善につながらないケースです。iPaaS導入前に、具体的にどの作業を自動化したいのか、それによってどれくらいの時間短縮が見込めるのかを明確にしておく必要があります。たとえば「毎日30分かけていたデータ転記作業を自動化し、月間10時間を削減する」といった数値目標があると、導入効果を測定しやすくなります。
二つ目の失敗は「担当者依存の属人化」です。特定の担当者だけがiPaaSを理解し、その人がいなくなると連携が管理できなくなるパターンです。回避策として、連携設定のドキュメント化と、複数人での運用体制構築が重要です。誰がどの連携を作成し、どのような目的で動作しているのかを記録しておくことで、担当者が変わっても継続的な運用が可能になります。
三つ目の失敗は「セキュリティへの配慮不足」です。iPaaSを通じて複数のシステムがつながるため、一つの認証情報が漏洩すると複数システムに影響が及ぶリスクがあります。iPaaSツールへのアクセス権限を必要最小限に絞り、認証情報の管理を徹底することが求められます。また、iPaaSツール自体のセキュリティ認証(SOC2など)を確認し、信頼性の高いツールを選定することも重要です。
今すぐ始める5つのステップ

iPaaS導入を検討している企業が、明日から着手できる具体的なステップを紹介します。
ステップ1は「現状の手作業を洗い出す」ことです。社内で行われているシステム間のデータ転記や、手動での通知作業をリストアップしてください。「SaaSのAからBへのコピー作業」「特定条件でのメール通知」など、定型的な作業が自動化の候補になります。まずは各部門の担当者にヒアリングし、日常的に発生している手作業を可視化することから始めましょう。
ステップ2は「効果の大きい連携を特定する」ことです。洗い出した作業の中から、発生頻度が高く、一回あたりの作業時間が長いものを優先候補にします。週に1回30分かかる作業より、毎日10分かかる作業のほうが自動化効果は大きくなります。また、転記ミスが起きやすい作業も優先度を上げる判断材料になります。
ステップ3は「適切なツールを選定する」ことです。前述の比較ポイントを参考に、自社環境に合ったiPaaSツールを選びます。無料プランで試せるツールが多いため、まずは小さな連携を一つ作成し、操作感を確かめることをお勧めします。この段階では、複数のツールを並行して試し、比較検討するのも有効です。
ステップ4は「パイロット運用で検証する」ことです。選定したツールで、最も効果が見込める連携を一つ構築し、実際に運用してみます。想定どおりに動作するか、エラーが発生した場合の対処は可能かを確認します。パイロット期間は1〜2週間程度が目安です。この期間で問題がなければ、本格運用に移行します。
ステップ5は「運用ルールを整備し拡大する」ことです。パイロット運用の結果を踏まえ、連携設定の命名規則、変更時の承認フロー、エラー発生時の対応手順などを文書化します。ルールが整備できたら、他の業務への展開を進めます。一気に拡大するのではなく、一つずつ着実に連携を増やしていくことで、トラブル発生時の原因特定がしやすくなります。
連携の複雑化にはプロの支援も選択肢
iPaaSはノーコードで始められる手軽さが魅力ですが、連携が複雑化すると自社だけでの対応が難しくなるケースがあります。複数のシステムをまたぐ連携、リアルタイム性が求められる処理、基幹システムとの接続などは、専門的な知見が必要になることが多いです。
また、iPaaSだけでは対応できない連携要件も存在します。たとえば、オンプレミスの基幹システムとの接続、大量データのバッチ処理、独自の業務ロジックを含む連携などは、個別開発やETLツールとの組み合わせが必要になることがあります。こうした判断を自社だけで行うのが難しい場合は、システム連携の経験を持つパートナー企業への相談が有効です。
まとめ
iPaaSは、増え続けるSaaS間のデータ連携を、プログラミング不要で実現するサービスです。Zapier、Make、Power Automateなどのツールを活用すれば、IT部門でなくても業務担当者自身が連携を構築できます。導入にあたっては、目的の明確化、属人化の防止、セキュリティへの配慮が重要です。まずは現状の手作業を洗い出し、小さな連携から始めてみてください。連携が複雑化し専門的な判断が必要になった際は、経験を持つパートナーへの相談も検討する価値があります。
GXOでは、180社以上の支援実績をもとに、iPaaSを活用したSaaS連携から、基幹システムを含む統合的なデータ連携基盤の構築まで、幅広く支援しています。自社のシステム連携に課題を感じている方は、お気軽にご相談ください。
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