2024年11月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)。施行から1年半が経過した2026年4月、発注企業側で顕在化しているトラブル行政指導事例が増えつつある。情シス・開発部・法務部で取引実務を担当する方向けに、頻出する10のトラブルと対応フローを整理する。

「うちは下請法を守っていれば大丈夫」と考えている企業が多いが、フリーランス新法は下請法より範囲が広く、適用対象の判定から見直しが必要だ。


フリーランス新法の要点(30秒おさらい)

対象:特定受託事業者(従業員を使用せず事業を営む個人・一人社団法人等)との取引

発注者に課される主な義務:

  • 取引条件の書面/電磁的方法による明示
  • 報酬支払期日(発注から60日以内、かつ可能な限り短期)
  • 禁止行為(受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき・購入強制・利益提供強要・不当な変更/やり直し)
  • 募集情報の正確性確保
  • 育児介護への配慮
  • ハラスメント対策
  • 中途解約の予告

違反時は行政指導 → 勧告 → 公表の流れで、悪質な場合は50万円以下の罰金

セクションまとめ: フリーランス新法は下請法より適用範囲が広く、発注者側の義務が多い。2年目から行政指導事例が増加中。


トラブル10選と対応フロー

1. 契約書を交わさず口頭依頼 → 条件不明示

問題: 発注内容・納期・報酬を書面/電磁的方法で明示していない

対応: メール・Slack・業務システム経由の電子的な発注書でも可。最低限「業務内容・報酬・納期・報酬支払期日」を記録する仕組みを整備。

2. 支払いを「検収後60日」にしている

問題: 「検収完了から60日」ではなく「発注物受領から60日以内」が原則

対応: 会計システムの支払い条件を見直し、受領日起算で支払いサイトを設定。

3. 検収を不当に長引かせる

問題: 検収を理由に報酬支払いを遅延させる行為

対応: 検収期間を契約書に明記(例:受領後14日以内)。期間を過ぎたら自動的に検収済みとみなすルール。

4. 「お値引きお願いします」で報酬減額を要求

問題: 一度合意した報酬を減額させる行為

対応: 減額合意は新たに書面で結び、減額理由を明記。単なる値引き要請は違反

5. 仕様変更を追加報酬なしで押し付け

問題: 発注後の仕様変更で作業量が増えるのに報酬据え置き

対応: 変更時の追加報酬協議を契約書に明記。変更管理プロセスを導入。

6. 納品物の返品・やり直しを繰り返し要求

問題: 合意していない基準で何度も差戻し

対応: 検収基準を契約書に明記。合理的な基準を逸脱した差戻しは違反。

7. 自社の会計システム/ツールの購入を強制

問題: 発注条件として特定のツール購入を強制

対応: 任意利用として明示。報酬に組み込むか、発注者側で提供する形に。

8. 「コンペに参加するなら広告出稿を」など利益提供要求

問題: 取引を条件に金銭・役務の提供を要求

対応: 取引条件と無関係な要求は明確に禁止。発注担当者への社内教育で徹底。

9. 再委託情報を相手に通知しない

問題: フリーランスの成果物を別の第三者に再委託する際の通知義務違反

対応: 契約書に再委託の可否と通知義務を明記。別途通知書の雛形を準備。

10. 中途解約を即日通告

問題: 事前予告なしに契約を打ち切る

対応: 一定期間の事前予告(契約で定める。目安は30日)を原則とする。不可抗力以外は予告必須。

セクションまとめ: 10件いずれも「契約書・業務プロセスの整備不足」が根本原因。発注部門の教育と社内ルール整備で大半は防げる。


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対応フロー(90日プラン)

30日:現状棚卸し

  • フリーランス取引の全リスト化(契約先・取引頻度・金額規模)
  • 契約書雛形の法令対応状況の点検
  • 会計システムの支払いサイト設定の確認

60日:ルール整備

  • 契約書テンプレートの更新(10項目カバー)
  • 発注システム・会計システムの業務プロセス改修
  • 発注担当者向けの社内研修

90日:運用定着

  • 取引先への新契約書への移行
  • 発注業務の社内レビュー
  • インシデント窓口の整備

まとめ

  • 施行2年目から行政指導事例が増加。発注者側の対応が本格的に問われる
  • 10種類のトラブルは契約書・業務プロセスの整備で大半は防げる
  • 90日プランで現状棚卸し → ルール整備 → 運用定着

FAQ

Q1. 下請法で既に対応しているから大丈夫ですか?

対応範囲が違います。フリーランス新法は下請法より適用対象が広く、資本金要件のない取引も含みます。別途対応が必要です。

Q2. メールでの発注書は電磁的方法として有効ですか?

有効です。要件は「内容の確認と記録が可能な方法」。メール・Slack・業務システム経由のいずれも該当します。

Q3. 個人事業主と株式会社のフリーランスで対応は変わりますか?

「従業員を使用するか」が判定ポイントです。一人社団法人でも従業員を使用していなければ対象。形式ではなく実態判定です。


参考情報

  • 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
  • 公正取引委員会「フリーランス法 Q&A」
  • 厚生労働省「フリーランスとして働く方へのガイドライン」
  • 中小企業庁「下請取引ガイドブック」

GXO実務追記: システム開発・DX投資で発注前に確認すべきこと

この記事のテーマは、単なるトレンド紹介ではなく、要件定義、費用、開発体制、ベンダー選定、保守運用を決めるための検討材料です。検索で情報収集している段階でも、発注前に次の観点を整理しておくと、見積もりのブレ、手戻り、ベンダー依存を減らせます。

まず決めるべき3つの論点

論点確認する内容未整理のまま進めた場合のリスク
目的売上拡大、工数削減、リスク低減、顧客体験改善のどれを優先するか成果指標が曖昧になり、PoCや開発が終わっても投資判断できない
範囲対象部署、対象業務、対象データ、対象システムをどこまで含めるか見積もりが膨らむ、または重要な連携が後から漏れる
体制自社責任者、現場担当、ベンダー、保守運用者をどう置くか要件確認が遅れ、納期遅延や品質低下につながる

費用・期間・体制の目安

フェーズ期間目安主な成果物GXOが見るポイント
事前診断1〜2週間課題整理、現行確認、投資判断メモ目的と範囲が商談前に整理されているか
要件定義 / 設計3〜6週間要件一覧、RFP、概算見積、ロードマップ見積比較できる粒度になっているか
PoC / MVP1〜3ヶ月検証環境、効果測定、リスク評価本番化判断に必要な数値が取れるか
本番導入3〜6ヶ月本番環境、運用設計、教育、改善計画導入後の運用責任と改善サイクルがあるか

発注前チェックリスト

  • [ ] 発注前に目的、対象業務、利用者、現行課題を1枚に整理したか
  • [ ] 必須要件、将来要件、今回はやらない要件を分けたか
  • [ ] 見積比較で、開発費だけでなく保守費、運用費、追加改修費を見たか
  • [ ] ベンダー選定で、体制、実績、品質管理、セキュリティ、引継ぎ条件を確認したか
  • [ ] 検収条件を機能、性能、セキュリティ、ドキュメントで定義したか
  • [ ] リリース後3ヶ月の改善運用と責任分界を決めたか

参考にすべき一次情報・公的情報

上記の一次情報は、社内稟議やベンダー比較の根拠として使えます。一方で、公開情報だけでは自社の現行システム、業務フロー、データ状態、予算制約までは判断できません。記事で一般論を把握した後は、自社条件に落とした診断が必要です。

GXOに相談するタイミング

次のいずれかに当てはまる場合は、記事を読み進めるだけでなく、早めに相談した方が安全です。

  • 見積もり依頼前に、要件やRFPの粒度を整えたい
  • 既存ベンダーの提案が妥当か第三者視点で確認したい
  • 補助金、AI、セキュリティ、レガシー刷新が絡み、判断軸が複雑になっている
  • 社内稟議で費用対効果、リスク、ロードマップを説明する必要がある
  • PoCや診断で終わらせず、本番導入と運用改善まで進めたい

フリーランス新法 2年目の実務|発注者が陥る契約・支払いトラブル10選と対応フローを自社条件で診断したい方へ

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