厚生労働省「介護分野の最新動向と課題」(2024年7月公表)によると、2040年には介護人材が約69万人不足すると推計されている。人手不足が深刻化する中、介護記録のIT化やシフト管理の効率化は「あると便利」ではなく「なければ事業が回らない」レベルの課題になりつつある。しかし、多くの介護事業所が「ITツールの導入費用を捻出できない」と感じている。実は、介護事業所はIT導入補助金に加えて、厚労省の「ICT導入支援事業」も活用でき、導入費用の大半を公的資金で賄える。この記事では、介護事業所が使える補助金の種類、対象ツール、LIFE対応のポイント、導入事例を紹介する。


目次

  1. 介護事業所が使える補助金・支援事業一覧
  2. 補助対象になるITツール一覧
  3. LIFE対応とIT補助金の関係
  4. 費用シミュレーション(補助前後)
  5. 導入事例3選
  6. 申請のコツ
  7. まとめ
  8. よくある質問(FAQ)

介護事業所が使える補助金・支援事業一覧

介護事業所のIT導入に使える主な補助金・支援事業を比較する。

補助金・支援事業補助率補助上限額主な対象
IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)1/2〜4/5最大450万円ソフトウェア、クラウドサービス導入費用
ICT導入支援事業(厚労省・都道府県)1/2〜3/4都道府県により異なる(100万〜260万円程度)介護ソフト、タブレット、通信環境整備
介護ロボット導入支援事業1/2〜3/41機器あたり最大100万円見守りセンサー、移乗支援ロボット等
小規模事業者持続化補助金2/3最大50万円(特例で最大200万円)販路開拓に伴うIT投資
(出典:中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」公式サイト、厚生労働省「介護分野のICT化支援」、各都道府県の介護ICT導入支援事業実施要領)

介護事業所の場合、IT導入補助金とICT導入支援事業の「併用」が最大のポイントだ。IT導入補助金で介護ソフトを導入し、ICT導入支援事業でタブレット端末やWi-Fi環境整備の費用を補助してもらう、という組み合わせが可能なケースがある。ただし、同一経費の重複受給は不可のため、経費の切り分けが必要だ。

補助金制度全体の最新情報はIT補助金2026完全ガイドでまとめている。

セクションまとめ: 介護事業所はIT導入補助金に加えて厚労省のICT導入支援事業も使える。経費を切り分ければ併用も可能。


補助対象になるITツール一覧

介護事業所で使われる主要ITツールと、対応する補助金を整理する。

ツールカテゴリ具体例対応補助金月額目安
介護記録ソフトほのぼのNEXT、カイポケ、ケアコラボIT導入補助金、ICT支援事業5,000〜30,000円
介護請求(国保連)ほのぼのNEXT、カイポケ、ワイズマンIT導入補助金上記に含む
シフト管理ジョブカン、KING OF TIME、CWSIT導入補助金200〜500円/人
見守りセンサー眠りSCAN、LASHIC-care介護ロボット導入支援事業1,000〜3,000円/台
インカム・情報共有BONX、BuddycomICT支援事業500〜2,000円/人
タブレット端末iPad、AndroidタブレットICT支援事業端末費用3万〜5万円
会計ソフトfreee、マネーフォワード クラウドIT導入補助金2,000〜5,000円
LIFE対応ソフトほのぼのNEXT、カイポケ、ケアコラボIT導入補助金介護記録ソフトに含む
セクションまとめ: 介護記録・請求ソフトはIT導入補助金、タブレットやインカムはICT支援事業、見守りセンサーは介護ロボット導入支援事業と、ツールごとに適切な補助金を選ぶ。

LIFE対応とIT補助金の関係

LIFEとは

LIFE(科学的介護情報システム)は、厚生労働省が運営する介護データの収集・分析プラットフォームだ。介護事業所がLIFEに利用者のADLデータや栄養状態などを提出すると、「科学的介護推進体制加算」として介護報酬が上乗せされる。

LIFE対応に必要なIT環境

必要要素詳細
LIFE対応の介護記録ソフトADL・栄養・口腔等のデータを記録し、LIFE形式で出力
インターネット環境LIFEへのCSVアップロードまたはAPI連携
タブレット端末(推奨)現場でリアルタイムに記録入力
2024年度の介護報酬改定で科学的介護推進体制加算は拡充されており、LIFE対応は「加算による増収」と「記録業務の効率化」の両方を実現できる。IT導入補助金でLIFE対応の介護記録ソフトを導入すれば、補助金で初期費用を抑えつつ、加算による増収で投資回収が可能だ。

セクションまとめ: LIFE対応は介護報酬の加算による増収につながる。IT補助金でLIFE対応ソフトを導入すれば、投資回収も早い。


費用シミュレーション(補助前後)

パターン1:介護記録+請求ソフト導入(小規模デイサービス・利用者30名)

項目金額
介護記録・請求ソフト(導入費+1年分クラウド利用料)60万円
タブレット端末5台25万円
Wi-Fi環境整備15万円
合計100万円
IT導入補助金(ソフトウェア部分60万円×補助率1/2)▲30万円
ICT導入支援事業(タブレット+Wi-Fi部分40万円×補助率3/4)▲30万円
自己負担額40万円

パターン2:介護記録+シフト管理+見守りセンサー(グループホーム・2ユニット)

項目金額
介護記録ソフト(LIFE対応)80万円
シフト管理システム30万円
見守りセンサー(18台)180万円
導入支援・研修40万円
合計330万円
IT導入補助金(記録+シフト部分110万円×1/2)▲55万円
介護ロボット導入支援事業(センサー部分180万円×1/2)▲90万円
自己負担額185万円

パターン3:施設全体のICT化(特養・100床)

項目金額
介護記録・請求・ケアプランシステム200万円
タブレット端末20台100万円
見守りセンサー(100台)500万円
ナースコール連携150万円
合計950万円
IT導入補助金+ICT支援事業+ロボット導入支援(合算)▲約450万円
自己負担額約500万円
セクションまとめ: 小規模事業所なら自己負担40万円からICT化が可能。大規模施設でも複数の補助金を組み合わせれば約半額に抑えられる。

介護事業所のIT補助金、いくら使える?

事業形態・利用者数・導入したいツールをもとに、使える補助金と自己負担額の目安をお調べします。ICT導入支援事業との併用パターンもご案内します。

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導入事例3選

事例1:小規模デイサービス(福岡市・利用者25名)——介護記録のペーパーレス化

課題: 紙の介護記録を毎日手書きで作成。記録に1人あたり30分かかり、転記ミスも多かった。国保連請求も手入力で月末に残業が発生。

導入ツール: 介護記録・請求ソフト(カイポケ)+タブレット5台

補助金: IT導入補助金+ICT導入支援事業(合計補助額55万円)

効果:

  • 記録時間が1人あたり30分→10分に短縮
  • 国保連請求の処理が丸1日→2時間に
  • 転記ミスがゼロに
  • LIFE対応による科学的介護推進体制加算の算定開始(月額約5万円の増収)

事例2:グループホーム(北九州市・2ユニット18名)——見守りセンサー+記録連携

課題: 夜間の巡視に2時間ごとに各居室を回る必要があり、夜勤スタッフの負担が大きかった。利用者の睡眠も巡視で妨げられていた。

導入ツール: 見守りセンサー(眠りSCAN)18台+介護記録ソフト連携

補助金: 介護ロボット導入支援事業+IT導入補助金(合計補助額120万円)

効果:

  • 夜間巡視回数を1/3に削減(異常時のみ訪室)
  • 夜勤スタッフの身体的負担が大幅軽減
  • 睡眠データをもとにしたケアプランの質向上
  • 見守りデータの自動記録により夜間の記録業務が不要に

事例3:特別養護老人ホーム(大分県・80床)——施設全体のICT化

課題: 介護記録、請求、ケアプラン、シフト管理が全て別々のシステムまたは紙で運用。情報の二重入力が常態化し、スタッフの残業が慢性的に発生。

導入ツール: 統合型介護システム(ほのぼのNEXT)+タブレット15台+Wi-Fi整備

補助金: IT導入補助金+ICT導入支援事業(合計補助額180万円)

効果:

  • 記録・請求・ケアプランのデータ連携により二重入力を解消
  • スタッフの月間残業時間が平均15時間→5時間に削減
  • LIFE提出の自動化により加算漏れがゼロに
  • ペーパーレス化で紙代・印刷代を年間約30万円削減

セクションまとめ: 小規模事業所から大規模施設まで、規模を問わずIT補助金を活用した導入実績がある。記録時間の短縮とLIFE加算による増収が共通の成果。


申請のコツ

1. ICT導入支援事業は都道府県ごとに確認

厚労省のICT導入支援事業は都道府県が実施主体のため、補助上限額・補助率・対象範囲が地域によって異なる。自事業所の所在地の都道府県に問い合わせるか、都道府県の介護保険課のWebサイトで最新情報を確認する。

2. LIFE加算によるROIを申請書に盛り込む

IT導入補助金の審査では「投資対効果」が重要な評価軸だ。LIFE対応ソフトを導入する場合、科学的介護推進体制加算による月額の増収見込みを計算し、投資回収期間を明示すると説得力が増す。

3. 現場スタッフの研修計画を含める

介護現場ではITリテラシーのばらつきが大きい。「導入して終わり」ではなく、操作研修の計画と期間を申請書に盛り込むことで、「確実に活用できる」という信頼性が伝わる。

デジタル化・AI導入補助金の最新動向はデジタル化・AI導入補助金2026ガイドでも解説している。

セクションまとめ: 都道府県ごとのICT支援事業を必ず確認し、LIFE加算によるROIを申請書で示し、研修計画を含めることが採択率向上のコツ。


まとめ

介護事業所はIT導入補助金だけでなく、厚労省のICT導入支援事業や介護ロボット導入支援事業を組み合わせることで、介護記録・請求・シフト管理・見守りセンサーの導入費用を大幅に圧縮できる。LIFE対応ソフトの導入は加算による増収も見込めるため、投資回収の観点からも合理的だ。人材不足が加速する介護業界において、ICT活用は「人の手を増やす」のではなく「人の手がなくても回る仕組みを作る」ための手段だ。まずは自事業所がどの補助金の対象になるか確認するところから始めてほしい。

GXO株式会社の会社概要はこちら開発事例はこちらもご参照ください。


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よくある質問(FAQ)

Q1. ICT導入支援事業とIT導入補助金は併用できますか?

A1. 同一経費に対する重複受給は不可ですが、対象経費を分ければ併用可能です。例えば、介護ソフト(ソフトウェア)はIT導入補助金、タブレット端末(ハードウェア)はICT導入支援事業で申請する、という形が一般的です。事前に経費の切り分けを整理する必要があります。

Q2. 訪問介護事業所でもIT補助金は使えますか?

A2. 使えます。訪問介護用の記録ソフトやスマートフォンでの記録入力システムも補助対象です。訪問先でリアルタイムに記録を入力し、事務所に戻ってからの転記作業を不要にするシステムが多くの事業所で導入されています。

Q3. LIFEに対応していない介護ソフトでも補助対象になりますか?

A3. IT導入補助金の対象となるのは、IT導入支援事業者が登録したツールです。LIFE対応は補助金の必須要件ではありませんが、LIFE対応ソフトを選んだ方が加算による増収が見込めるため、投資対効果の観点からおすすめです。

Q4. 介護報酬の加算で導入費用はどのくらいで回収できますか?

A4. 科学的介護推進体制加算(I)は40単位/月・人です。利用者30名のデイサービスであれば月額約12,000円の増収になります。補助金で初期費用を圧縮すれば、1〜2年で投資回収できるケースが多いです。


参考資料

  • 中小機構「デジタル化・AI導入補助金2026」公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/
  • 厚生労働省「介護分野のICT化支援」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ict/index.html
  • 厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)」 https://life.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「介護分野の最新動向と課題」(2024年7月公表) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html