COBOLを「動いているから大丈夫」と放置できない理由
COBOLで構築された基幹システムは、いまも多くの企業の業務を支えています。しかし、COBOL技術者の大半が50代以上となり、毎年約3,000人規模で現場を退いていくと予測されています。2019年には基本情報技術者試験からCOBOLが除外され、若手技術者の新規参入はほぼ途絶えました。「動いているから大丈夫」ではなく、「直せる人がいなくなる」ことが本質的なリスクです。本記事では、COBOLからJavaへ移行する際の具体的なステップ、費用感と期間の目安、自動変換ツールの活用法までを解説します。
IPAの「2024年度ソフトウェア動向調査」によると、レガシーシステムを現在も使用中と回答した企業は56.6%に上ります。また、約7割の企業がレガシーシステムをDX推進の足かせと認識しているというデータもあります。つまり、問題を認識しながらも手を打てていない企業が過半数を超えているのが現状です。COBOL技術者の平均年齢は57.8歳との調査結果もあり、40歳未満のCOBOLエンジニアは全体の15%にも満たないとされています。この人材構成の偏りは、システム障害時に対応できる人がいないという事業継続上のリスクに直結します。
なぜ移行先に「Java」が選ばれるのか

COBOLからの移行先として最も多く選ばれているのがJavaです。その理由は大きく3つあります。
1つ目は、エンジニアの人材供給量です。Javaは情報系の大学・専門学校で広く教えられており、フレームワークやライブラリも豊富に整備されています。COBOLのように「技術者がいない」という問題が発生しにくく、長期的な保守体制を構築しやすい言語です。
2つ目は、基幹系システムとの親和性です。Javaはオブジェクト指向による構造化されたコード記述が可能で、大規模な業務システムの開発・保守に適しています。全国銀行データ通信システム(全銀システム)がCOBOLからJavaへの移行を進めていることからも、金融・基幹業務領域での信頼性が裏付けられます。
3つ目は、クラウドネイティブ環境との相性です。Javaはクラウド上での実行に対応したフレームワークが充実しており、オンプレミスのメインフレームから脱却した後の拡張性・柔軟性を確保できます。
Java移行の3つの手法——リホスト・リライト・リビルド
COBOLからJavaへ移行する手法は、大きく3つに分類されます。それぞれコスト・期間・リスクが大きく異なるため、自社の状況に合った手法を選ぶことが重要です。
リホストは、既存のCOBOLプログラムの論理構造を維持したまま、Java実行環境に移行する手法です。自動変換ツールを使ってCOBOLのコードを機械的にJavaコードへ変換するため、移行期間が比較的短く、コストも抑えられます。ただし、変換後のコードはいわゆる「COBOLライクなJava」になりがちで、Javaの言語特性を十分に活かしきれない場合があります。将来的な保守性については、変換ツールの品質によるところが大きいのが実情です。
リライトは、COBOLプログラムの業務ロジックを解析し、Javaのアーキテクチャに沿って新しいコードとして書き直す手法です。Javaのオブジェクト指向設計やフレームワークを活用できるため、移行後の保守性・拡張性が最も高くなります。反面、開発工数が大きく、プロジェクト期間も長期化します。既存システムの仕様をすべて正確に再現する必要があるため、テストの負荷も非常に高くなります。三菱重工業の事例では、1,500万ステップ・約4.5万本のCOBOL資産をリライト手法でJavaに変換し、脱メインフレームを実現しています。
リビルドは、既存システムを廃止し、要件定義からやり直して完全に新しいJavaシステムを構築する手法です。カスタマイズ性は最も高いものの、コストと期間は最大になります。ある企業では500万ステップ相当のリビルドに対し、概算で「5年間・1万人月」という見積もりが出されたケースも報告されています。中小企業にとっては現実的な選択肢になりにくい場合が多く、基本的にはリホストかリライトが中心的な検討対象となります。
費用感と期間の目安
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COBOL→Java移行の費用と期間は、既存システムの規模(ステップ数)、ブラックボックス化の度合い、選択する手法によって大きく変動します。一般的な目安としては、リホスト(自動変換ツール活用)の場合、数十万ステップ規模のシステムであれば数千万円〜1億円程度、期間は6か月〜1年程度が一つの目安です。リライトの場合はその2〜3倍のコストと期間を見込む必要があります。
費用に影響する変動要因として見落とされがちなのが、移行前の「棚卸し」と移行後の「テスト」にかかるコストです。長年の運用で不要になったプログラムが物理的に残っていたり、仕様書が未整備・散逸している場合、まず現行資産の全体像を把握するための棚卸し作業に相当の工数がかかります。また、基幹系システムはデータの整合性が極めて重要であるため、移行後のテスト工程がプロジェクト全体の30〜40%を占めることも珍しくありません。
メインフレームの保守費用が年間数千万円規模に達している場合、Java移行によるオープン系基盤へのシフトで中長期的に大幅なコスト削減が見込めます。COBOLエンジニアの月額単価が50〜60万円であるのに対し、Javaエンジニアは人材供給量が豊富なぶん調達の柔軟性が高く、運用コストの安定化にもつながります。
自動変換ツールと生成AIの活用
近年、COBOL→Java移行を効率化するツールとAI技術が急速に進歩しています。TIS社の「Xenlon〜神龍 モダナイゼーションサービス」は業務ロジックの100%自動変換を実現しており、約10メガステップのCOBOLプログラムを含む大規模システムのJava移行実績があります。日本ラッドが取り扱う「JANUS Studio」は、1時間あたり100万行以上のコード自動変換が可能で、米国空軍の310万行COBOLを10か月で移行した実績を持ちます。2025年10月にはCTCが「re:Modern」を発表し、COBOLからJavaへの変換に加えて要件定義・保守対応まで含めた包括的な移行サービスの提供を開始しました。
生成AIの活用も加速しています。日立製作所は生成AI技術を活用してCOBOLプログラムから仕様書を自動生成する技術を開発しており、従来数週間を要していたシステム理解の作業を数時間で完了できる見通しです。トヨタシステムズは日本IBMと共同で生成AI支援ツール「TG4X」を開発し、COBOLやPL/Iの開発経験がない人材でもコードや仕様の理解・生成を行える「レガシーコードラボ」を2025年10月に設立しています。
こうしたツールの進歩により、自動変換率が向上するほど手作業による実装ミスのリスクが低減し、テスト工数の圧縮にもつながります。ただし、自動変換ツールだけで移行が完結するわけではありません。業務ロジックの正確な理解、データ整合性の検証、移行後の運用体制の構築は、依然として人の手による設計と判断が不可欠です。
移行を成功させるための実務的なステップ

COBOL→Java移行を成功させるには、技術的な手法の選定だけでなく、プロジェクト全体の進め方が重要です。実務的に押さえるべきステップは3つあります。
最初に取り組むべきは「現行資産の棚卸し」です。稼働中のプログラム、使われなくなったが削除されていないプログラム、仕様書が存在するものとしないものを正確に分類します。三菱重工業の事例でも、まず棚卸しによって移行対象をミニマム化し、不要な資産を切り出す作業が出発点となりました。この工程を省略すると、移行対象が膨らんでコストと期間が想定を大幅に超える原因になります。
次に「手法の選定とPoC(概念実証)」です。棚卸し結果をもとに、リホストとリライトのどちらが自社に適しているかを判断します。この段階で、候補となる自動変換ツールを使って小規模なプログラムの試行変換を行い、変換精度・保守性・パフォーマンスを実機で検証するPoCの実施を強く推奨します。PoCなしに本番移行を始めると、変換結果が期待と異なるケースに後工程で気づくことになり、手戻りコストが膨大になります。
3つ目は「段階的な移行計画の策定」です。基幹系システムは一括移行がリスクの塊になるため、業務領域やサブシステムごとに移行の優先順位をつけ、段階的に進めるのが実務的なアプローチです。並行稼働期間を設けて新旧システムの処理結果を突合し、問題がないことを確認しながら段階的に切り替えることで、業務への影響を最小限に抑えることができます。
まとめ
COBOL技術者の高齢化と人材供給の断絶は、もはや「いつかやるべき課題」ではなく、先送りするほどコストとリスクが増大する経営課題です。移行先としてJavaが選ばれる理由は明確であり、リホスト・リライト・リビルドの中から自社に合った手法を選び、棚卸し→PoC→段階的移行のステップで計画的に進めることが成功の鍵になります。自動変換ツールや生成AIの進歩により、数年前よりも移行のハードルは確実に下がっています。
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