はじめに:17年の経験から見えてきた、AI活用の本質
はじめまして。GXO株式会社、代表の藤吉です。
私は2008年に個人事業としてシステム開発を始め、2020年に法人化してから、多くの製造業や商社の皆様のDX推進をお手伝いしてきました。特にこの2年間は、生成AI技術の急速な進化を目の当たりにし、お客様からの相談も「AI導入」に関するものが急増しています。
しかし、相談の内容をよく聞いてみると、多くの企業が同じ悩みを抱えていることに気づきました。
「ChatGPT Enterpriseを導入したが、現場で使われていない」
「RAGシステムを構築したが、期待した精度が出ない」
「AI導入に数百万円投資したが、効果が見えない」
これは偶然ではありません。従来の生成AI技術には、企業での実用において構造的な限界があるのです。
この連載記事では、17年間のシステム開発経験と、最新のAI研究の知見を組み合わせて、できるだけ分かりやすくお伝えします。専門用語は極力避け、具体的な例え話を使って説明しますので、「AIは難しそう」と思っている方も、ぜひ最後までお付き合いください。
多くの企業がAI導入で直面する「3つの壁」
壁1:期待と現実のギャップ「こんなはずじゃなかった」
ある製造業のお客様の実例
山田部長(50歳、品質管理部)の経験をご紹介します。
導入前:「ChatGPTが凄いって聞いたから、うちでも導入すれば業務が楽になるはず!」
導入直後(1週間後):「おお、質問に答えてくれる!便利だ!」
1ヶ月後:「あれ?うちの製品型番を教えても、すぐ忘れる…」「毎回、会社の説明から始めないといけない」
3ヶ月後:「結局、ベテランの田中さんに聞いた方が早い」「年間200万円払ってるのに、誰も使ってない…」
半年後:「AI導入は失敗だった。上司には何て報告すればいいんだ…」
山田部長のような話を、私はこの1年で10社以上から聞いています。
外国人コンサルタントを雇った話に例えると
想像してください。あなたの会社が、世界中の大学を出た超優秀な外国人コンサルタントを雇いました。
初日:あなた「うちの会社は部品メーカーで…」コンサルタント「なるほど!」
2日目:あなた「昨日説明した、うちの主力製品なんだけど」コンサルタント「すみません、もう一度教えてください」
1週間後:あなた「また同じこと説明するの?メモ取ってないの?」コンサルタント「申し訳ありません…」
これが、今のChatGPTなどの汎用AIの状態です。確かに優秀だけど、あなたの会社のことは何も覚えていません。

壁2:コストばかりかさみ、効果が見えない
実際の計算例(従業員300名の製造業)
ChatGPT Enterprise 導入の場合
月額費用:300名 × 1人あたり60ドル = 18,000ドル(日本円:約270万円/月)
年間:約3,200万円
半年後の実態
実際に使っている人:50名(17%)
月間利用回数:1人平均15回
計算すると…1回の質問に約3,600円かかっています。
社長からの質問:「で、この3,200万円の投資で、売上は増えたの?コストは減ったの?」
山田部長:「それは…(答えられない)」
これは、高級ジムに入会したのに通わなくなった状態に似ています。入会時は「月3万円か。でも健康のために頑張ろう!」と意気込むものの、3ヶ月後には「忙しくて月1回くらいしか行けてない」、半年後には「全然行ってないけど、解約するのもな…」となり、結果として年間36万円払って実質的な利用は数回だけ。
AI導入も同じです。使われなければ、ただの無駄遣いです。
壁3:結局、現場で使われない
現場が使わない理由トップ3(実際のインタビューから)
理由1:AIの回答が信用できない
現場社員(営業・35歳)の本音。「AIが提案した見積もりで提出して、もし間違ってたら、俺の責任になるじゃん。結局、自分で確認しないといけないなら、最初から自分でやった方が早いよ」
これは、優秀だけど入ったばかりの新人アルバイトに仕事を任せる時の心理と同じです。「この書類、お客様に送っておいて」と頼んでも、30分後に心配になって確認すると間違いだらけ。「最初から自分でやった方が早かった」となります。
理由2:使い方が分からない / 面倒
現場社員(事務・42歳)の本音:
「プロンプトエンジニアリング?そんな勉強してる時間ないって。どう質問すればいいか分からないし、Excelで済むなら、Excelでいいよ」
最新の多機能電子レンジを買っても、温め・オーブン・スチーム・自動調理メニュー50種類・スマホ連携…とできることは多いのに、実際に使うのは「温め」ボタンだけ。理由は「他の機能、使い方がよく分からない」「別に今のままで困ってない」から。AIも同じで、高機能でも使いこなせなければ意味がありません。
理由3:業務に合っていない
現場社員(品質管理・55歳)の本音:
「AIは一般論しか言わない。うちの製品、うちの工場の事情は分かってない。結局、ベテランの田中さんに聞いた方が的確な答えが返ってくる」
大阪に住んでいるあなたが「梅田駅への行き方を教えて」と聞いた時、汎用AIは「一般的に、駅への行き方は…まず最寄りの交通機関を探し…」と東京の地図を見せてくるようなもの。一方、地元の人なら「あ、ここから梅田やったら、あの角曲がって、まっすぐ5分やで。信号2つ目を右や」と教えてくれます。現場が求めているのは、自社の事情を分かっているAIなのです。

なぜこうなるのか?従来技術の構造的限界
これらの失敗には、共通の根本原因があります。
従来のAI技術(LLM + RAG)の仕組みを簡単に説明すると、あなたの質問がLLM(ChatGPT等)に届き、世界中の知識はあるものの、あなたの会社のことは知らず、教えても忘れてしまいます。そこにRAG(検索システム)を組み合わせて社内文書を検索しますが、検索精度次第であり、パターンは学習しません。結果として、回答は汎用的で、その場限り、次回は忘れているという状態になります。
次回の記事では、この仕組みをもっと詳しく、分かりやすく解説します。そして、この構造的限界を突破する新しい技術「Nested Learning」についてもご紹介していきます。
まとめ
今回の記事では、多くの企業がAI導入で直面する「3つの壁」についてお伝えしました。
期待と現実のギャップ:AIは優秀だが、あなたの会社のことを覚えない
コストばかりかさむ:使われなければ、高額な無駄遣いになる
現場で使われない:信頼できない、面倒、業務に合っていない
これらの問題は、AIそのものが悪いわけではありません。従来のAI技術の構造的な限界が原因です。
次回は「LLM・RAG・CAGとは?AI技術の基礎を分かりやすく解説」と題して、これらの技術の仕組みと限界について、さらに詳しくお伝えします。
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