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「2025年の崖」は過去の話ではない。今も続く"レガシー倒産"の現実経産省レポートが警告する「年間12兆円損失」は2026年も継続中——放置企業が直面する5つの経営リスク

「2025年の崖」は過去の話ではない。今も続く"レガシー倒産"の現実

2025年が終わった今、レガシーシステム問題は「終わった話」ではない。むしろ、対応を先送りしてきた企業にとって、経営リスクは深刻化している。経済産業省が2025年5月に公表した最新レポートでも、レガシーシステムの存続が企業の競争力低下を招き、産業全体の国際競争力に影響を与えると警告している。

「2025年の崖」という言葉を聞いて、「もう過ぎた話だ」と感じている経営者は少なくない。しかし、それは危険な誤解である。経産省が警鐘を鳴らしたのは「2025年に何かが起きる」ことではなく、「2025年以降も対応できない企業は、年間最大12兆円の経済損失の一部を負担し続ける」という継続的なリスクだ。

本記事では、なぜレガシー問題が「IT部門の課題」ではなく「経営リスク」なのかを、最新のデータと現場の実態から解説する。


「2025年の崖」を"終わった話"と誤解する危険性

2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」は、日本企業のレガシーシステム問題に警鐘を鳴らし、「2025年の崖」というキャッチーなフレーズで大きな注目を集めた。

しかし、2025年が過ぎ去り2026年を迎えた今、多くの企業がこの問題を「過去の話」として片付けようとしている。その背景には、以下のような誤解がある。

「2025年を過ぎたから、もう崖は越えた」という誤解。しかし実際には、経産省が示した「最大12兆円の経済損失」は2025年「以降」に毎年発生し続けるリスクを指している。つまり、対応を先送りした企業にとって、2026年の今こそが「崖から落ちている最中」なのだ。

経産省は2025年5月、「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を新たに公表した。このレポートでは、2024年12月から2025年2月に実施した市場動向調査の分析結果をもとに、日本企業のDX推進が「未だ道半ば」であることを明らかにしている。

つまり、「2025年の崖」は過去形ではなく、2026年の今も続く現在進行形の経営課題なのである。


経産省DXレポートが示す「本質」とは何か

「システム問題」ではなく「経営構造の問題」

経産省のDXレポートシリーズが一貫して指摘しているのは、レガシーシステム問題が単なる「IT部門の技術的課題」ではなく、「経営構造そのものの問題」であるという点だ。

2018年のDXレポートでは、以下の3点を問題の本質として挙げている。

第一に、既存システムが事業部門ごとにバラバラに構築されており、全社横断的なデータ活用ができないこと。第二に、過剰なカスタマイズによってシステム自体が複雑化・ブラックボックス化していること。第三に、こうした問題の解決には業務自体の見直し(経営改革)が必要だが、現場からの抵抗によってDX推進が妨げられていること。

これらはすべて、経営層が主体的に関与しなければ解決できない課題である。

IT予算の「8割」が保守運用に消える現実

DXレポートが示すデータの中でも、経営者が特に注目すべき数字がある。それは「日本企業のIT予算の約8割が、既存システムの保守・運用に費やされている」という事実だ。

これは、新たなビジネス創出やデータ活用、AI導入といった「攻めのIT投資」に回せる予算が、わずか2割程度しかないことを意味する。競合他社がデジタル技術で顧客体験を革新している間、自社は古いシステムの維持管理に追われている——この構造こそが、競争力低下の根本原因である。

2025年5月の最新レポートでも、「経営層の意識変革とITガバナンスの強化」「情報システム部門の自律性」「事業部門との連携」がレガシーシステム刷新に不可欠であると改めて強調されている。


現場で起きている「属人化」と「ブラックボックス化」の実態

「あの人しか分からない」が招く経営リスク

レガシーシステムの最大の問題は、技術の古さそのものではない。「誰もシステムの全容を把握できなくなっている」というブラックボックス化にある。

ある製造業では、20年以上前に導入した生産管理システムを今も使い続けている。このシステムの仕様を理解しているのは、定年間近のベテラン社員1名のみ。この社員が退職すれば、システムの改修はおろか、トラブル対応すら困難になる。

こうした「属人化」は、以下のような具体的リスクを招く。

担当者の退職・異動時に業務が停止するリスク。システム障害発生時に復旧が長期化するリスク。取引先や顧客からの新たな要求に対応できないリスク。セキュリティ脆弱性の発見・対処が遅れるリスク。

「仕様書がない」という致命的な状況

さらに深刻なのは、長年の改修を重ねる中で仕様書や設計書が散逸し、「なぜこの処理が必要なのか」「この機能は何のためにあるのか」を誰も説明できなくなっているケースだ。

こうした状況では、システムの一部を変更しようとしても、その変更が他の機能にどのような影響を与えるか予測できない。結果として、「触らぬ神に祟りなし」とばかりに、問題を抱えたまま使い続けることになる。

経産省の調査によれば、日本企業の約8割がこうしたレガシーシステムを抱えており、約7割の企業がレガシーシステムをDX推進の足かせと認識している。


「まだ使える」が最大の落とし穴である理由

「動いている」と「使える」は違う

経営者がレガシーシステム刷新を先送りする最大の理由は、「まだ動いているから」「業務は回っているから」という判断だ。しかし、この認識こそが最大の落とし穴である。

システムが「動いている」ことと、「経営に貢献している」ことは、まったく別の話だ。

たとえば、基幹システムから経営判断に必要なデータをリアルタイムで取得できているか。顧客の購買行動を分析し、マーケティング施策に活かせているか。取引先とのデータ連携をスムーズに行えているか。

「動いているから問題ない」と考えている間に、競合他社はデータドリブンな経営判断で先を行き、顧客を奪われていく。これが、レガシーシステムがもたらす「見えない損失」の正体だ。

維持コストは年々増加する

もう一つ見落としがちなのが、レガシーシステムの維持コストは「横ばい」ではなく「増加傾向」にあるという事実だ。

古い技術を扱えるエンジニアは年々減少しており、その人件費は上昇している。メーカーのサポートが終了したハードウェアやソフトウェアの保守は、特殊な契約や個別対応が必要になり、コストが跳ね上がる。

経産省のDXレポートでは、こうした状況が続けば「IT予算の9割以上」が保守運用に取られる事態を招くと警告している。2025年を過ぎた今、この予測は多くの企業で現実のものとなりつつある。


放置した企業が直面する5つの経営リスク

レガシーシステム問題を放置し続けた場合、企業は具体的にどのようなリスクに直面するのか。経産省のレポートおよび市場動向調査から、5つの主要リスクを整理する。

1. デジタル競争での敗北

爆発的に増加するデータを活用できず、市場変化への対応が遅れる。競合他社がAIやデータ分析で顧客体験を革新する中、取り残される。

2. 技術的負債の蓄積

短期的な観点で改修を繰り返した結果、長期的な保守費・運用費が高騰し続ける。これは「技術的負債」と呼ばれ、返済(システム刷新)を先送りするほど、負担は増大する。

3. サイバーセキュリティリスクの高まり

サポートが終了した古いシステムは、最新のセキュリティ基準に準拠していない可能性が高い。サイバー攻撃による情報漏洩やシステムダウンは、企業の信頼を根底から揺るがす。

4. 事業継続リスク

保守・運用の担い手が不在となり、システムトラブルやデータ滅失からの復旧が困難になる。最悪の場合、業務そのものが継続できなくなる。

5. サプライチェーンからの脱落

2025年5月のレポートでは、取引先企業とのデータ連携が求められる中、レガシーシステムが原因でサプライチェーンから外されるリスクについても言及されている。大手企業のDX推進が加速する2026年以降、この傾向はさらに強まるだろう。


大規模刷新ではなく「相談・整理」から始める重要性

「全面刷新」だけが選択肢ではない

ここまで読んで、「うちには数億円規模のシステム刷新予算はない」と感じた経営者もいるだろう。しかし、レガシーシステム対応は必ずしも「全面刷新」を意味しない。

経産省の最新レポートでも、段階的なアプローチの重要性が強調されている。具体的には、「不要なシステムの廃棄と刷新前の軽量化」「マイクロサービス等の活用による細分化」といった手法が提示されている。

まず「現状の可視化」から

最も重要な第一歩は、自社のIT資産の現状を正確に把握することだ。

どのシステムがどの業務を支えているのか。そのシステムの保守・運用コストはいくらか。担当者は誰で、ドキュメントは整備されているか。更新・刷新の優先度はどうか。

こうした「棚卸し」を行うだけでも、隠れていたリスクが明らかになり、対策の優先順位が見えてくる。

外部の視点を入れることの価値

また、自社だけで現状分析を行うと、「今まで問題なかったから」という正常性バイアスが働きやすい。第三者の視点から客観的に評価してもらうことで、見落としていたリスクに気づけることも多い。

経産省のDX推進指標やIPAの診断ツールを活用する方法もあるが、自社の業種・規模に即した具体的なアドバイスを得るためには、システム開発やDXコンサルティングの専門家に相談することも有効な選択肢だ。


まとめ:「2025年の崖」は2026年の今も続いている

「2025年の崖」は、2025年を境に終わる問題ではない。むしろ、対応を先送りしてきた企業にとっては、2026年の今こそが正念場となる。

レガシーシステム問題は、IT部門だけで解決できる技術的課題ではない。経営層が主体的に関与し、業務プロセスの見直しから取り組むべき経営課題である。

大規模な刷新プロジェクトを立ち上げる前に、まずは自社の現状を正確に把握し、リスクと優先順位を整理することから始めてほしい。その一歩が、「レガシー倒産」を防ぐ最も確実な方法だ。


参考資料

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