情シスアウトソーシングの選び方——フルアウトソースとコソーシングの違い
情シス業務のアウトソーシングには、業務のほぼすべてを外部に委託する「フルアウトソース」と、外部パートナーと自社担当者が役割を分担して共同運用する「コソーシング」の2つの形態があります。結論から言えば、情シス担当者がゼロまたは兼任のみの企業はフルアウトソース、ひとり情シス体制で社内にノウハウを残しながら負荷を軽減したい企業はコソーシングが適しています。本記事のポイントは次の3つです。
フルアウトソースは運用負荷を最小化できる反面、社内にITノウハウが蓄積されにくく、ベンダー依存が深まるリスクがある
コソーシングは自社の情シス担当者が戦略的業務に集中できる体制を作りつつ、ノウハウを社内に残せる形態
どちらを選ぶかは「コスト」だけでなく、「将来的にIT機能を内製化したいか」という経営判断と直結する
中小企業の約44%が情シスの人手不足を実感しているという調査結果があります(バッファロー調べ)。さらに、情シス業務の約7割を何らかの形でアウトソーシングしている中小企業も多く、外注は特別な選択肢ではなく実質的な標準になりつつあります。しかし「どこまで外に出すか」の判断を誤ると、コストが膨らんだり社内のIT対応力が低下したりする事態に陥りかねません。
本記事では、フルアウトソースとコソーシングの違いを費用・ノウハウ蓄積・柔軟性の3軸で比較し、自社に合った形態の選び方を解説します。
フルアウトソースとは——情シス業務をまるごと外部に委託する形態

フルアウトソースは、ヘルプデスク対応、PC管理・キッティング、サーバー・ネットワーク運用、セキュリティ監視、アカウント管理といった情シス業務の大部分を外部の専門企業に委託する形態です。自社に専任の情シス担当者を置かず、IT業務全般をベンダーに任せるケースを指します。
フルアウトソースの最大のメリットは、情シスの人員を確保できない企業でもプロフェッショナルによる安定したIT運用を実現できる点です。IT人材の採用は年々難しくなっており、中小企業が提示できる給与水準では応募が集まりにくいのが現実です。フルアウトソースを選択すれば、採用・育成のコストと時間をかけずに、専門知識を持ったチームにIT運用を任せられます。
費用体系は月額固定制が一般的で、従業員50〜100名規模の企業であれば月額30万〜80万円程度が相場です。ヘルプデスク、PC管理、ネットワーク保守を一括で委託する場合は月額50万円前後からが目安となりますが、対応範囲やSLA(サービスレベル合意)の内容によって大きく変動します。
一方、フルアウトソースには見落とされがちなデメリットがあります。最も深刻なのは、社内にITノウハウが蓄積されないことです。すべてをベンダーに委託する体制が長期化すると、自社のIT環境に関する知見がベンダー側にだけ蓄積され、ベンダーの変更やコスト交渉が難しくなる「ベンダーロックイン」の状態に陥るリスクがあります。また、社内のIT要望をベンダーに正しく伝える窓口となる人材がいないと、現場のニーズとベンダーの対応にギャップが生じやすくなります。
コソーシングとは——外部と社内で役割分担する共同運用
コソーシングは、情シス業務の一部を外部パートナーに委託しつつ、IT戦略の立案やベンダー管理、社内調整といったコア業務は自社の担当者が担う形態です。「部分的アウトソース」とも呼ばれ、外部の専門性と社内の業務理解を組み合わせた運用スタイルです。
たとえば、ヘルプデスク対応とPCキッティングは外部に委託し、セキュリティポリシーの策定やシステム投資の意思決定は社内の情シス担当者が行うという役割分担が典型的なパターンです。日常的な定型業務を外部に任せることで、情シス担当者はDX推進やセキュリティ強化といった戦略的な業務に集中できるようになります。
コソーシングの最大の強みは、社内にITノウハウが残る点です。外部パートナーとの協業を通じて、担当者が新しい技術や運用手法を学ぶ機会が生まれます。将来的にIT機能を内製化したい、あるいは情シスチームを拡大したいと考えている企業にとっては、コソーシングが中長期的に有利な選択肢となります。
費用面では、委託範囲を限定できるためフルアウトソースより月額コストを抑えやすい傾向があります。ヘルプデスクとPC管理のみの委託であれば月額15万〜40万円程度が目安です。ただし、社内の情シス担当者の人件費は別途発生するため、総コストで比較する必要があります。
コソーシングの注意点としては、社内担当者と外部パートナーの役割分担が曖昧になると「お見合い状態」が発生し、対応が遅れるリスクがあります。業務の切り分けを明文化し、対応フローと責任範囲を契約時に明確に定めておくことが成功のポイントです。
フルアウトソースとコソーシングの比較——判断の3軸
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2つの形態を選ぶ際に重視すべき判断軸は、費用、ノウハウ蓄積、柔軟性の3つです。
比較項目 | フルアウトソース | コソーシング |
|---|---|---|
月額費用の目安 | 30万〜80万円 | 15万〜40万円(+社内人件費) |
社内のIT人員 | 不要(窓口のみ推奨) | 1名以上必要 |
ノウハウ蓄積 | ベンダー側に蓄積 | 社内にも蓄積される |
ベンダー変更の難易度 | 高い | 比較的低い |
対応スピード | SLA依存 | 社内判断で即対応可能な領域あり |
DX推進・戦略業務 | ベンダー主導 | 社内主導 |
適する企業像 | 情シスゼロ・兼任のみ | ひとり情シス体制 |
費用だけを見るとコソーシングが有利に見えますが、社内担当者の人件費を加算すると総コストが逆転する場合もあります。重要なのは「ITに関する意思決定を社内に残すかどうか」という経営判断です。IT投資の判断やセキュリティポリシーの策定を自社でコントロールしたいのであれば、コソーシングが適しています。
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失敗しないアウトソーシングの進め方
情シスのアウトソーシングで最も多い失敗パターンは、「何を外に出すか」を整理しないまま契約してしまうケースです。まず自社の情シス業務を棚卸しし、定型業務と戦略的業務を明確に分類することから始めてください。
定型業務に該当するのは、ヘルプデスク対応、PCキッティング、アカウント発行・削除、ソフトウェアのライセンス管理、バックアップ運用などです。これらは手順が標準化しやすく、外部委託に適した業務です。一方、IT投資計画の策定、セキュリティポリシーの設計、業務システムの選定・導入判断といった意思決定を伴う業務は、社内に残すことが望ましいでしょう。
外注先を選定する際は、対応範囲だけでなく「ナレッジの共有体制」も重視してください。優良なベンダーは、対応履歴や手順書を定期的に共有し、社内にノウハウが蓄積される仕組みを提供してくれます。逆に、対応内容がブラックボックス化するベンダーは、長期的にはコスト増とベンダーロックインの原因になります。
契約形態は、月額固定制とスポット対応を組み合わせるのが現実的です。毎月発生するヘルプデスクやPC管理は月額固定制で委託し、サーバー移行やセキュリティ診断など単発のプロジェクトはスポットで依頼する形が、コスト効率と柔軟性のバランスに優れています。
まとめ

情シス業務のアウトソーシングは、フルアウトソースとコソーシングのどちらが優れているかではなく、自社の情シス体制と経営方針に合った形態を選ぶことが重要です。情シス担当者がいない企業はフルアウトソースで安定運用を確保し、ひとり情シス体制であればコソーシングで定型業務を外部に任せつつ戦略業務に集中する体制を構築してください。いずれの場合も、業務の棚卸しと役割分担の明文化が成功の前提条件です。
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よくある質問(FAQ)
Q. フルアウトソースとコソーシングは途中で切り替えられますか?
はい、切り替えは可能です。たとえば、最初はフルアウトソースで運用を安定させ、社内にIT担当者を採用できた段階でコソーシングに移行するのは有効な進め方です。その際は、ベンダーからのナレッジ引き継ぎをスムーズに行えるよう、契約時点で移行条件を明確にしておくことが重要です。
Q. アウトソーシングの費用対効果はどう測ればよいですか?
情シス担当者の人件費(採用・育成コスト含む)と、アウトソーシング費用を比較するのが基本です。加えて、担当者がヘルプデスク対応に費やしていた時間を戦略業務に振り向けた場合の生産性向上や、セキュリティインシデントの予防効果も含めて総合的に評価してください。
Q. アウトソーシング先の選定で最も重視すべきポイントは何ですか?
対応範囲と費用に加えて、「ナレッジの共有体制」が最重要です。対応履歴や手順書を定期的に共有してくれるベンダーであれば、将来的なベンダー変更や内製化への移行もスムーズに進められます。ブラックボックス化を防ぐ体制があるかどうかを必ず確認しましょう。
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