サイバー攻撃の被害は「他人事」ではない

サイバー攻撃による被害は、大企業だけの問題ではありません。むしろ中小企業こそ、攻撃者にとって「狙いやすいターゲット」になっています。本記事では、サイバー保険の補償内容、費用相場、そして自社が加入すべきかどうかの判断基準を解説します。ただし、結論から申し上げると、サイバー保険はあくまで「最終手段」です。保険に入っていれば安心というわけではなく、日頃からのセキュリティ対策こそが被害を防ぐ最善の方法です。
【この記事の結論】
サイバー保険は被害発生後の金銭的補填が目的であり、攻撃そのものは防げない
基本的なセキュリティ対策が未整備なら、保険より先に対策への投資を優先すべき
最善の選択は「対策+保険」の併用でリスクを二段構えで備えること
IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2024」によると、ランサムウェアによる被害は4年連続で組織向け脅威の1位となっています。また、JNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)の調査では、サイバー攻撃を受けた中小企業の平均被害額は約2,400万円に上るとされています。こうした現実を踏まえ、自社にとってサイバー保険が必要かどうか、冷静に判断するための情報をお伝えします。
サイバー保険とは何か
サイバー保険とは、サイバー攻撃や情報漏洩などのインシデントが発生した際に、企業が被る経済的損失を補償する保険商品です。従来の損害保険では、火災や盗難といった物理的な被害が補償対象でしたが、サイバー保険はデジタル領域での被害をカバーする点が特徴です。
補償の対象となる主な損害は、大きく分けて3つのカテゴリーに整理できます。1つ目は「損害賠償責任」で、個人情報漏洩により顧客や取引先から損害賠償を請求された場合の費用が該当します。2つ目は「事故対応費用」で、フォレンジック調査(原因究明のための専門調査)、弁護士費用、顧客への通知・お詫び費用、コールセンター設置費用などが含まれます。3つ目は「利益損害・営業継続費用」で、システム停止による売上減少や、復旧期間中の追加コストなどが補償されます。
損保各社の商品を比較すると、補償範囲には差があります。たとえば、ランサムウェアの身代金支払いについては、補償対象とする保険会社と対象外とする保険会社があります。また、サイバー攻撃だけでなく、従業員による内部不正やヒューマンエラーによる情報漏洩も補償対象に含めるかどうかは、契約内容によって異なります。加入を検討する際は、自社が想定するリスクと補償範囲が合致しているか、約款を詳細に確認することが重要です。
費用相場と保険料を決める要素
費用相場の目安
サイバー保険の保険料は、企業の規模、業種、セキュリティ対策の状況によって大きく異なります。一般的な目安として、年間売上高10億円規模の中小企業の場合、年間保険料は30万円から100万円程度とされています。ただし、これはあくまで参考値であり、実際の見積もりは個別の条件によって変動します。
保険料を左右する4つの要素
保険料を左右する主な要素は4つあります。まず「業種」です。個人情報を大量に扱う業種(医療、金融、EC事業など)や、システムへの依存度が高い業種は、保険料が高くなる傾向があります。次に「年間売上高」です。売上規模が大きいほど、被害発生時の損害額も大きくなる可能性があるため、保険料に影響します。
3つ目は「保有する個人情報の件数」です。1万件と100万件では、漏洩時の対応コストが大きく異なるため、保険料も変わります。4つ目は「現在のセキュリティ対策状況」です。ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入、従業員教育の実施状況などが評価され、対策が充実している企業ほど保険料が割引されるケースがあります。
総務省の「情報通信白書」によると、中小企業のセキュリティ対策投資額は年間平均で約50万円程度にとどまっています。サイバー保険への加入を検討する際は、保険料だけでなく、セキュリティ対策そのものへの投資とのバランスを考慮する必要があります。
加入すべきかどうかの判断基準

すべての企業がサイバー保険に加入すべきというわけではありません。自社の状況を客観的に評価し、費用対効果を踏まえて判断することが重要です。
【加入判断チェックリスト】
顧客の個人情報を1万件以上保有している
ECサイトやオンラインサービスを運営している
取引先から情報セキュリティ要件を求められている
システム停止が1日でも許容できない業態である
基本的なセキュリティ対策(OS更新、ウイルス対策、従業員教育)は実施済み
上記のうち3つ以上該当する場合は、サイバー保険への加入を優先的に検討すべきです。
加入を優先すべき企業の特徴
加入を優先的に検討すべき企業の特徴として、まず「顧客の個人情報を1万件以上保有している」ケースが挙げられます。個人情報漏洩が発生した場合、通知費用だけでも多額のコストが発生するため、保険による備えが有効です。次に「ECサイトやオンラインサービスを運営している」場合です。システム停止による機会損失が直接的な売上減少につながるため、利益損害の補償が重要になります。また「取引先から情報セキュリティに関する要件を求められている」企業も該当します。サプライチェーン全体のセキュリティが重視される中、取引継続の条件としてサイバー保険への加入が求められるケースも増えています。
まず対策を優先すべき企業
一方で、まず取り組むべきは基本的なセキュリティ対策という企業もあります。たとえば、従業員数が10名以下で、業務のデジタル化が限定的な企業や、顧客情報をほとんど保有していない企業の場合、サイバー保険よりも基本的なセキュリティ対策(OSのアップデート、ウイルス対策ソフトの導入、従業員教育など)に投資したほうが費用対効果が高いケースがあります。
保険だけでは不十分な理由
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サイバー保険は、あくまで「被害が発生した後」の経済的損失を補填するものです。保険に加入していても、攻撃そのものを防ぐことはできません。ここに、保険だけでは不十分な根本的な理由があります。
信用の毀損は補償できない
IPAの調査によると、サイバー攻撃を受けた企業の約7割が「風評被害」を経験したと回答しています。顧客情報が漏洩したという事実は、保険による金銭的補償だけでは回復できない信用の毀損につながります。特にBtoBビジネスでは、一度失った取引先からの信頼を取り戻すことは容易ではありません。
免責条項の落とし穴
多くのサイバー保険には「免責条項」が設定されています。たとえば、「セキュリティパッチを適用していなかった場合」や「既知の脆弱性を放置していた場合」は補償対象外となることがあります。つまり、最低限のセキュリティ対策を怠っていた企業は、いざというときに保険金を受け取れない可能性があるのです。
業務停止の見えない損害
ランサムウェア攻撃では、システムが暗号化されて業務が完全に停止するケースがあります。復旧までの期間(数日から数週間)の業務停止は、売上損失だけでなく、従業員のモチベーション低下や顧客離れなど、金額に換算しにくい損害をもたらします。これらの「見えない損害」は、保険ではカバーしきれません。
自社でできる5つのセキュリティ対策
サイバー保険への加入を検討する前に、あるいは加入と並行して、自社で実施すべきセキュリティ対策があります。以下の5つは、比較的低コストで実施でき、効果が高いとされる取り組みです。
1つ目は、OSとソフトウェアの定期的なアップデートです。サイバー攻撃の多くは、既知の脆弱性を悪用します。Windows UpdateやAdobe製品のアップデートを放置せず、速やかに適用することで、攻撃リスクを大幅に低減できます。
2つ目は、多要素認証の導入です。パスワードだけでなく、SMSや認証アプリによる追加認証を設定することで、不正アクセスのリスクを低減できます。特にメールやクラウドサービスへのログインには、多要素認証の設定を強くお勧めします。
3つ目は、従業員へのセキュリティ教育です。フィッシングメールの見分け方、不審なリンクをクリックしない習慣、USBメモリの取り扱いルールなど、基本的な知識を定期的に共有することが重要です。攻撃の入口の多くは「人」であり、技術的対策だけでは防ぎきれません。
4つ目は、バックアップの定期実施と復元テストです。ランサムウェア攻撃を受けた場合でも、直近のバックアップから復元できれば被害を最小限に抑えられます。ただし、バックアップを取っているだけでは不十分で、実際に復元できるかどうかを定期的にテストすることが重要です。
5つ目は、アクセス権限の適切な管理です。「必要な人に、必要な範囲だけ」アクセス権限を付与する原則(最小権限の原則)を徹底することで、内部不正や誤操作による被害を防止できます。退職者のアカウント削除も、即時に行う運用を整備しましょう。
セキュリティ対策と保険の両立が最善の選択
ここまで述べてきたように、サイバー保険と日頃のセキュリティ対策は、どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることが最善の選択です。セキュリティ対策で攻撃の「確率」を下げ、万が一被害が発生した場合には保険で「影響」を軽減する。この二段構えの考え方が、現実的なリスク管理のあり方です。
ただし、多くの中小企業にとって、専任のセキュリティ担当者を置くことは現実的ではありません。また、日々進化するサイバー攻撃の手法に対応し続けることも、社内リソースだけでは限界があります。こうした課題を解決するために、外部の専門家の支援を活用するという選択肢があります。
GXOでは、中小企業向けのセキュリティ対策支援サービスを提供しています。SIEM(セキュリティ情報イベント管理)やSOAR(セキュリティ運用の自動化)の導入支援、SOC(セキュリティ監視センター)サービス、インシデント発生時の対応支援など、企業の状況に応じた柔軟なサポートが可能です。180社以上の支援実績をもとに、御社に最適なセキュリティ体制の構築をお手伝いします。
よくある質問(FAQ)
Q1. サイバー保険の保険料はどのくらいですか? A1. 年間売上高10億円規模の中小企業で、年間30万円〜100万円程度が目安です。業種、個人情報保有件数、セキュリティ対策状況によって変動します。
Q2. サイバー保険で補償されないケースはありますか? A2. はい。多くの保険では、セキュリティパッチ未適用や既知の脆弱性放置など、基本的な対策を怠っていた場合は免責となります。また、ランサムウェアの身代金支払いは補償対象外の保険会社もあります。
Q3. 中小企業でもサイバー保険は必要ですか? A3. 個人情報を1万件以上保有している、ECサイトを運営している、取引先からセキュリティ要件を求められているなどの条件に該当する場合は検討をお勧めします。ただし、基本的なセキュリティ対策が未整備なら、まず対策への投資を優先すべきです。
まとめ
サイバー保険は、サイバー攻撃や情報漏洩による経済的損失を補償する有効な手段ですが、保険だけに頼ることはリスクがあります。保険は被害発生後の「金銭的な補填」に過ぎず、信用の毀損や業務停止といった損害は回復できません。まずは基本的なセキュリティ対策を実施したうえで、自社のリスク状況に応じて保険への加入を検討することが重要です。
セキュリティ対策と保険の両立により、「攻撃を防ぐ」と「被害を軽減する」の二段構えでリスクに備えましょう。自社のセキュリティ体制に不安がある場合は、専門家への相談をお勧めします。
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