なぜ今、Excel管理からの脱却が求められるのか

「営業部のデータはAさんのExcel、経理のデータはBさんのExcel、在庫情報はCさんが管理」——このような状況に心当たりはないでしょうか。部門ごとに散在するExcelファイルを集めて経営報告資料を作成するために、毎月何時間もの工数を費やしている企業は少なくありません。本記事では、こうした散在データをBI(ビジネスインテリジェンス)ツールに統合し、リアルタイムで経営状況を把握できるダッシュボードを構築する具体的な手順を解説します。データ収集の自動化から可視化のポイントまで、実践で使える内容をお伝えします。
総務省の「令和5年版情報通信白書」によると、DXに取り組む企業の約7割が「データの分散・サイロ化」を課題として挙げています。Excelは手軽で柔軟なツールですが、データが増えるほど管理が煩雑になり、集計ミスや最新版の取り違えといったリスクが高まります。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、データ活用における阻害要因として「データの所在が分散している」が上位に挙げられており、この課題は多くの企業に共通するものといえます。
一方で、BIツールを活用してデータを統合・可視化することで、経営判断のスピードと精度を大幅に向上させた事例が増えています。ある製造業の中堅企業では、月次報告の作成時間を従来の3日から半日に短縮し、さらにリアルタイムで在庫状況を把握できるようになったことで、欠品による機会損失を年間で約15%削減したという報告もあります。
Excel管理の限界とBI活用のメリット
Excelによるデータ管理には、いくつかの構造的な限界があります。まず、ファイルが個人のパソコンやローカルフォルダに保存されている場合、誰がどのデータを持っているのかが把握しづらくなります。「最新版はどれか」「誰が更新したのか」といった確認作業に時間を取られ、本来のデータ分析に集中できないという声は多くの現場で聞かれます。
また、複数のExcelファイルを統合して集計する際には、手作業によるコピー&ペーストが発生しがちです。この過程でデータの転記ミスや計算式の破損が起こりやすく、集計結果の信頼性が担保しにくいという問題があります。Gartnerの調査によれば、スプレッドシートを用いた業務の約88%に何らかのエラーが含まれているとされており、これは意思決定の質に直結するリスクといえます。
BIツールを導入することで、これらの課題を構造的に解決できます。複数のデータソースを自動的に取り込み、統一されたフォーマットで管理することで、常に最新のデータに基づいた分析が可能になります。ダッシュボード上でグラフや表がリアルタイムに更新されるため、「先月のデータを集めて報告書を作る」という作業から、「今この瞬間の状況を見て判断する」というスタイルへと変化します。
さらに、アクセス権限の管理も容易になります。「営業部は売上データのみ閲覧可能」「経営層は全データを閲覧可能」といった細かな設定ができるため、情報セキュリティの観点からも安心です。
BI統合プロジェクトの全体像と進め方
ExcelデータをBIダッシュボードに統合するプロジェクトは、大きく5つのフェーズに分けて進めることをお勧めします。
第1フェーズは「現状把握と目標設定」です。まず、社内にどのようなExcelファイルが存在し、誰がどのような目的で管理しているのかを棚卸しします。この段階で重要なのは、単にファイルの一覧を作るだけでなく、各データがどのような業務判断に使われているのかを明確にすることです。「売上データは週次の営業会議で使用」「在庫データは発注判断に使用」といった形で整理すると、後の優先順位付けがスムーズになります。
第2フェーズは「データの標準化」です。部門ごとに異なるフォーマットで管理されているExcelファイルを、統一されたルールに沿って整備します。たとえば、日付の表記(2024/1/1、2024年1月1日、1-Jan-2024など)が混在している場合は、どれか一つに統一する必要があります。商品コードや顧客コードについても、部門間で異なる体系を使っている場合は、マスターデータを整備して紐づけを行います。
第3フェーズは「BIツールの選定と環境構築」です。代表的なBIツールとしては、Microsoft Power BI、Tableau、Google Looker Studioなどがあります。自社のIT環境(Microsoft 365を使用しているか、Google Workspaceを使用しているかなど)や、予算、必要な機能を踏まえて選定します。中小企業の場合、まずは無料版や試用版で小規模に始め、効果を確認してから本格導入するアプローチが現実的です。
第4フェーズは「データ接続とダッシュボード構築」です。選定したBIツールにExcelファイルやデータベースを接続し、必要な指標を可視化するダッシュボードを設計・構築します。この段階では、「誰が」「どのような判断をするために」「どの情報を見たいのか」を明確にすることが成功の鍵です。経営層向け、部門長向け、現場担当者向けなど、利用者ごとに異なるダッシュボードを用意することも有効です。
第5フェーズは「運用定着と改善」です。ダッシュボードを公開した後も、利用者からのフィードバックを収集し、継続的に改善を重ねることが重要です。「この指標も見たい」「グラフの見せ方を変えてほしい」といった要望に柔軟に対応することで、組織全体でのデータ活用が定着していきます。
よくある失敗パターンと回避策
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BI統合プロジェクトでは、いくつかの典型的な失敗パターンがあります。事前に把握しておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
最も多いのは「最初から完璧を目指しすぎる」というパターンです。社内のすべてのデータを一度に統合しようとすると、プロジェクトが大規模化し、完成までに1年以上かかってしまうことがあります。その間に担当者が異動したり、当初の要件が変わったりして、結局使われないシステムが出来上がるという事態も珍しくありません。まずは「売上データの可視化」「在庫状況の把握」など、効果が見えやすい領域に絞って小さく始め、成功体験を積み重ねながら範囲を広げていくアプローチが有効です。
次に多いのは「データの品質問題を軽視する」というパターンです。BIツールは入力されたデータをそのまま可視化するため、元データに誤りや欠損があれば、ダッシュボードの数値も当然おかしくなります。「BIツールを導入すればデータがきれいになる」という誤解を持っている方もいますが、実際にはその逆で、データ品質の問題がより顕在化します。統合前にデータクレンジング(重複削除、欠損値の補完、表記ゆれの修正など)を行う工程を必ず設けてください。
また、「現場を巻き込まずにIT部門だけで進める」というパターンも失敗の原因になりがちです。実際にデータを入力し、ダッシュボードを見て判断を行うのは現場の担当者です。彼らの意見を聞かずに構築したダッシュボードは、「欲しい情報が載っていない」「見方がわからない」といった理由で使われなくなります。プロジェクトの初期段階から現場のキーパーソンを巻き込み、要件定義やテストに参加してもらうことで、実用性の高いダッシュボードを構築できます。
今すぐ始められる5つのステップ
ここまでの内容を踏まえ、御社で今すぐ取り組める具体的なアクションを5つご紹介します。
第一に、社内に存在するExcelファイルの棚卸しを行いましょう。各部門の担当者にヒアリングし、どのようなExcelファイルがどこに保存されているか、誰が管理しているか、どのような頻度で更新されているかを一覧にまとめます。この作業は1〜2週間程度で完了できる規模から始めることをお勧めします。
第二に、優先的に統合すべきデータを特定します。棚卸しした中から、「経営判断に直結するもの」「更新頻度が高いもの」「複数部門で共有されているもの」を抽出し、優先順位をつけます。最初のダッシュボード化対象として、3〜5種類のデータに絞ることがポイントです。
第三に、BIツールの無料版や試用版を触ってみます。Power BIであればMicrosoftアカウントがあれば無料で利用開始できますし、Tableauも14日間の試用版が提供されています。実際に自社のExcelファイルを取り込み、簡単なグラフを作成してみることで、ツールの操作感や可能性を体感できます。
第四に、小規模なパイロットプロジェクトを実施します。一つの部門、一つの業務領域に限定して、実際にダッシュボードを構築・運用してみます。この段階で得られた知見や課題を整理し、本格導入に向けた計画をブラッシュアップします。
第五に、社内の推進体制を整えます。BI活用を継続的に推進するためには、担当者の任命と経営層のコミットメントが欠かせません。「誰がダッシュボードを管理するのか」「新しいデータの追加要望は誰が判断するのか」といった運用ルールを明確にしておくことで、導入後の混乱を防げます。
データ統合・ダッシュボード構築のご相談はGXOへ
ExcelデータのBI統合は、正しい手順で進めれば確実に成果を出せる取り組みです。しかし、「どのBIツールを選べばよいかわからない」「データの標準化に手が回らない」「社内にノウハウがない」といった理由で、なかなか一歩を踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。
GXOは、180社以上のDX支援実績を持ち、データ活用基盤の構築からダッシュボード設計・運用定着まで一気通貫で支援しています。お客様の業務内容や課題を丁寧にヒアリングし、最適なツール選定と導入計画をご提案します。「まずは現状を整理したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
まとめ
部門ごとに散在するExcelデータをBIダッシュボードに統合することで、経営判断のスピードと精度を大幅に向上させることができます。成功のポイントは、最初から完璧を目指さず小さく始めること、データ品質の整備を怠らないこと、そして現場を巻き込んで進めることです。まずは社内のExcelファイルの棚卸しから始め、優先度の高い領域でパイロットプロジェクトを実施してみてはいかがでしょうか。
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